著者
小村 弘 松田 健一 茂本 友貴枝 河原 亥一郎 阿野 理恵子 村山 洋子 森脇 俊哉 吉田 長弘
出版者
公益社団法人日本薬学会
雑誌
藥學雜誌 = Journal of the Pharmaceutical Society of Japan (ISSN:00316903)
巻号頁・発行日
vol.125, no.1, pp.131-139, 2005-01-01
参考文献数
25
被引用文献数
1 3

肝臓での代謝安定性は経口吸収性とともに生体内利用率に影響する重要な因子であり, その最適化は多くのプロジェクトにおける最重要課題の1つである. 一般に代謝試験には肝ミクロソーム系又は単離肝細胞系が用いられている. 肝細胞系はphaseI及びII代謝活性, さらに肝取り込みや胆汁排泄に関与する膜輸送系を有しており, 開発候補品を初め薬物の詳細な代謝検討に使用されている.しかし非凍結及び凍結ヒト肝細胞の場合コストが高く付くこと, またロット間の代謝活性の個体差が大きいこと, そしてロボットへの適応が難しいことから, 創薬の初期スクリーニングには適していないものと考えられる. 一方, 肝ミクロソーム系では細胞質の酵素によるphaseI及び硫酸抱合活性などのphaseII代謝を測定することができないが, 主代謝酵素であるcytochromeP450(CYP)活性が存在し,いずれの種についてもミクロソームを容易に入手できる. 特にヒトではハイスループットスクリーニング用として多くのドナーから調製されたミクロソームが市販されている.
著者
三木 理史
出版者
公益社団法人 日本地理学会
雑誌
地理学評論 Series A (ISSN:18834388)
巻号頁・発行日
vol.89, no.5, pp.234-251, 2016

<p>本稿の目的は,1920年代における漢人の満洲への出稼移動に着目し,満鉄旅客輸送の特徴を明らかにすることにある.その具体的課題は,満鉄の鉄道旅客輸送の実態と,旅客の中心であった出稼者の移動の2点の解明で,本稿の分析結果は以下の4点にまとめられる.1. 出稼地は次第に南満から北満へと移行し,出稼者が満鉄線と中東鉄道線の利用増加を促進した.2. 出稼者の入満経路は大連経由が増加して京奉鉄路経由が減少した.3. 出稼者は三等や貨車搭乗(四等)で割引運賃や無賃による利用が多く,輸送人員も非常に大量であった.4. 北満への出稼者誘致は当初吉林省が積極的で中東鉄道東部線沿線を中心に進み,中ソ国境での紛争や自動車輸送の進展などの事情によって,次第に未開発地の多い西部線沿線へと移った.鉄道にとって無料や低運賃の出稼者輸送の意義は,大量性に加えて,穀物輸送貨車の空車回送の間合い運用が可能な点にあった.</p>
著者
小村 弘 河原 亥一郎 茂本 友貴枝 松田 健一 阿野 理恵子 村山 洋子 森脇 俊哉 吉田 長弘
出版者
公益社団法人日本薬学会
雑誌
藥學雜誌 = Journal of the Pharmaceutical Society of Japan (ISSN:00316903)
巻号頁・発行日
vol.125, no.1, pp.121-130, 2005-01-01
参考文献数
27
被引用文献数
2 5

経口吸収性は生体内利用率に影響する重要なファクターの1つであり, ヒトでの低い吸収率さらにはその個体間の大きなバラツキは, 開発候補品のディベロッパビリティーを大きく低下させる. 近年コンビナトリアルケミストリー及びハイスループットスクリーニング(HTS)の導入は幅広い生物学的ターゲットに対して効率的にリード化合物の創出を可能にしてきたが, リード化合物の経口吸収性を初め体内動態に関わる物性を悪化させた. したがって, 創薬において吸収性に優れた開発候補品を創製するためにはリード化合物の最適化が必要となる. 吸収性は主に水に対する溶解性と膜透過性が大きく関わっており, これらのスクリーニング系が開発されてきた.近年その処理能力を上げるため, より簡便な比濁分析法や溶液沈殿法を用いた溶解性試験, さらにはCaco-2細胞の短期間培養法, N in one 及び96 well formatを用いた透過性試験系が採用されている.
著者
金谷 良夫 Kanaya Yoshio
出版者
神奈川大学
雑誌
麒麟 (ISSN:09186964)
巻号頁・発行日
vol.6, pp.31-38, 1997-02-01
著者
峯村 芳樹 山岡 和枝 吉野 諒三
出版者
国立保健医療科学院
雑誌
保健医療科学 (ISSN:13476459)
巻号頁・発行日
vol.59, pp.304-312, 2010-09
被引用文献数
1

改正臓器移植法が本年(2010年)7月から全面施行されたが,わが国における臓器移植の現状や脳死の認識には,生命観等の社会的・文化的要因が大きく影響しているとされる.本稿では,筆者らの「医療と文化の連関に関する統計科学的研究」における日本と,欧米(アメリカ,ドイツ,フランス,イギリス)及びアジア(韓国及び台湾)における社会意識調査結果を比較分析した.特に臓器移植・脳死の質問項目について,属性や生命観(宗教,信頼感等)などとクロス集計を行い,臓器移植・脳死に関する認識や行動に係る文化差について検討した.その結果,日本では若い世代,高学歴の人々ほど臓器移植について肯定的な傾向が認められた.脳死については日本では「(どのようなものか)わからない」とする割合が欧米諸国に比べて高いことが特徴的であった.以上から,わが国における脳死・臓器移植に関する情報の発信の必要性が示唆された.
著者
高木 敏 烏帽子田 彰
出版者
南山堂
雑誌
治療 (ISSN:00225207)
巻号頁・発行日
vol.86, no.3, pp.449-453, 2004-03
被引用文献数
1
著者
今井 美沙 Imai Misa 瀬戸 正弘 Seto Masahiro
出版者
心理相談センター
雑誌
心理相談研究 : 神奈川大学心理相談センター紀要
巻号頁・発行日
vol.6, pp.31-44, 2015-03-31

本研究は,ソーシャルサポートを受けている感覚が乏しい不登校経験者は,被援助志向性が低いという仮説に基づき,不登校経験者の被援助志向性を経験がない者と比較することで検討を行った。そしてそのうえで,ソーシャルサポートのうち,どのサポート内容とサポート源が被援助志向性を高め,不登校経験者の適応に影響を及ぼすのか検討した。その結果,不登校経験者は,経験がない者と比べて被援助志向性が低いことが明らかとなった。しかし,サポートを多く受けていることで被援助志向性が高まるという結果は得られず,本研究の仮説は支持されなかった。一方,不登校経験者の被援助志向性に影響を及ぼすのは,家族・友人以外の「その他重要な他者」からの「心理的サポート」,「物理的サポート」であった。そのため,不登校経験者の被援助志向性を高めるためには,このような存在からのサポートを与える環境を整え,それを基軸に他のサポートへと拡大させていくようなアプローチであることが示唆された。