著者
小山 善哉 石飛 進吾 久松 徳子 松下 新子 山口 大樹 平田 あき子 山見 由美子 大井 久美子 林 善彦
出版者
一般社団法人 日本摂食嚥下リハビリテーション学会
雑誌
日本摂食嚥下リハビリテーション学会雑誌 (ISSN:13438441)
巻号頁・発行日
vol.16, no.3, pp.243-252, 2012-12-31 (Released:2020-06-07)
参考文献数
15

【目的】 高齢者や頸部可動域に制限がある患者でも安全に実施しやすく,実際の食物嚥下動作に近似した口腔期・咽頭期の嚥下リハビリテーション手技として,われわれは栄養カテーテルチューブを用いた「蕎麦啜り様訓練」を考案し,表面筋電図を用い,嚥下リハビリとしての有効性を評価した.【方法】健常成人16 名(20~25 歳,平均年齢22.2 歳)を被験者とし,舌骨上筋群,舌骨下筋群,胸鎖乳突筋に双極電極を貼付し,① 空嚥下,② 開閉口,③ 頸部左右回旋,④ メンデルゾーン手技,⑤ シャキア訓練,⑥ 12 フレンチ(Fr)「蕎麦啜り様」チューブ吸い,⑦ 12Fr チューブ一気吸い,⑧ 8Fr「蕎麦啜り様」チューブ吸い,⑨ 8Fr チューブ一気吸いの各手技を実施させ,表面筋電位変化を記録した.得られた原波形は,平滑化時定数100 ms で二乗平均平方根(RMS)に整流化し,各被験者から得られた%MVC の平均値を,各筋群について,一元配置分散分析し,有意差が認められた場合はボンフェローニの補正による多重比較を行った.【結果】「蕎麦啜り様」チューブ吸いは,舌骨上筋群ではシャキア訓練に匹敵する高い%MVC を示し,舌骨下筋群ではメンデルゾーン手技より有意に大きく,シャキア訓練の値の2/3 に近い高い平均%MVC を示した.一方,胸鎖乳突筋では,空嚥下やメンデルゾーン手技と有意差なく,きわめて低い%MVC を示した. 【結論】チューブ吸い「蕎麦啜り様訓練」は,舌骨上下筋群に高い筋活動を認め,胸鎖乳突筋は低い筋活動しか認めず,頸椎症や高齢者など頸部運動に制限のある患者に対しても応用可能な,安全で簡便な口腔期および咽頭期の嚥下リハビリ手技として評価できる.
著者
中島 務 寺西 正明 片山 直美 加藤 正大
出版者
一般社団法人 日本めまい平衡医学会
雑誌
Equilibrium Research (ISSN:03855716)
巻号頁・発行日
vol.70, no.3, pp.197-203, 2011 (Released:2011-08-01)
参考文献数
28

The first visualization of endolymphatic hydrops in patients with Ménière's disease was performed using three-dimensional fluid-attenuated inversion recovery (3D-FLAIR) imaging with a 3 Tesla MRI unit after gadolinium contrast agent (Gd) was injected intratympanically. The 3D-FLAIR MRI could differentiate the endolymphatic space from the perilymphatic space, but not from the surrounding bone. By optimizing the inversion time, the endolymphatic space, perilymphatic space and surrounding bone could be separately visualized on a single image using three-dimensional real inversion recovery (3D-real IR) MRI. Using 3D-FLAIR and 3D-real IR MRI, various degrees of endolymphatic hydrops were observed in the basal and upper turns of the cochlea and in the vestibular apparatus after intratympanic Gd injection. Recently, visualization of endolymphatic hydrops became possible 4 h after intravenous Gd injection in patients with Ménière's disease. We applied a heavily T(2)—weighted 3D-FLAIR technique to detect Gd more sensitively for evaluation of endolymphatic hydrops after an ordinary amount of Gd was administered intravenously. Thus, newly developed MRI techniques have contributed significantly to the evaluation of endolymphatic hydrops. The intravenous administration of an ordinary amount of Gd is routinely done clinically. The relationship between endolymphatic hydrops and clinical symptoms will be investigated widely using new techniques.
著者
谷口 雄太
出版者
公益財団法人史学会
雑誌
史學雜誌 (ISSN:00182478)
巻号頁・発行日
vol.122, no.12, pp.2019-2042, 2013-12-20

This article addresses a number of questions about the Ashikaga Clan that have remained unclarified in the research to date: namely, Who made up that Clan? What is meant by the Ashikagas being as a "clan" (ichimon 一門) ? What does "the Ashikagas becoming a clan" mean? By reexaming these questions, the author hopes to better understand how the Ashikaga period came to a destructive end. The author begins by showing that the heretofore vaguely used term Ashikaga-shi Goikka 足利氏御一家 has been used in the two different senses of Ashikaga Gosanke (Three Branches of the Ashikaga Family) and Ashikaga Ichimon. And about the comment by the Tokis of the Sengoku period--After the Goikka, I am the leader of the all the other families, the author shows that "Goikka" means Ashikaga Ichimon. Secondly, the author reexamines the similarly vague term "Ashikaga Ichimon" by identifying its members from the available medieval historiography. One characteristic feature that has not been noticed to date is that both the Nitta Branch of the Minamoto Clan and the Yoshimi Family were included among its members. In particular, 1) the Nittas regarded themselves as members from the very beginning, since the Ashikaga Clan was essentially part of "the Yoshikuni branch of the Minamoto Clan"; and 2) the perception that the Nittas did not consider themselves part of the Ashikaga Clan can be traced back to the exclusive self-identity "ware-ware 我々" consciousness described in the Taiheiki 太平記. Next, after stating that there is yet no piece of research that has tried to present the Ashikaga Clan in a holistic fashion, but should be, the author shows from the medieval historiography that the above-mentioned perception of the Tokis that the Ashikaga Clan surpassed in status and prestige all other warrior clans was universally widespread during the Ashikaga period. Finally, the author inquires as to why such families as the Miyoshis and Odas of the Sengoku Period tried to debunk and alter the above-mentioned perception of the Ashikaga Clan's superiority, concluding that it was necessary to first switch the prerequisite for "changing the system from above" from kinship (i.e., membership in the Ashikaga Clan) to actual organizational ability as one indispensable step in the destruction of the existing order.
著者
辻 恵子 小黒 道子 土江田 奈留美 中川 有加 堀内 成子
出版者
一般社団法人 日本助産学会
雑誌
日本助産学会誌 (ISSN:09176357)
巻号頁・発行日
vol.20, no.1, pp.1_7-1_15, 2006 (Released:2008-04-25)
参考文献数
37

目 的エビデンスレベルの高い論文を探索し,批判的に吟味する過程を通じて会陰切開の適用を再考することである。方 法臨床上の疑問を明確化するためのEBNの方法論を用いて,「会陰切開・術」,「会陰裂傷」,「会陰部痛」,「新生児」のキーワードを設定し,エビデンスレベルの高い論文およびガイドラインを探索した。RCTのシステマティック・レビューである2つの論文に着目し,批判的吟味を行った。同時に,会陰裂傷を最小限にする助産ケアの知見について検討した。結 果批判的吟味を行った結果,2つのシステマティック・レビューにおける研究の問いは明確に定義されており,妥当性を確保するための必要項目を満たすものであった。これらのシステマティック・レビューから「慣例的な会陰切開の実施は,制限的な会陰切開に比べ,“会陰(後方)の損傷”のリスクを増大させる。また,“創部治癒過程”における合併症のリスクおよび退院時の“会陰疼痛”のリスクを増大させる。“尿失禁”および“性交疼痛”のリスクを軽減させるというエビデンスはなく,“新生児の健康上の問題”が生じるリスクを減少させるというエビデンスは存在しない」との結果が導かれた。また,これまでの助産ケアの知見を検討した結果,会陰マッサージ,会陰保護,分娩体位の工夫などで会陰裂傷を最小限にする可能性が確認された。結 論女性に優しい助産ケアとして,助産師は,会陰裂傷を最小限に防ぐケアの可能性を追求すると共に,エビデンスに基づいた情報を適切な方法で伝え,女性自身が必要なケアを選択できるよう,女性とのパートナーシップを構築していくことが求められる。
著者
竹之内脩著
出版者
秀潤社
巻号頁・発行日
1977

15 0 0 0 OA 摂政宮殿下

著者
浜田豊城 著
出版者
帝国書院
巻号頁・発行日
1926
著者
池田 貴夫 IKEDA Takao
巻号頁・発行日
2007-07-31

本論文は、北海道、サハリン、アムール川下流域に分布してきたクマ祭り(アイヌ語で「イオマンテ」、日本語で「クマの霊送り儀礼」、「飼育型クマ送り」などさまざまに表現されてきた。以下、「クマ祭り」と略記し、特に説明のない場合は、「クマ祭り」は仔グマの飼育を伴うクマ儀礼のことを指すこととする(1)。)をめぐり、クマ祭り研究の現状と課題を明らかにしたうえで、クマ祭り研究の基礎的資料であった民族誌とこれまでの研究成果を再検討することにより、民族文化情報とその表現(文化の担い手の表現、記録者の表現、研究者の表現)をめぐる諸問題に関して考察を及ぼし、そのことをとおしてクマ祭りの性格を多面的に明らかにし、今後のクマ祭り研究、アイヌ文化研究、さらには北方文化研究の進展に資することを目的とする。 ここで話題となる対象は、あくまでクマ祭りであるが、導き出される諸課題は、今後の民族学全体の進展に大きく関わってくる問題であると考えている。それは、本論文が、どのような学問分野においても意識していかなければならない「情報」や「表現」という問題をキーワードとして、クマ祭り研究の史的展開にいくつかの論点を発見し、まとめたものだからである。 アイヌ民族の中核的な儀礼、かつ伝統的な儀礼として研究されてきたクマ祭りではあるが(2)、北方地域のクマを扱う儀礼には、2種類のタイプがあるといわれている。1つは、狩猟先で仕留めたクマを丁重に扱い、祀るといういわゆる狩猟グマ儀礼で、これらはアイヌを含め、北ユーラシアや北米の諸民族の間に広く分布する。2つには、仔グマを手に入れ、一定期間飼育したクマをと殺して祀り、饗宴を催すという、いわゆるここで言う「クマ祭り」で、これらはアイヌ、ニヴフ、ウイルタ、ウリチ、オロチ、ネギダールなど北海道、サハリン、アムール川下流域諸民族に限られて、ヒグマを対象に行われてきた儀礼である。 周知のとおり、北方諸地域における2タイプのクマ儀礼の存在と分布を明確化したのは、A. I. ハロウェルの論文Bear Ceremonialism in the Northern Hemisphere[Hallowell 1926]である。そこでハロウェルは、北海道、サハリン、アムール川下流域諸民族で行われるクマ祭りは、比較的新しい時代に単純なものから手の込んだものに発達していったものであろうことを示唆したのである[Hallowell 1926:153-163]。一方、日本国内においては、概ね19世紀末頃から、アイヌのクマ祭り研究が進展し始める。特に、1960年代~1980年代にかけては、クマ祭りの学術的理解に向けての多様な研究が、民族学研究者を中心として展開された。 ところが、近年、民族学研究者がクマ祭り研究から距離を置こうとする傾向がみられる。一方では、民族学研究者は至る所でクマ祭りの説明を行わなければならず、クマ祭りはアイヌ文化の中核的な存在であり、クマをあるべき世界に送り帰す儀礼であるという通説を繰り返すだけでそれ以上踏み込んだ研究をしようとしていない。現在に至っては、クマ祭りは民族学にとって研究しづらい課題なのだろうか。民族学的視点からは、問題意識がもはや発生しないのだろうか(ほとんどが明らかになったということなのだろうか)。クマ祭りをめぐって、民族学がやらなければならないこと(民族学だからできること)は、もはやないのだろうか。 確かに、北ユーラシアや北米の諸民族の間には、クマやオオカミなどの陸獣、ワタリガラスやフクロウなどの鳥類、クジラなどの海獣などさまざまな動物を人間との関係で観念化し、狩猟や儀礼などで特別に取り扱う文化が広まっていた。そのために、クマのみを特別な存在として、研究を集中させることは危険である。先述の現状は、そのような反省もふまえた結果でもあるかもしれない。しかしながら、現実として、アイヌの中核的な儀礼として特別視され、さらには、少なくとも19世紀末頃以降、アイヌが執り行ってきた動物儀礼の多くがクマ祭りであったのは、アイヌと和人との交渉史の中で画一的なアイヌ文化観が形成されたからではないだろうか。 そのことをふまえずに、アイヌのクマ祭りに関し、旧来からの定説を繰り返すだけであるならば、現在の北方民族学のあり方に疑問を感じざるを得ない。むしろ、クマ祭りのイメージが画一化されてきた過程を検証しつつ、広く定着したイメージとは異なる新たな視点から情報を検討・発掘し、さらには個々の表現にみられるイレギュラーな現象をも1つさらにはクマ祭り研究を進めていくうえでの新たな表現方法の確立にまで考察がおよぶこととなろう。 この研究は、直接的にクマ祭りの起源論・成立論に踏み込むわけではない。また、クマ祭りをとりまく諸情報を網羅したものでもない。あくまでも、筆者がこの10年弱の間で行ってきたクマ祭りの研究の成果とそこから導き出された民族文化情報とその表現をめぐる諸課題が記されるだけである。しかしながら、本論文が、アイヌ文化史を考えるうえでの基礎として役に立つことができれば、さらには、現実としてある民族文化情報そのものを直視し、再検討する立場から、北方文化の理解と研究の再構築に寄与できれば、幸いであると考えている。
著者
志水 廣
出版者
国立大学法人愛知教育大学
雑誌
愛知教育大学教育創造開発機構紀要 The journal of the Organization for the Creation and Development of Education (ISSN:21871531)
巻号頁・発行日
no.5, pp.77-83, 2015-03-31

小学校の児童が算数を学ぶ上で,算数科にかかわる数学言語(算数語彙)について,どの程度正確に理解しているかについて調査した。調査分野は,小学校下学年,「数と計算」の領域について算数教科書に登場する算数の用語・記号とそれらを規定する言語も含めて算数語彙とした。1つの算数語彙に対して5問の選択肢を用意して児童に選択させる問題(語彙テスト)を開発した。調査問題は,予備調査(175名)に基づき本調査(975名)を実施した。その結果,算数語彙に対して理解度の低い問題が見つかった。例えば,1年生の語彙「3人に2まいずつ」の正答率は66.9%,2年生の語彙「4この2つぶん」の正答率は18.1%,3年生の語彙「3人に分ける」の正答率は59.4%,語彙「はした」の正答率は52.9%であった。
著者
赤堀 幸男 村上 篤司 星 昭二
出版者
The Japanese Society of Intensive Care Medicine
雑誌
日本集中治療医学会雑誌 (ISSN:13407988)
巻号頁・発行日
vol.7, no.1, pp.3-10, 2000-01-01 (Released:2009-03-27)
参考文献数
42
被引用文献数
4 4

多剤耐性菌による院内感染が医療現場で重要な問題になっている。易感染患者を多く抱えるICU,CCU,NICUなどでは特に大きな問題である。院内感染防止対策としては,手指洗浄による交差感染経路の遮断が基本的かつ最も有効とされている。しかし,すべての菌に有効な殺菌剤はなく,院内感染を根絶できないのが現状である。オゾンを水に溶解したオゾン水は,強力な殺菌作用を有し,一般細菌はもちろんmethicillin-resistant Staphylococcus aureus (MRSA), vancomycin-resistant enterococci (VRE)などの多剤耐性菌に対しても,他の殺菌剤より極低濃度,5秒程度の極短時間で完全な殺菌作用を示す。一方,オゾン水中のオゾンは自然分解するため貯蔵できず,用時調製用のオゾン水供給装置が必要であり,作用機序,殺菌効果の特徴からくる独特の注意点もある。これらの問題点を考慮しても,オゾン水は手指洗浄用として最適であり,排水に悪影響しないなど,環境にも配慮した有効な院内感染対策方法を提供するものと考える。
著者
麦山 亮太
出版者
日本社会学会
雑誌
社会学評論 (ISSN:00215414)
巻号頁・発行日
vol.68, no.2, pp.248-264, 2017 (Released:2018-09-30)
参考文献数
36
被引用文献数
1

キャリアの中断は, 個人の社会経済的地位を動揺させ, 格差を生成する契機である. 本稿の目的は, キャリアの中断による格差の生成過程を明らかにすることにある. 中断の効果を問うにあたり, 従来の地位達成モデルにもとづく分析は, キャリアの中断の効果が個人の異質性に由来するものか, その後の地位を低下させることに由来するものかを分離できないという点で不十分であった. そこで本稿では, 2005年SSM調査の職業経歴データから同一個人について複数時点の観察を作成しパネルデータ分析の手法を適用することで, 以上の効果を分離し, 中断がその後の正規雇用獲得確率に与える持続的影響を捉える. 加えて, 中断時年齢, 中断期間の長さ, 中断に至った理由によってキャリアの中断の効果が異なるかどうかについても検討する.分析の結果, 個人の異質性を除いてもなお, 男性は20年弱, 女性は20年以上, キャリアの中断を経験することでその後の正規雇用獲得確率は低い水準にとどまることが示された. 男性はとくに30歳以上の壮年期においてその効果が強い. 女性は, 年齢・中断期間・離職理由による差異はあるものの, キャリアの中断はどの層にとってもその後の正規雇用獲得確率を持続的に低下させる契機となっている. さらに, キャリアの中断はより地位の低い個人が経験しやすいイベントであり, それまでの格差をさらに拡大させる役割を果たしている.