著者
谷 幸太郎
出版者
東京大学
雑誌
特別研究員奨励費
巻号頁・発行日
2012

公衆を対象とした内部被ばく評価手法及び核燃料再処理施設を対象とした内部被ばく評価手法の高度化を目的として、安定ヨウ素剤服用時及びキレート剤投与時の体内動態解析をそれぞれ実施した。体内に摂取した放射性ヨウ素の甲状腺への取り込みは、安定ヨウ素剤の服用によつて抑制できることが知られている。本研究では、放射性ヨウ素摂取時及び安定ヨウ素剤服用時の体内動態モデルを使用し、日本人を対象とした^<131>Iの急性吸入摂取に対する甲状腺残留率を解析した。安定ヨウ素剤服用時に解析にあたつては、安定ヨウ素を過剰に摂取した場合に一時的に甲状腺ホルモンの合成が阻害されるWolff-Chaikoff効果の影響を新たに考慮した。解析した安定ヨウ素剤服用の有無に対する甲状腺残留率を比較することにより、^<131>Iの甲状腺取り込み抑制効果を評価した。その結果、抑制効果は2日前の服用で約50%、1日前から直前までの服用で80%以上であった。一方、^<131>Iを摂取した後に遅れて安定ヨウ素剤を服用した場合には抑制効果は急激に減少し、12時間後で約20%、1日後で7%未満であった。核燃料再処理施設で取り扱うプルトニウムを体内に摂取した場合には、キレート剤によって尿中への排泄を促進することができる。本研究では、代表的なキレート剤であるDTPAを投与した場合の体内動態モデルを解析し、過去のプルトニウムによる体内汚染事例で測定された個人モニタリングデータとの比較・検証を実施した。また、Ca-DTPAによる治療を実施した場合の骨格及び肝臓へのプルトニウムの沈着抑制効果を評価した。その結果、硝酸プルトニウムの吸入摂取後の抑制効果は、10-50日までの治療によつて約25-30%、300日までの治療は約60%であった。
著者
藤森 勝也 鈴木 栄一 下条 文武
出版者
社団法人日本東洋医学会
雑誌
日本東洋醫學雜誌 (ISSN:02874857)
巻号頁・発行日
vol.51, no.4, pp.725-732, 2001-01-20
参考文献数
20
被引用文献数
4 3

麦門冬湯(B)は漢方薬で, 気管支炎モルモットの咳嗽を抑制することが知られている。かぜ症候群後咳嗽に麦門冬湯が有効か否か検討した。非喫煙者で, かぜ症候群後2週間以上咳嗽が続き, ACE阻害薬を内服しておらず, 鼻・副鼻腔疾患, 慢性呼吸器疾患, アトピー歴, 胃食道逆流症がなく, 胸部単純X線, 呼吸機能, 抹消血好酸球数, CRP, 血清IgE値に異常のない症例を適格症例とした。適格症例を, 無作為にBエキス顆粒9g/日と臭化水素酸デキストロメトルファン(D)60mg/日の1週間内服群に分け, 咳日記(咳点数0-9点に分布)を用いて, 2群間の咳嗽抑制効果を比較検討した。B13例, D12例で検討した。両群で, 年齢, 性, 来院時の咳点数, 咳嗽持続機関, 検査成績に有意差はなかった。B, D両群で有意な咳嗽抑制効果が認められたが, Bでは2日目より, Dでは3・6・7日目に, 有意に咳点数が低下した。BはDに比し, 2日目で咳嗽抑制効果が強かった(P<0.05)。両軍に重篤な副作用を認めなかった。以上より, 麦門冬湯は, 非喫煙者のかぜ症候群跡咳嗽に有用で, 内服後すみやかに咳嗽抑制効果を現すと考えられた。

2 0 0 0 OA 牧水全集

著者
若山牧水 著
出版者
改造社
巻号頁・発行日
vol.第12巻, 1930
著者
外間 守善
出版者
岩波書店
雑誌
文学 (ISSN:03894029)
巻号頁・発行日
vol.57, no.11, pp.p44-57, 1989-11
著者
東中 竜一郎 船越 孝太郎 荒木 雅弘 塚原 裕史 小林 優佳 水上 雅博
出版者
一般社団法人 言語処理学会
雑誌
自然言語処理 (ISSN:13407619)
巻号頁・発行日
vol.23, no.1, pp.59-86, 2016-01-25 (Released:2016-04-25)
参考文献数
32
被引用文献数
6

対話システムが扱う対話は大きく課題指向対話と非課題指向対話(雑談対話)に分けられるが,近年Webからの自動知識獲得が可能になったことなどから,雑談対話への関心が高まってきている.課題指向対話におけるエラーに関しては一定量の先行研究が存在するが,雑談対話に関するエラーの研究はまだ少ない.対話システムがエラーを起こせば対話の破綻が起こり,ユーザが円滑に対話を継続することができなくなる.しかし複雑かつ多様な内部構造を持つ対話システムの内部で起きているエラーを直接分析することは容易ではない.そこで我々はまず,音声誤認識の影響を受けないテキストチャットにおける雑談対話の表層に注目し,破綻の類型化に取り組んだ.本論文では,雑談対話における破綻の類型化のために必要な人・機械間の雑談対話コーパスの構築について報告し,コーパスに含まれる破綻について分析・議論する.
著者
横山 拓 鈴木 宏昭
出版者
The Institute of Electronics, Information and Communication Engineers
雑誌
電子情報通信学会論文誌 D (ISSN:18804535)
巻号頁・発行日
vol.J101-D, no.2, pp.294-305, 2018-02-01

本論文は,不確実性が高く,事前のプランが立てにくい環境に置かれたマネジャーが,断片的で無計画に見える日常活動を送りながらも,周囲の職場環境が提供する様々な認知資源をたよりに組織運営にあたっていることを示す.具体的には,非定型的な業務に従事する2人のマネジャーに対して各3日間の観察調査を行い,時間配分,計画やコミュニケーションの特徴を分析した.その結果,マネジャーの日常活動が断片化していること,マネジャー自身と周囲の環境とに計画が分散されていること,周囲との偶発的かつ頻繁なコミュニケーションによって仕事が調整されていることが確認された.この結果を分散認知,拡張された心の観点から検討した.

2 0 0 0 OA 日本都市大観

著者
大阪毎日新聞社 編
出版者
大阪毎日新聞社
巻号頁・発行日
vol.昭和15年版, 1940
著者
山田 良治
出版者
和歌山大学
雑誌
観光学
巻号頁・発行日
pp.279-292, 2009-03
著者
柏原 全孝
出版者
社会学研究会
雑誌
ソシオロジ (ISSN:05841380)
巻号頁・発行日
vol.40, no.2, pp.23-39,173, 1995-05-31 (Released:2017-02-15)

This essay contends that the documentary method of interpretation in ethnomethodological studies as it has been developed since the founding work of Garfinkel contains a basic ambiguity that has not been sufficiently explored. Garfinkel's key concepts of reflexivity and et cetra practice have been misinterpreted by those who subsequently developed the field of ethnomethodology. Reflexivity incorrectly has been taken to mean the relation between act and social structure, and et cetra practice as that which fills the gap between act and rule. Yet, this paper argues that the original potential of Garfinkel's work lies within the ways in which some things are made visible and others invisible through the mechanism of reflexivity, and the ways in which rules are made through et cetra practices. If reflexivity and et cetra practice are not understood in these terms, we miss the ambiguity within the documentary method of interpretation operates as a form of ideology and that both are essential to sense-making but nonetheless are a illusion.
著者
飯島 義雄 秋吉 京子 田中 忍 貫名 正文 伊藤 正寛 春田 恒和 井上 明 安藤 秀二 岸本 寿男
出版者
一般社団法人 日本感染症学会
雑誌
感染症学雑誌 (ISSN:03875911)
巻号頁・発行日
vol.83, no.5, pp.500-505, 2009-09-20 (Released:2016-08-20)
参考文献数
10
被引用文献数
1 2

2005 年12 月,神戸市内において鳥類展示施設の従業員の間でオウム病が発生した.従業員は,オウム病等の人獣共通感染症に関する研修等を受けておらず,鳥の糞の始末等を行う場合にも,マスク,手袋,作業着等の使用は限られていた.67 名の従業員のうち,4 名が肺炎を呈しており,2 名がオウム病肺炎と確定診断された.それ以外に19 名が発熱や咳などの症状を訴えたが,オウム病とは診断されなかった. オウム病発生時,約970 羽が検疫もされず,個体識別もされず飼育されていた.餌や水に混ぜてのドキシサイクリン投与に効果がなかったため,全鳥の個体識別とPCR にてクラミジアの検査を実施した.比較的大量のクラミジアを排出していたトリに,ヒムネオオハシ1 羽,オシドリ1 羽,マガモ3 羽がいた.また,死亡したオキナインコ1 羽の臓器からも大量のクラミジアが検出された. 肺炎患者1 名の気管支肺胞洗浄液がPCR でクラミジア陽性であったことより,主要外膜タンパク質(major outer membrane protein : MOMP)の塩基配列を決定した.上記のトリ由来のMOMP の配列と比較したところ,ヒムネオオハシから検出したMOMP の塩基配列が,患者のそれと完全に一致した.それ以外のトリ由来のものは,1~5 塩基異なっていた.ヒムネオオハシは,閉鎖的な部屋に放たれており,作業中にその排泄物を吸い込んで感染したものと推察された. 今回のオウム病集団発生を通じて,①オウム病など人獣共通感染症に対する知識と感染対策の必要性,②迅速診断の難しさ,③血清診断の難しさ(PCR でオウム病が確認できても,抗体価の上昇が起こらない症例の存在),④糞からのクラミジア検出の難しさ(PCR 阻害物質の残存)を経験した.また,パルスフィールド電気泳動等が確立されていないクラミジアにおいては,MOMP の塩基配列の解析が菌株を比較する方法として有用と考えられた.