著者
掛下 哲郎 高橋 尚子
雑誌
情報処理
巻号頁・発行日
vol.58, no.5, pp.420-425, 2017-04-15

本稿では文部科学省の支援を受けて情報処理学会が実施した「大学における情報学分野の教育に関する実態調査」の概要を速報する.調査用Webサイトには約650の大学(日本の大学の85%)から約3,000件の回答が寄せられた.本調査は(A)情報専門学科に対する調査,(B)非情報系学科における情報専門教育に関する調査,(C)一般情報教育に関する調査,(D)高校教科「情報」の教職課程に対する調査,(E)教育用電子計算機システムに関する調査から構成されている.本調査では,教育プログラムの概要,情報学の参照基準等の項目に対する教育内容および達成度レベル,学生・教職員の状況,教育環境,将来計画などを含む包括的な調査を行った.
著者
津島 啓晃 中村 栄太 糸山 克寿 吉井 和佳
雑誌
研究報告音楽情報科学(MUS) (ISSN:21888752)
巻号頁・発行日
vol.2017-MUS-116, no.14, pp.1-7, 2017-08-17

本稿では,音楽コーパスから和音系列とメロディに関する生成規則を統計的に学習し,それに基づいてメロディへの和声付けを行う手法を示す.従来の和声付け手法には,一拍ごとのコードの遷移を表現した隠れマルコフモデル(HMM)に基づく手法がある.しかしこの手法では,音楽理論において重要とされているコードのリズム,コードの機能(tonic, dominant, subdominant),コードの階層構造を明示的に表現できない.この問題を解決するため,確率的文脈自由文法による和音系列生成モデル,拍節マルコフモデルによるコードのリズム生成モデル,コードの条件付きマルコフモデルによる音高系列生成モデルからなる階層的生成モデルを提案する.さらに,提案モデルを用いてメロディに対する和音系列の推定を行うため,潜在変数であるコード記号とそのオンセット位置のそれぞれをsplit-mergeサンプリングという新しいサンプリング手法を含むメトロポリス・ヘイスティングス法に基づいて更新する手法を提案する.評価実験よりHMMに基づく手法に対して提案手法の和声付けタスクにおける精度が向上したことを示せた.
著者
田口 東 中村 学
雑誌
情報処理学会研究報告ハイパフォーマンスコンピューティング(HPC)
巻号頁・発行日
vol.1991, no.26(1990-HPC-036), pp.1-9, 1991-03-15

音像定位の問題を考える上で、頭部や耳介の複雑な形状を考慮に入れた音響伝達関数を求めることは重要で基礎的な問題である。この問題を考えるために、まず、450面の四辺形から構成される人間の片耳の数値モデルを作り、それを頭と同じ位の大きさの回転楕円体の対称な位置に取付けて頭部モデルを作成した。そして、このモデルに平面進行波が定まった方向から入射するときの音場を、境界要素法を用いて計算した。計算結果から、入射波の方向、耳の左右、耳介の境界条件、を変化させると、耳介付近の点における周波数特性が大きく変化することが分かった。
著者
田中 昌二
雑誌
研究報告インターネットと運用技術(IOT) (ISSN:21888787)
巻号頁・発行日
vol.2017-IOT-38, no.10, pp.1-8, 2017-06-17

ユーザ ID やパスワードなどのアカウント情報が外部に漏洩した場合,該当利用者の保有情報が漏洩するにとどまらず,漏洩したアカウントによってサービスが外部への攻撃に利用されるおそれがある.そうしたアカウントハイジャック攻撃の代表的な例に,漏洩アカウントのユーザを送信者としたフィッシングメールなど不正メールの送信がある.そこで,本研究では,SMTP 認証ログのリアルタイム解析し,アカウント単位でクライアント IP アドレスの割り当て国の統計を取ることによって,内部アカウントからの不正メール送信を検知する手法を提案する.さらに,本稿では,検知 / 通報システムの構築,およびその効果について述べる.
著者
西村 明
出版者
国立歴史民俗博物館
雑誌
国立歴史民俗博物館研究報告 = Bulletin of the National Museum of Japanese History (ISSN:02867400)
巻号頁・発行日
vol.147, pp.77-91, 2008-12-25

ガダルカナル島の攻防戦を転機として、戦死者の遺骨の送還のあり方が徹底的に変質し、多くの遺骨が戦地に残されたままとなって、遺族の元に戻らなかった。それを踏まえて、戦後に遺骨収集や戦地訪問の動きが起ってくるが、戦友を亡くした元兵士や戦死者の妻にとって、それらはどのような意味を持つのか?本稿では、政府の遺骨収集事業について概観した上で、『国立歴史民俗博物館資料調査報告十四 戦争体験の記録と語りに関する資料調査一〜四』(二〇〇四年・二〇〇五年)にもとづいて、戦死者の遺族と戦友たちの遺骨収集と戦地訪問への関わりの具体例を取り上げながら、元兵士や遺族が遺骨収集や戦地訪問に求めたもの、あるいは想いはどのようなものであるのかについて論じることにしたい。そこで、さらに、遺骨収集に積極的に取り組んだひとりの元兵士による「記録」を取り上げ、そこにある現在完了進行形的時間意識と「行為をうながす記憶」という死者との関係性を軸に、より詳細な議論を進めていくことにする。最後に、遺骨収集・戦地訪問の背景にある遺骨の偏在・不在状況が、霊の遍在という状況をもたらしていることを指摘する。
著者
宮田 睦美 八板 昭仁 青柳 領 北田 豊治
雑誌
九州共立大学研究紀要 = Study journal of Kyushu Kyoritsu University (ISSN:21860483)
巻号頁・発行日
vol.6, no.2, pp.1-9, 2016-03-25

The purpose of this present study was to investigate the relationships between rationales for theresult of attacks and success of attacks during attacks involve a receive, a toss and a attacks.We covered six games of top four teams in Division I of The Kyushu Intercollegiate Women’sVolleyball League Matches. As an analysis method, this study used the results of attacks as objectivevariables and ten items, 1) receive position, 2) receive quality, 3) toss position, 4) toss quality,5) toss type, 6) combination, 7) attack position, 8) attack type, 9) judgment of opponent’s block,and 10) attack strength, as explanatory variables to calculate multiple correlation coefficients, partialcorrelation coefficients, and a category weight for each item using Mathematical Quantification TheoryType I.Main factors for the success of attacks were 9) the judgment of opponent’s blocks and 4) tossquality. As for 9) the judgment of opponent’s block, block pattern-6 (one player cannot performblock) and block pattern-4(two players jump for a block an incomplete condition)had large positiveinfluences on success of attacks. The toss quality had a significant impact on success in the order oftoss-A (assisting a strong attack to all courses on the court or possibly assisting for feinting), toss-B(assisting a strong attack to the limited courses on the court or possible assisting for feinting), andtoss-C (an assisted toss that is only able to return the ball to the other court), which showed that the accuracy of the toss had a significant impact on the result of the attack.
著者
長谷川 秀彦
雑誌
情報処理学会論文誌 (ISSN:18827764)
巻号頁・発行日
vol.30, no.4, pp.402-410, 1989-04-15

本論文では帯行列を係数とする連立一次方程式の直接解法を検討した.方程式を少数回解く場合には帯ガウス 同一の係数行列に対して右辺の計算を繰り返す場合にはMartin とWilkinson の帯ガウス 係数行列が対称正定値ならば対称帯ガウスが良く 大規模問題用のプログラムヲ作成するうえではメモリ参照に注意を払う必要があった.ベクトル計算機デ高速化をするためには並列に実行される演算パイプに対して必要なロード・ストアパイプが少ない2段2行同時のアンローリングが良いベクトル計算機やIAPでは高速化のために制限三項演算の適用が必須だが コンパイラにはそれが識別できないこともあるので注意が必要である.またメモリとレジスタ間の無駄なデータのやりとりを減らすことも重要な点である.高速化手法の適用をコンパイラだけに期待するのは難しく アルゴリズムから検討しなおす必要があった.陽アンローリングはプログラムを複雑にするが 結果として得られたプログラムはベクトル計算機と汎用計算機の両方で高速に実行が可能となる.より多重のアンローリングは保守の問題を考えると問題である.本論文に述べられたこれらの高速化手法は精度を悪化させず しかも汎用的である.
著者
西田 知博 原田 章 中村 亮太 宮本 友介 松浦 敏雄
雑誌
情報処理学会論文誌 (ISSN:18827764)
巻号頁・発行日
vol.48, no.8, pp.2736-2747, 2007-08-15

制御構造などのプログラミングの基礎を短時間で習得することを目指したプログラミング学習環境PEN を開発した.本論文では,PEN の実装とその評価について報告する.PEN では,大学入試センターなどの入試で用いられている言語を用いているので,付加的な説明を行わなくても容易にプログラムが理解できる.また,プログラムの入力補助機能を備えることで,プログラム作成時の誤りの混入を減らすことに寄与している.また,ステップ実行機能,スロー実行機能,変数表示機能などにより,プログラムの動作を観察しやすくしている.授業実践のアンケート結果から,PEN は初学者におおむね好評であることを確認した.また,JavaScript を用いた授業との比較では,自己評価と試験による分析の結果,双方ともPEN を用いたクラスの方が理解度が高くなり,プログラミングの入門教育環境としてのPEN の有用性が示唆される結果が得られた.
著者
石川 冬樹 今井 健男 丸山 宏 吉岡 信和
雑誌
ウィンターワークショップ2018・イン・宮島 論文集
巻号頁・発行日
vol.2018, pp.1-3, 2018-01-11

近年の深層学習を軸とした機械学習の発展に伴い,機械学習を利用するソフトウェアは急速に社会に浸透しつつある.しかしその一方で,従来型のソフトウェア工学は機械学習の前に全くと言っていいほど通用していない.機械学習ソフトウェアの開発 ・ テスト ・ 運用の方法論は未だに確立できておらず,開発現場では試行錯誤に依っている状況である.この現状を踏まえ,機械学習ソフトウェアに対しては 「機械学習工学」 ともいうべき,新たなパラダイムの確立 ・ 体系化が必要である.以上の認識に立って,本セッションでは,機械学習エンジニア,ソフトウェアエンジニア双方の立場から,機械学習システムに対する問題提起や研究報告,参加者からの取り組み,あるいはこれから取り組んでみたいという思いについて議論したい.
著者
蘇 小楠
出版者
北九州市立大学国際教育交流センター
雑誌
北九州市立大学国際論集 = CIEE journal, the University of Kitakyushu (ISSN:13481851)
巻号頁・発行日
no.13, pp.113-121, 2015-03

近年、日中近代語交渉に関する研究が盛んにされているものの、学術用語の生成についてまだ言及する余地がある。本稿では日中両国における近代訳語の発生及び相互の影響関係という日中語彙交渉の過程の時代区分をもとに、日中語彙交流史の見地から先行研究の問題点及び本研究で扱う範囲、位置づけを明らかにした。
著者
吉田 葵
雑誌
情報処理
巻号頁・発行日
vol.59, no.2, pp.182-185, 2018-01-15

プログラミング教育への関心の高まりを受け,情報処理学会では,ジュニア会員を対象とした「Exciting Coding! Junior」を昨年度より開催している.本稿では,2017年9月16日に開催された「Exciting Coding! Junior 2017」のワークショップ設計方針及び内容と,併せて実施したファシリテーション講習について報告する.
著者
渡辺 澄夫 Sumio Watanabe 東京工業大学精密工学研究所 Precision and Intelligence Laboratory Tokyo Institute of Technology
雑誌
人工知能学会誌 = Journal of Japanese Society for Artificial Intelligence (ISSN:09128085)
巻号頁・発行日
vol.16, no.2, pp.308-315, 2001-03-01

The parameter space of a hierarchical learning machine is not a Riemannian manifold since the rank of the Fisher information metric depends on the parameter.In the previous paper, we proved that the stochastic complexity is asymptotically equal to λ log n-(m-1)log log n, where λ is a rational number, m is a natural number, and n is the number of empirical samples.Also we proved that both λ and m are calculated by resolution of singularties.However, both λ and m depend on the parameter representation and the size of the true distribution.In this paper, we study Jeffreys' prior distribution which is coordinate free, and prove that 2λ is equal to the dimension of the parameter set and m=1 independently of the parameter representation and singularities.This fact indicated that Jeffreys' prior is useful in model selection and knowledge discovery, in spite that it makes the prediction error to be larger than positive distributions.
著者
小泉 武夫 Takeo Koizumi 東京農業大学 Professor Emeritus Tokyo University of Agriculture
巻号頁・発行日
vol.54, no.4, pp.219-229,

今日,わが国に於いて焼酎は一大発展を遂げ,今やその消費量や生産量は日本酒を大きく引き離している。ところがこの焼酎は,一体どこから渡来してきたのかは明らかになっていない。大陸説,中国説,南方南洋説などさまざま論じられているが,今から400年以上も前のことであるので正しい検証はされていない。つまり日本の焼酎の歴史の原点部は今もって明らかにされていないのである。そこで筆者は中国,そして東南アジアの諸国を20年近く調査してきて,そのルーツが中国雲南省に在り,それがメコン川を通して南方に渡り,シャム(今のタイ国)から琉球を経て薩摩に来たことを,多くの文献や,現地での証拠写真などから検証し,証明した。そしてその焼酎が日本に入ってきてから,今度はこの国独自の知恵や発想によってさらに技術的発展を遂げ今日に至ったことを論じる。