著者
木山昇 高橋利光 祖父江恒夫 相川哲盛
雑誌
マルチメディア、分散協調とモバイルシンポジウム2014論文集
巻号頁・発行日
vol.2014, pp.16-23, 2014-07-02

近年,自動車のCAN情報を利用せず,スマートフォンに搭載されるセンサのみを活用するテレマティクスサービスの普及が進んでいる.しかし,例えば安全運転診断などの加速度情報を活用するサービスでは,スマートフォンの加速度センサの軸を車両の向きと一致させる必要がある.そのため,他のアプリケーションを並行して利用する場合には,画面の視認性が低いという問題点があった.そこで本稿では,任意の角度に傾斜して固定されたスマートフォンを利用して,自動車の3軸加速度を算出する手法を提案する.提案手法では,まず加速度及び方位角の変化量から,自動車の静止状態及び直進状態を検出する.そして,両状態を検出した時の加速度データを用いて,スマートフォン基準の座標軸を自動車基準の座標軸に変換する回転行列を算出する.これにより,両状態検出以降は,スマートフォンの加速度センサ値から自動車の3軸加速度を算出することができる.評価実験の結果,提案手法による自動車の進行方向加速度の算出値は,従来手法と比較して96%の確率で±0.05G以下の誤差分布であり,急加減速(±0.5G)を検出する運転特性診断機能などに活用可能な精度で加速度を算出できることが確認できた.
著者
Hideki Nagase Kei-ichi Enjyoji Midori Shima Kenji Kitazato Akira Yoshioka Hidehiko Saito Hisao Kato
出版者
The Japanese Biochemical Society
雑誌
The Journal of Biochemistry (ISSN:0021924X)
巻号頁・発行日
vol.119, no.1, pp.63-69, 1996 (Released:2008-11-18)
参考文献数
37

Our previous study has shown that depolymerized holothurian glycosaminoglycan (DHG) has two different inhibitory activities in the blood coagulation cascade: heparin cofactor II-dependent thrombin inhibition; and antithrombin III- and heparin cofactor II-independent inhibition of the intrinsic factor Xase complex [Nagase et al. (1995) Blood 85, 1527-1534]. In the present study, the effect of DHG on the activation of factor VIII and factor V by thrombin was examined with purified human components. DHG inhibited the activation of factor VIII by thrombin at concentrations exceeding 80nM, but not the activation of factor V by thrombin at concentrations of up to 8μM. On Western blot analysis, DHG inhibited the cleavage of factor VIII light chain at concentrations exceeding 0.8μM. The interaction between DHG and factors VIII and V and thrombin was examined with a DHG-cellulofine column. DHG had strong affinity for factor V and thrombin, but slight affinity for factor VIII. The interaction of DHG with thrombin was analyzed, using fluorescein isothiocyanate-labeled DHG. One mole of DHG bound 2mol of thrombin, with a dissociation constant (Kd) of 3.04×10-6M. These results suggest that DHG interferes with the interaction between thrombin and factor VIII, probably by making a binary complex through the anionic binding exosite II of thrombin.
著者
見野 耕一 中嶋 義文
出版者
医学書院
雑誌
精神医学 (ISSN:04881281)
巻号頁・発行日
vol.52, no.3, pp.211-220, 2010-03-15

はじめに 無床総合病院精神科の危機について語られることが最近目立ってきている。無床総合病院精神科の診療特徴が人的な不足などの問題を生じさせ,それがある時点を越えると危機的な状況に発展してしまう。本稿では,危機的な現状を検証し,その状況に対する臨床現場での取り組みを紹介し,今後の課題を論じてみたい。 有床総合病院精神科の施設数と精神科病床数についてみてみると,日本総合病院精神医学会の調査では,2002年度は272施設,21,734床であったが,2008年度は239施設,17,319床へと減少,すなわち精神科病床数は2002年度から比べると2割減少している。調査後も休止したり診療をやめたりする病院が続いている。地域の中核病院などの総合病院精神科病棟が医師不足などから閉鎖・縮小されたり,精神科外来そのものが総合病院から消失しており,わが国の総合病院精神科はこれまでにないほど危機的な状況にさらされている5)。日本病院団体協議会の調査によると,2007(平成19)年度の病床休止もしくは返還は,産婦人科,小児科に次いで精神科が3番目であった。 無床総合病院精神科の場合はもっとも減少が顕著である。日本総合病院精神医学会無床総合病院精神科委員会の調査によれば,2009年8月現在,精神科常勤医のいる無床総合病院精神科の病院数と常勤医数は178病院,268名である(シニアスタッフ3名以上の大学病院など除く)。調査2)を始めた1999年より122病院が減少(41%)している。2008年度は,10病院が閉鎖となっている。 厚生労働省の調査では,精神科専門の医師数は微増しているが,この10年で診療所と精神科病院に勤める医師数は増加したのに対し,総合病院の医師数は1割減となっている。 減少の原因は複合的である。病院間では病院統廃合がまず挙げられるが,病院内では精神科医療の診療報酬が低く抑えられているため,診療科間の比較では不採算とみなされやすく,経営の観点から閉科となることが挙げられる。最大の理由は,多忙さにある。インセンティブのない多忙さは忌避され,常勤医の異動(開業など)に伴い欠員が生じた際に赴任を希望する精神科医がおらず,結果として非常勤医による外来診療をしばらく続けた後に閉鎖となるパターンが多い。診療報酬改定により,自殺未遂で入院した患者を精神科医が診察すると診療報酬が加算されたり,がん対策基本法で緩和ケアチームに精神科医の関与が求められるなど,精神科医の役割は増しているが,その主体となる総合病院精神科医自体が減少しているため,ニーズに応えられないのが現状である。
著者
堤林 剣 堤林 恵
出版者
慶應義塾大学法学研究会
雑誌
法學研究 : 法律・政治・社会 (ISSN:03890538)
巻号頁・発行日
vol.81, no.8, pp.109-124, 2008-08 (Released:2008-00-00)

資料 一 解題二 第四版のための端書三 初版前書四 第三版前書五 はじめに六 第一部征服の精神について 第一章 ある特定の時代の社会状態において戦争と両立しうる徳について 第二章 戦争に関する近代の諸国民の特性について 第三章 ヨーロッパの現在の状況における征服の精神について 第四章 利益によってのみ行動する戦士集団について 第五章 征服の体制において軍人層が堕落することのもう一つの原因
著者
田中 純一
出版者
一般社団法人日本物理学会
雑誌
日本物理学会誌 (ISSN:00290181)
巻号頁・発行日
vol.69, no.2, pp.83-92, 2014-02

欧州原子核研究機構(CERN)においてATLAS実験とCMS実験は2012年7月4日に「ヒッグス粒子らしい新粒子を発見した」として合同セミナー及び記者会見を行った.その粒子の性質については十分理解できていないことから学術的な正確さを期すため「らしい」という言葉を補ったが,この研究に携わった多くの研究者にとって約50年にわたって探し続けてきた「ヒッグス粒子」発見の歴史的な発表であった.素粒子の標準理論には12種類のフェルミオン(クォークとレプトン),4種類のゲージボソン,そして1種類のヒッグス粒子,合計17種類の素粒子が存在する.この17個の素粒子によりこの世界の物質とその間の相互作用が非常に上手く記述できることがこれまでの数々の実験から示されてきた.しかしながら,この17個の素粒子の中でヒッグス粒子は唯一その存在が実験で確認されていなかった粒子で,他の素粒子に「質量を与える」メカニズムの証拠となる素粒子である.そもそもゲージ不変性を基本原理としている標準理論では素粒子は一般に質量を持つことができない.そのためW/Zボソンや電子等の素粒子が質量を持っているという観測事実は標準理論では説明できないように思えるが,1964年にピーター・ヒッグスらは,標準理論に自発的対称性の破れを応用することでローカルゲージ不変性を保ちつつ,素粒子に質量を与えることに成功した.これがヒッグス機構であり,その副産物としてヒッグス粒子と呼ばれるスカラー粒子が予言された.したがって,素粒子の質量の起源であるヒッグス粒子を発見することは標準理論を完成させる上で必要不可欠であり,ある意味標準理論において残された最後の,そして最重要研究テーマであった.2012年7月,標準理論のヒッグス粒子探索の研究においてATLAS実験は統計的有意度5.9σ,CMS実験は5.0σの事象超過を質量126GeV付近に発見した.先に述べたようにこの時点では「らしい」という言葉を補っていたが,2012年12月まで取得したすべてのデータを使って研究を進めた結果,2013年3月に結合定数の強さが標準理論と無矛盾であることやスピン・パリティが0^+であるという強い示唆を得たため,この新粒子は「らしい」がとれて晴れて"a Higgs boson"となった.その根拠となる様々な結果は本文に譲って,ここでは3つの結果を挙げる.標準理論のインプットパラメータの一つであるヒッグス粒子の質量はATLAS実験125.5±0.2(stat.)^<+0.5>_<-0.6>(syst.)GeV,CMS実験125.7±0.3(stat.)±0.3(syst.)GeVである.標準理論のヒッグス粒子に対する信号の強さ(標準理論であれば1となるパラメータ)はATLAS実験1.33^<+0.21>_<-0.18>(125.5GeV),CMS実験0.80±0.14(125.7GeV)で標準理論のヒッグス粒子の信号と無矛盾である.また,この粒子のスピン・パリティについては0^+に対して0^-,1^±,2^+のモデルは97.8%CL(以上)で排除した.このヒッグス粒子が標準理論のヒッグス粒子かどうかをより精度良く見極めるためには更にデータが必要である.標準理論の素晴らしさをより一層実感するか,それとも標準理論を超えた物理を垣間見るか,LHC実験の再開が非常に楽しみである.
出版者
岡山県総合畜産センター
雑誌
岡山県総合畜産センター研究報告 = Bulletin of the Okayama Prefectural Center for Animal Husbandry & Research (ISSN:09154728)
巻号頁・発行日
no.17, pp.45-49, 2008-03

「晴れの国おかやま国体」等で使用されたバイオマスプラスチック製弁当容器の堆肥化処理の可能性を検討した。1.弁当容器が概ね目視できない程度に分解されるのに要した日数は、10日から12日程度であった。2.弁当容器投入の前後1週間の堆肥発酵温度は、概ね60℃以上あり、弁当容器投入による影響は少なかった。3.コマツナ種子の発芽障害は見られず、堆肥成分の値にも大きく影響することはなかった。よって、堆肥中では、大量のバイオマスプラスチック製弁当容器を効率よく処理することができ、作物に対して安全性の高い堆肥を生産することが可能である。
著者
高橋 徳幸 伴 信太郎
出版者
名古屋大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2016-04-01

医師の共感的態度醸成の必要性が叫ばれるなかで、医師の共感的態度は経年的に低下することが定説となっている。しかしこれは「患者の視点からの量的検証」を経たものではない。よって本研究は、我々が開発した患者の視点から医師の共感を評価する質問紙票であるCARE Measure 日本語版(Aomatsu et.al, 2014)を踏まえて作成された、医師の診療の質を患者の視点から評価する尺度C Q I - 2 の信頼性・妥当性検証を行うことを目的としている。それに先立ち、CARE Measure日本語版の評価者間信頼性に関して明らかにされていなかったことから、本研究で検討を行っている。その結果、評価者間信頼性を検討するために40枚程度の質問紙票を回収する必要があることが明らかになった。これは過去に他国で検討された数値と比較しても妥当な値であり、日本語版CARE Measureの汎用性を高める意義がある。一方、本研究では医師の共感的態度の経年的低下という定説に対して、質的探索によるアプローチも行っている。すなわち、既に我々は医学生・初期研修医への質的探索により「共感の量的減少ではなく質的変化」の可能性を示した(Aomatsu et.al, 2013)。これを踏まえて、本研究では後期研修医・指導医についても共感に関する認知構造を質的に探索し、共感の認知構造に関する新たな経年的変化モデルを構築することを目的としている。これまでに、患者との信頼関係構築のためのコミュニケーションスキルとして共感を特に重視する総合診療科に焦点を当て、そこで研修をする後期研修医(専攻医)に対して、2017年度は質的探索を行った。その結果、専攻医は臨床経験によって認知的共感を獲得し、それを主に用いながらも、専攻医自身の出産といった非職業的経験によって感情的共感をも行っていることが明らかになった。

2 0 0 0 OA 大同類聚方

著者
安倍真直
出版者
巻号頁・発行日
vol.巻23上・巻23下・巻27,
出版者
Museum of Nature and Human Activities, Hyogo
雑誌
人と自然 (ISSN:09181725)
巻号頁・発行日
vol.27, pp.1-11, 2016 (Released:2019-01-18)

ミシシッピアカミミガメ(Trachemys scripta elegans: 以下アカミミガメ)はアメリカ合衆国の一部と 隣接するメキシコ合衆国の北東部の在来種である.鮮やかな色彩に富んだ孵化幼体は,人気のペットと して世界的に長く親しまれてきたが,その一方でおびただしい数の個体が自然分布しない地域に持ち込まれ て野外に放され,定着してしまっている.その結果アカミミガメは,現在では南極大陸を除くすべての大陸 と,日本を含む温帯や熱帯の多くの島々に広がり,都市近郊を含む様々な環境で,繁殖個体群を確立してし まっている.そしていったん大規模な個体群として定着すると,在来のカメ類と競合し好ましくない影響を 与えることも珍しくなくなっている.ブリキ製のカメの玩具は何十年にもわたる日本の人気商品であり,第 二次世界大戦後は,重要な輸出品の一つともなってきた.日本における広範囲なアカミミガメ個体群の確立 に先立つ1920 年代から1950 年代にかけては,こうした玩具は,日本の在来カメ類に象徴される地味な色 のものによって特徴づけられていた.ところが1950 年代より後になると,玩具のカメはアカミミガメに典 型的な黄色,赤色,緑色といったより鮮やかな色の組み合わせを示すようになった.このような変化は,単 にアメリカ合衆国をはじめ玩具の輸出先での,より色鮮やかなものを求める需要を反影しただけである可能 性も完全には排除できない.しかしこの傾向が,ペット動物の貿易活動を通した多数の色鮮やかなアカミミ ガメの日本への輸入,そして続く日本の陸水域でのこのカメの定着や,数的優位化の進行の影響を受けて生 じたと捉える方が,よりありそうに思われる.つまり上記のような玩具のカメの色の切り替わりは,日本で 見られる典型的なカメ類における,外観構成の認識の文化的変遷を反映している可能性があり,もしそうで あるならば,アカミミガメは日本においてカメ類の外観の新しい文化的典型と認識され,実生活で遭遇する 事物を真似たアートの新たなモデルとなったとみなすことができる.
著者
関 幸彦
出版者
吉川弘文館
雑誌
日本歴史 (ISSN:03869164)
巻号頁・発行日
no.466, pp.p26-43, 1987-03

2 0 0 0 OA 禅と戒律

著者
平川 彰
出版者
愛知学院大学
雑誌
禅研究所紀要 (ISSN:02859068)
巻号頁・発行日
vol.6, pp.363-378, 1976-12-28
著者
石井 克
出版者
スポーツ史学会
雑誌
スポーツ史研究 (ISSN:09151273)
巻号頁・発行日
vol.29, pp.67-82, 2016 (Released:2017-06-08)

The purpose of this study is to clarify a modern sports ideology expressed in newspaper articles by focusing on their use of the term “Athlete”, which steadily increased in the Japanese media since around 1990. Firstly, it tried to explain why the term “Athlete” became a frequently used term by the media. The study considered it to the fact that the term was used by the UNESCO in the International Charter of Physical Education and Sport in characteristic ways, especially, in its Article 7 supplemented in 1991. Based on it, Japanese newspaper articles (Asahi and Yomiuri) in the 1990’s were analyzed. The findings indicate an emergence of new sports ideology, such as “Equality of pro-competition and non-competition”,“ Equality in the competition of healthy people and people with disabilities”“, Selfmanagement of the body”,“ Expansion and improvement of sports rights” and“ Sports as a selfexpression” in the Japanese media. The use of the term “Athlete” symbolizes the change in the recognition and category of modern sports, and opened a new discursive space. It also suggests a new perspective of sports, and international elements.