著者
大澤 覚 オオサワ サトル Satoru Osawa
雑誌
嘉悦大学研究論集
巻号頁・発行日
vol.48, no.2, pp.21-42, 2005-10-31

戦前期の皇室財産(御料地)は、憲法制定・議会開設を前にした明治22年前後に編入された。この概要は『帝室林野局五十年史』などでも知れるが、編入にあたっての巡回(現地調査)、復命の内容など、その具体的実態は未解明のままであった。そこで、本稿では、宮内庁が利用制限を解いた『地籍録』に基づいて、群馬県の場合の解明に取り組むこととした。群馬県へは大木真備が派遣された。巡回に当たっては、県側に資料の提出を求め、27の対象箇所を決めて出発した。しかし、「巡回日誌」などは不明なので、これを埋める資料として、肥田長官宛の書簡2通を活用して行程やそこでの問題点を把握した。そして、大木の「復命書」によって、これまで「将来有益なる土地と然らざる土地とを区分し」たと『明治天皇紀』に書かれていた内容の具体的把握をおこない、これに基づいて選定基準をまとめ、最後に、この根拠には楫取素彦の「意見書」があったことを述べてまとめとした。
著者
金澤 宏介 奥村 万規子
雑誌
研究報告グループウェアとネットワークサービス(GN) (ISSN:21888744)
巻号頁・発行日
vol.2017-GN-100, no.27, pp.1-7, 2017-01-13

本研究では点滅している LED 光点列をサッカードと呼ばれる高速な眼球運動により残像を知覚させ,情報の提示を行う.光点列は表示情報を縦に分割して順次点滅させているため,表示情報を知覚するためには眼球運動と点滅周期の関係が重要である.本論文では,光点列を二つ用意し,それらを横に設置し観測者に光点列を交互に見させることによりサッカードを無意識的に誘発させる.実験は,光点列の数と知覚の関係性,観測者と光点列の距離と知覚の関係性,光点列と被験者の位置関係による知覚の関係性,点滅周期と知覚の関係性の評価を行う.これらの実験より,光点列を二つにするとサッカードが誘発されやすく,光点列二つと観測者の位置関係では,眼球の 「移動角度」 を決める三点の位置関係が情報知覚に最も影響がある.また,点滅周期がサッカードの持続時間より長いと表示文字は横に伸びて知覚されることがわかった.
著者
長谷川 曾乃江
出版者
沖縄大学地域研究所
雑誌
地域研究 = Regional Studies (ISSN:18812082)
巻号頁・発行日
no.2, pp.237-243, 2006-03-31

2004年に実施した渡嘉敷島の2集落(渡嘉敷及び阿波連)での民俗調査結果を整理し、年中行事(集落全体で行うもの)の実際と聖地(ウタキ及び拝所)の現状を、『渡嘉敷村史』の記述と比較しながらまとめた。
著者
橋本 政宣
出版者
国立歴史民俗博物館
雑誌
国立歴史民俗博物館研究報告 = Bulletin of the National Museum of Japanese History (ISSN:02867400)
巻号頁・発行日
vol.148, pp.289-329, 2008-12-25

江戸幕府により寛文五年(一六六五)七月十一日付で出された「神社条目」により、卜部吉田家はこれをテコに諸国の神社・神職を支配下におくべく、神道裁許状の交付、官位の執奏等を通してその推進をはかった。そしてその根拠としたのが、第三条および第二条であった。しかし第二条の条文には吉田家が格別の位置にあることが記されてはいなかったことからくる限界もあった。そこで、吉田家では、諸社家の官位執奏権を公認されるよう寛文八年十月出願するにより、幕府は京都所司代をして朝廷の評議を要める。かくて時の関白鷹司房輔と吉田家に肩入れする武家伝奏飛鳥井雅章との問で激しい論争が展開されることになるが、朝廷内の意見は一致をみないまま、翌々年八月幕府の裁許に委ねられることになる。そしてそれより四年後の延宝二年(一六七四)に至り幕府の結論が出される。「寛文九年吉田執奏一件争論」といわれるものがこれであり、幕府は儒者林春齋(弘文院)にこの一件に関する勘文を上呈させ、『吉田勘文』として纏められている。本稿は、『吉田勘文』を具体的に検討し、執奏一件争論の実態を明らかにすることを通し、吉田家の諸社家官位執奏運動の方針、朝廷や幕府の対応の在り方を明らかにし、「神社条目」の理念について改めて考察するものである。この一件につき、京都所司代を以て幕府の裁許が示されたのであるが、これは吉田家の望みが全くは否定されたものではなく、幕府の方針の転換であったともいえる。一方、吉田家でも諸社家の官位執奏問題はその後も主張を継続していき、幕府もその対応を微妙に変えていく。最後に、幕末までの大きな流れに基軸をすえ見ておいた。
著者
渡邊 恵子
巻号頁・発行日
2015-08

はしがき・・1研究組織・・2本報告書の構成・・3目 次・・4概 要・・6第Ⅰ部施設類型別に見た公立小中一貫教育校における取組状況と成果―「小中一貫教育等についての実態調査」の二次分析―・・11第1章 実態調査とその二次分析の概要・・13第2章 施設一体型と施設隣接型の小中一貫教育校・・24第3章 中学校1校と小学校1校の組合せ(一対一)の施設分離型小中一貫教育校・・35第4章 中学校1校と複数小学校の組合せ(一対多)の施設分離型小中一貫教育校・・45第5章 二次分析で得られた示唆のまとめ・・55第Ⅱ部小中一貫教育の先導的事例・・61はじめに・・63第1章 北海道稚内市東地区・・68第2章 宮城県登米市立豊里小・中学校・・74第3章 秋田市立岩見三内小・中学校・・80第4章 埼玉県八潮市立大原だいばら中ブロック・・86第5章 東京都品川区立小中一貫校日野学園・・92第6章 東京都三鷹市小・中一貫教育校連雀学園・・98第7章 東京都武蔵村山市立小中一貫校村山学園・・105第8章 愛知県飛島村立小中一貫教育校飛島学園・・111第9章 京都市立京都御池中学校ブロック,東山開睛かいせい館・・117第10章 大阪府箕面市立とどろみの森学園・・128第11章 奈良市富雄とみお第三小中学校・・134第12章 鳥取市立湖南学園・・139第13章 広島県呉市立呉中央学園,和庄中学校区・・145第14章 広島県府中市立府中学園,府南学園・・155第15章 高知県土佐町立土佐町小・中学校・・163第16章 高知県梼原ゆすはら町立梼原学園・・169第17章 福岡県宗像市立玄海中学校区・・175第18章 佐賀市立小中一貫校北山ほくざん校,富士校・・180第19章 佐賀県多久市立小中一貫校東原庠舎とうげんしょうしゃ中央校,東部校,西渓校・・188第20章 長崎県小値賀おぢか地区・・195第Ⅲ部小中一貫教育の取組と課題に関する考察・・201第1章 導入の狙いと手順・・203第2章 教育課程の編成と運営・・208第3章 学校の組織と運営・・215第4章 教育委員会の支援・・227第5章 地域との連携協働・・233第6章 教職員の多忙化と負担感の軽減・・238第7章 施設整備・・250
著者
香月 真紀子
出版者
佐賀大学大学院学校教育学研究科
雑誌
佐賀大学大学院学校教育学研究科紀要 (ISSN:24325074)
巻号頁・発行日
vol.7, pp.389-403, 2023-03-10

本研究では,知的障害特別支援学校における教員が,知的障害のある児童生徒の算数・数学についての実態把握に関するさまざまな困難さについての現状を明らかにした。その結果,知的障害のある児童生徒の教育に携わった年数が短い教員は,実態把握を行う最初の段階で教材の選定が難しいこと,年数が長い教員は,指導する際に数と計算の領域に極端な偏りが見られることがそれぞれ明らかになった。
著者
谷津 陽一 片岡 淳 五十川 知子 河合 誠之 水野 恒史 釜江 常好 田島 宏康 高橋 忠幸 斉藤 芳隆 郡司 修一 Yatsu Yoichi Kataoka Jun Ikagawa Tomoko Kawai Nobuyuki Mizuno Tsunefumi Kamae Tsuneyoshi Tajima Hiroyasu Takahashi Tadayuki Saito Yoshitaka Gunji Shuichi
出版者
宇宙航空研究開発機構宇宙科学研究本部
雑誌
第4回宇宙科学シンポジウム = Proceedings of the 4th Space Science Symposium
巻号頁・発行日
pp.453-455, 2004-08

X線、ガンマ線の偏光はほとんど全ての高エネルギー天文現象と関連し、その物理を研究するための有力なプローブである。しかしながら、これまでの観測例は10keV以下では1970年代のかに星雲、10keV以上ではガンマ線バーストのみである。そこで、30〜200keVの領域での世界初の偏光観測を目標とし気球実験を行う予定であり、これに搭載するためのWell-type硬X線偏光PoGO(Polarized Gamma-ray Observer)の開発を行っている。
著者
五十嵐 悠紀 稲見 昌彦
出版者
情報処理学会
雑誌
情報処理
巻号頁・発行日
vol.64, no.6, pp.266-269, 2023-05-15

五十嵐編集長からの依頼を受けて,「稲見自在化身体プロジェクト」の概要を5本の論文にまとめました.私が前任の会誌編集長だったころには,特定プロジェクトを特集で取り上げることはありませんでしたが,自分自身で大規模プロジェクトを始めるにあたって,やはり参考になったのは先人が残してくれた記録です.我々の経験や成果を1カ所にまとめて報告することで,これからプロジェクトを計画・推進される方々のお役に立てれば幸いです.もちろん個々の研究成果自体も興味深く,人と機械の相互作用に関心のある会員にとって,刺激的な内容になったと自負しておりますのでお楽しみください.
著者
松尾 龍平 山本 雄平 姜 文渊 田中 ちひろ 中村 健二 田中 成典 鳴尾 丈司
出版者
情報処理学会
雑誌
情報処理学会論文誌 (ISSN:18827764)
巻号頁・発行日
vol.64, no.5, pp.980-991, 2023-05-15

我が国では,競技力向上を目的としたスポーツ情報科学に関する研究支援が求められている.中でも,フィールドスポーツでは,選手の位置情報を取得することで,選手のStats情報の獲得や戦術分析を補助する活動が実施されている.選手の位置情報の取得方法は,映像に対して深層学習を用いた物体検出手法を適用する方策が採用されている.しかし,物体検出手法では,対象物が未学習の場合や,学習時とかけ離れた特徴を有する場合,検出精度が低下する.これに対して,アノテーションシステムによる自動アノテーション機能を用いて学習データを作成することが考えられるが,精度良く検出することができず作業効率化が望めない課題が残存する.そこで,本研究では,フィールドスポーツにおいて,学習データを簡易に作成することができるアノテーションシステムの開発を目指す.システムの開発にあたり,データ分析にかかわる専門家へのヒアリングを通じ,選手を精度良くまた効率良く検出することが重要であると明らかになった.そして,そのニーズに対して,フィールドスポーツに特化した検出モデルを搭載することで,既存システムと比べ,作業時間を2分程度短縮することに成功した.
著者
隅谷 孝洋
出版者
情報処理学会
雑誌
情報処理
巻号頁・発行日
vol.64, no.6, pp.284-288, 2023-05-15

教育機関における授業,特にオンライン授業で,他人の著作物を使う場合の注意点について,2020年4月より施行された改正著作権法第35条を踏まえて解説する.他者著作物を利用する際には本来は著作権者の許諾が必要だが,授業においては無許諾で利用できる場合が多いので,許諾の要不要を判断するための判断フローを提示,それに沿って解説を行う.