著者
田上 恵子 内田 滋夫 菊池 洋好 小暮 則和
出版者
公益社団法人 日本分析化学会
雑誌
分析化学 (ISSN:05251931)
巻号頁・発行日
vol.67, no.7, pp.405-411, 2018-07-05 (Released:2018-08-08)
参考文献数
20
被引用文献数
5

希土類元素の工業利用の増加に伴い,その環境負荷が増える可能性がある.将来,人への希土類元素の移行を推定するためには,土壌から農作物への移行係数(TF=可食部中濃度[mg kg−1-dry]/土壌中濃度[mg kg−1-dry])を求めておくことが有用である.本研究では特に水田土壌から玄米への移行に着目し,希土類元素としてLa,Ce,Pr,Nd,Sm,Eu,Gd,Tb,Dy,Ho,Er,Tm,Yb,LuについてTFを求めた.日本全国から98地点の水田土壌-玄米試料を収集し,土壌,玄米及び糠の元素濃度測定を誘導結合プラズマ質量分析法(ICP-MS)で行った.その結果,土壌から玄米への希土類元素のTFの幾何平均値の範囲は(0.42〜6.9) × 10−4であり大きな差は見られなかった.玄米中においては,軽希土類元素の方が糠に多く分布する傾向があることがわかった.
著者
英 晴香 長尾 慶子 久松 裕子 粟津原 理恵 遠藤 伸之 原田 和樹
出版者
日本調理科学会
雑誌
日本調理科学会大会研究発表要旨集
巻号頁・発行日
vol.25, 2013

【目的】抗酸化能の高い中国料理の調製を目指し、今回は"紅焼白菜"をとりあげ、具材の魚介類ならびに野菜・キノコの種類を変えて抗酸化能をそれぞれ検討し、食材の組み合わせにより抗酸化能を高める調理法を見出し提案する。【方法】白菜の煮込み料理である"紅焼白菜"の魚介類として、タラ、サケ、ボイル済みカニ、および加工品のカニカマボコとチクワをとりあげ、抗酸化能をそれぞれ測定し、抗酸化能の高い魚介類を選定した。野菜類においても、白菜、キャベツの原種であるケールおよびキノコ三種(エノキタケ、ブナシメジ、シイタケ)をとりあげ同様に抗酸化能を比較した。これらの結果をもとに、抗酸化能の高い食材に置き換えて作成した"紅焼白菜"をモデル料理とし、一般的な材料で作成した基本料理と比較した。各料理を凍結乾燥後、粉砕し、水および70v/v%エタノールで抽出し、測定に用いた。AAPHによりペルオキシラジカルを発生させ、化学発光(ケミルミネッセンス)法で活性酸素ペルオキシラジカルの捕捉活性を測定し、IC50値および抗酸化量値として求め、基本料理とモデル料理を比較した。【結果】カニの抗酸化能が他の魚介類に比べて有意に(p <0.05)高い結果となった。野菜では白菜に比べてケールの抗酸化能が特に高くなった。キノコの抗酸化能はエノキダケ>シイタケ>ブナシメジの順となった。結果をもとに魚介類はカニを用い、白菜の一部をケールに代替し、キノコはエノキダケに、さらに薬味のコネギとショウガを加えて調製したモデル料理の"紅焼白菜"では、基本料理に比べて抗酸化能が向上したことから、食材の組み合わせの工夫により嗜好性と健康面に配慮した大菜料理を提案できると判断した。
著者
大野 はな恵
巻号頁・発行日
2015-11-26 (Released:2017-10-23)

学位の種別: 論文博士 審査委員会委員 : (主査)東京大学教授 長木 誠司, 東京大学教授 河合 祥一郎, 東京大学教授 Hermann Gottschewski, 国際医療福祉大学教授 新美 成二, 東京大学 岩佐 鉄男

2 0 0 0 OA 絶句鈔

出版者
巻号頁・発行日
vol.[1],
著者
渡邊 俊彦 齊藤 佑一
出版者
日本知能情報ファジィ学会
雑誌
日本知能情報ファジィ学会 ファジィ システム シンポジウム 講演論文集 第28回ファジィシステムシンポジウム
巻号頁・発行日
pp.991-993, 2012 (Released:2013-07-25)

コンピュータビジョンの分野では,カメラやプロジェクタなどの光学系の計測データを前提とするため,ノイズに強いモデリングアルゴリズム開発が重要な課題の一つである.RANSACアルゴリズムは広く適用されているが,ノイズの割合が大きくなるにつれて,その精度が劣化することが知られている.本研究では強化学習に基づくファジィRANSACを提案し,数値実験によりその基本性能を評価した.従来技術と比較してロバスト性が改善されることを示した.
著者
飽本 一裕
出版者
日本保健物理学会
雑誌
保健物理 (ISSN:03676110)
巻号頁・発行日
vol.53, no.2, pp.123-127, 2018 (Released:2018-09-13)
参考文献数
21
被引用文献数
1
著者
砂澤 雄一
巻号頁・発行日
(Released:2017-06-01)

マンガ研究において、改稿の有無を確認しどのテクストをもって定本とするかは研究の第一歩である。改稿データを研究者が共有し、客観的に妥当だと認められたテクストを策定する作業は、今後のマンガ研究において欠くことのできない重要なステップであると考える。本稿ではこうした基礎研究を「生成論的研究」と位置づけ実践するとともに、今後の多くのマンガ研究で行われることを提唱するものである。\n\n宮崎駿の唯一の長編マンガ『風の谷のナウシカ』(以下『ナウシカ』と略す。アニメ版の同名作品を指す場合はその都度「アニメ版」と付す)は、「アニメージュ」連載時と「アニメージュコミックスワイド版」刊行時との間に相当数の異同が見られる。また、「腐海は、人類が汚染した大地を浄化するために生まれた生態系」というアニメ版のコンセプトが、マンガ版では相対化され、「腐海は、旧人類が人工的に作り出した清浄化システムであった」というものに変更されている。これは、読者の意表を突く「どんでん返し」だった。\n本稿は、改稿分析を通じて「改稿はなんのために行われたのか」と「〈どんでん返し〉を宮崎駿は何時の時点で着想したのか」という二つの点について考察することを目的としている。\nこのことについて、第1章では執筆経緯と当時の世界情勢、先行作品や後続作品との影響関係を、第2章では第1巻から第7巻までの具体的な改稿箇所を、第3章では先行論文について検証し分析した。\n \n『ナウシカ』は、1982年2月号から1994年3月号まで足かけ13年連載された。連載時には国内外で世界史的な出来事が立て続けに起こった。1986年4月チェルノブイリ原発事故、1989年1月昭和天皇崩御、2月手塚治虫死去、6月天安門事件、11月ベルリンの壁崩壊、12月冷戦終結、1990年10月東西ドイツ統一、1991年12月ソ連邦崩壊、1992年ユーゴスラビア解体などである。宮崎に最も大きな衝撃を与えたのはユーゴスラビア紛争であった。「人間は同じ過ちを何度でもする」と痛烈に感じたからだ。それは1983年に亡くなった母・美子の口癖であった「人間はしかたのないものだ」を思い出させた。母の言葉は、尊敬する司馬遼太郎と堀田善衛によって「人間は度しがたい」という言葉に昇華される。『ナウシカ』を終わらせようという時期に宮崎は〈マルクス主義をはっきり捨て〉、〈人間は度しがたい〉という〈ごくあたりまえのところ〉に〈もう一度戻〉った。それは母と同じ場所に立つことでもあった。\n この宮崎の内面の変化に呼応するように、作品内の時間の在り方も変化していった。初のオリジナル作品であった『砂漠の民』(1969-1970)は、ソクート人がどのようにして滅んでいったかを主人公テムの目を通して描かれている。父、親友、好意を寄せる少女、尊敬していた師が次々と殺されていくというかなり惨い物語である。『砂漠の民』は、予告編の段階ですでにソクート人が滅びることを告げており、時間は「滅び」へ向かってリニアに流れていた。\n1978年、宮崎が実質的に初監督をつとめたテレビアニメ『未来少年コナン』では、最終戦争後から物語を出発させるという変化が見られる。しかし、直線的に時間が進むという構造は『砂漠の民』と変わらなかった。ところが、1983年に刊行された『シュナの旅』に流れる時間はそれまでのものとは違っていた。〈いつのころからか/もはや定かではない/はるか昔か/あるいはずっと/未来のことだったか〉という書き出しで始まるこの作品では、時間は確定されていない。それは過去か未来かも定かではない。これは『ナウシカ』の描く世界が、産業革命を起点に考えれば西暦3800年くらいの未来を描いているにもかかわらず、その風俗が現代から見て過去のものに見えるという設定に通じる。\n 『ナウシカ』の連載後に制作された短編アニメ『On Your Mark』の絵コンテには〈永劫回帰シーン〉というメモが見られる。円環する時間の流れへの変化は、先に述べたマルクス主義を捨て生活実感に根ざした身体的思想とも言うべき境地に戻った宮崎の航跡と重なる。\n\n 『ナウシカ』のマンガ表現上の特徴は、コマ割が細かくコマ数が多いことにある。大ゴマが少なく、あったとしてもキャラクターのアップは少ない。ページ全体のレイアウトよりもコマの完成度に重きを置いている。「漫符」の使用頻度は低く、使われるものも限定的である。「光芒」と「集中線」の使用の多さは、『ナウシカ』が〈気づきのマンガ〉であることを示している。「音喩」については、コマを跨いだりするものはなく抑制的である。また音喩が描かれるレイヤーの位相が、一般的なマンガによく見られるように一番読者側にあるわけではないという特徴がある。音喩については宮崎独特の文法が存在するように感じられる。\n \nコミックス刊行時に行われた「加筆」「さしかえ」「描き直し」「挿入」「台詞等の変更」の5項目の改稿についての分析の結果は以下の通りであった。\n「加筆」は、改稿の中で最も多いものだが、その主な要因は連載時の描き込み不足を補うものであった。背景が緻密で情報量が多い、と言われることの多い『ナウシカ』であるが、連載中には緻密な描き込みができずにそのまま掲載された場合が少なくない。ただし、後半に見られる「加筆」には「血糊」を意図的に増やすなどの演出上の要請から行われたものが見られる。\n 「さしかえ」は、視線誘導に関係する可能性が高いもので、その意味で既成のマンガ文法との関係が問題になる改稿でもある。しかし、結果的に視線誘導の大幅な変更は見られない。\n 「描き直し」も同じ構図の絵であるために視線誘導の変化には関与しない。ただし、同じ絵をわざわざ描き直すために物語内容に対する作者の何らかの特別な意図が感じられる改稿である。「描き直し」は第7巻に多く、「庭の主」との対決の場面などに顕著である。\n 「挿入」はページ毎のものが多く、結果的に視線誘導に絡む場合は殆どない。挿入されたページもその他のページと同様で、特にコマ割に変化が見られるわけではない。挿入については第4巻の挿入が特徴的である。粘菌兵器のエピソードをかなり前倒しして投入したり、クシャナの母にまつわるエピソードを新たに入れたりしており、作品全体の構成が固まりつつある時期との関連が窺われる。\n 「台詞の変更」はコマ割に関わらないが、物語の内容に大きく影響を与える重要な改稿の一つである。特に第7巻に多い。これは「墓所の主」との対決の場面に見られ、挿入された新たな台詞と共に、宮崎が連載終了後にもこの場面を深化させようとしていたことが窺える。\n 以上の分析から、『ナウシカ』における改稿が「読みにくく」しているものかどうかについては、少なくとも「読みにくく」はなっていないという結論に達した。ただし、既存のマンガ文法に従う形で改稿が行われているとは考え難い。したがって既存のマンガ文法には従っていないものの、結果としては物語の展開が理解しやすくなり読みやすくなっているという場合が多い。強いて言えば「読みやすく」はなっていないとしても「わかりやすく」はなっていると言えそうである。「読みやすさ」は表現論的な分野に関わりが深く、「わかりやすさ」は物語論的な分野に関わりが深いという予感がするものの、今後の課題としたい。\n\n先行研究を「表現論的分野」「物語論的分野」「倫理の問題」の3分野に関して分析し、あわせて手塚治虫との関係について検証した。\n 表現論的な研究では阿部幸弘と久美薫を取り上げた。阿部は、『ナウシカ』が後半読みやすくなるのは宮崎が自身で作り上げようとしたオリジナルのマンガ文法が次第に機能するからだと述べている。久美薫は、映画の場面のつなぎ方の分析を援用し、後半読みやすくなるのはコマ割というよりはコマのつなげ方が巧みになるからであると述べている。その方法は映画的とも言え、この点を夏目房之介は「アニメからの逆輸入」と呼んでいる。\n 物語論的な研究では小山昌弘の「語り」の見地から分析した論考を取り上げた。小山は『ナウシカ』にナレーションが少ない理由と、その代替としての登場人物の内語について分析している。小山も『ナウシカ』は読みにくいが後半読みやすくなるとして、その理由をマンガ文法に従うようになるからだとしている。もっともコマ割自体は変化せず、最後までコマ数は多いままだとも述べている。\n 倫理の面から稲葉振一郎と夏目房之介を取り上げた。稲葉は『ナウシカ』における「青き清浄の地」が、実在するがたどり着くことのできないユートピアであるという点でノージックのユートピアの「枠」を超えた存在だと論じた。夏目は戦後マンガに流れていた手塚治虫的「生命倫理」が引き継がれている作品として『ナウシカ』を見ている。宮崎駿は手塚治虫の継承者だったというとらえ方である。\n『ナウシカ』における「どんでん返し」の時期について、久美はそれを『紅の豚』制作時、ユーゴスラビア紛争の時期と見、稲葉は冷戦構造が解消した時点と見ていた。二人ともその時点から宮崎が、『ナウシカ』の結末を変更せざるを得ない思想的立場に立ったと分析した。\n 以上の分析から、改稿の多くは連載時に十分時間をかけられなかった部分を補筆する形で行われているが、第4巻においては、全体像がほぼ固まった時点から遡って行われており、作品全体の整合性を保とうとしている様子が窺えること、また、改稿は一般的なマンガ文法にはよっていないため、必ずしも「読みやすく」はなっていないが、物語の内容的にはより深まりかつ理解しやすくなっているという結論を得た。\n 全体的な構想がまとまった時期は、第4巻の刊行時の1987年中頃にかけて、「どんでん返し」については第5巻の改稿が行われた時期に着想されたと考える。ただし、『シュナの旅』には『ナウシカ』における「庭」や「墓所」に相当する場面が登場するため、1983年頃には大本になるアイディアはあったと考えるべきである。また、「人間はしかたのないものだ」という母の考え方に、ユーゴスラビア紛争の激化に伴って戻ったと見ることもできる。1983年の『シュナの旅』刊行と母の死、1986年のチェルノブイリ原発事故、1991年からのユーゴスラビア紛争の激化などの要素が「どんでん返し」に至らせたと考えるのが妥当であろう。\n\n 最後に「文化人≒思想家」としての宮崎駿と、「町工場のオヤジ≒職人」としての宮崎駿の関係について検証した。宮崎は自ら「文化人ではなく町工場のオヤジでいたい」という旨の発言をしているが、結果として「文化人」と見なされることで、アニメ制作に好都合な面はあった。宮崎を、当初から「作家」として扱おうとしたのは1981年にアニメージュで「宮崎駿特集」を組んだ当時の編集部、とくに鈴木敏夫であった。大人数で制作するアニメにおいて「作家性」を強調し、宮崎駿の特異性をアピールした。鈴木は1982年当時、仕事らしい仕事のなかった宮崎に『ナウシカ』の執筆を勧め、連載が決まると『ナウシカ』のタッチを「読みにくい」ものにし、連載が危うくなると鉛筆での執筆を勧めた。鈴木は、宮崎にアニメを制作させるための一段階として、既存のマンガ文法によらないオリジナルマンガを描かせようとしたと見ることもできる。『ナウシカ』の成立には鈴木敏夫が大きく関与しているのである。 \n\n 今回本稿で行った『ナウシカ』の改稿分析が、基礎資料として『ナウシカ』研究の進展に寄与することと、「生成論的研究」が今後のマンガ研究において基礎研究の方法として定着することを望む。 表象文化学
著者
蘆田伊人 編
出版者
雄山閣
巻号頁・発行日
vol.第1 第12冊 新編武蔵国風土記稿拾貮, 1935
著者
石田 和夫 中原 さおり 武山 絵里子 川上 義
出版者
特定非営利活動法人 日本小児外科学会
雑誌
日本小児外科学会雑誌 (ISSN:0288609X)
巻号頁・発行日
vol.50, no.2, pp.201-205, 2014-04-20 (Released:2014-04-20)
参考文献数
23
被引用文献数
1

【目的】先天性十二指腸閉鎖・狭窄症の診断・治療に関しては,ほぼ確立されているが,他の腸閉鎖症に比し多くの合併奇形,特殊病型例があり,治療上留意すべき点が存在する.自験例を提示し検討を行った.【方法】1976 年から2010 年に,日本赤十字社医療センターにおいて手術を行った先天性十二指腸閉鎖/狭窄症79 例を対象とした.病型,合併奇形,術式,合併症,予後について検討を行った.【結果】病型はtype 1 閉鎖39 例,type 2 索状閉鎖2 例,type 3 離断型閉鎖13 例,狭窄例は25例であった.輪状膵合併15 例,多発閉鎖2 例,閉鎖部位では乳頭下22 例,乳頭上33 例,不明24 例である.特殊病型例として,閉塞部を挟んだ胆管のY 字開口1 例,apple-peel 型閉鎖2 例,多発閉鎖2 例,alveolar capillary dysplasia(以下ACD)合併1 例を経験した.Down 症の合併は34 例(42.5%).何らかの合併奇形は45 例(57%)と極めて多い.心奇形の合併が27 例(34%)と多く,予後を左右している.予後は12/79(15%)の死亡率であり,多くは心奇形を合併していた.重症の心奇形を伴うapple-peel 型閉鎖の1 例は小腸の壊死にて失った.【結論】本症は合併奇形や特殊閉鎖例がなければ,治療法や予後については問題ない疾患である.しかしながら,当院で経験した閉塞部を挟んだY 字開口例,apple-peel 型閉鎖例,多発閉鎖例,胆道系の先天異常の合併例,十二指腸前門脈例,内臓逆位合併例,ACD 合併例など特殊な病型・合併症が稀ながら存在することから,手術時の注意,術後の経過観察が必要である.
著者
酒井 義人 松山 幸弘 岡本 晃 石黒 直樹
出版者
日本腰痛学会
雑誌
日本腰痛学会雑誌 (ISSN:13459074)
巻号頁・発行日
vol.13, no.1, pp.96-103, 2007 (Released:2008-01-22)
参考文献数
20

筋弛緩薬として知られるeperisone hydrochloride(EMPP,ミオナール®)の効果につき検討した.6カ月以上持続する男性慢性腰痛症患者74名をランダムに3群すなわち,A群:物理療法のみ行った25例,B群:EMPPを4週間投与した24例,C群:McKenzie法を行った25例に分け,2,4週後にJOA score,Faces Pain Scale-Revised (FPS-R),VAS,SF-36を評価した.また腰椎伸展・屈曲における腰背筋酸素化を,近赤外分光器(NIRS)を用い酸素化ヘモグロビン(Oxy-Hb),脱酸素化ヘモグロビン(Deoxy-Hb)を評価した.2週後ではすべての評価で差を認めず,4週後の評価では,VASでA群とC群間で有意な差を認めた.NIRSでは,2週後で差を認めず,4週後で腰椎伸展時のOxy-HbがB群で有意に増加した.疼痛に関してはMcKenzie法が効果的でVASでは4週という短期間で有意に改善した.EMPP投与では改善はされるものの有意な疼痛改善には至らなかったが,NIRSでの評価では腰椎伸展におけるOxy-Hbの増加が有意にみられた.慢性腰痛患者の保存治療として運動療法とEMPP投与の併用が望ましいと考える.