著者
森川 香織
出版者
日本イスパニヤ学会
雑誌
HISPANICA / HISPÁNICA (ISSN:09107789)
巻号頁・発行日
vol.2015, no.59, pp.85-104, 2015 (Released:2016-05-10)
参考文献数
32

1975年に出版されたリカルド・ピグリア(Ricardo Piglia, 1940-)の選集『偽名』(Nombre falso)には「ロベルト・アルルトへのオマージュ」(“ Homenaje a Roberto Arlt ”)と題される中編小説が収められている。2002年の改訂版において、この題名は目次上から消え、「偽名」(“ Nombre falso ”)と改題された物語の副題としてのみ残されることになった。2002年版におけるタイトルの変更理由は明らかではないが、失われた“アルルト”の遺稿をめぐるこの物語に隠された“秘密”が、改訂後のタイトルと深く関わっているのは事実である。本稿では、ピグリア作品における“秘密”の機能を考察するとともに、本作において二重の仕掛けで隠されたそれを読み解くことにより、「偽名」というタイトル、および作品自体の意味にアプローチを試みている。結果として、“ロベルト・アルルト”の名前の裏に潜む複数の作家たちの影が浮き彫りになると同時に、本作が他者のテクストの書き換え、すなわち剽窃の伝統をもつアルゼンチン文学への省察から生まれた作品であることが明らかになるであろう。
著者
萩原 直幸
出版者
日本フランス語フランス文学会 中国・四国支部
雑誌
フランス文学 (ISSN:09125078)
巻号頁・発行日
no.33, pp.17-26, 2021-06-01

本稿は2019年12月5日、香川大学を主催校とし、新型コロナウィルス感染予防のためのオンラインで開催された日本フランス語フランス文学会中国・四国支部大会にて行った口頭発表をもとに、大幅に加筆・修正をしたものである。」
著者
早川 勝 ハヤカワ マサル Hayakawa Masaru
出版者
同志社法學會
雑誌
同志社法學 (ISSN:03877612)
巻号頁・発行日
vol.60, no.7, pp.1-32, 2009-02-28

論説(article)2004年に発効したイタリア会社法の改正法は、会社法の現代化を目指して、企業グループに関する規制を導入した。これは、1965年のドイツ株式法コンツェルン法以来の画期的立法である。イタリア方式は、ドイツ法と異なり、企業グループを一律として捉え、従属会社に生ずる損害の補償の方式について独自性がある。
著者
助川 幸逸郎
出版者
日本文学協会
雑誌
日本文学 (ISSN:03869903)
巻号頁・発行日
vol.61, no.5, pp.44-54, 2012

<p>風巻景次郎は、文学作品の政治的・社会的背景に言及することが多く、その論調はときに「外在批評」と評された。そのいっぽうで、自身の「読過の印象」から立論をはじめている場合もあり、研究姿勢にぶれを感じさせる。この疑念を解く鍵は、私小説に対する風巻の激烈な批判である。風巻は、日本に真の近代小説が存在しないと考えていた。そして、真の近代小説が存在しうる社会的条件を解明し、この状況を打破したいと願っていた。じぶんのもとめる真の近代小説の像を克明に胸にいだいておくために、みずからの感性は捨てされない。とはいえ、理想の文学の存在条件にせまるためには、社会的背景に目をむけなければならない。風巻の「矛盾」には、彼なりの一貫性があった。</p><p>理想の文学を創作するのではなく、それが生みだされるための制度設計をすること――風巻にとって、文学研究者が何をなすべきかは明確であった。しかし、「真の近代小説」こそが「理想の文学」だと、現在の文学研究者はナイーヴに信じられなくなっている。こうした状況下にあって、文学研究者の使命はどこにあるのかを考えてみたい。</p>
著者
O'BRIEN C. W. ASKEVOLD Ingolf S. MORIMOTO Katsura
出版者
九州大学農学部昆虫学教室
雑誌
ESAKIA (ISSN:00711268)
巻号頁・発行日
no.35, pp.1-15, 1995-01-31
被引用文献数
1

Three species of Bagous are described as new from Japan, B. yamazakii O'Brien & Morimoto, B. fractodes O'Brien & Morimoto, and B. nipponensis O'Brien & Morimoto. Bagous yamazakii, known only from males, possibly represents an entirely new species group, but probably is related to the B. hydrillae group, the species of which are in Australia. Bagous fractodes, known only from a single male, is similar to B. fractus of Japan, but evidently is not closely related to it. Bagous nipponensis is known only from a single female; it is clearly not any species hitherto known from Japan, but its phylogenetic position is equivocal. The key to Japanese species is modified to include these three new species. Habitus photographs and line illustrations of genitalia are provided.
著者
Subrata Pramanik Arne Kutzner Klaus Heese
出版者
International Research and Cooperation Association for Bio & Socio-Sciences Advancement
雑誌
BioScience Trends (ISSN:18817815)
巻号頁・発行日
vol.11, no.2, pp.169-178, 2017-04-30 (Released:2017-05-23)
参考文献数
71
被引用文献数
1

In the present study, we determine comprehensive molecular phylogenetic relationships of the novel myelin-associated neurite-outgrowth inhibitor (MANI) gene across the entire eukaryotic lineage. Combined computational genomic and proteomic sequence analyses revealed MANI as one of the two members of the novel family with sequence similarity 168 member (FAM168) genes, consisting of FAM168A and FAM168B, having distinct genetic differences that illustrate diversification in its biological function and genetic taxonomy across the phylogenetic tree. Phylogenetic analyses based on coding sequences of these FAM168 genes revealed that they are paralogs and that the earliest emergence of these genes occurred in jawed vertebrates such as Callorhinchus milii. Surprisingly, these two genes are absent in other chordates that have a notochord at some stage in their lives, such as branchiostoma and tunicates. In the context of phylogenetic relationships among eukaryotic species, our results demonstrate the presence of FAM168 orthologs in vertebrates ranging from Callorhinchus milii to Homo sapiens, displaying distinct taxonomic clusters, comprised of fish, amphibians, reptiles, birds, and mammals. Analyses of individual FAM168 exons in our sample provide new insights into the molecular relationships between FAM168A and FAM168B (MANI) on the one hand and livebearing and egg-laying mammals on the other hand, demonstrating that a distinctive intermediate exon 4, comprised of 27 nucleotides, appears suddenly only in FAM168A and there in the livebearing mammals only but is absent from all other species including the egg-laying mammals.
著者
中木村 和彦 佐伯 仁 佐伯 真理子 白澤 由美子 中野 智子
出版者
日本蘇生学会
雑誌
蘇生 (ISSN:02884348)
巻号頁・発行日
vol.40, no.1, pp.1-6, 2021-04-26 (Released:2021-05-10)
参考文献数
10

36名を,4,6,12ヶ月の3群に分け,一次救命処置(BLS)講習受講後,傷病者の虚脱発見から心肺蘇生とAEDによるショックまでの時間(BLS時間)と50回連続の胸骨圧迫の質の適切性を調べた。初回講習後,4,6ヶ月群は,それぞれ4,6ヶ月間隔で,スキル保持の評価と簡単な講習を行い,12ヶ月後に全群スキル保持の程度を調べた。 12ヶ月後の胸骨圧迫の質に群間差はなかったが,BLS時間は,12ヶ月群が他の2群よりも有意に長かった。4ヶ月群ではBLS時間に有意な経時変化を認めなかったが,6と12ヶ月群のBLS時間は1年後有意に延長した。 BLSのスキル保持には4ヶ月ごとに講習を受ける必要がある。キーワード:心肺蘇生術,一次救命処置,反復講習,スキル保持,胸骨圧迫
著者
船山 信次
出版者
公益社団法人 日本化学会
雑誌
化学と教育 (ISSN:03862151)
巻号頁・発行日
vol.65, no.5, pp.220-223, 2017-05-20 (Released:2017-11-01)
参考文献数
11

毒と薬の区別はない。ただ,ある生物活性物質を使った結果がうるわしい場合,私たちはそのものを薬と呼び,うるわしくない場合には毒と称するだけである。一方,私たちが恐れるものに蛇蝎(ヘビとサソリ)や毒草があるが,ヒトはこれらすら薬として生き延びているのであるから,その知恵としたたかさはたいしたものである。

2 0 0 0 OA 本朝辞源

著者
宇田甘冥 著
出版者
岩崎松蘇[ほか]
巻号頁・発行日
vol.上, 1871
著者
一小路 武安 勝又 壮太郎
出版者
特定非営利活動法人 組織学会
雑誌
組織科学 (ISSN:02869713)
巻号頁・発行日
vol.49, no.3, pp.33-46, 2016-03-20 (Released:2016-08-29)
参考文献数
60
被引用文献数
3

本研究ではまず,消費者の消費のほかに,(情報)伝達,創造,(創造)支援という3つの活動からなる発信行動に注目し,消費を含めた4つの活動を先行研究から整理する.そのうえで,インターネット上の投稿動画を中心にマンガも対象とした調査から,それぞれの活動の関係性を,分野横断性を確認する活動要因,当該分野における活動要因,より一般的な活動要因の異質性から明らかにした.
著者
藤田 岳彦
出版者
日本評論社
雑誌
一橋論叢 (ISSN:00182818)
巻号頁・発行日
vol.116, no.5, pp.966-973, 1996-11

論文タイプ||研究ノート