著者
平田 典子
出版者
日本大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2010

岩澤p進対数関数は通常の局所的なp進対数関数と異なり、解析的に良い性質を持つ.すなわちp進体の代数閉包の完備化である全平面において定義されている,この事実に着目して、岩澤p進対数関数の楕円関数上のアナロジーを構築し、それを用いてp進楕円対数の一次形式の下からのディオファントス近似評価を与えるということが今回の課題の目標であった.p進楕円関数もp進楕円対数関数も局所的な関数であるが、実際には楕円でない場合のp進対数関数の場合と異なり、p進楕円対数関数のもつ代数的な性質が良くなかったため、岩澤p進対数関数の持つ非常に良い性質の楕円版は得られなかったが、最終的な課題である2個のp進楕円対数の一次形式のディオファントス近似の下からの評価については、一次形式の係数である代数的数の高さに関する最良の評価を得ることが出来た,これが高田里奈氏との共著としてKyushu Journal of Mathematicsに出版されたLinear forms in two elliptic logarithms in the p-adic caseの主結果である.これにより、先行結果であったJournal of Number Theory 57巻(1996年)133-169に出版されたG.RemondとF.Urfelsの評価を改良して最良評価に達することが出来たことになる.しかしながら評価の定数部分が大きくなってしまったので、定数の改良も行うことが今後の課題である,なお、代数体上で定義された楕円曲線のS整数点はC.L.Siegelの定理より有限個であることが分かっており、その全ての座標を計算することはS.Langらの論法を用いれば可能であるが、上記の仕事はそのための具体的な評価不等式を与えたことに相当する.
著者
北村 章二 生田 和正 鹿間 俊夫
出版者
水産総合研究センター
雑誌
水産総合研究センター研究報告 (ISSN:13469894)
巻号頁・発行日
no.15, pp.1-10, 2005-12
被引用文献数
1

2002年度から全域キャッチアンドリリース(C and R)制となった湯川において、C and Rによる魚類資源維持効果の判定を目的として釣り人へのアンケート調査及び釣魚期間前後における資源調査を2002年と2003年に行った。C and R制導入前の2001年と比較すると、釣魚者は27.4%(2002年)及び34.2%(2003年)増加し、フライ釣り人の割合はそれぞれ83.8%及び88.1%に増加した。時間当たり釣獲率も2003年には1.21と有意に上昇した。また、両年とも釣魚期間前よりも釣魚期間後にカワマス資源量が増加していた。これらから、元々C and Rを基本とするフライ釣りの割合の高かった湯川におけるC and R制の導入は、釣魚者には好意的に受け入れられ、カワマス資源の維持に効果的であったことが示された。
著者
土岐 範彦 大杉 奉功 中沢 重一 鎌田 健太郎 熊澤 一正 浅見 和弘 中井 克樹
出版者
Ecology and Civil Engineering Society
雑誌
応用生態工学 (ISSN:13443755)
巻号頁・発行日
vol.16, no.1, pp.37-50, 2013
被引用文献数
1

福島県阿武隈川水系三春ダムの蛇石川前貯水池は,水質保全を目的として設置した前貯水池の一つであり,2006 年にはオオクチバスが優占していた.2006 年 10 月に水質保全の試験のため,前貯水池内の水を抜き,湖底を 2 ヶ月間干し上げた.その際,魚類の全量捕獲を行い,捕獲したオオクチバスは駆除し,在来魚等は再放流した.魚類の捕獲は前貯水池内で 2 箇所,前貯水池堤体下流で 1 箇所の計 3 箇所で行ったが,捕獲状況からオオクチバスは貯水池内に広く生息している傾向が示唆された.一方,ギンブナの小型個体は貯水池堤体近くの深いところに集まっている傾向がみられた.また,ギンブナとコイの大型個体はダム流入部付近の水深 2 m 以浅に生息している傾向がみられた.水抜きの 2 年後にはオオクチバスの個体数割合は 2006 年と同等になった.これは,流路沿い等に取り切れなかった個体が存在した可能性等が考えられる.他の事例同様,複数回の水抜きを行わないと完全駆除は困難と考えられた.
著者
奈尾 信英
出版者
日本図学会
雑誌
図学研究 (ISSN:03875512)
巻号頁・発行日
vol.38, no.2, pp.3-8, 2004-06-01
被引用文献数
1

本研究は, イタリアの盛期ルネサンスを代表する建築家の一人バルダッサーレ・ペルッツィが1533年に描いた「サン・ピエトロ大聖堂の計画のための鳥瞰図」を分析対象とし, ルネサンス期のイタリアにおける透視図法の展開過程を考察したものである.考察手順は以下の通りである.1) この図における消点を推定し, それにもとついてこの図を描く際に用いられたであろう作図線を推定復元する.2) イタリアの建築家ジャコモ・バロッツイ・ダ・ヴィニョーラ (1507年-1573年) の著作『実践的透視図法に関する2つの解法』 (1583年) のなかで, ペルッツイの透視図法について記述された文章を鑑み, ペルッツイの作図法を想定する.考察の結果, ペルッツイの用いた作図法は対角線を用いて, さきに描く図そのものの上下寸法を設定することによって, 必然的に図の横寸法が確定される方法であったと考えられる.
著者
木下 聡
出版者
吉川弘文館
雑誌
日本歴史 (ISSN:03869164)
巻号頁・発行日
no.685, pp.18-31, 2005-06
著者
植田 康孝
出版者
江戸川大学
雑誌
江戸川大学紀要 = Bulletin of Edogawa University
巻号頁・発行日
no.26, pp.141-158, 2016-03

新しいメディアが新しい体験をもたらし,時として認識する方法を再編し人々の生活あるいは人生のあり方を変えることは,メディア史研究の源流の一つであるイニス,ハヴロック,マクルーハンらの第一世代,オングやメイロウイッツら第二世代のトロント学派によって提起されてきた。たとえば,最近のInstagram の急速な普及は,特にファッション分野において男性中心だった写真文化の「女子化」というメディア文化の変容をもたらしている。スマートフォンの普及に伴い,Instagram の月間アクティブユーザー数(MAU)は4 億人に増えTwitter の月間を超えLINEに次ぐ2 番目のアプリの位置を占めたことが報告されるが,本学学生の間においても,約6 割の学生が利用経験を有し,約9 割の学生が撮影した写真をネットに投稿した経験があることがアンケート調査で分かった。インターネットの面白いところは,作り込まれたテレビ番組を見るよりも,Instagram で流れて来る友人の近況の方が「エンタテインメント」になることである。更にInstagram が急速に広がった理由として,若者が好む「自己肯定感」がある。Instagram に投稿した意外な背景やイケてる自分が仲間に注目され認められれば,自信につながる。同じインターネットサービスであっても,ブログとは異なり,ネットワーク財としての性格が強いInstagram の場合,ネットワークを通じて拡散する傾向が強く,ユーザーの自信が増幅して投稿する誘因となりうる。特にファッション分野においては,モデルや女優が自撮りした数多くの写真をInstagram に投稿するようになっている。Instagram は,その日のファッションや訪れたカフェの写真を投稿したり,好きなモデルやタレントをフォローしたり,「おしゃれ」なイメージから大学生を中心に人気が拡大している。Instagram には,ファッションアイテムやコーディネート,ヘアアレンジ,メイクなど,多様なファッション関連写真が投稿される。Instagram はファッションに関する若者の興味関心を細分化することにより,多様化多彩化していくメディアである。一方でInstagram はそのメディア(中間)性を発揮して若者を結び付け,「想像の共同体」を育んだ。その疑似空間は時にお互いが切磋琢磨する学びの場となっている。ファッションモデルやファッションブロガーの大半がInstagram にアカウントを持っており,ファッションに関心がある若者はこれらモデルや有名人をフォローして,コーディネートを考える時にInstagram を参考にするようになっている。そのため,「ファッシニスタ」と呼ばれる美意識の高い先進的な若者がファッションに関する知識を得るメディアは,かつての店頭マネキン(1970 年代),テレビ・新聞(1980 年代),ファッション雑誌(1990 年代),読者モデルによるブログ(2000 年代)からInstagram(2010 年代)へと移行した。エンタテインメントビジネスでは,「演者」と「観客」の偏りで大きく2 つに人気構造が分かれる。たとえば,ジャニーズやAKB48 などアイドルは「異性間消費」である一方,ファッションにおけるInstagram は同性から支持を受ける「同性間消費」である。「異性間消費」は「疑似恋愛」の関係が観客から演者に取り結ばれる一方,「同性間消費」では観客から演者に「私もかくありたい」という憧れの構造が取り結ばれる。Instagram はその先進性がゆえにオールドメディア過ぎる人々には包摂と排除のメカニズムを有するが,ミレニアルズ(21 世紀世代人)にはメディア環境変化の必然である。
著者
岡村 逸郎
出版者
日本犯罪社会学会
雑誌
犯罪社会学研究 (ISSN:0386460X)
巻号頁・発行日
no.40, pp.87-99, 2015-10-30

本稿の目的は,「対等」な支援者-被害者関係にもとづく犯罪被害者支援の言説が,犯罪被害者救済に従事してきた被害者学者によってなぜ形成されたのか明らかにすることである.分析の対象は,被害者学,刑事法学,ないし刑事政策を専門とする学者の論文・著書である.精神科医は,「専門家」が救済対象を選別することによって,救済者-被害者関係を「対等」でないものとして捉えることが,さらなる2次被害ひいては3次被害を被害者に与える加害行為だと批判した.2次被害の概念は,被害者学者がこれまでおこなってきた救済の活動を加害行為に反転させてしまうという意味で,かれらにとってネガティブな側面をもった.被害者学者は,このネガティブな側面が精神科医の対抗クレイムによって顕在化したために,「対等」な支援者-被害者関係にもとづく犯罪被害者支援の言説を形成した.
著者
Baofeng SU Noboru NOGUCHI
出版者
日本生物環境工学会
雑誌
Environmental Control in Biology (ISSN:1880554X)
巻号頁・発行日
vol.50, no.3, pp.277-287, 2012 (Released:2012-10-30)
参考文献数
19
被引用文献数
1 3

The availability of agricultural land use information allows decision makers and managers to establish short-term and to long-term plans for land conservation and sustainable use. The objective of this study was to develop a method for extraction of agricultural land use information based on remote sensing imagery. By combining particle swarm optimization (PSO), k-means clustering algorithm and minimum distance classifier, a PSO-k-means-based minimum distance classifier for agricultural land use classification was developed. Crop planting information was collected and divided into five classes: water bodies, paddy fields, bean fields, wheat fields and others (windbreak, roads, rare areas, and buildings, etc.). K-means, a widely used algorithm in pattern recognition for unsupervised classification, became a part of supervised classification by using PSO to find the optimal initial position vectors in a training sample pretreatment process. The optimal cluster of each subclass was finally used for minimum distance classification. The results obtained from Miyajimanuma wetland land use information extraction showed that merely using a small feature space composed of the first three principal components of a SPOT 5 image enabled classification accuracy of 93%.
著者
顧 祝軒
出版者
[出版者不明]
巻号頁・発行日
2002

制度:新 ; 文部省報告番号:甲1727号 ; 学位の種類:博士(法学) ; 授与年月日:2003-02-12 ; 早大学位記番号:新3485
著者
杉本 まゆ子
出版者
社団法人情報科学技術協会
雑誌
情報の科学と技術 (ISSN:09133801)
巻号頁・発行日
vol.65, no.4, pp.164-168, 2015-04-01

宮内庁書陵部図書寮文庫の保存と公開に関しての紹介と今後の課題について述べた。図書寮文庫は,大宝律令で定められた図書寮を淵源とし,直接的には1884年に設けられた図書寮を受ける部署である。まず,天皇・皇族の御蔵書を核に,公家や武家の所持していた本,学者の蔵書などが加わって形成された広範な蔵書群の特徴を述べた。また保存の核となる修補係・出納係について,原態を留めることに注力し,状況を悪くしないための綿密な防黴防虫作業を紹介した。最後に2013年に開始した書陵部所蔵資料目録・画像公開システムの紹介とともに,今後の公開の鍵となるデジタル画像の公開方法について,現状思うことを述べた。