著者
山名 仁 筒井 はる香 山名 朋子
出版者
和歌山大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2013-04-01

本研究では、19世紀前半のウィーンにおいて、フォルテピアノのペダルが6本あるいは7本と増えその後減っていく過程と、ウィーンの連弾楽譜の出版状況の推移との間に密接な関係があることを明らかにした。またウィーン連弾文化の精華ともいえるシューベルトの全連弾作品において上記ペダルの多数の組み合わせを検討し、①ペダルの間隔が狭いのは一本の足で2つのペダルを同時に踏むことを想定していること、②6本のペダルを2本の足で操作することは困難だが、4本の足を使えばペダルの効果を最大限に活かすことができるということを、実際の演奏を通して明らかにした。
著者
竹田 晃子 三井 はるみ
出版者
国立国語研究所
雑誌
国立国語研究所論集 (ISSN:2186134X)
巻号頁・発行日
vol.4, pp.77-108, 2012-11

国立国語研究所における「全国方言文法の対比的研究」に関わる調査資料群のうち,調査I・調査IIIという未発表の調査資料について,調査の概要をまとめ,具体的な言語分析を行った。調査I・調査IIIは,統一的な方法で方言文法の全国調査を行うことによって,方言および標準語の文法研究に必要な基礎的資料を得ることを目的とし,1966-1973(昭和41-48)年度に地方研究員53名・所員4名によって行われ,全国94地点の整理票が現存する。具体的なデータとして原因・理由表現を取り上げ,データ分析を試みることによって資料の特徴を明らかにした。3節では,異なり語数の比較や形式の重複数から,『方言文法全国地図』が対象としなかった意味・用法を含む幅広い形式が報告された可能性があることを指摘し,意味・用法については主節の文のタイプ,推量形への接続の可否,終助詞的用法の観点から回答結果を概観した。4節では,調査時期の異なる他の調査資料との比較によって,ハンテ類の衰退とサカイ類の語形変化を指摘した。「対比的研究」の調査結果は興味深く,現代では得がたい資料である。今後,この調査報告の活用が期待される。
著者
五島 史行 矢部 はる奈
出版者
耳鼻咽喉科展望会
雑誌
耳鼻咽喉科展望 (ISSN:03869687)
巻号頁・発行日
vol.49, no.3, pp.142-144, 2006-06-15 (Released:2011-08-16)
参考文献数
3

耳鼻咽喉科外来で, 一般的に使用する照射装置としてユニットのライトを光源とし, 額帯鏡による反射光で診察するのが一般的であった。最近消費電力が少なく, 明るい高輝度白色LEDの開発によってヘッドライトのコードレス化が可能となってきた。しかし市販されているものは, バッテリの持続時間などの問題がある。市販のヘッドライトを改造し, 問題点の改善を試みた。使用したものは白色LEDヘッドライト (IWポータブルヘッドライト®Welch Allyn), 携帯電話用外部バッテリ (My Battery mini®日本トラストテクノロジー) などである。バッテリによる連続照射時間は2時間以上可能であった。白色LEDは低消費電力で発熱も少なく優れた光源装置である。しかし額帯鏡に慣れ親しんだ医師にとって明るすぎたり, 光の色調が異なるなど相違点もある。直視することがなければ現在のところは問題がないとされている。診察用のユニットのライトと額帯鏡の格闘から逃れられる喜びは患者医師ともに大きい。
著者
坂田 阿希 中原 はるか 室伏 利久
出版者
一般社団法人 日本めまい平衡医学会
雑誌
Equilibrium Research (ISSN:03855716)
巻号頁・発行日
vol.67, no.1, pp.13-17, 2008 (Released:2008-05-02)
参考文献数
14

Intratympanic instillation of gentamicin is currently a well-established treatment for intractable vertigo in patients with Meniere's disease. There are, however, only a few reports of this therapy in patients with non-Meniere type of vertigo. We report the case of a 68-year-old woman with the lateral semicircular canal type of benign paroxysmal positional vertigo (BPPV) following right idiopathic sudden hearing loss. The patient was annoyed by the positional vertigo for one and a half years and was successfully treated by intratympanic gentamicin instillation. She had profound hearing loss on the right side and direction-changing apogeotropic positional nystagmus. Her caloric response on the right side was severely decreased (canal paresis 80%). Intratympanic gentamicin instillation therapy was undertaken (30mg/ml/day × 5 days), following which her positional vertigo was abolished. We propose that intratympanic instillation of gentamicin may also be applicable to selected patients with long-lasting BPPV.
著者
三谷 はるよ
出版者
日本家族社会学会
雑誌
家族社会学研究 (ISSN:0916328X)
巻号頁・発行日
vol.25, no.2, pp.109-120, 2013-10-31 (Released:2015-09-05)
参考文献数
28
被引用文献数
2

昨今,里親養育に期待が高まる一方で,里親がストレスフルな状況に置かれていることが問題化している.先行研究は危機への対処としての里親本人の意味づけに注目してきたが,社会関係が対処に与える影響は十分に捉えていない.そこで本稿ではインタビュー調査を実施し,里親の危機対処過程を,とくに社会関係の影響に注目して検討した.その結果,里親は家族成員の理解・協力によって困難性を共有し,里親仲間の類似経験や専門家の知識によって困難性を相対化することで,危機に対処していることが明らかになった.また,里親は危機対処の過程を経て,里子や児童相談所職員から肯定的評価を得ることで,役割アイデンティティを強化していることもわかった.以上から,家族内外の社会関係からの道具的,情緒的,情報的サポートがストレッサーの悪影響を緩和し,ケアの受け手や公的な第三者からの評価的サポートが心理状態をつねに安定させることが示唆された.
著者
都甲 由紀子 朝比奈 はるか 王 立松 王 東 張 穎君
出版者
一般社団法人 日本家政学会
雑誌
一般社団法人日本家政学会研究発表要旨集
巻号頁・発行日
vol.66, 2014

目的:中国雲南省山岳地域において少数民族の彝族が纏う民族衣装の装飾方法に関する伝統知識や技術、その伝承について調査する。<br>方法:2011~2013年にわたり雲南省各地で3回のフィールド調査を行った。 街中で手刺繍をしたり手刺繍の民族衣装を身につけていたりした人々や、手刺繍商品販売会社の社長、山間部の村人らに手作りの衣装に関してインタビューを行い、現状を把握し記録をとった。村人の踊りや衣装の様子、そして演者が現地で刺繍職人から技術指導を受けている様子などの動画や画像を撮影し、技術につき分析した。<br>結果:中国雲南省の少数民族の中で最も人口が多いのが彝族である。雲南省の中だけでも彝族はいくつものグループに分かれ、それぞれが形、色などにおいて特徴をもった民族衣装を身に着けていた。彝族の民族衣装には多くの刺繍が施されているのが特徴であり、彝族の宗教観がはっきりした色使いと輪郭をもった刺繍、すなわち題材のモチーフ化という形に表れており、自然写実を好む漢民族との大きな違いであることが今回の調査の結果確認された。また刺繍の技術は母から娘に伝承されてきたが、現在は市場において手刺繍が施されたパーツが販売され、ミシン刺繍が施された民族衣装もあり、技術の伝承も行われなくなりつつある。しかし道端や公園で刺繍をする少数民族女性の姿はよく見かけ、刺繍などの針仕事が今なお日常の中に存在していることが確認された。
著者
堀井 直子 三浦 清世美 久米 香 横手 直美 中山 奈津紀 青石 恵子 田中 結花子 山口 直己 足立 はるゑ
出版者
中部大学
雑誌
中部大学生命健康科学研究所紀要 (ISSN:18803040)
巻号頁・発行日
vol.4, pp.11-20, 2008-03
被引用文献数
1

目的 看護大学生の学習ニーズを反映させた教育方法を検討するために、入学時に学生が保健看護学科を選択した動機を明らかにする。方法 予備調査として、2006年5月に保健看護学科2006年度入学生81名を対象に、学科志望動機に関する記述を求め内容の分析をした。次いで本調査を2007年7月〜9月に保健看護学科2006年度入学生80名および2007年度入学生124名を対象に、予備調査の結果をもとに作成した学科志望動機質問紙(無記名自記式)を用い、集合調査を行った。結果 入学生の志望動機は、2006、2007年度ともに、「社会に出てから人のために役立つ仕事がしたい」「看護師・保健師の国家試験受験資格が得られることに魅力を感じた」「身近な人を助けたい」が全体の83〜92%の割合を占め上位であった。また「人とコミュニケーションをとることが好き」「人の世話が好き」なども約70%の学生が挙げており、看護を目指す学生は、人と関わることが好きで、看護職を、資格の取れる、人のためになる仕事であると認識して志望していると言える。また入学時と現在の「看護を学びたい思いの強さ」は、2006年度生は入学時"強い"45.6%が現在21.5%へ減少した。2007年度入学生は入学時"強い"43.4%から現在54.9%に増加していた。入学時の志望動機を大切にし、学習意欲の向上と職業的責任の自覚を強化していくための教育方法の工夫が必要であることが示唆された。
著者
堅田 千種 今井 みはる 野崎 一徳 川本 昌幸 前田 芳信 島 優子 大星 直樹 玉川 裕夫
出版者
Japan Association for Medical Informatics
雑誌
医療情報学 = Japan journal of medical informatics (ISSN:02898055)
巻号頁・発行日
vol.25, no.4, pp.231-238, 2006-03-03

管楽器奏者に口唇外傷予防を目的としたミュージックスプリントを装着すると,音色も変化することが知られており,我々の臨床でもしばしば経験しているが,音色変化を定量的に解析,評価した研究は少ない.そこで,プロのトランペット奏者の協力を得て,スプリント装着時と非装着時の音色を,音響解析による物理的比較,自然音の一対比較法による聴覚比較,そしてデジタルフィルタリング法を用いた合成音比較の3方法で比較した.<br/> 物理的比較では,long-tone録音後に高速フーリエ変換を行い,スプリント装着時に高周波倍音成分の音圧が高くなっていることが示せた.聴覚比較では,音楽経験にかかわらずスプリント装着時の音をより好む被検者が多いことを明らかにできた.そして,低周波数部分を共通にし倍音成分のみを入れ替えた合成波形比較では,基音に対して13次から20次の倍音が,音色の好みに影響を与えていることを示せた.