著者
水野 淳太 渡邉 陽太郎 エリックニコルズ 村上 浩司 乾 健太郎 松本 裕治
雑誌
情報処理学会論文誌 (ISSN:18827764)
巻号頁・発行日
vol.52, no.12, pp.3408-3422, 2011-12-15

情報検索技術の発展により,あるトピックに関連する多様な情報を容易に入手できるようになった.しかしながら,これらの文書に記述されている情報には,不正確な記述,偏りのある意見などが多数混在している.そのため,個々の情報や意見の信憑性を判断するためには,多様な情報源からの意見との整合性を調べる必要がある.しかし,限られた時間で数多くの情報源を調べることは難しいため,ユーザが持っている先入観が正常な判断を妨げてしまう場合がある.我々は,そのような状態を避けるために,言論マップ生成課題に取り組んでいる.これは,検索された文について,まず,トピックに対する賛成意見であるのか,それとも反対意見であるのかを分類し,次に,賛成および反対する根拠を含むかどうかを認識し,それらを俯瞰的に示すというものである.本課題において最も重要な問題は,1組の文対が与えられたときに,その間の意味的関係を分類する文間関係認識である.これは近年さかんに研究されている含意関係認識と重なる部分が多い.しかしながら,ウェブ上の実文に対して既存の含意関係認識を適用しても,その分類性能は限定的であるという報告がある.そこで,我々は,評価用データセットとその分析に基づく文間関係認識モデルを構築した.本論文では,検索された文において,クエリの内容に対応する部分を正しく同定することが,最も重要な技術的課題であること,また,いくつかの制約を変化させることで,関係分類の精度と再現率を制御できることを示す.
著者
米田 英嗣 ヒル エリザベス
出版者
日本認知心理学会
雑誌
日本認知心理学会発表論文集 日本認知心理学会第15回大会
巻号頁・発行日
pp.26, 2017 (Released:2017-10-16)

発達性協調運動障害とは、日常生活における協調運動が、本人の年齢や知能に応じて期待されるものよりも不正確であるという神経発達障害であり(American Psychiatric Association, 2013)、自閉スペクトラム症との併発が多いことが知られている。本研究では、運動巧緻性と共感性が、時間産出の正確さを予測すると考え、発達性運動障害の成人21名、定型発達の成人21名を対象に実験を行った。時間産出課題の成績を目的変数とした重回帰分析を行った結果、運動巧緻性の低さと情動的共感の低さが時間産出の不正確さと関連することがわかった。また、自閉スペクトラム症得点を共変量とした共分散分析を行った結果、自閉症傾向が高いほど、時間産出が不正確であることがわかり、時間産出が不正確な原因は、発達性協調運動障害の特性自体よりも、併存する自閉スペクトラム症の特性が関連していることが明らかになった。
著者
ビルンド エリック 岩田 修二
出版者
Tokyo Geographical Society
雑誌
地学雑誌 (ISSN:0022135X)
巻号頁・発行日
vol.90, no.2, pp.112-121, 1981-04-25 (Released:2010-11-18)
被引用文献数
1

フィンランド・ノルウエー・スウェーデンの北部に35, 000人ほどいるラップ人のうち, 山地の森林限界以上に居住する山地ラップ人と, 低地の森林に居住する森林ラップ人とは, 暮らし方がかなりちがっている。森林ラップ人の生活は古い時代のラップ人の生活様式を色濃く残している。ごく最近まで, 森林ラップ人は狩猟や漁労 (これらはラップ人の古い生業形態である) を生業にしていた。トナカイの飼育を始めたのは最近で, 飼っている頭数も少なく, 移動範囲もせまい。山地ラップ人が牧畜を始めたのもそれほど古いことではなく, 16-17世紀である。そして, およそ100年前には完全に牧畜(移牧)だけに依存するようになった。夏には高山地域へ, 冬には森林地域へ移動し, 春と秋は亜高山帯で過す。移動距離は数100kmにも達している。山地ラツプ人の生活基盤は牧畜業にあると考えられがちであるが, 現在では牧畜だけで生活しているラップ人の数はたいへん少数になった。スウェーデンの場合, ラップ人口のうちの7%ないし25%にすぎない。17世紀後半には, ラップランドにはラップ人だけが居住していた。そこへ, 南からの移住農民が侵入するにつれて, いろいろの問題がおこり始めた。これに対する政府の立場は, スウェーデンの場合, 土地は広大であり, 移住農民と牧畜ラップ人とは生活の場が異なるから摩擦は起きないであろうというものであった。しかし, 現実には多くの問題が起き, ラップ人はいつも不利益をこうむってきた。政府が長年ラップ人を保護し, 生活水準・教育水準を高めてきたとはいうものの, 少数民族であることと, 牧畜という不安定な生業に依存していることとのために問題の根本解決はなされていない。ラップランドからの人口流出が20世紀半ばから始まったことによって, ラップ人がラップランドとその周辺でスウェーデン人に雇用される機会が減った。いっぽう, ラップ人に対する人種偏見は減り, ラップ人がスウェーデン社会にとけこみやすくなった。しかし, これがラップの固有文化の崩壊をはやめることになった。現在では都市で生活しているラップ人も多い。
著者
酒井 邦秀 ハウザー エリック 金子 克己
出版者
電気通信大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2008

幼児用の絵本からはじめる英語多読及びその朗読CD による多聴授業により、学生は学校英語を忘れてゼロから英語を英語のまま吸収し始め、一人一人が自分に合った内容とレベルの素材を選んで読み、聞く自律した学習者となった。また、一人一人の多読多聴状況を授業中に教師が英語で質問し、学生がそれに英語で答えることにより、extensive speakingの効果も確認された。また、英語による学生同士のbook talk と、それを書く事により、extensive writingの成果も確認できた。
著者
古屋 正貴 エリアス チャールズ M.
出版者
宝石学会(日本)
雑誌
宝石学会(日本)講演会要旨
巻号頁・発行日
vol.35, 2013

パラサイトに含まれるオリビンを宝石としてカットできるようになってから,市場でもパラサイト起源のペリドットが見られるようになった.これらはすでにいくつかの研究がされているが,この度,アメリカのAdmire隕石からカットされたペリドットを検査する機会を得たので,改めて通常の地球起源のペリドットとの比較,検証を行った.<BR> 検査としては拡大検査,屈折率,比重などの通常の鑑別検査と共に,蛍光X線での成分分析,FT-IRや紫外可視分光光度計などの分析機器を用いた検査を行い,その他にも磁石を用いての磁性の検査などを行った.<BR> パラサイト起源のペリドットに地球起源のものとの違いが見られた点としては,拡大検査のインクルージョンでは1) 周りの鉄質隕石が含まれたもの,2) 独特な針状インクルージョン,3) 地球起源のものではあまり見られない強いクリベージなどが認められた.また,屈折率と比重との関係において,パラサイト起源のものの方に比重が高くなる傾向がみられた.そのほか成分分析からは,パラサイト起源のものにニッケル分が低い特徴が見られた.またカット石では母岩と成る鉄質隕石をインクルージョンと含むものでは強い磁性も違いとして認められた.<BR> 数は少ないもののAdmire隕石以外の隕石との比較ではあまり有効な違いは見られなかった.これはそのペリドットの生成が,火星と木星のアステロイドベルトの小惑星同士の衝突によるもので,それが地球のどこに隕石として落ちたかの違いであり,由来自体には違いがないためと推測される.<BR> 上記のような違いがパラサイト起源のペリドットと地球起源のペリドットには認められ,それらを宝石鑑別上でも区別することが可能であることが分かった.<BR> 【参考文献】<BR>1. Leelawathanasuk, T., et al. "Pallasitic peridot: The gemstone from Outer Space" IGC 2011 Interlaken, Switherland<BR>2. Shen, A., et al. "Identification of extraterrestrial peridot by trace elements" Gem and Gemology, Fall 2011, United States<BR>3. Wikipedia, "Pallasite" Internet homepage
著者
赤松 裕介 廣田 栄子 尾形 エリカ 山岨 達也
出版者
日本音声言語医学会
雑誌
音声言語医学 (ISSN:00302813)
巻号頁・発行日
vol.63, no.1, pp.34-42, 2022 (Released:2022-01-28)
参考文献数
20

小学校就学前にCI手術を受け,当科にて聴覚管理を行っている先天性重度聴覚障害児123名を対象に,小学校低学年(1-3年生)時の読書力検査(教研式読書力診断検査)と聴取能検査(福田版明瞭度検査単音節語表)の結果を後方視的に解析した.読書力偏差値は大きな個人差を認めたが,症例の54%で健聴児平均以上を示し,CI装用下の単音節聴取能と有意な相関を示した.読字力領域では,おおむね健聴児平均以上の良好な傾向を示し,語彙・文法・読解鑑賞領域で低下した.発達障害例,蝸牛神経低形成例は読書力に影響を与えることが示されたが,内耳奇形例と4歳以上手術例に必ずしも読書力の低下を示さなかった.聴取能の予後不良因子を除いた標準例の読書力偏差値は症例の61%(平均偏差値49.8)で健聴児平均以上を示し,動作性知能指数と単音節聴取能の関与が示された.今後,教育環境や家族要因などについても検討を行うことが必要と考えられる.
著者
韓 雲哲 真谷 歩 ンキヤ エリーネ 林 信行 藤田 修二
出版者
Japan Association of Food Preservation Scientists
雑誌
日本食品保蔵科学会誌 (ISSN:13441213)
巻号頁・発行日
vol.32, no.6, pp.275-281, 2006-11-30 (Released:2011-05-20)
参考文献数
21
被引用文献数
1 6

ゴボウの抽出液の褐変反応中のスペクトルの特徴からクロロゲン酸或いはその同族体の酸化反応が酵素的褐変の主原因であることが示唆された。クロロゲン酸を基質としてゴボウのポリフェノール酸化酵素 (PPO) は16.6倍に精製され, その回収率は約21%であった。精製酵素のPAGEおよびSDS-PAGEにおいて, 1本のバンドを示した。精製酵素の分子量はゲル濾過法とSDS-PAGEによりそれぞれ41,000と40,000と算出された。精製酵素はクロロゲン酸およびエピカテキンを速やかに酸化した。酵素のクロロゲン酸 (pH5.0, 20℃) とエピカテキン (pH 8.0, 20℃) に対するKm値は0.4と2.7mMと算出された。クロロゲン酸酸化酵素 (ChO) 活性の最適pHは5.0, エピカテキン酸化酵素 (EpO) 活性の最適pHは8.0に認められた。本酵素を4℃で22時間処理した結果, pHs5.0-8.0範囲で安定であった。両活性の最適温度は20℃に認められた。45℃, 30分加熱を行った結果, 両活性の約50%が失活した。両活性は, 5 mMのL-アスコルビン酸, L-システインによって強く抑制された。
著者
ゴロフツォフ エリ
出版者
[出版者不明]
巻号頁・発行日
vol.8, no.2, pp.84-91, 1972 (Released:2011-03-04)