著者
廿日出 里美 Satomi Hatsukade
出版者
安田女子大学
雑誌
安田女子大学紀要 = Journal of Yasuda Women's University (ISSN:02896494)
巻号頁・発行日
no.50, pp.141-148, 2022-02-28

本研究の目的は、来るべきAI時代に備えてAIとは異なる生身の人間の「感覚力」に着目し、人とかかわる職に就く人々に向けた研修プログラムを開発することにある。これまでの研究においては、人称の身体感覚を手がかりに、パフォーミング・アーツのワークショップにおける長期的フィールドワークを通して、対人関係専門職に就く人々を想定した感覚力の拡張を目指すプログラムの開発及び検討を行った。本論では、人称の身体感覚を拡張するワークのなかでも、①自己の境界と溶解の身体感覚、②認識主体と認識対象との一体化、③自己や周囲との対話的なやりとりに着目し、対人援助職の専門家の養成や研修で重視すべき身体感覚について、関連する研究の動向や過去に行った実践的な取り組みに照らし、考察する。
著者
磯部 光平 長谷川 佳祐 伊藤 忠彦
雑誌
研究報告セキュリティ心理学とトラスト(SPT) (ISSN:21888671)
巻号頁・発行日
vol.2018-SPT-29, no.50, pp.1-6, 2018-07-18

暗号鍵管理デバイスは,暗号技術を安全に利用するために広く使われてきた.昨今では,エンドユーザ自身が市販されている暗号鍵管理デバイスを調達し,任意のサービスで使用する事例も急激に増加している.そのような事例の代表例が 「仮想通貨用ハードウェアウォレット」 となる.本稿では,エンドユーザが暗号鍵管理デバイスを調達するうえで,考慮 ・ 注意すべき点の検討を行う.
著者
大友 翔一
雑誌
情報処理学会論文誌 (ISSN:18827764)
巻号頁・発行日
vol.63, no.3, pp.733-741, 2022-03-15

近年,人工衛星やビッグデータ,リモートセンシング技術の発達が目覚ましく,これら技術の経済分野への応用も急速に拡大している.特に,人工衛星が撮像した夜間光の強度と,国内総生産,雇用,人口,教育などの様々な経済・社会指標と相関関係にあることが明らかになってきた.そこで本稿では,まず初めに夜間光画像にラスタ処理を行い,センシングの際の夜間光画像の特徴に関して述べる.次に,観光地としての新潟県魚沼郡湯沢町スキー場および周辺エリアを事例に,経済・社会データを確認する.そして,夜間光と湯沢町における観光客数や各種統計データとの関連性について時間・地理空間の両面から論述する.また既存のマクロ経済指標だけでは,同一市区町村内の地域経済に関して読み取ることは難しいが,夜間光を使用することで,これらをより詳細に検討できる可能に関して言及する.
著者
カルマール 良子 今西 香寿
出版者
日本体育学会発育発達専門分科会
雑誌
発育発達研究 (ISSN:13408682)
巻号頁・発行日
vol.86, pp.44-51, 2020-03

Previous studies have shown that the use of a baby-walker during the first year after birth of a baby, when the motor skill is most significantly developed, may affect the subsequent development of the child. However, since trends in use of other infant equipment have not been investigated, it is not clear what kind of infant equipment is used at each stage of the infantile development. The present study was usage survey of infant equipment, including those other than baby-walkers, for newborns and infants during their first year of life. The survey was conducted by means of a questionnaire targeting 612 infants in Hyogo, Okayama, and Tottori prefectures in Japan, resulting in 307 valid responses, which have revealed their usage of infant equipment. Some items of infant equipment that are used for a longer time than baby-walkers may restrict infant. While the infant equipment increases the safety of the lives of infants, our data suggests the possibility that those devices may also limit their self-directed, which is important for gross motor development.
著者
河合 直聡 三木 洋平 星野 哲也 塙 敏博 中島 研吾
雑誌
研究報告ハイパフォーマンスコンピューティング(HPC) (ISSN:21888841)
巻号頁・発行日
vol.2022-HPC-183, no.18, pp.1-9, 2022-03-10

限られた電力,設置面積で最大の性能を得られるスーパーコンピュータシステムを実現するためには,GPU 等の演算加速装置の導入が不可避となりつつある.汎用 CPU 向けに Fortran や C/C++ で記述され,OpenMP で並列化されたプログラムを CUDA 等を使って GPU 向けに書き直すことはコストがかかる.OpenMP にはバージョン 4.0 以降は GPU 等でプログラムを実行するオフローディング機能がサポートされている.本研究では,この機能を用いて,演算律速なアプリケーションである N 体計算およびメモリ律速なアプリケーションである ICCG 反復法に適用し,NVIDIA A100,AMD MI100 上での性能評価を実施した.結果,N 体計算では A100 上では CUDA 実装の 58.3%,MI100 上では HIP 実装の 71.9% の演算性能を確認した.また,ICCG 法では Stream Triad ベンチマークで計測したメモリースループットの 88%(A100)と 53%(MI100)を確認した.以上の結果から,OpenMP での GPU オフローディングは,MI100 上での ICCG 法を除いて,実用的な範囲と考える.
著者
鄢 玲
出版者
平安女学院大学
雑誌
平安女学院大学研究年報 = Heian Jogakuin University Journal (ISSN:1346227X)
巻号頁・発行日
no.17, pp.70-78, 2017-03-31

Take Xiamen University Tan KahKee College Japanese language students’ article“Application forstudy abroad”as the object of the research, to carry on the investigation about the Chinese expression,and we analysis the reasons for the expression style. We got below reasons: first, in the reason for thestudy abroad, allstudents always use the expression sucn as “I can be … by study abroad”, we do aquestionnaire survey, then we find that it is not only because of the differencebetween the Chineseand Japanese language expression, but also because about 20% of the students have a groundlessbeautiful illusion for study abroad. And the second, in the plan for the study abroad, most of thestudents only show the willing to hard study, but no Substantive plan. This phenomenon is due to avariety of reasons, such as society circumstance of loving yelling slogans, Chinese conditionsaboutslogans and practice always falling apart, education model of students’ loving use beautifulwords and sentences which from the very beginning study.
著者
オットー ハロー 鈴木 彰雄
出版者
日本比較法研究所
雑誌
比較法雑誌 (ISSN:00104116)
巻号頁・発行日
vol.50, no.1, pp.117-141, 2016-06-30

「人間の尊厳」(基本法1条1項)は人(Person)の本質的メルクマールであるから,自律的な死の決断を尊厳ある死の決断と同視することはできない。尊厳ある死を問題にする場合に考慮すべきことは,適切な死の看取りである[以上Ⅰ]。 自殺幇助の不可罰性が生命保護の保障人にも当てはまるか否かについて議論がある。その保障人的地位は自殺者の自己答責的な決意にその限界を見出す。保障人的地位といえども,保護されるべき者に対する「後見人としての地位」を基礎づけるものではないからである[以上Ⅱ]。 自殺関与と要求による殺人の区別について,判例と一部の文献は,部分的に修正された行為支配説を拠り所とする。たしかに,自分自身を殺すことと自分を殺させることは同じでないが,オランダやベルギーで積極的な臨死介助が拡大的に認められている現状には問題がある[以上Ⅲ]。 自殺を決意した者の自由答責性について,「免責による解決」と「同意による解決」が主張されているが,前者の見解には問題がある。法的な意味では答責的に行為するが,判断力ないし理解力が損なわれている者の自殺は,法共同体の連帯的な救助によって阻止されるべき事故である。自由答責的になされたとはいえない自殺を事故(刑法323a条)と解釈し,救助行為の必要性と期待可能性によってその可罰性を限定するべきである。そのために,自殺は刑法323c条の意味で事故であるということを法文で明確にすることが望ましい[以上Ⅳ]。 近年の議論は,組織化された自殺幇助の問題に集中しているが,営利的な自殺幇助を刑法によって禁止することは必ずしも得策ではない。自殺の介助は「生への介助」と「死にぎわの介助」を意味するべきもので,「死への介助」であってはならない。医師らは今日,合法的な臨死介助の可能性を手にしているので,緩和医療とホスピス医療を拡張するという方向を目指すべきである[以上Ⅴ]。
著者
大原 貴都 藤平 達 茂岡 知彦 新田 泰広 岩崎 力 杉山 達也
雑誌
研究報告システムLSI設計技術(SLDM)
巻号頁・発行日
vol.2014-SLDM-165, no.5, pp.1-6, 2014-03-08

組込みシステムの開発効率向上のため,MATLAB 注 1/Simulink 注 2を用いたモデル駆動開発の適用が進められている.モデル駆動開発の一つである SILS では,S-Function ブロックを用いてソフトウェアをモデル上に取り込む.しかし,S-Function ブロックを用いた際,ブロック間の信号量に比例してシミュレーション速度が低下する課題がある.本稿では,共有ライブラリを用いることで Simulink ブロック間の信号量を削減し,高速なシミュレーションを可能とするモデル構成を提案する.提案手法を業務用空調機器に適用し,暖房のシミュレーション時間を約 90%削減し,本提案手法の有効性を確認する.
著者
神長 英輔
出版者
新潟国際情報大学情報文化学部
雑誌
新潟国際情報大学情報文化学部紀要 (ISSN:1343490X)
巻号頁・発行日
vol.15, pp.1-14, 2012-04-01

1950 年代,全国各地で若者の合唱サークルが組織された.1940 年代末に起こったこの運動はうたごえ運動と呼ばれた.うたごえ運動は文化運動,労働運動,反核平和運動と連携し,1950年代半ばに最盛期を迎えた.しかし,早くも1960 年代前半には人気を失った.この運動はどのようにして同時代の若者の心をとらえたのか.またなぜ若者の心はうたごえ運動から離れていったのか.この論文は進化論の観点から文化を理解するミーム学の知見を用いてこの疑問に答える. ミームとは模倣であり,遺伝子に似た「文化の自己複製子」として理解される.うたごえ運動とは「正しく,美しく歌え」などの指示のミーム,「歌の力によって大衆を組織し,世を動かす」という物語のミーム,ミームとしての歌からなるミーム複合体である.うたごえ運動が拡大し,一転して衰えた過程はこれらのミームが複製された(されなくなった)過程として説明できる.
著者
北村 英祐
出版者
麻布大学
雑誌
麻布大学雑誌 = Journal of Azabu University (ISSN:13465880)
巻号頁・発行日
vol.23, pp.70-71, 2012-02-29

犬における,慢性経過の皮膚病のうち,特に背側の脱毛の症例に対し,通常の治療に加え,リゾープス菌麹抽出生理活性物質である「R&U」を用いたところ,それまでの治療では奏功しなかった脱毛改善し,著明な治療効果が認められたため,その概要を報告する。
著者
北條 勝貴
出版者
国立歴史民俗博物館
雑誌
国立歴史民俗博物館研究報告 = Bulletin of the National Museum of Japanese History (ISSN:02867400)
巻号頁・発行日
vol.148, pp.7-38, 2008-12-25

古代日本における神社の源流は、古墳後期頃より列島の多くの地域で確認される。天空や地下、奥山や海の彼方に設定された他界との境界付近に、後の神社に直結するような祭祀遺構が見出され始めるのである。とくに、耕地を潤す水源で行われた湧水点祭祀は、地域の鎮守や産土社に姿を変えてゆく。五世紀後半~六世紀初においてこれらに生じる祭祀具の一般化は、ヤマト王権内部に何らかの神祭り関係機関が成立したことを示していよう。文献史学でいう欽明朝の祭官制成立だが、〈官制〉として完成していたかどうかはともかく、中臣氏や忌部氏といった祭祀氏族が編成され、中央と地方を繋ぐ一元的な祭祀のあり方、神話的世界観が構想されていったことは確かだろう。この際、中国や朝鮮の神観念、卜占・祭祀の方法が将来され、列島的神祇信仰の構築に大きな影響を与えたことは注意される。律令国家形成の画期である天武・持統朝には、飛鳥浄御原令の編纂に伴って、祈年祭班幣を典型とする律令制祭祀や、それらを管理・運営する神祇官が整備されてゆく。社殿を備えるいわゆる〈神社〉は、このとき、各地の祭祀スポットから王権と関係の深いものを中心に選び出し、官の幣帛を受けるための荘厳された空間―〈官社〉として構築したものである。したがって各神社は、必然的に、王権/在地の二重の祭祀構造を持つことになった。前者の青写真である大宝神祇令は、列島の伝統的祭祀を唐の祠令、新羅の祭祀制と対比させつつ作成されたが、その〈清浄化イデオロギー〉は後者の実態と少なからず乖離していた。平安期における律令制祭祀の変質、一部官社の衰滅、そして令制以前から存在したと考えられる多様な宗教スポットの展開は、かかる二重構造のジレンマに由来するところが大きい。奈良中期より本格化する神階制、名神大社などの社格の賜与は、両面の矛盾を解消する役割を期待されたものの、その溝を充分に埋めることはできなかった。なお、聖武朝の国家的仏教喧伝は新たな奉祀方法としての仏教を浮かび上がらせ、仏の力で神祇を活性化させる初期神仏習合が流行する。本地垂迹説によってその傾向はさらに強まるが、社殿の普及や神像の創出など、この仏教との相関性が神祇信仰の明確化を生じた点は無視できない。平安期に入ると、律令制祭祀の本質を示す祈年祭班幣は次第に途絶し、各社奉祀の統括は神祇官から国司の手に移行してゆく。国幣の開始を端緒とするこの傾向は、王朝国家の成立に伴う国司権力の肥大化のなかで加速、やがて総社や一宮の成立へと結びつく。一方、令制前より主な奉幣の対象であった畿内の諸社、平安京域やその周辺に位置する神社のなかには、十六社や二十二社と数えられて祈雨/止雨・祈年穀の対象となるもの、個別の奉幣祭祀(公祭)を成立させるものが出現する。式外社を含むこれらの枠組みは、平安期における国家と王権の関係、天皇家及び有力貴族の信仰のあり方を明確に反映しており、従来の官社制を半ば超越するものであった。以降、神社祭祀は内廷的なものと各国個別のものへ二極分化し、中世的神祇信仰へと繋がってゆくことになるのである。
著者
橋口 幸夫 Yukio HASHIGUCHI
巻号頁・発行日
vol.44, pp.149-174, 1995-03-31
著者
上野 隆生
出版者
和光大学現代人間学部
雑誌
和光大学現代人間学部紀要 = Bulletin of the Faculty of Human Studies (ISSN:18827292)
巻号頁・発行日
vol.11, pp.7-22, 2018-03-13

"Balilla" reminds us of the Opera Nazionale Balilla (ONB) of the Fascist regime. ONB was typically the totalitarian Fascist's way of educating the youth.This article focuses on the images of the ur-Balilla and the "Italianità" (being Italian) in Italy during and after WWI. Those two concepts have much to do with the process and the background of building up the Italian national consciousness. The analysis of the relationship between these two concepts and the Italian national consciousness is worthwhile in unraveling the structure and the formation of the Italian national consciousness.Probing into the columns of Luigi Bertelli (or Vamba, his nom du plume) in Il giornalino della domenica, some aspects could be clarified. Firstly, Balilla is integral to the "Italianità", and secondly, both of Balilla and the “Italianità” symbolize Risorgimento as well as Irredentismo. Those Vamba’s images appears to correspond to those of the Fascist regime. But in depth his images were different from those of the Fascist regime.Vamba takes it very seriously that children should be treated as independent human being. Therefore, citizenship education is quite essential for children and children have the right to commit themselves in politics. Underscoring the importance of Risorgimento and Irredentismo, Vamba seeks to build up the Italian national consciousness, which at that time was still precarious. But Vamba did not participate in the Italian Nationalist Association.The probabilities are that his way of thinking could not correspond to such associations as Opera Nazionale Balilla of Fascist regime.