著者
中村 匡宏
出版者
国立音楽大学
雑誌
音楽研究 : 大学院研究年報 (ISSN:02894807)
巻号頁・発行日
vol.26, pp.67-79, 2014

本論の目的は、『シュプレヒシュティンメSprechstimme(以下,Sst.)』の技法をある水準まで高めたアルノルト・シェーンベルク(Arnold Schoenberg 1874-1951)の作品を整理、考察し、現代の声を用いる芸術作品の創作における作曲技法的問題と可能性を発見する事である。本論は2部で構成する。第1部ではシュプレヒシュティンメの技法の前身と考えられる『レチタティーヴォRecitativo』『メロドラマMelodrama』『ジングシュピールJingspielの台詞部分』の3つの事項を挙げる。シェーンベルクにSst.の創作のきっかけを与えたのは19世紀の作曲家エンゲルベルト・フンパーディンク( Engelbert Humperdinck 1854-1921)のオペラ《王様の子供たち》で用いた唱法であると言われることが多いが、とりわけ17世紀以降の声楽作品、オペラから見てみも、Sst.の定義が曖昧すぎてSst.の起源の発見は困難である。同様『メロドラマ』や『ジングシュピールの台詞部分』に関しても、音楽を語りに付随させる事は演劇の発祥まで辿らなくてはならない。この疑問は、20世紀のシェーンベルクの用いたSst.の技法、記譜法からも検証し、これらの技法、記譜法の目的を整理することで、Sst.との関連性を見いだせる可能性がある。第2部ではSst.を用いたシェーンベルクの作品全てを概観し、用いられている記譜法全てをまとめSst.の記譜の使い分けを分類する。結果シェーンベルクの使用しているSst.の記譜法は5種類あり、その用法の分類は『音高(メロディ)とリズムが指示されている唱法』『音程関係(イントネーション)とリズムが指示されている唱法』『タイミング(語りだし)のみの指示がされている朗読』の3つであった。シュプレヒシュティンメと音楽に同一の価値をもたせる、もしくはシュプレヒシュティンメの音楽的存在感が背景の音楽に負けない芸術作品の制作をするためには声そのものの『音色』の指示に加えて『イントネーション』『リズム』『発音のタイミング』が記譜されることが最も重要になると考えられる。
著者
長田 年弘 篠塚 千恵子 中村 るい 河瀬 侑 小堀 馨子 坂田 道生 高橋 翔 田中 咲子 中村 友代 福本 薫 山本 悠貴
出版者
筑波大学
雑誌
挑戦的萌芽研究
巻号頁・発行日
2012-04-01

古代ギリシア・ローマ美術史における、広義の「祈り」(「嘆願」、「崇拝」、「オランス」)図像について、作例を検証した。特にギリシア時代の「嘆願」と、ローマ時代の「オランス」に、女性を「祈り」の主体とする作例数が多いことに着目し、社会的弱者の「祈り」と、道徳等の社会規範との関わりに目を向けた。小堀馨子(古代宗教史)は専門的見地から参加し、「命乞い」などのネガティブな価値判断を与えられた「嘆願」図像が、「敬虔さ」を表すポジティブな「崇拝」および「オランス」図像に転用された現象について検討を行った。期間中に5回の研究例会を開催し、最終的な研究成果に関して報告書を編集、刊行、専門研究者に配布した。
著者
福井 博一 山本 哲也 浅野 正 中村 三夫
出版者
岐阜大学
雑誌
岐阜大学農学部研究報告 (ISSN:00724513)
巻号頁・発行日
vol.53, pp.139-145, 1988-12-25

Cyclamen persicum Mill.'バーバーク'の種子を無機成分を1/2にしたMurashige & Skoog培地(1/2MS)に播種し,発芽した幼植物の各組織からの器官分化に及ぼす生長調節物質の影響及び大量増殖法の検討を行った。子葉柄からは塊茎様組織(TLO)が形成されたが,その形成量はNAA濃度が高くなるに従い促進された。生長点近傍組織及び塊茎組織からの塊茎肥大にもNAAが密接に関与していた。不定芽の分化はBAPによって促され,不定根の分化はNAAによって促進された。カルス形成はNAAを10^<-5>M,BAPを10^<-7>〜10^<-6>M添加された場合に最も促進された。個々に分割した不定芽を,高濃度のBAPを添加した培地に移植すると各々からフローラルトランクが形成され,実生植物に近い形態の幼植物となった。カルスをNAA 10^<-6>M及びBAP 10^<-6>M添加した培地で液体振とう培養すると多数の不定胚が得られた。
著者
橋田 拓志 田原 司睦 中村 実 宇治橋 善史 河場 基行 原田 リリアン
雑誌
第77回全国大会講演論文集
巻号頁・発行日
vol.2015, no.1, pp.493-494, 2015-03-17

近年、トランザクション処理と高速分析処理を兼ね備えたOLXPが提案されている。こうした背景を踏まえ、我々はOSSのRDBMSであるPosgreSQLベースのOLXPシステムの設計を行っている。このシステムは、トランザクション処理については従来のPostgreSQLのテーブルデータ、分析処理についてはカラムナ構造の複製テーブルを参照して高速化を図っている。OLXP実現に際して課題の一つにトランザクション実現がある。機能面では複製テーブルアクセス時のMVCCサポート、また性能面ではトランザクション処理に伴うデータ更新速度の低下の抑制が課題となっている。本発表ではPostgreSQLベースのOLXPシステムに向けたトランザクション実現方式に焦点を絞り、検討結果を報告する。
著者
中村 晋 広田 すみれ 高田 毅 山口 彰 中村 孝明
出版者
公益社団法人 土木学会
雑誌
構造工学論文集 A (ISSN:18816614)
巻号頁・発行日
vol.62, pp.138-146, 2016

The objective of this paper is to establish the method to explain technology for creating the reliability between people and engineer. Therefore, the view with which the risk communication model about formation of the risk perception in social psychology or reliance and the idea about new engineering accounting were united was established. The homepage about the maintenance management of the road structure in Fukushima Prefecture was made into the example, the issues on technical explanation were summarized, the contents were corrected using the method, and the effect was investigated. It is found that a new technical explanation method is useful because intelligibility increased from correction before and by having used the method.
著者
中村 博
出版者
福山大学経済学研究会
雑誌
福山大学経済学論集 (ISSN:02884542)
巻号頁・発行日
vol.39, no.1, pp.57-72, 2015-03

21世紀に入り、国際社会にとっては、これまでの国家や社会についての既成概念を大きく変貌させようとする事態が生じている。2001年9月11日の同時多発テロ事件、2008年の米国大手証券会社リーマン・ブラザーズの経営破綻を契機とする世界的金融危機の発生などは、人類の歴史に長く刻み込まれる出来事であるが、ここ数年の間にも世界を揺るがす事件が立て続けに発生している。このような近年の情勢の背景としてば目下、想像を超える勢いで加速しているグローバリゼーションの影響がある。 同時多発テロ事件は政治と宗教の融合を意味し、金融危機は2007年の米国のローカルなサブプライム問題に端を発するが、その原因の一つを歴史的に考察すると、レーガン大統領、サッチャー首相の政策である新自由主義に辿り着く。 現代社会が抱える課題は、政治的危機、経済的危機のみならず、これまでのグローバリゼーションの歴史的経緯の中で、主権国家の在り方や、国家間や国内の機能分化がもたらす国際社会の変貌から、昨今の世界を揺るがす事象が生じていることを勘案すべきである。このような課題を乗り越えていくために人類にはどのような英知が必要なのかを真撃に問い直し、併せて、未来に向けてこれまでの「国家の安全保障」から「人間の安全保障」へ国際社会の軸足がシフトしつつある視点を、政治・経済・宗教・文化・環境の各領域の中で、諸政策にどのように反映していけるのかという論点を、時代の要請として、現在の21世紀の人類社会に求められている問題として提起したい。Entering into 21st Century, for international society, the situation of transfiguring the accepted idea on the state and the society is often happening throughout the world. Take for example, the 2001.9.11 Simultaneous Terrorist Terror Attack in New York and Washington, D.C. and the Worldwide Financial Crisis caused by Lehman Brothers Holdings Inc. Management Bankruptcy. Although these were unexpected occurrences engraved in human history for a long time, the various kinds of affairs shaking the world have been occurring so frequently in recent years. Regarding these affairs there is the influence caused by the Globalization accelerating beyond our imagination. The above-mentioned Simultaneous Terrorist Terror Attack means the fusion of politics and religion, and the above-mentioned Worldwide Financial Crisis was originated from the local subprime lending issue in America, but if we consider what is one of the causes of this Worldwide Financial Crisis historically, it reaches the New-liberalism as a policy of Margaret Hilda Thatcher in England and Ronald Wilson Reagan in America. Regarding these serious problems of the present society, we should consider the main reason why the various kinds of affairs shaking the world have been occurring so frequently is based on not only political crises and economical crises but also the transfiguring of how to be a sovereign nation and the functional differentiation among sovereign nations and within the country in a historical process of the Globalization. In order to overcome these serious problems we should consider what kinds of the wisdom is necessary for us humankind, and the point under discussion how we are reflecting the point of view that the pivot leg of international society is shifting from the National Security to the Human Security into various policies in the fields of politics, economy, religion, culture and environment. I want to raise this point under discussion as the question that is required by the demand of the present age for the human society.
著者
保坂 尚紀 輿 秀利 伊藤 賢 中村 正和 梨本 正恵
出版者
公益社団法人 日本口腔インプラント学会
雑誌
日本口腔インプラント学会誌 = Journal of Japanese Society of Oral Implantology (ISSN:09146695)
巻号頁・発行日
vol.13, no.2, pp.395-399, 2000-06-30
参考文献数
11
被引用文献数
1

In prophylaxis of postoperative infection, an air-cleaner was used to remove air-contaminant bacteria and fungi in the operating room during dental implant surgery. In general, next to Coagulasenegative staphylococci, the most frequent isolate, Corynebacterium species was isolated in the operatmg room.<br/> When an air-cleaner was used during the operation, the bacteria and fungi were considerably decreased, especially fungi decreased below the detectable level. To the results indicated that application of an air-cleaner was decreased air-contaminant microbes in the operating room for the dental implant surgery.<br/>
著者
保坂 尚紀 輿 秀利 伊藤 賢 中村 正和 梨本 正恵
出版者
公益社団法人 日本口腔インプラント学会
雑誌
日本口腔インプラント学会誌 = Journal of Japanese Society of Oral Implantology (ISSN:09146695)
巻号頁・発行日
vol.13, no.2, pp.395-399, 2000-06-30
参考文献数
11
被引用文献数
1

In prophylaxis of postoperative infection, an air-cleaner was used to remove air-contaminant bacteria and fungi in the operating room during dental implant surgery. In general, next to Coagulasenegative staphylococci, the most frequent isolate, Corynebacterium species was isolated in the operatmg room.<br/> When an air-cleaner was used during the operation, the bacteria and fungi were considerably decreased, especially fungi decreased below the detectable level. To the results indicated that application of an air-cleaner was decreased air-contaminant microbes in the operating room for the dental implant surgery.<br/>
著者
中村 睦美 水上 昌文
出版者
JAPANESE PHYSICAL THERAPY ASSOCIATION
雑誌
日本理学療法学術大会
巻号頁・発行日
vol.2010, pp.CbPI2287-CbPI2287, 2011

【目的】固有感覚は身体の空間での位置や運動に関連している。この受容器は筋や腱、皮膚、関節包、靭帯など関節および関節周囲に多く分布し、身体の運動を制御し、関節を安定させ筋を協調的に働かせるために重要である。この固有感覚の代表的なものの1つである関節位置覚には筋紡錘が最も重要な機能を果たしているとされているが、関節周囲筋の伸張状態を変化させた際、関節構成体の内側と外側では筋の伸張状態は不均衡となり、筋紡錘からの情報に混乱を生ずることで関節位置覚の低下を来すのではないかと推測される。しかし、実際に関節周囲筋の伸張状態の違いが関節位置覚に及ぼす影響については明らかになっていない。そこで今回、関節周囲筋の伸張状態を変化させた際の関節位置覚への影響について検討した。他動的な操作を加えることによる触圧覚の影響を最小限にするため、自動運動による前腕回内外運動が可能な肘関節にて屈曲伸展方向の位置覚について検討した。本研究の目的は関節周囲筋の伸張状態の違いが関節位置覚に及ぼす影響を、前腕肢位を変化させた際の肘関節屈曲伸展方向への位置覚模倣能力から検討し明らかにすることである。<BR>【方法】対象は健常成人9名(平均年齢31.6±6.7歳)であり、肘関節疾患の既往のない17肘を対象とした。対象者は全員右が利き手であった。測定肢位は椅子坐位で両上腕はテーブル上に肩関節90度屈曲位、内外転中間位、内外旋中間位とした。関節位置覚の測定は田崎らの方法を用いた。検査側の前腕の肢位は90度回内位、回内外中間位、90度回外位の3条件として肘関節屈曲60度で固定し、その関節位置覚を認知させた。次に反対側上肢は前腕90度回外位で肘関節屈曲角度を検査側に応じて模倣させた。測定中は閉眼とし、検者は肘関節屈曲時に肩関節の運動が伴っていないことを確認した。対象者の模倣した角度は、デジタルカメラで橈骨茎状突起のマーカーの動きを記録し紙面上にて分度器を用い1度単位で読み取った。各肢位における測定は3回施行し、設定角度(60度)から計測値を除した絶対値(絶対誤差値)を算出し平均値と標準偏差で表した。統計学的検定はPASW.ver18.0にて、3肢位の比較にFriedman検定及び Wilcoxonの符号付き順位検定を用い有意水準は5%とした。<BR>【説明と同意】対象者には事前に研究の趣旨を説明し書面にて同意を得た。<BR>【結果】各肢位における絶対誤差値の平均値±標準偏差は回内位4.7±3.8度、中間位5.3±3.7度、回外位4.4±3.4度であり有意差はみられなかった。<BR>【考察】関節周囲筋の伸張状態を変化させた際の関節位置覚への影響を明らかにするために、前腕の肢位を変化させて肘関節屈曲伸展方向への位置覚の測定を行った。前腕回内位では、肘関節外側構成体が伸張され回内位を保持するために円回内筋や方形回内筋の活動を要し、回外位では内側構成体が伸張され回外位を保持するために上腕二頭筋や回外筋の活動を要すことから、回内外中間位と比較して多くの情報を得ることができるため、回内位と回外位では中間位と比較して関節位置覚の感度が高くなると考えた。結果は、ある程度そのような傾向が示されたが、有意差を認めるには至らなかった。今回は健常肘を対象としており、前腕の回内、回外、回内外中間位は日常生活で頻繁にとる肢位であるため、どの肢位においても肘関節位置覚の感度は保たれ、前腕肢位の違いは肘関節位置覚に大きく関与しない可能性が示唆された。木山らは、関節位置覚の模倣角度が±10度以上の誤差でないと異常とは言い難いと報告しているため、今回の肘関節位置覚の模倣角度は正常範囲内であると考えられる。今後は、さらに対象者を増やし、関節位置覚の感度に影響を与えるとされている模倣速度の設定や、他動での模倣などを考慮に入れ、再度本研究結果の妥当性を検証するとともに、肘関節以外の関節ではどのような結果が得られるのか検討していくことが、関節位置覚への臨床アプローチ上、重要な課題と考えられる。<BR>【理学療法学研究としての意義】健常肘を対象とした場合、肘関節位置覚に前腕回内外の肢位の違いは大きく影響を及ぼさない可能性が示された。関節位置覚の特性を理解することは、臨床での関節位置覚の客観的評価を可能とする上で有益な基礎的情報になると考える。
著者
岩間 文男 広瀬 典子 中村 司 丸田 詮二朗
出版者
社団法人 日本化学会
雑誌
工業化学雑誌 (ISSN:00232734)
巻号頁・発行日
vol.74, no.7, pp.1387-1389, 1971

渡り鳥の一種であるオオヨシキリを, 渡りの直後 (春) および渡りの直前 (秋) に捕獲して, 皮下部分と体内部分に分けて, エーテルで脂質を抽出し, 抽出物をアセトン可溶部と難溶部に分けた。可溶部をケン化し, 不ケン化物を抽出して, アルミナを用いるカラムクロマトグラフィーを行なって, 炭化水素とアルコ一ルに分離した。分離した各部分について, ガスクロマトグラフィー, 薄層クロマトグラフィー, 赤外吸収スペクトル測定, 諸特数測定などを行ない, 春と秋とについて脂質の変化を比較検討した。<BR>その結果春秋ともに脂肪酸の主成分は C<SUB>16</SUB>, C<SUB>18</SUB><SUP>1</SUP>であり, アルコールの主成分はC<SUB>10</SUB>, C<SUB>14</SUB>, C<SUB>15</SUB>, C<SUB>16</SUB>, C<SUB>17</SUB>, C<SUB>18</SUB>であることを明らかにした。またリン脂質としてレシチン, リゾレシチン, スフィゴメリン, ケファリンが, 糖脂質としてサッカローズ, ガラクトーズ, D(-)-リボース, L(+)-ラムノーズなどを構成成分とする糖脂質が存在することを認めた。さらに共役酸として, ジエン酸と少量のトリエン酸が含有されていることを明らかにした。
著者
中村 レイモンド 田中 雅生
出版者
JAPANESE ASSOCIATION OF BENTHOLOGY
雑誌
日本ベントス学会誌 = Benthos research (ISSN:02894548)
巻号頁・発行日
vol.49, pp.29-37, 1995-08-31

九州天草西岸において,潮間帯に棲息するカメノテ,Capitulum mitellaの集団内の個体を1年間にわたり追跡し,サイズと生存の有無を記録した. サイズの指標として峰板の先端と嘴板の先端の距離を測定した.成長曲線については,ロジスチック,ベルタランフィ,ゴンパーツ,指数の4つの曲線を使って適合度を検討したが,指数式が最も合いがよかった.指数式を使って検討を行ったが,成長は集団の内側の個体と外側の個体とで統計的な有意差はみられなかった.内外個体を込みにした指数式のパラメータの値a=1.2902,b=0.008843,t<SUB>0</SUB>=80.73であった.1年間の生存率をみると,内側と外側の個体で有意差はみられなかった.内外個体込みの生存率は0.804であった.