著者
岨野 太一 今井 倫太
出版者
Japan Society for Fuzzy Theory and Intelligent Informatics
雑誌
知能と情報 (ISSN:13477986)
巻号頁・発行日
vol.33, no.1, pp.582-592, 2021-02-15 (Released:2021-02-15)
参考文献数
40

本論文では,目的のない散歩において,人と一緒に散歩するパートナーとなるロボットの発話の量について検討する.発話の量の調整は,話者に対する聞き手の印象や,会話自体の印象に対して大きく寄与する要素である.散歩においても,一緒に歩くパートナーとの会話は,散歩自体の印象に寄与すると考えられ,発話量に関する知見を得ることは大変重要である.本論文では,4種類の発話量のロボットに対して,参加者内計画による検証実験を行い,発話量についての多寡の感覚と,発話量による印象の変化について調査を行った.結果,4~5秒の短文の発話において,発話の開始から次の発話の開始までが10秒である場合に発話量が多いと感じ,40秒だと少なく感じるという知見が得られた.また,発話の開始から次の発話の開始までが20秒以下である場合,散歩のパートナーとしての評価や好ましさ,知的かどうかの印象の面で,他条件に対して有意に高評価であった.
著者
今井 千文 野中 和賀樹
出版者
水産大学校
雑誌
水産大学校研究報告 (ISSN:03709361)
巻号頁・発行日
vol.63, no.3, pp.219-231, 2015-03

トラフグ属魚類Takifuguはフグ科Tetraodontidaeに属し,アジア太平洋の温熱帯海域に広く分布し,日本近海には約20種が知られている。内臓や皮膚にフグ毒テトロドトキシンを含有するが,筋肉は無毒または弱毒で食用種も多く,トラフグをはじめ,水産重要種が多く含まれる。一方で,商業価値の高いトラフグは強い漁獲にさらされ,資源量は激減していて,資源管理が急務である。資源管理の実施に際しての資源情報として成長モデルは重要である。本研究では,野外調査により得られたクサフグの耳石を計測することにより耳石の成長速度が一定であることを示し,耳石測定により年齢推定が可能であることを示した。耳石日周輪間隔を測定して,耳石成長速度の安定性を検証した。
著者
今井 由美子
出版者
医学書院
巻号頁・発行日
pp.983-992, 2011-10-15

はじめに 2009年新型インフルエンザが発生し,今世紀初のパンデミックを引き起こした.このインフルエンザウイルス(H1N1)は弱毒型であったが,小児,あるいは肥満,糖尿病,喘息などの基礎疾患のある人を中心に重症化し,急性呼吸窮迫症候群(ARDS),心筋炎,脳炎などを引き起こした.重症例のなかには少数ではあるが,体外式膜型人工肺(ECMO)を必要とするような劇症型のものも含まれていた. 一方,世界中へ拡がりをみせている強毒型のH5N1鳥インフルエンザが,次の新型インフルエンザのパンデミックを引き起こすリスクは依然として続いている.インフルエンザウイルスがヒトにおいて強い病原性を発揮した場合は,ARDS,全身性炎症反応症候群(SIRS),多臓器不全(MOF)を引き起こし,集中治療室(ICU)において人工呼吸をはじめとした救命治療が必要となる.ARDSの病態は,制御範囲を逸脱した肺局所の過剰炎症で特徴づけられ,びまん性肺胞損傷(diffuse alveolar damage;DAD),サイトカインの過剰産生(サイトカインストーム),肺血管透過性の亢進による肺浮腫により,急激な酸素化の低下ならびに二酸化炭素の蓄積が引き起こされる1).北米・ヨーロッパコンセンサス会議(North American-European Consensus Conference on ARDS;NAECC)は,酸素化を指標に,P/F比=〔動脈血酸素分圧(mmHg)〕÷〔吸入気の酸素分率(%)〕が200以下をARDSの定義の一つに定めている2).胸部X線写真上びまん性の陰影を特徴とし,瞬く間に肺が真っ白になり,重篤な呼吸不全に陥る.インフルエンザに対してワクチンやオセルタミビル(タミフル®)などの抗ウイルス薬の早期投与が重要であるのは言うまでもない.しかし,重症化してARDS,SIRS,MOFを発症した場合は,ワクチンや抗ウイルス薬はもはや無効となり,残念ながら今のところ決め手となるような有力な治療法がない.ウイルスが侵入した宿主細胞では,ウイルスと宿主の相互作用から様々なシグナル伝達系が動き出し,これらがインテグレートされた形での生命現象を感染現象と呼ぶ.ウイルスの感染力が宿主の防御力より強くなった時,シグナルバランスが破綻し,病原性が発現し感染症が発症する.インフルエンザ重症例に対する有効な治療法を確立するには,ウイルスゲノムの複製や転写などの増殖機構,宿主域やトロピズムといったウイルス側の因子とともに,ウイルスに対する宿主応答機構の分子レベルの理解が重要であると考える. 本稿では,まずインフルエンザウイルスの構造やライフサイクルについて概説し,次いでRNAiスクリーニング,ヒトゲノム解析,マウスモデルを用いた研究などを中心に,ウイルス・宿主の相互作用,ARDSの分子病態に焦点を当てる.さらに,抗ウイルス薬,新しい治療薬の可能性について述べ,最後にARDS,SIRS,MOFからの救命に必須の人工呼吸に関して,肺保護戦略の重要性に言及したい.
著者
今井 順一 柏木 雄平 木辻 亮
出版者
公益社団法人 計測自動制御学会
雑誌
計測自動制御学会論文集 (ISSN:04534654)
巻号頁・発行日
vol.55, no.5, pp.342-352, 2019

<p>Visual object tracking techniques are widely required by many vision applications. The color-based particle filter is known as one of useful methods for robust object tracking. However, the conventional color-based particle filter has a problem that it is not robust against self-occlusion. Self-occlusion occurs when a part of a target object is hidden by itself from a camera. When the target object moves or rotates, a part of the target disappears because the self-occlusion occurs and other part appears because the self-occlusion is resolved. The conventional color-based particle filter often fails to follow such a change of the target's appearance due to self-occlusion during the tracking process. In this paper, we propose a novel method for robust object tracking against the self-occlusion. The proposed method is based on the color-based particle filter, and it also uses depth information obtained by an RGB-D camera. When the self-occlusion occurs and the target's appearance changes, the proposed method extracts a region for the target object in the input image by the graph cuts based on depth information. However, this process often includes unnecessary regions, especially when some objects are close to the target. Then, the proposed method distinguishes the region for the target from unnecessary ones by investigating expanse of colors around the target. Therefore, the target model is correctly updated and the robust tracking is achieved. In order to verify the effectiveness of the proposed method, we carried out an experiment to compare the proposed method with the conventional one. Experimental results show that the proposed method works well.</p>
著者
河上 淳一 後藤 昌史 松浦 恒明 寄谷 彩 政所 和也 永松 隆 今井 孝樹 烏山 昌起 原田 伸哉 工藤 憂 志波 直人
出版者
日本理学療法士学会
雑誌
理学療法学 (ISSN:02893770)
巻号頁・発行日
vol.47, no.6, pp.587-592, 2020 (Released:2020-12-18)
参考文献数
26

【目的】本研究の目的は,腱板断裂患者に対し患者立脚評価を用いた治療方針の予測をすることである。【方法】対象は腱板断裂患者229 名で,初診1 ヵ月以降の治療方針(手術または保存)を目的変数,患者立脚評価を説明変数とした決定木分析と傾向スコア分析を行い,治療方針のオッズ比を算出した。【結果】決定木分析にてもっとも手術療法が選択される手術療法傾向群と,もっとも保存療法が選択される保存療法傾向群に分け,それ以外を中間群とした。傾向スコア分析を考慮したオッズ比は,保存療法傾向群に対して手術療法傾向群で11.50 倍,中間群に対して手術療法傾向群で3.47 倍の手術療法が選択された。【結論】腱板断裂患者の治療方針の予測には,SST における4 つの質問の重要性が示唆された。