著者
池上 順子 広岡 博之
出版者
日本生命倫理学会
雑誌
生命倫理 (ISSN:13434063)
巻号頁・発行日
vol.9, no.1, pp.95-100, 1999
参考文献数
8
被引用文献数
7

1992年4月と1997年10月の5年間における脳死と臓器移植に関する学生の意識の変化を明らかにするために、大学生を対象に調査を行った。臓器移植法について、その成立を肯定するものが多かった。しかし、実施については条件を整えてから実施すべきとの慎重論が強かった。「脳死は人の死」を認める者が少し多くなった。脳死の受容については、自分の場合は高くなったが、家族の場合は、受容できないとする者が高くなった。医者に対する信頼とインフォームド・コンセントについては、あまり大きな変化はみられなかった。本研究から、脳死・臓器移植への意思決定のためには、適切な情報の提供や総合的判断力の養成が必要であると示唆された。
著者
米村 俊一 永徳 真一郎 鎌田 一雄 田邊 勝義
出版者
一般社団法人電子情報通信学会
雑誌
電子情報通信学会論文誌. D, 情報・システム = The IEICE transactions on information and systems (Japanese edition) (ISSN:18804535)
巻号頁・発行日
vol.92, no.11, pp.2000-2010, 2009-11-01
参考文献数
21
被引用文献数
4

本論文では,公共空間での情報保障におけるメディアの適切な使い方を探るための基礎として,鉄道車両内において事故等の列車運行情報を提示するという状況を想定したメッセージ提示実験を行い,ろう者による情報読取りの認知特性,及び,読取りストラテジーを明らかにした.特に,車両内ディスプレイに手話実写映像(JSL)及び日本語テキスト(JT)を組み合わせる二言語提示を対象とし,ろう者に対してJSL,JT,及びJSL+JTによる情報提示を行い,メッセージの読取り時間,メッセージ内容再認テストの正答率によって情報読取りの認知特性を測定するとともに,視線計測を行って情報読取りストラテジーの検証を行った.更に,質問紙調査を実施し,メッセージ提示方法に対する受容性に関する評価を行った.実験の結果,緊急性の高い二言語情報の読取りでは,どのタイプのろう者もJTからの情報読取りを高頻度で行うこと,JSLから情報を読み取るろう者に対してはJTによる補足が必要であること,が明らかとなった.更に,情報受容性の観点から,ろう者はJTによる情報読取りを支持することが明らかとなった.
著者
小出 義雄
出版者
日経BP社
雑誌
日経ビジネス (ISSN:00290491)
巻号頁・発行日
no.1237, pp.124-127, 2004-04-12

女子マラソンの五輪代表選手が発表された3月15日は、もう受かった気分で、昼の12時頃からホテルでお酒を飲んでいたんですよ。どちらの結果にせよ、そのホテルで会見を開く予定でしたから。そしたら突然、「落ちました」でしょう。ええーって、これはやられたと思いましたよ。 だけど、会見前の打ち合わせでは高橋にこう言いました。
著者
牧野 忠男 山本 博聖 関口 宏之
出版者
宇宙航空研究開発機構
雑誌
宇宙科学研究所報告. 特集 (ISSN:02859920)
巻号頁・発行日
vol.9, pp.63-71, 1984-03

1981年9月5日, 1000JSTに内ノ浦から打ち上げられたロケットS-520-4号機でIR Atmospheric Band Dayglowの測定を行った。搭載された装置は1984年に予定されている人工衛星EXOS-Cにおいて中間圏オゾン観測に使用される装置と同種であり, 今回のロケット実験はこの装置のフライトテストの目的で行われた。用いられたフィルター分光による1.27μm赤外放射計は, 3枚の平面鏡, カメラレンズ, チョッパー, PbS array検出素子から成っている。PbS arrayは4素子×5素子から成り, サーモクーラーで∿-4℃に冷却して使用した。ロケット実験によって以下の結果が得られた。(1) この装置はフライト中順調に動作した, (2) 海及び雲による1.27μm太陽光散乱強度が得られた, (3) 衛星からの測定において, さまたげとなる視野外からのもれこみ光量は十分低く押えられていた。またロケット下降時のデータから導出された昼間における中間圏オゾン密度は, 従来の薄明時での様相とほぼ一致するものであった。
著者
阿部 隆 立木 孝 村上 裕 遠藤 芳彦 伊藤 俊也
出版者
Japan Audiological Society
雑誌
AUDIOLOGY JAPAN (ISSN:03038106)
巻号頁・発行日
vol.33, no.2, pp.110-117, 1990

Kemp & Bray製作のILO88を用いて内耳性難聴者90名154耳のclickに対するeOAEを測定し, 内耳性難聴の程度との関連を検討した。 (1), eOAE波形が認められかつ再現性が40%以上の場合をeOAE (+) とすると, 0.5k-4kHzの4周波数平均聴力が35dB未満の81耳では, 94%の確実性でeOAE記録が可能, 35dB以上の73耳及び40dB以上の63耳では, 89%及び92%の確実性でeOAE記録が不能であった。 1kHzと2kHzの2周波数平均聴力が40dB以上の64耳では, 94%の確実性でeOAE記録が不能であった。 (2), eOAE記録可能の84耳では, 内耳性難聴の程度とeOAEパワー (total echo power及びFFT解析図のhighest peak power) の間に負の相関 (r=-0.44) が認められた。 以上の結果から, ILO88を用いて, 4周波数平均聴力レベル35-40dB以上の内耳性難聴のスクリーニングが可能と思われた。
著者
光延 忠彦
出版者
千葉大学大学院社会文化科学研究科
雑誌
千葉大学社会文化科学研究 (ISSN:13428403)
巻号頁・発行日
no.11, pp.1-15, 2005

今日、政党政治は支配的な統治理念として広範に流通しているにも拘わらず、「勝利」したはずの政党政治は、都政において諸問題に直面し、閉塞感に覆われている。都知事選挙は1947年の選挙以来、政党候補が勝利して政権を担うという状態の継続にも拘わらず、こうした状態は90年代に入って変容した。91年選挙では主要政党の候補が無所属候補に敗退し、95年選挙では無党派候補が勝利して、政党候補の勝利は80年代で終焉した。また、都議会議員選挙でも投票率の低下、政党支持なし層の増大、政党による絶対得票率の減少等々、いくつかの指標において政党支持は流動化し、政党政治は魅力に欠けた存在になりつつある。これらは政党機能の衰退すら印象付ける現象である。本稿は、政策形成を通して80年代中期以降90年代前半期にかけての都政に接近し、政党配置における構造に政治的条件が加算されて、以上の事情がもたらされるという興味深い結論を導く。