著者
津田 宏果 飯島 朋子 野田 文夫 Tsuda Hiroka Iijima Tomoko Noda Fumio
出版者
宇宙航空研究開発機構
雑誌
宇宙航空研究開発機構研究開発報告 = JAXA Research and Development Report (ISSN:13491113)
巻号頁・発行日
vol.JAXA-RR-09-001, 2009-07-31

ヒューマンエラーに対抗する有効手段として、航空機乗員に対してCRM訓練が実施されている。訓練の妥当性を検証し、訓練内容を改善していくためには訓練による効果を継続・調査することが必要である。一方、航空機乗員においてどのようなCRMスキルが発揮され、また欠如されているかを把握することも、安全な運航を達成するために重要である。JAXAではCRMスキルを実践的なものとして定着化させるため、CRMを実践するための乗員の行動指標(指標として明確に示される具体的な行動)を開発してきたが、本研究ではこの行動指標を用いて、乗員のCRMスキル行動を計測する手法を提案・開発した。開発した計測手法は数回の改良を重ね、最後に模擬LOFTを通して評価を行った。
著者
張 琪
出版者
多摩大学グローバルスタディーズ学部
雑誌
紀要 = Bulletin (ISSN:18838480)
巻号頁・発行日
vol.13, pp.111-118, 2021-03-31

音楽鑑賞は人間にとっては楽しみであるだけでなく、心身の健康に大きな影響を与えると思われるため、医療に音楽利用する音楽療法も生まれた。音楽療法の作用メカニズムを解明するには、協和音・不協和音が人間の脳活動にどのような影響を与えるかに視線が注がれている。本研究では、脳波計測を用いて、普段よく鑑賞されるピアノ単体のクラシック曲を実験刺激として利用し、協和音・不協和音が音楽鑑賞時に脳活動にもたらす影響を探ってみた。被験者による個人差があったが、後頭葉、左側頭葉、右頭頂葉、及び前頭葉で脳活動成分が観測された。これらの結果は今後の音楽療法の有効活用につながることに期待したい。
著者
雨宮 徹 Tohru AMEMIYA
出版者
大阪河﨑リハビリテーション大学
雑誌
大阪河﨑リハビリテーション大学紀要 = Journal of Osaka Kawasaki Rehabilitation University (ISSN:1881509X)
巻号頁・発行日
vol.2, pp.23-37, 2008-03

拙論の目的は、恋と愛を質的に異なる現象として扱い、両者における自己-他者関係の相違を明確にすることにある。まず、恋においては、自己の欲望を余すところなく満たすために他者から離れようとする方向性と、自己が他者に受容されるために他者に接近しようとする方向性の二つが、互いに鋭く矛盾したまま、並存していることが確認される。この矛盾を解決するために、恋する人間はさまざまな戦略をとるが、それらはすべて破綻するということが明らかにされる。次にフランクルの「コペルニクス的転回」の概念を手掛かりとし、恋における自己の特徴は、自己中心性にあるのだと位置づけられるのに対して、愛の特徴は、自己超越性にあるのだということが、「Bei-sein」にまで遡って説明される。その結果、愛において他者は、主客が分裂する以前の、自己における他者の端的な顕現への驚きを通じて、その存在の独自性を看取されるのだ、ということが示される。
著者
古岡 俊之 Toshiyuki FURUOKA
雑誌
学校教育センター年報 (ISSN:2432258X)
巻号頁・発行日
no.2, pp.45-59, 2017-03-01

西宮市立小学校の「学校要覧」平成20 年度版に掲載されている「校歌」を利用して,西宮市の公立小学校の校歌にうたわれている山と川について,特に地理的分布について検討した。この結果,山については六甲山,甲山のように地域を代表するような周囲から高く突き出した,目立った山が取り上げられ,取り上げられている山の数は少ない。これに対して,川は身近な自然として取り上げられる傾向にあり,したがって小学校に近接した川がうたわれる。武庫川はその好例である。環境教育の視点から教材化を期待している。脈々とうたい継がれてきた校歌は,児童に校区周辺の自然環境への関心や意識を高めているものと思われる。校歌詞の中から,山・川のみに限らず,児童の身の回りの環境にわたり,自然的・人文的環境の言葉を広く求めて,人々の生活とその地域の自然・風土とが深くかかわりあっていることを環境教育に生かしていきたいと考える。
著者
諸熊 一則 友清 和彦 高橋 元秀
出版者
熊本保健科学大学
雑誌
熊本保健科学大学研究誌 = Journal of Kumamoto Health Science University (ISSN:24335002)
巻号頁・発行日
no.19, pp.1-17, 2022-03

国内外に生息する毒蛇による咬傷患者は重篤な報告例が多く,毒蛇咬傷は感染症対策と同様に公衆衛生上の重要な課題である。蛇毒の成分には多種類の酵素,インヒビター等のタンパク質・ペプチド成分が含まれており,異なる作用物質の混在は,咬傷後は複雑な病態として現れることになる。このことが適切で有効な治療法の開発の妨げとなっており,毒蛇咬傷に対する新規治療用医薬品の開発が急がれる所以である。近年,急速に発展しているタンパク質工学的,分子生物学的分析手法は,蛇毒成分の構造分析,作用解析において多くの成果をもたらしている。本項では,蛇毒成分解析の現状を先行論文のプロテオーム解析結果や毒素成分の構造を整理し,特に血液凝固系に関連した毒成分については解析を追加した。また,ハブ,マムシ及びヤマカガシの国内咬傷被害の実情と咬傷患者への一般的な治療法であるウマ抗毒素製剤の導入や歴史的背景を含めて概説する。さらに抗毒素製剤の品質管理と今後の課題に関して概説する。
著者
堀川 哲 ホリカワ テツ Tetsu Horikawa
雑誌
経済と経営
巻号頁・発行日
vol.21, no.3, pp.407-444, 1991-01-30
著者
半貫 敏夫 小石川 正男 平山 善吉 佐野 雅史 佐藤 稔雄 Toshio Hannuki Masao Koishikawa Zenkichi Hirayama Masashi Sano Toshio Sato
雑誌
南極資料 = Antarctic Record (ISSN:00857289)
巻号頁・発行日
vol.37, no.1, pp.61-102, 1993-03

昭和基地建設の歴史的経緯をふまえて, 基地建物の現状と計画的な建物更新の必要性およびその概要を述べた。次いで昭和基地に建つ南極観測用建物の設計・製作に関する制約条件を整理し, これまでに昭和基地で試みられてきた極地建築システムについて概観した。国立極地研究所観測協力室の立案による昭和基地整備計画の最初の事業として企画された「管理棟」の基本構想をまとめるまでの経緯と基本設計の概要を紹介し, 建築・防災・構法などの新しい試みについて解説した。また, これからの南極観測用建築のありかたについても言及した。
著者
王 秀文
出版者
国際日本文化研究センター
雑誌
日本研究 : 国際日本文化研究センター紀要 (ISSN:09150900)
巻号頁・発行日
vol.19, pp.123-158, 1999-06-30

本稿は、「桃の植物文化誌」につづいて、桃の生命力をめぐる伝承を調べ、分析したものである。桃の生命力に関する伝承は、古く中国の『詩経』「桃夭」などの歌謡に現われ、それは主に桃の花・実・葉をもって年ごろの娘の結婚を祝福したものであるが、季節が冬から春に変わろうとするとき、何よりも早く花が咲き、うっそうとした葉が茂り、木いっぱいに実がなる桃のイメージを受けて生まれた感覚であろう。そのため、桃は強い生命力を持つものとして、農耕を迎える三月三日の祭りと融合され、「桃太郎」の話を生み出し、さらに不老長寿の仙果として仰がれた。このような数多くの伝承において、桃に基本的に陰気に対抗して陽気を復帰させ、生命の蘇生・誕生を象徴し、さらに観念的に女性の生殖力と結びつき、多産・豊饒や生命の不滅への期待が託されているものとみられる。
著者
Jesse Hogan Hogan Jesse
出版者
東京藝術大学
巻号頁・発行日
2020-03-25

令和元年度
著者
江原 知志 高田 哲司
雑誌
情報処理学会論文誌 (ISSN:18827764)
巻号頁・発行日
vol.63, no.4, pp.1082-1093, 2022-04-15

覗き見攻撃は携帯端末での個人認証において現実的に起こりうる脅威の1つである.この脅威に対する対策手法として,携帯端末の振動機能を利用した個人認証手法が複数提案されている.しかしそれらの手法には認証に時間がかかるという実用面の課題がある.そこで本研究では,振動機能を利用した既存手法の1つに対し,ユーザインタフェース改良を図ることによって,覗き見攻撃に対する安全性を維持しながら既存手法より認証時間を短縮することを試みた.1つは入力操作に必要な情報の取得時間を短縮させるものであり,もう1つは直感的な入力操作方法の導入である.この提案に基づく認証システムをAndroidアプリケーションとして実装し,実験参加者による評価実験を行った.実験結果から,改良対象となったシステムとの比較で認証時間を平均6秒短縮することに成功した.また安全性についても想定脅威に対して同等程度の安全性が維持されることが確認された.さらに,振動を利用した他の既存認証手法とも比較議論を行い,提案手法が先行研究の手法よりも操作負担が低く,安全性を危殆化させうる問題点が少ない手法であることを示した.