著者
嶋田 光佑 廣井 慧 梶 克彦 河口 信夫
雑誌
情報処理学会論文誌 (ISSN:18827764)
巻号頁・発行日
vol.59, no.1, pp.150-167, 2018-01-15

モバイル端末を用いて歩行者にルートガイダンスを行うサービスは広く普及しているものの,このようなサービスを利用しながらも道に迷う人が存在する.これは方向感覚や距離感覚,地図の読み解きなどの空間認識能力の個人差による,案内理解の程度の差が一因としてあげられる.本論文では,将来的に個人の空間認識能力を考慮したルートガイダンスを提示するナビゲーションシステムの実現を目指し,空間認識能力として移動中の行動,移動軌跡から個人ごとの特徴を定量的に計測する手法を提案する.はじめに,仮想空間上に都市環境を再現し,ルートガイダンスなど様々な提示情報,および情報提示手法を設定できる計測システムを開発する.次に,計測システムを利用し,道に迷う人と迷わない人の特徴の差を検討したうえで,計測手法を設計する.本論文では,(1)地図上での自己位置把握,(2)目的地の方向把握,(3)音声案内の記憶の定着の3つの計測手法について設計し,計測実験を行った.実験データを取得,分析したところ,(1)と(2)については,把握の正確さや早さ,(3)については,音声案内を聞き直す回数や聞き直すまでの時間を評価基準として,被験者ごとの行動に特徴的な差が確認できた.最後に,本計測手法の有用性を分析する目的で,自己評定との違い,実空間との違い,再現性のための再実験の3つの項目について,計測システムを用いた実験を行い,それぞれ75%,60%,71%の被験者が,本システムでの計測と自己評定,実空間での計測,再実験での計測に大きな差はみられないことを確認した.
著者
松本 幸一 マツモト コウイチ Koichi Matsumoto
雑誌
教養研究
巻号頁・発行日
vol.19, no.1, pp.59-76, 2012-07
著者
鴻池 俊憲 光山 秀行
出版者
近畿大学商経学会
雑誌
商経学叢 = Shokei-gakuso: Journal of Business Studies (ISSN:04502825)
巻号頁・発行日
vol.57, no.1, pp.63-77, 2010-07-01

生涯学習がしばしば取り上げられるようになってきたが, どれほど定着しているのか, 一人ひとりの受け止め方の違いもあり, はっきりしない。まず生涯学習という用語がどのような文脈で用いられているかを示し, 地域社会のまとまりを促進させていく上で, 今後いっそう重要な役割を演じることをみていく。生涯学習を実施するにあたって, 従来の行政だけでなく, 大学を含めたさまざまな担い手が必要とされる。生涯スポーツは, 生涯学習を組み立てる重要な柱である。かつて企業がスポーツを支える役目を果たしてきた。しかし社会が変化し, 地域社会を基盤としてスポーツに接する機会がふえてきた。本稿ではその一例として近畿大学体育会バレーボール部(以下では近畿大学バレーボール部と表す)によるバレーボール教室を取り上げる。大学は地域における貴重な資源であるから, その資源を生かして地域の人びとのニーズに応えていくことが大学の社会的責任のひとつであるといえる。 (英文) First, we will consider the implications of life-long learning in the context of the local community. Nowadays universities are expected to play an important role in the life-long learning process. Next, we will see that life-long sports constitute an essential element of life-long learning. The Kinki University volleyball team plays a unique role in community activities. Finally, we will also describe the social contributions of the volleyball team to the community.
著者
小野塚 佳光 Yoshimitsu Onozuka
出版者
同志社大學經濟學會
雑誌
經濟學論叢 = Keizaigaku-Ronso (The Doshisha University economic review) (ISSN:03873021)
巻号頁・発行日
vol.58, no.3, pp.1-49, 2006-12-20

本稿は、2001年末のアルゼンチン危機を、国際政治経済学の基本命題を意識して、多角的に理解する。通貨危機の重要な条件は、経済学から見て、兌換制と財政赤字であった。しかし危機に至る過程では、さまざまな選択肢や矛盾した要求、社会運動があった。それらを結びつける制度やイデオロギー、指導的役割を担った個人は重要な影響を与えた。アメリカやIMF、国際社会には危機を回避する十分な合意や政治的意志を欠いていた。
著者
葛谷 恒彦 松口 貴子 籾谷 真奈 北尾 悟 杉谷 義憲 カズヤ ツネヒコ マツグチ タカコ モミタニ マナ キタオ サトシ スギタニ ヨシノリ Tsunehiko KAZUYA Takako MATSUGUCHI Mana MOMITANI Satoshi KITAO Yoshinori SUGITANI
雑誌
大阪樟蔭女子大学学芸学部論集
巻号頁・発行日
vol.42, pp.97-105, 2005-03-08

生活習慣病の発症・進展に深くかかわる"活性酸素"に着目し、活性酸素を除去する働きがある抗酸化物質が生体内でどのように作用するかを明らかにする目的で、ヒト細胞を用いて酸化障害モデルを作成し、抗酸化物質の細胞障害抑制効果の解析を試みた。 ヒト臍帯静脈血管内細胞を培養し、コンフルエントになったプレートの細胞に活性酸素種(H_2O_2、クメンヒドロペルオキシド)を添加し、濃度・時間依存性に進行する細胞死をLDHアッセイにより測定した。自然死、Tween20による細胞死(100%細胞死)を基準として、細胞障害率を求めた。 酸化傷害を与えた結果、H_2O_2では、0.1mM、0.5mMの負荷で酸化障害率が10%以下、1mMで時間に関係なくほぼ40%、5mM、10mMで50%を超え、1時間後が最も高い数値を示した。クメンヒドロペルオキシドでは、0.1mM、0.5mMの負荷で酸化障害率が20%以下、1mMで70%以上、5mM、10mMでほぼ100%近い値を示し、反応時間別に見ると、全ての濃度で3時間後が最も高い数値を示した。
著者
中西 渉
雑誌
研究報告コンピュータと教育(CE) (ISSN:21888930)
巻号頁・発行日
vol.2021-CE-162, no.19, pp.1-5, 2021-11-27

大学入試センター試験,共通テストの数学②で選択できる「情報関係基礎」のプログラミング問題で用いられている擬似言語 DNCL は,実行環境が複数開発されており,テストのプログラムがそのまま実行できると言われることが多いが,実は問題で示されているプログラムはそのままでは実行できない.多くの場合データの初期化にあたる部分が省略されているので,実行するためにはその部分を補う必要がある.本稿では省略されている初期化部分を補う方法について考察し,筆者が開発している学習環境 WaPEN および PyPEN でそれを解決するために行った実装について述べる.
著者
和泉 潔 大勝 孝司
雑誌
情報処理学会研究報告知能と複雑系(ICS)
巻号頁・発行日
vol.1995, no.105(1995-ICS-102), pp.7-12, 1995-11-07

本研究は,実際の経済現象の分析における人工市場アプローチの有効性を調べるために,外国為替市場を一つのケーススタディとして,人工市場アプローチによる新しいモデルを構築し,予測力と説明力の評価を行なった.その結果,予測力においては,既存の為替モデルに比べて10%以上,予測誤差を小さくすることが可能となった.また,説明力に関しては,市場参加者の予想の同調と完全な一致により,1988年から1991年の為替バブルの成長と崩壊がもたらされたことを示すことができた.これらの結果により,本研究は人工市場アプローチが現実の経済現象を定量的にも分析することの有効性を示すことができた.
著者
田原 花蓮 植村 あい子 北原 鉄朗
雑誌
研究報告音楽情報科学(MUS) (ISSN:21888752)
巻号頁・発行日
vol.2021-MUS-130, no.9, pp.1-8, 2021-03-09

本研究は既存のポピュラー音楽をファミコン風の音楽に自動編曲することを目的としたものである.ファミコン音楽は最大同時発音数が 4 音までという制約が決められているため,音を削除しなければならない.そこで各パートに対して適切な音削除が行えるよう,各パートに対して音を簡略化する「変換ルール」を複数設計し,遺伝的アルゴリズム (genetic algorithm:GA) を用いて最も相応しい変換ルールをパートごとに決定していく手法を用いてファミコン風音楽の生成を行った.MIDI ファイルを用いてファミコン風アレンジを行い,主観評価と客観評価に分けて評価実験を行った.主観評価では,プロの作曲家に評価(1 から 7 の 7 段階)してもらったところ,リズムの自然さについては,変換ルールありで小節ごとに GA を行ったアレンジ 1 では平均 5.8 が得られた.一方,主旋律とベース以外のパートの選び方の妥当性については,ランダムよりも低い結果になるなど,課題が残った.客観評価では,変換ルールありで小節ごとに GA を行ったアレンジ 1,続いて変換ルールなしで小節ごと GA を行ったアレンジ 4 が総合的に高い評価が確認できた.
著者
青木 和也 掛井 将平 瀧本 栄二 毛利 公一 齋藤 彰一
雑誌
コンピュータセキュリティシンポジウム2019論文集
巻号頁・発行日
vol.2019, pp.597-604, 2019-10-14

マルウェアの高度化によりあらゆる異常動作を検知することは難しくなっている.アンチウイルスソフトを回避するためにファイルを生成しない,ファイルレス型のマルウェアも存在する.実行中のプログラムの動作を正確に解析するにはメモリダンプでメモリ上に展開されたプログラムを取得し解析する必要がある.しかしメモリダンプを防ぐ技術も存在するので安全にメモリダンプを取得する方法は確立していない. 本論文ではARMのセキュリティ拡張機能であるTrustZoneを利用する.TrustZoneは計算機資源をNormal WorldとSecure Worldと呼ばれる2つの領域にハードウェア的に分割する.Secure WorldはNormal Worldより高い権限を持つのでNormal Worldで動作するプロセスはSecure Worldでの処理を妨げることは難しい.Secure WorldからNormal Worldのプロセスメモリを解析するするためのプロトタイプを実装し,機能の一例としてプロセスの正常動作を保証できることを確認した.