著者
小林 悟志
出版者
植生学会
雑誌
植生学会誌 (ISSN:13422448)
巻号頁・発行日
vol.25, no.1, pp.51-61, 2008
参考文献数
33
被引用文献数
2

&nbsp;&nbsp;1. 本研究は,南九州の30地域について,葉の表皮組織の違いによる判別をもとに,ツブラジイとスダジイおよび雑種の分布を明らかにすることを目的とした.<BR>&nbsp;&nbsp;2. 従来から行われてきた葉の表皮組織によるシイ類の判別法では,葉の任意の位置で観察されており,スダジイとツブラジイおよび雑種の判別を誤る可能性がある.本研究では,葉の横断面の全体が顕微鏡観察できる位置で観察領域を設定し,葉の表皮組織による判別をより正確なものにした.<BR>&nbsp;&nbsp;3. 南九州におけるシイ類の垂直分布は,海岸部では全標高域にわたってスダジイが卓越していた.一方,内陸部では,比較的標高の低い地域はツブラジイであるが,標高が高くなるにしたがいスダジイの分布する割合が高くなり,山頂や尾根沿いにはスダジイのみが分布していた.<BR>&nbsp;&nbsp;4. 内陸部の久木野では,スダジイは山頂から尾根部に多く,標高が低くなるにつれて個体数が少なくなる傾向が認められた.一方,ツブラジイは調査区域内のより標高の低い地域に多く,標高が高くなるにつれてその個体数が少なくなる傾向が認められた.また,雑種個体は標高の高低によって分布が偏る傾向は認められず,ツブラジイとスダジイの両種が混生している標高域に多く分布していた.<BR>&nbsp;&nbsp;5. 海岸部と内陸部の2地域で行った雑種個体における葉の表皮組織の1層と2層の割合は,周辺に分布するツブラジイとスダジイの分布状況を反映しており,両種の交雑によるF_1形成,ツブラジイまたはスダジイと雑種との戻し交雑,雑種同士の交雑等,分布域によって異なる交雑様式が進行していると考えられた.<BR>&nbsp;&nbsp;6. 堅果の形態は,採集場所ごとに異なっていたが,その形態は葉の表皮組織で判別した両種の母樹の分布状況を反映していた.
著者
種倉 紀昭
出版者
岩手大学教育学部附属教育実践研究指導センター
雑誌
岩手大学教育学部附属教育実践研究指導センター研究紀要 (ISSN:09172874)
巻号頁・発行日
vol.1, pp.247-262, 1991-03-01
被引用文献数
4

本学部の特設美術科・美術科学生の絵画基礎実習と絵画所属学生の行なっている絵画専門実習,卒業制作に見られる近年の学生の制作に関わる現代絵画の問題点と課題を論ずることが本論の目的である。それには現代絵画の表現概念と近代美術のそれと関連について,また,前衛美術として現代絵画の特徴について考える必要がある。近代美術の自律性から来る純粋化と非芸術への漸近,ダダイズム以後の前衛美術の反市民芸術志向の二つが現代の絵画様式の多様性と相俟って伝統統的絵画教育の方法との間に現代的アポリアを招いている。最後に,研究専門領域のひとつである絵画組成論や絵画論との関連でこれまで筆者が指導上特に留意してきた事項とその指導法の改善課題について述べた。
著者
石垣 敬義
出版者
文芸春秋
雑誌
文芸春秋
巻号頁・発行日
vol.75, no.3, pp.392-399, 1997-02
著者
河邊 博史 和井内 由充子 齊藤 郁夫
出版者
Japan Society of Ningen Dock
雑誌
人間ドック = Ningen dock : official journal of the Japanese Society of Human Dry Dock (ISSN:18801021)
巻号頁・発行日
vol.20, no.4, pp.655-661, 2005-12-26

目的・方法:心不全の診断,治療効果判定,予後推定に有用な指標である血漿B型ナトリウム利尿ペプチド(BNP)濃度を,健康診断受診者194人(男性142人,女性52人,平均年齢50歳)を対象に1999年度2003年度に測定し,その経年変化を観察した.また,その変化と心血管病易発症状態として注目されているメタボリックシンドローム関連因子(body mass index:BMI,脂質,血糖血圧)の関係について検討した.結果:両年度の血漿BNP濃度の相関係数は0.588で,両年度とも40pg/ml以上(心疾患発見のカットオフ値)の症例が4例,2003年度に40pg/ml以上に悪化した症例が10例見られた.これらの症例のうち,男性ではメタボリックシンドローム関連因子の集積が見られたが,女性には見られなかった.また,両年度とも正常値(18.4pg/ml以下)を超えていた男性13人では,両年度とも正常値であった男性100人に比べて2003年度の高血圧の頻度が高く,メタボリックシンドローム関連因子を1つ以上有する率も有意に高かった.しかし,女性では同様のことが認められなかった.結論:以上より,血漿BNP濃度の経年変化とメタボリックシンドローム関連因子の集積の関係には男女差が認められ,男性では両者の関係が認められたが女性では明らかでなかった.
著者
中村 登流
出版者
The Ornithological Society of Japan
雑誌
(ISSN:00409480)
巻号頁・発行日
vol.15, no.75, pp.201-213_1, 1960

1. このエナガの個体数調査は長野県下伊那郡上郷村天滝川河岸段丘崖での1956年2月から1959年8月までの観察である。<br>2. 個体数及び集合状態の季節的変動について整理した。<br>3. 個体数の季節的変動は6月中•下旬に最高値を示し,3月下旬に最低価を示した。<br>4. エナガの特殊な変動として一時に多数個体の急増急減があり,これは群単位で調査地域に対して出入しているからである。<br>5. 蕃殖期におけるエナガは2年間の記録において全年の最大個体数の30%以下が調査地域で蕃殖した。又蕃殖の成功率は70%前後であった。増加率は約140%と180%を示している。<br>6. 個体数の季節的変動の型は,1) 1~3月の年間最低値を示しながら変動の少い時期。2) 4~5月の一家族ずつ出現するため急増する時期。3) 6•7月の年間最高値を示す時期。4) 8~12月の全量は年間最高値に及ばないが,10羽代から30羽代の間を急減急増の変動をくりかえす時期から成っている。<br>7. 個体の集合状態の季節的変動は,1) 2~4月の番を組む時期,2) 5月の家族群をなす時期,3) 6•7月の大合同群を形成している時期,4) 8~10月の中•小合同群をなしている時期。5) 11~1月の冬季群の時期,というようにくりかえされる。この変動は地域的に見ると,番では全地域に個体が散在した状態であり,家族群の行動力がついて来ると,いちじるしく集結して個体の偏在した状態を示す。この偏在は中•小合同群として分解すると共に地域的にも分散の傾向へすすみ,冬季の行動圏を形成するに至る。<br>8. 集合状態の季節的変動の循環の中で,調査地域内の個体が他の地域とつながりを持っていることがあきらかであり,夏季における大合同群により,より大きな地域とより多くの仲間との生活を経験していることは注目に値する。<br>9. 調査地域における冬季群はこの約120km<sup>2</sup>の帯状地帯に,およそ1~2群を含み,全個体数が20羽以下位であるが,他の群が他地域から時々出現する。一方早く分出した群が姿を消すことがあり,内部の代謝が認められる。
著者
張 淑梅
出版者
日本福祉大学経済学会
雑誌
日本福祉大学経済論集 = The Journal of Economic Studies (ISSN:09156011)
巻号頁・発行日
vol.53, pp.71-87, 2016-09-30

本稿は, 近年脚光を浴びている共有型経済に注目し, その中核的要素の1 つである協働的消費に焦点を当てて, 経験価値の創出によるサービス・イノベーションのあり方について議論するものである. イノベーションを実現させる最新の事例分析を通じて, 成功したビジネスモデルの本質が消費者の潜在的需要を見抜き, 優れた経験価値の提供にあることを明らかにする. その上で, 既存の企業が共有型経済のトレンドに適応すべく, 経験価値の観点から自社のサービス定義を再考し, その提供方法を実験的に見直すべきであることなど, サービス・イノベーションを実現させるための戦略と課題について考察する.
著者
後藤 祐一
出版者
日経BP社
雑誌
日経ビジネス (ISSN:00290491)
巻号頁・発行日
no.1364, pp.161-164, 2006-10-30

10月22日に投開票が行われた衆院議員神奈川16区の補欠選挙で、民主党の公認候補として立候補した私は、自由民主党の公認候補である亀井善太郎氏に敗北しました。 衆院議員を9期務めた元農林水産大臣の亀井善之氏の死去に伴う今回の選挙で、長男の善太郎氏が父親の地盤を守った形となりました。 今回良い結果を残せなかった原因について、いろいろな見方があるとは思います。
著者
浜崎 盛康 川元 恵美子 Hamasaki Moriyasu Kawamoto Emiko
出版者
琉球大学法文学部
雑誌
人間科学 : 琉球大学法文学部人間科学科紀要 = Human sciences : bulletin of the Faculty of Law and Letters, University of the Ryukyus Department of Human Sciences (ISSN:13434896)
巻号頁・発行日
no.33, pp.1-16, 2015-09

沖縄県南城市の久高島はイザイホーに代表される神の島として知られるが、高齢化がすすんでおり、55歳以上の高齢者が島の人口に占める割合は40%にもなる。しかし、島には入所型の介護施設がないため、高齢で要介護状態になると島を離れ島外の老人ホーム等に入所し、そこで亡くなり死後に島に戻るという現実がある。このことは島では、「連れて行かれる」と表現する事態であり、スピリチュアルペインを生じさせるものである。本稿は、久高島の調査に基づいて島におけるそのようなスピリチュアルペインを確認し、これに対する島の取り組みが福祉制度におけるスピリチュアルケアとして捉えられることを示し、さらに、その際固有の信仰を尊重することも必要であるということを論じるものである。
著者
松山 洋平 マツヤマ ヨウヘイ Matsuyama Yohei
出版者
同志社大学一神教学際研究センター(CISMOR)
雑誌
一神教世界 = The world of monotheistic religions (ISSN:21850380)
巻号頁・発行日
vol.1, pp.65-77, 2010-02-28

本稿の目的は、アメリカ合衆国で活躍するイラク出身のウラマー、ターハー・ジャービル・アル=アルワーニーの提起する「クルアーンの主権」理論と、そこから導出される政治論の意味、及びアルワーニーの思想全体に与えるそのインパクトを考察することにある。「クルアーンの主権」理論は、神の最終啓示であるクルアーンを啓示「封緘」以降の時代を生きる人間の行為規範における最高権威として規定し、クルアーンを人間的読解によって解釈する学的努力の必要性を主張する。それは、預言の「封緘」以前に適用されていた、強制的・直接的介入に基づく「神的主権」とは性質を異にする、神の新たな主権形態である。またアルワーニーは、「クルアーンの主権」実現の手段としてジハードを定義し、独自の政治論を展開する。この「クルアーンの主権」理論は、アルワーニーが提起する諸言論の理論的素地として、また「ウラマー」が発信する新しい「形式」のイスラーム思想の萌芽として認識することが可能である。
出版者
日経BP社
雑誌
日経エレクトロニクス (ISSN:03851680)
巻号頁・発行日
no.840, pp.96-107, 2003-02-03

日本で生まれ,日本の消費者が育てたデジタル家電がついに世界市場へとはばたく。日本の電子産業における新たな柱となったデジタル家電が,米国へ,欧州へ,そしてアジアの他国へと飛び出す。パソコンのように他国から入ってきた製品とは違い,日本がイニシアチブを握れる可能性が高い。
出版者
日経BP社
雑誌
日経ビジネス (ISSN:00290491)
巻号頁・発行日
no.1234, pp.62-66, 2004-03-22

「客の客に営業に行ってるか」。営業を統括する五十嵐斌副社長は、この2年間、全国の営業拠点にふらりと現れては、こんな問いかけを繰り返してきた。 繊維や布地(テキスタイル)、プラスチック…。扱う商品が何であれ、量をさばいてくれる川中の問屋や代理店こそが東レの顧客だった。それでは低収益の素材メーカーから変われない。