著者
岸岡 正伸 柿野 純 井上 隆彦 多賀 茂 和西 昭仁 白木 信彦 山崎 康裕 小野里 坦 國森 拓也 宮後 富博 齋藤 秀郎 鹿野 陽介
出版者
山口県水産研究センター
巻号頁・発行日
no.13, pp.25-45, 2016 (Released:2016-10-20)

2011~2013年度にかけて,山口市秋穂湾の遊休化したクルマエビ養殖池(50×100m,面積0.5ha)を用い,池に施肥することで餌料生物を増殖させながらアサリを大量育成する手法を開発するため,年間300~600万個のアサリ人工種苗(殻長2mm)を池内に収容し,実証レベルの試験を行った。研究初年度は,施肥を行った直後からアオサの急激な増殖が見られ,2ヶ月の間に池の大半を覆った。このため移植した種苗の成長,生残とも極めて低かった。また,攪水機によって流速4cm/sec. 以上になる場所が成育場所として適していると考えられた。2年目以降,種苗池入れ前に池内の大型藻類や食害生物を可能な限り除去するとともに,日常管理として週3~4回,小型の底びき網で池全体を引き回し,夾雑物を排除しながら海底を攪拌した。3~7月にかけて,毎週200kg(海水トンあたり27g)の半有機肥料を池に散布することで,栄養塩の供給と微細藻類の増殖を維持することができた。この結果,2年目以降は池内での大型藻類の繁茂が抑制され,3月に平均殻長2mmで移植した種苗は60%以上の高い生残率で急速に成長し,7月に殻長20mmに達した。施肥した試験区と施肥しない試験区を設けてアサリの成長及び生残状況を比較した。その結果,施肥による成長促進効果は,無施肥による場合と比較すると6月以降に顕著に現れた。試験期間中に,魚類の卵稚仔や甲殻類の幼生などが多数侵入・成育したが,アサリを回収するまでの間,これらの魚介類がアサリを食害した痕跡はほとんど見られなかった。最終年度は,11ヶ月の育成期間中に,1m2あたり平均3kg(500万個,15.7トン)のアサリが成育し,事業として実施するのに十分な高い生産能力を有することを確認した。生産した20~25mm貝を県内のアサリ漁場に保護放流したところ,調査を実施した3箇所の干潟で成長や生残に違いが見られたものの,母集団としての機能は果たしていると考えられた。また,試験池で生産したアサリは,肥満度の上昇する4月~6月であれば,自然浜のアサリとほぼ同じ一般成分,コハク酸,遊離アミノ酸を含有していた。
著者
入来 常徳 渡辺 和朗 矢澤 一良
出版者
家畜栄養生理研究会
巻号頁・発行日
vol.40, no.2, pp.111-128, 1996 (Released:2011-03-05)
著者
楠谷 彰人 松江 勇次 崔 晶
出版者
養賢堂
巻号頁・発行日
vol.93, no.10, pp.853-861, 2018 (Released:2018-12-10)
著者
福川 英司 高濱 雅幹 地子 立 江原 清 八木 亮治
出版者
北海道立総合研究機構農業研究本部
巻号頁・発行日
no.99, pp.107-113, 2015 (Released:2015-07-06)

近年育成された黒皮系カボチャの新品種について,貯蔵性を含めた露地早熟移植栽培における特性を調査した。果皮色は濃緑色の品種が多かった。収量性では一部に対照の「えびす」と比べてやや優れる品種もあったが,多くの品種は同等~やや劣った。貯蔵性では「黒皮味マロン」が優れ,「くりほまれ」および「MSJ-1043」がやや優れた。貯蔵後の食味は「No. 571」,「くりゆたか7」,「くりほまれ」および「SB3018」で有意に優れた。収量性,貯蔵性,貯蔵後の食味等で特徴がある品種が見出されたことから,出荷時期別に品種を選択することで特色ある産地づくりに寄与できると考えられる。
著者
國頭 恭 諸 人誌 藤田 一輝 美世 一守 長岡 一成 大塚 重人
出版者
土壌微生物研究会
巻号頁・発行日
vol.73, no.2, pp.41-54, 2019 (Released:2020-04-09)

2008年のリン価格の高騰以降,農地に蓄積した「legacy P」の有効化を試みる研究が多くされている。このlegacy Pの有効化は,リン資源枯渇の問題だけでなく,湖沼の富栄養化や植物病害を抑制する上でも重要である。土壌のリンの可給化に寄与する因子としては,アーバスキュラー菌根菌が最もよく研究されているが,ここでは効果が明瞭でない,あるいはあまり研究されていない,リン溶解菌,ホスファターゼ,微生物バイオマスリン,土壌の還元化に関する基礎的情報を提供した。いずれも,いまだ基礎的な知見すら不足しており,すぐに実用的に利用することは困難である。しかし,実際に土壌中で重要な役割を果たしており,農地に蓄積したリンの可給性を規定する仕組みを理解するうえでも,これらに関する理解の深化は不可欠である。またlegacy Pを有効利用するためにリン減肥をする際は,これまでよりもさらに精確なリン可給性の評価が必要となる。その場合,化学的評価法だけではなく,微生物バイオマスリンや土壌酵素の資源配分モデルといった生物指標の利用も有用である可能性があり,今後検証する必要がある。
著者
福島 信一
出版者
東北区水産研究所
巻号頁・発行日
no.41, pp.1-70, 1979 (Released:2011-03-05)
著者
大澤 正嗣 勝屋 敬三 竹井 博行
出版者
日本林學會
巻号頁・発行日
vol.69, no.8, pp.309-314, 1987 (Released:2011-03-05)
著者
岡田 充弘 小山 泰弘 古川 仁
出版者
長野県林業総合センター
巻号頁・発行日
no.16, pp.33-39, 2002 (Released:2015-11-24)

カラマツ根株心腐病被害は,土壌中の水分が停滞しやすい山腹平衡緩斜面あるいは石礫が多く風当たりが強い尾根下斜面の林分に多かった。被害は,幹の傷から腐朽するタイプと,根系から腐朽が始まるタイプに分けられた。30~40年生カラマツ林における本病被害木の平均的腐朽高は地際断面における腐朽直径の約10倍に達し,腐朽進展速度は3~5cm/年と推定された。胞子を伝染源として伝染・拡大する既知病原菌以外に,被害木から菌糸束を伸長させて伝染・拡大する未同定菌が確認された。
著者
加藤 直人
出版者
養賢堂
巻号頁・発行日
vol.66, no.7, pp.697-705, 2012 (Released:2013-10-08)
著者
大宮 徹 小林 裕之
出版者
富山県農林水産総合技術センター[森林研究所]
巻号頁・発行日
no.11, pp.25-38, 2019 (Released:2019-08-27)

立山弥陀ヶ原の追分付近における人為的攪乱の履歴を再現するため,過去の空中写真と地形図を比較検討した。GISを用いた解析により,1912年以降の登山道と車道の形成の経緯が明らかになった。この地域はラムサール条約に登録されているが,景観復元にあたっては,植生とともに,歴史的遺跡も適切に保全する必要がある。
著者
小島 悠揮 登尾 浩助 溝口 勝
出版者
明治大学農学部
巻号頁・発行日
vol.58, no.2, pp.47-65, 2008 (Released:2011-12-19)

水資源の有効利用のために、様々な蒸散量・蒸発散量推定法の中から、代表的な(1)土壌水分減少法、 (2)茎熱収支法、(3)熱収支バルク法の3手法の精度、適応条件を調査した。また、土壌をかく乱することなく土壌水分量が測定可能な、鉛直挿入式のTDRプローブ(マルチプローブ)を開発した。(1)土壌水分減少法では深さ0.55mのポット内にダイズを栽培し、その土壌水分変動を従来のTDR法とマルチプローブを用いて観測し、その減少量と重量法による結果を比較した。マルチプローブはその構造の影響を受け、ロッド長が短い場合に大きな誤差を示した。波形解析ソフト等により、構造の影響を解決できればフィールドヘの適用も可能になる。土壌水分減少法は、ダイズ1個体の蒸散量が微小であったため、本研究では精度は検討できなかった。しかし、根圏の水吸収を観測することができ、長期間の測定を対象とすれば非常に有効な手法であると考えられる。(2)茎熱収支法ではダイズの蒸散量を測定し、重量法と比較した。茎熱収支法はダイズの微小な蒸散量を7〜14%の精度で測定可能であった。しかし、蒸散量が少ない日や、反対に非常に大きな蒸散量を示した日に大きな誤差を示した。センサが非常に脆弱であり、慎重な扱いが必要な点と加熱により植物細胞を破壊してしまう点から、長期の測定には不向きであると考えられる。(3)熱収支バルク法ではキャベツ畑での気象データを用いて蒸発散量を計算し、ライシメータ法と比較した。本報では、計算に必要なアルベドを0.1、地中熱流量を純放射量の10%と仮定した。熱収支バルク法は、ライシメータ法に対して、20〜24%の誤差で蒸発散量の安定した推定が可能であった。感度解析の結果、アルベドと地中熱流量は蒸発散量の推定に大きな影響を及ぼし、実測が望ましいことが明らかになった。土壌水分減少法と熱収支バルク法を組み合わせると圃場における水分消費がより明らかになるので、高水準な水資源の有効利用が可能になると思われる。
著者
菊原 賢次
出版者
福岡県農林業総合試験場
巻号頁・発行日
pp.5-10, 2019 (Released:2020-02-03)

福岡県では2014年以降,Pseudononas syringae pv. actinidiae biovar3(Psa3)によるキウイフルーツかいよう病の被害が拡大している。Psa3に汚染された花粉は感染を拡大させる可能性があるため,人工授粉には健全花粉を使用しなければならない。汚染花粉からのPsa3の検出方法は「キウイフルーツかいよう病Psa3系統の防除対策マニュアル」に記載されているが,1サンプルごとに高価な専用機器で集菌してからPCR法で検出するため,時間と労力がかかり,大量検定には不向きである。一方,花粉から直接DNAを抽出し,PCR法で検出する方法が報告されているが,検出限界は明らかではない。本研究は花粉から直接DNAを抽出し,防除マニュアルに記載されたプライマーを用いたPCR法により,Psa3が3×10 4cfu/g含まれる人工汚染花粉から検出が可能であった。次に,開発手法を中心として用い,2016年に福岡県の36圃場で生産された花粉の汚染状況を調査した結果,本病発生圃場の雄木から採取されたすべての花粉からPsa3が検出された。また,発生圃場に隣接した未発生圃場の雄木から採取した花粉からもPsa3が検出された。一方,無発生地区で生産された花粉からPsa3は検出されなかった。このことから,発生地区では健全花粉の生産は困難であることが示唆され,授粉に使用する花粉は少なくとも,無発生地区での生産が必要と考えられた。
著者
山口 優一
出版者
農業・生物系特定産業技術研究機構野菜茶業研究所
巻号頁・発行日
no.3, pp.129-134, 2006 (Released:2011-03-05)

日本茶は伝統飲料であり,その生産・流通形態に他の加工食品と異なる特徴を有することから,比較的古くから官能検査法やそこで用いる審査用語が整備されている.茶の審査は,外観,香気,水色,渋味の4項目についておこなわれ,それぞれに審査用語が定められている.審査用語の多くは欠点項目を示すものであり,審査では欠点項目に基づき減点法で付点される.茶の客観的な品質評価方法としては,近赤外によるアミノ酸含量,タンニン含量の測定などが実用化されている.ただし,茶の滋味・香気と化学成分組成との関係についてはまだ不明な点が多いのが現状である.