著者
井原 奉明 Ihara Tomoaki
出版者
光葉会
雑誌
学苑 (ISSN:13480103)
巻号頁・発行日
no.870, pp.83-94, 2013-04

Abstract It is the author's present design to determine, by an exhaustive analysis of the existing findings and evidence, how the conception of mono is understood and applied around the Jodai era. This study is the first step toward the primary research of the cosmology of the concept. Such a task pertains to linguistics, philosophy and other related academic fields. The author begins with a critical inquiry into Ms. Hasegawa's study of mono. For more integrated explication, he hypothesizes it derives from the idea of mana of the Pacific region. The adequacy was illustrated by an extensive clarification of how the concept acquires a variety of meanings and captures spatially-directed significances as a null symbol within the phenomenological "lived" space of subjectivity.
著者
マスキオ パオラ
出版者
国際日本文化研究センター
雑誌
日本研究 = NIHON KENKYŪ (ISSN:24343110)
巻号頁・発行日
vol.58, pp.81-106, 2018-11-30

『寓骨牌』(天明七[一七八七]年刊)は、その時期に江戸で大流行していた「めくりカルタ」(ポルトガル由来のトランプカードで行われるカードゲーム)を擬人化して登場させる山東京伝の黄表紙である。従来の研究では、珍しい題材の擬人者の一つとして挙げられてきたが、特に意義があるとはされてこなかった。しかし、当時の読者が持っていためくりカルタの知識を意識しながら本作を読むことで、その構成や娯楽性を理解することができる。 本稿ではまず、めくりカルタの基礎知識や遊び方を紹介し、『寓骨牌』でそれぞれの札がどのように擬人化されているかを分析した。『寓骨牌』の擬人化の手法はゲームにおける役割を反映しているといえる。例えば、クラブ・スペード・ダイヤ・ハートに当たるハウ(青札)・イス(赤札)・オウル・コップの四種一~十二の計四十八枚のうち、最大の点数が付く青札の六は、姫君の六大御前として擬人化されている。実際のゲームで点数の高い札が狙われるように、『寓骨牌』の物語で六大御前はさまざまな登場人物に思いを寄せられる。 次に、作品の趣向を考察した。「めくり」のルールを意識しながら物語を読んだ結果、登場人物の関係もゲームを反映していることがわかる。例えば、赤蔵がお七と桐三郎を追いかけている時に、鬼と幽霊が突然現れて難儀を救う場面は、ある遊戯者が赤札の七で青札の七を取ろうとしている様子に、ジョーカーのような役割を果たす鬼札や幽霊札が突然現れるゲームの様子に見立てられている。よって、『寓骨牌』は「カルタ見立て」の趣向を持っているといえる。 このような解釈によって、山東京伝の擬人物黄表紙における『寓骨牌』の位置付けを改めて考察することが必要になる。京伝が『御存商売物』(天明二年)で人気作者となってから素材を変えて同じパターンで天明期に執筆した擬人物黄表紙と比較して、『寓骨牌』では擬人化された札にお家騒動に見立てためくりの勝負を演じさせることで、「お家騒動の擬人物」の趣向をさらに複雑にし、凝りに凝った作品を生み出した。この後、寛政の改革以降の大衆化した京伝の黄表紙には、そのように細かく編まれた擬人物は見出されない。そのため、『寓骨牌』は京伝の擬人物黄表紙の到達点と見なせるのではないか。

3 0 0 0 IR 小野篁の研究

著者
岩井 美奈 Mina Iwai
出版者
フェリス女学院大学国文学会
雑誌
玉藻 (ISSN:02887266)
巻号頁・発行日
no.52, pp.103-127, 2018-03
著者
間瀬 久美子
出版者
千葉経済大学
雑誌
千葉経済論叢 The proceedings of Chiba Keizai University (ISSN:21876320)
巻号頁・発行日
no.59, pp.1-26, 2018-12

江戸中期寛延の三件の怪異と地震に対する朝廷祈禱は、賀茂・阿部・卜部等の卜占や先例を基に判断されたが、怪異は祈禱名目や祝詞の文言からは除去され、天皇の慎みや国家安全祈禱として、その災禍に対処した。一方、自然現象への合理的解釈も社会に浸透し、神社社家等は、怪異を神社造営や運営参加を要求する契機として利用するようになった。
著者
井上 泰至
出版者
佛教大学国語国文学会
雑誌
京都語文 (ISSN:13424254)
巻号頁・発行日
no.26, pp.30-43, 2018-11-24

『雨月物語』「蛇性の婬」の歌枕による舞台設定(紀伊国三輪が崎・佐野の渡り)は、当時の中世歌学に従った通念とは異なった国学(契沖『万葉代匠記』(精選本))の成果による歌枕考証を基にしつつ、その通念と国学説の間を、俳諧的連想で自由につなぐものであった。また、主人公豊雄が引用する「三輪が崎・佐野の渡り」を詠みこんだ歌は、『万葉集』が出典ではあるが、平安朝文学に耽溺する余り、その文学世界から抜け出てきたような謎の女、真女児(まなご)に誘惑され、豊雄が懸想する場面での引用の背景には、『源氏物語』「東屋」が介在していることを考証した。これらの新事実を出発点に、原拠の中国白話小説をいかに日本の物語に「見立て」ていったか、その知的遊戯の実態を確認し、「物語」の高度な達成と、本作の主題について私見を提示した。
著者
山下 雅之 桑原 丈和 前田 益尚
出版者
近畿大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2005

まず平成17年度には、夏期休暇を利用してフランスとベルギーでマンガ文化の中心をなすと考えられる都市、アングレームとブリュッセルを訪れた。アングレームでは国立マンガセンターで展示資料の閲覧と蔵書資料の検索、調査を行った。またアングレームは町全体のあちこちの壁面に有名なマンガキャラクターが描かれているので写真撮影を行った。ブリュッセルでは、マンガセンターを訪れ、展示されているマンガ史に関する資料を閲覧し、図書館の蔵書を調査した。また市内各所にある書店、古書店を訪れ、マンガの資料収集に当たった。このほかパリなどを中心に書店、古書店を訪れ、マンガの資料を収集した。平成18年1月にはアングレームで行われた国際マンガフェスティバルを視察し、多くのマンガ出版社や作家、雑誌社などのブースを訪れマンガ資料を収集するとともに、関係者にインタビューを行って、マンガ界の現状についての意見交換を行った。平成18年の夏季休暇を利用し、おもにパリで資料の収集に当たった。マンガ専門の書店や古書店で、どのようなものに人気があるか、最近の流れとしてとりわけ人気の高い日本マンガの翻訳の状況などを、実際に書店の店頭で数多く触れることができた。また8月末には南フランスのソリエスヴィルで毎年行われているマンガフェスティバルに参加することができた。小規模ながらも、バカンスシーズンに行われる催しで、地元の人々を中心に熱心なマンガ好きの人たちが集まるイベントを肌で体験することができた。平成19年1月末には、アングレームのマンガフェスティバルに参加した。今年の傾向としては、日本マンガを始めますます輸入が増加する海外のマンガに関心が高まっており、今年のマンガ大賞にはアルゼンチンのマンガ家、そして単行本に与えられる賞には、日本の水木しげるが選ばれた。こうしたことから、これまでの伝統あるフランスのバンデシネに対する危機感も叫ばれるようになり、そうしたテーマのシンポジウムに参加して、現場の出版社や批評家などの生の声に接することができた。さらにアングレームの国立マンガ研究所の学芸員に会って話をすることにより、これから相互に交流を深めながら研究を進める足場を作ることができ、たいへん有意義であった。日本マンガ批評の現状については、本研究組織のメンバーが研究を行い、フランスのマンガについての研究と比較をするため、研究会を数度開催した。この結果、それぞれの発展プロセスの違いから、日本のマンガとフランスのマンガには、いろいろな興味深い差異があることが明らかにできた。なお17年度研究分担者として参加した前田は、平成18年4月から2年を要する病気療養のため休職したので、研究の継続を断念し成果報告も不可能となった。
著者
槇島 誠
出版者
公益社団法人 日本ビタミン学会
雑誌
ビタミン (ISSN:0006386X)
巻号頁・発行日
vol.85, no.2, pp.47-56, 2011-02-25 (Released:2017-10-10)
参考文献数
51

Nuclear receptors belonging to the NR1H and NR1I subfamilies, including vitamin D receptor (VDR, NR1I1), control cholesterol and bile acid metabolism. Bile acids are detergents essential for the digestion and intestinal absorption of hydrophobic nutrients, such as triacylglycerol, cholesterol and lipid-soluble vitamins, including vitamin D.Primary bile acids are generated from cholesterol and are secreted in bile as glycine and taurine conjugates. The intestinal microflora convert the primary bile acids to the secondary bile acids, including lithocholic acid (LCA). VDR, a receptor for 1,25-dihydroxyvitamin D_3(1,25(OH)_2D_3), acts as a bile acid receptor with specificity for the secondary bile acid LCA and its derivatives. VDR activation by 1,25(OH)_2D_3 or LCA induces the xenobiotic metabolism of bile acids. Synthetic LCA derivatives induce tissue VDR activation without inducing hypercalcemia in mice. VDR acts as a bile acid sensor as well as an endocrine receptor for vitamin D signaling.
出版者
武侠社
巻号頁・発行日
vol.第4篇, 1930
著者
中川 圭輔
出版者
アジア経営学会
雑誌
アジア経営研究 (ISSN:24242284)
巻号頁・発行日
vol.24, pp.199-212, 2018 (Released:2019-04-01)
参考文献数
42

In Korea, it sometimes happens that the individual who should take responsibility in the face of an accident is too easily able to neglect his duty, as exemplified by cases such as scandals arising from cosy relations between the government of the day and chaebols, or the captain of a ship or conductor being able to retreat from the location of an accident. Why do they act with such selfishness? This study focuses on a selection of Korean occupational ethics in the context of the identification system and Confucianism of the Li dynasty. The points clarified in this paper are as follows. Merchants and craftworkers established their own occupational ethics despite the Yangban’s disdain for them from the point of view of the identification system and Confucianism. The problem is that occupational ethics could not be established among the Yangban. In addition, there is the effect of the absence of Yangbando (similar to Bushido) leading to a lack of awareness of job responsibility. It is essential for the top of the organisation to (1) respect the work of merchants and craftworkers, (2) reeducate the‘nobles oblige’ and (3) revive an ethical spirit like the Seonbi spirit that once existed in Korea.