著者
遠藤 晋作 上田 敏丈 堀田 法子
出版者
一般社団法人 日本小児看護学会
雑誌
日本小児看護学会誌 (ISSN:13449923)
巻号頁・発行日
vol.28, pp.274-283, 2019 (Released:2019-11-30)
参考文献数
15
被引用文献数
1

先天性心疾患をもつ学童期までの子どもに対して母親が行う病気説明プロセスを明らかにすることを目的とし、疾患をもつ10歳~12歳の子どもの母親4名に半構成的面接を行った。分析にはSCATの手法を用いた。母親は医師から病気説明を受け、 「自発的な情報収集」 を行うが 「断続・漸進的な理解向上」 しか望めず、子どもが学童期になっても 「理解追求が停滞する不全的な病気説明理解」 状態にあった。その背景には 「疾患衝撃による理解阻害」 「病気理解の追求困難」 「医師母親間の信頼関係形成困難」 があり、母親は幼児期までの子どもに対する 「日常生活に即した内容中心の病気説明」 を、学童期までに 「日常生活に即した内容と不十分な医学的知識が共存した病気説明」 に変容させていた。またその病気説明は 「成長に付帯する病気説明選択要因」 に影響されていた。母親が医学的知識を向上し、子どもへ希望に沿った説明を行えるよう支援することが求められる。
著者
飯開 輝久雄 岩田 建一 上田 敏雄
出版者
熊本大学
雑誌
熊本大学政策研究
巻号頁・発行日
vol.3, pp.81-92, 2012-03-23

本稿は、熊本県内菊池市および合志市におけるいくつかの自治会に対して実施したアンケート調査等を基に現状を整理した結果に基づき、いつでも、どこにでも起こりうる災害に対し、いかにして自分や家族を助けるのか、地域内での災害発生時対応をいかにしておこなっていうのかについて、阪神淡路大震災をきっかけに生まれた『黄金の72時間』をキーワードとし、自助・共助・公助の視点に基づき3つの提案を行うものである。更に、少子高齢化や人口減少といった様々な問題から「住民参加のまちづくり」以前に、自治会や区といったコミュニティそのものの崩壊が懸念されている現状に対し、提案内容から導かれる防災を起点とした新たなコミュニティ構築の可能性も探索する。
著者
上田 敏
出版者
医学書院
巻号頁・発行日
pp.515-521, 1980-07-10

はじめに 障害の受容(acceptance of disability)はリハビリテーションにおける「問題解決の鍵となる概念(キイ・コンセプト,key concept)」の一つである.客観的(外形的)にはリハビリテーションのゴールが達成されていながら,障害者(患者)本人の障害の受容が達成されていないために結局リハビリテーションが完結しないという場合が少なくない.リハビリテーション・カンファレンスの場でも「最大の問題は本人による障害の受容だ」という所までは全員の意見が一致しても,「では一体だれが,どのようにして障害の受容を援助するのか」という実際の方法論となると,いくら話し合っても結論がでず,結局「もう少しPT・OTを続けて様子を見よう」というところに落着いてしまうこともしばしばである. このように重要な障害の受容であるが,これを正面からとりあげた論文は内外ともに意外に少く,部分的に触れているものを含めても,筆者が直接に接することができたのは20篇のみであった1~20).これらの中で理論的にもっとも詳しく包括的なのはWright2)の古典的な名著の策5章“Value Changes in Acceptance of Disability”であり,教科書的によくまとまったものとしてはHerman5),高瀬10),古牧17)などがある.また最近の中司15),松田他19),蕪木他20)はこの問題への実証的なアプローチとして価値高いものである. 筆者は心理学または精神医学の専門家ではないが,リハビリテーション医としてこれまで多くの身体障害をもつ患者・障害者に接し,障害の受容に到る苦痛に満ちた過程に触れ,また可能な限りその過程を促進し,援助しようとつとめてきたし,その過程で持った感想を述べたこともある11,14).また昨年,筆者の所属する東大リハビリテーション部の全職員の参加する勉強会のテーマに障害の受容を選び,数ヵ月にわたって,いくつかの症例の検討を通じて,障害の受容にいたる心理的ダイナミックスの法則を理解することと,その援助の上でリハビリテーション・スタッフの果たすべき役割と注意について議論を重ね,得るところが大きかった.特に長期にわたる抑鬱から短期間のうちに劇的な立直りを示し,障害の受容のめざましい成功例だと担当者たちは考えていた一症例が,角度を変えて見直してみると,実は抑鬱期にある患者に自立を「強要」し,それが十分達成されないことに対して,批難がましい感情をもつことによって一歩誤まれば非常な危険な瀬戸際まで患者を追いつめていた可能性があり,我々にもう少し深い洞察力と患者の苦しみに対する共感力とがあれば抑鬱の期間をはるかに短かく切り上げて,数か月も早く受容に到達させ得ていたかもしれないということの認識(と反省)に到達しえたことは我々にとって一つの啓示といってもよいものであった. 本論文では文献的考察にそのような経験や反省をもまじえつつ,障害の受容の問題をよりよく理解し,よりよく対処することを目的として種々の角度からの考察を試みたい.
著者
上田 敏見
出版者
奈良学芸大学
雑誌
奈良学芸大学紀要. 人文・社会科学 (ISSN:04695569)
巻号頁・発行日
vol.11, pp.205-216, 1963-02-28

PURPOSE There have been not a few studies of the relationship among various sociometric techniques, though the methods employed are fairly different. Here in Japan, we can hardly find an intensive as well as extensive research of this kind. This study is an attempt to explore: (1) the intercorrelations between pupils' sociometric status scores obtained in a rating scale , on one hand , and those obtained by use of several sociometric tests with choice-rejection levels of unlimited, five limit, four limit, three limit, two limit and one limit, on the other, and, (2) the intercorrelations among pupils' sociometric status scores obtained in those various sociometric tests.

1 0 0 0 OA 聖教日課

著者
上田敏 編
出版者
上田ヱツ子
巻号頁・発行日
1917
著者
越中 康治 上田 敏丈 若林 紀乃 濱田 祥子 岡花 祈一郎 中西 さやか 廣瀬 真喜子 松井 剛太 八島 美菜子 山崎 晃
出版者
広島大学大学院教育学研究科附属幼年教育研究施設
雑誌
幼年教育研究年報 (ISSN:03883078)
巻号頁・発行日
vol.40, pp.49-60, 2018-10-19

The purpose of this study is to clarify the actual conditions of personal records such as "support files" and "transition support sheets" created by early childhood facilities (kindergartens and nursery schools) to provide transition support to children with disabilities. The study seeks to examine how these records are created by early childhood facilities and used by elementary schools. A nationwide questionnaire survey targeting public and private kindergartens, nursery schools, and elementary schools was carried out. The survey results show that about half of the early childhood facilities created these records and that the records were being effectively utilized by the elementary schools that received them. However, there were also differences based on the type of institution: for instance, the rate of record creation was high at public kindergartens and low at private kindergartens and nursery schools. In terms of record content, there is a possibility of a gap between the information recorded by early childhood facilities and that sought by elementary schools. Based on these actual conditions, this study identifies issues to be considered in the effective creation and utilization of records.本研究は平成28年度文科省委託「幼児期の教育内容等深化・充実調査研究」(調査研究課題:幼保小接続における学習機会の保障としての合理的配慮に関する研究,研究受託機関:名古屋市立大学)の助成を受けて行われた研究成果の一部である。なお,本稿の一部は日本教育心理学会第59回総会において発表した。
著者
安藤 徳彦 上田 敏 石崎 朝世 小野 浩 大井 通正 緒方 甫 後藤 浩 佐藤 久夫 調 一興 菅井 真 鈴木 清覚 蜂須賀 研二 山口 明
出版者
医学書院
雑誌
総合リハビリテーション (ISSN:03869822)
巻号頁・発行日
vol.19, no.10, pp.979-983, 1991-10-10

はじめに 障害者が健常者と同様に働く権利を持っていることは現在は当然のこととされている.国連の「障害者の権利に関する宣言」(1975年12月9日)第7条には「障害者は,その能力に従い,保障を受け,雇用され,また有益で生産的かつ十分な報酬を受け取る職業に従事し,労働組合に参加する権利を有する」と述べられている.また国際障害者年(1981年),国連障害者の10年(1983~1992年)などの「完全参加と平等」の目標を実現するための行動綱領などにも常に働く権利が一つ重要なポイントとして掲げられている. また現実にも,障害者,特に重度の障害者の働く場はかなり拡大してきている.障害者の働く場は大きく分けて①一般雇用,②福祉工場,授産施設など,身体障害者福祉法,精神薄弱者福祉法,精神保健法などの法的裏づけのある施設での就労(福祉工場では雇用),③法的裏づけを欠くが,地域の必要から生まれた小規模作業所での就労,の3種となる.このうち小規模作業所は,共同作業所全国連絡会(以下,共作連)の調査によれば,全国に約3,000か所,対象障害者約3万人以上に及んでおり,この数は現在の授産施設数およびそこに働く障害者数のいずれをも上回っている.小規模作業所で働いている障害者は,一般雇用はもとより,授産施設に働く障害者よりも障害が重度であったり,重複障害を持っている場合が多い.その多くは養護学校高等部を卒業しても,その後に進路が開けなかった人々であり,彼らの就労の場として小規模作業所が開設されたわけであるが,それは親たちや養護学校の教師たちの運動で自主的につくられてきた施設が多い.また最近まで就労の道が開かれていなかった精神障害者に対し,以前から広く門戸を開いてきたのも小規模作業所であり,その社会的役割は非常に大きい. しかし,障害者が働くことに関しては,医学的側面から見て種々の未解決の問題が存在している.現在もっとも重要視されていることの一つは,重度の身体障害者,特に脳性麻痺者における障害の二次的増悪である.すなわち,以前から存在する運動障害が,ある時期を境として一層悪化し始める場合もあれば,感覚障害(しびれ,痛みなど)が新たに加わる場合も多い.そして,その結果,労働能力が一層低下するだけでなく,日常生活の自立度まで低下し,日常生活に著しい介助を必要とする状態に陥る者も少なくない. すでに成人脳性麻痺者,特にアテトーゼ型には二次的な頸椎症が起こり,頸髄そのものの圧迫または頸髄神経根の圧迫により種々の症状を生ずることが知られている.しかし,二次的な障害増悪がすべてこの頸椎症で説明できるものではないようであり,さらに詳細な研究が必要である. また逆に,働くことがこのような二次障害の発生を助長しているのかどうかという問題も検討する必要がある.廃用症候群の重要性が再認識されつつある現在,たとえ重度障害者であっても働くことには心身にプラスの意味があるに違いない.しかし一方,働きすぎ(過用,過労)がいけないことも当然である.問題は重度障害者における労働が心身の健康を増進するものであって,わずかなりともそれにマイナスとなるものでないように,作業の種類,作業姿勢,労働時間,労働密度,休憩時間,休憩の在り方などを定めることであり,それには労働医学的な研究が十分なされなければならない. 以上のような問題意識をもって,1990年,共作連の調査研究事業の一部として障害者労働医療研究会が結成された.同研究会には脳性麻痺部会と精神障害部会を置き,前者においては主として上述の二次障害問題を,後者においては精神障害者にとっての共同作業所の機能・役割,また障害に視点を当てた処遇上の医療的な配慮などについての研究を進めている. そして,障害者労働医療研究会の最初の仕事として,以上のような問題意識に基づいて脳性麻痺者の二次障害の実態調査を行った.その詳細は報告書としてまとめられているが,ここではその概要を紹介する.なお,この研究では小規模作業所と授産施設との間の差を見る目的もあって,前者の全国的連合体である共作連と授産施設の全国連合体である社団法人全国コロニー協会(以下,ゼンコロ)との協力を得て行った.
著者
小川 道子 上田 敏彦 大久保 滉 森井 外吉
出版者
関西医科大学医学会
雑誌
関西医科大学雑誌 (ISSN:00228400)
巻号頁・発行日
vol.28, no.3, pp.544-555, 1976-09-20 (Released:2013-02-19)
参考文献数
27

Reported: This autopsy case of myasthenia gravis in a 41 year old female revealed thymus hyperplasia with germinal centers remaining in the fatty tissues. The infiltration of lymphocytes (lymphorrhage) was remarkable only in the tissues near the thymus, namely the intercostal muscles, myocardium, and thyroid; in the other affected skeletal muscles, it was only slight. The Lymphorrhage in the myocardium was so remarkable that was histologically diagnosed as subacute myocarditis.Discussed: In agreement with recent studies, these findings seem to suggest the view that myasthenia gravis is an autoimmune disease.
著者
上田 敏見 谷口 勝英
出版者
The Japanese Group Dynamics Association
雑誌
実験社会心理学研究 (ISSN:03877973)
巻号頁・発行日
vol.20, no.1, pp.75-80, 1980

本研究は, 社会的望ましさと誘引との関係を明らかにすること, 自己評価の高低がこの関係にどのようにかかわっているかを確かめることを目的として行われた.<BR>116人の被験者が, 課題遂行能力において, すぐれた人, 類似した人, 劣った人の3人の刺激人物を, 課題遂行のパートナーとして, 遊び友達として, リーダーとして, どの程度好ましいかを評定した.<BR>主な結果は, 次の通りであった.<BR>(1) 作業のパートナー, 遊び友達としては, すぐれた人より, 類似した人の方が好まれる.<BR>(2) リーダーとしては, すぐれた人が, 類似した人より好まれる.<BR>(3) 作業のパートナーでは, 自己評価の高い者の方が低い者より刺激人物をより好ましく感じる.<BR>このうち, (1), (2) については, 場面の特性と社会的望ましさの側面が合致して, 社会的望ましさが本人に直接的に利益を与える時のみに報酬となることを示すものとして解釈された. また, (3) については, 自己評価の高い者の劣等感のなさや, 自己の能力への肯定的是認によるものとして解釈された.
著者
上田 敏丈
出版者
日本保育学会
雑誌
保育学研究 (ISSN:13409808)
巻号頁・発行日
vol.52, no.2, pp.232-242, 2014-12-25

本研究は,初任保育者を対象にインタビュー調査を行い,初任保育者の保育行為と価値観との関係性を発生の三層モデルを手がかりに明らかにすることで,日々の保育行為が価値観に影響を与えていくプロセスを明らかにする。インタビューは,2012年6月から2013年3月まで,月1回行われた。サトミ先生は公立保育園に勤務し始めた初任保育者である。保育者の語りを質的研究法のSCATとTEMを用いて分析した。結果として,とまどい期から,試行錯誤期を経て,保育できた・できる観を獲得していくプロセスが明らかになった。

1 0 0 0 OA 小唄

著者
上田敏 選註
出版者
阿蘭陀書房
巻号頁・発行日
1915
著者
上田 敏子
巻号頁・発行日
2012

筑波大学博士 (体育科学) 学位論文・平成24年3月23日授与 (甲第6256号)
著者
上田 敏郎 島村 佳伸 東郷 敬一郎 藤井 朋之 岡島 いづみ 平松 正敬 佐古 猛
出版者
The Society of Materials Science, Japan
雑誌
材料 (ISSN:05145163)
巻号頁・発行日
vol.59, no.12, pp.964-969, 2010
被引用文献数
2 5

Carbon-fiber reinforced epoxy was decomposed using subcritical water and supercritical methanol to reclaim carbon fibers. The tensile strength of the reclaimed carbon fibers was measured. Then SEM observation, XPS, and Raman spectral analysis were conducted to elucidate the change of tensile strength caused by decomposition. The tensile strength decreased by 6% in the case of decomposition with supercritical methanol, and by 12~17% with subcritical water. The surfaces of reclaimed carbon fibers were resin-free. Decomposition did not affect the fiber surface and fracture surface morphology. Subsequent XPS analysis revealed that functional groups of the carbon fiber surface had been removed. Raman spectral analysis showed decreased graphitization of the carbon fiber surface. These results imply that the fracture toughness of the carbon fiber surface decreased because of breakage of carbon-carbon bonds in the carbon fibers as a result of decomposition.