著者
長尾 真 中村 裕一 小川 英光 安西 祐一郎 豊田 順一 國井 利泰 今井 四郎 堂下 修司
出版者
京都大学
雑誌
重点領域研究
巻号頁・発行日
1994

感性情報は情報科学でこれまで取り扱ってきた情報に比べ、はるかに微妙なものであり、また主観的、多義的、状況依存的で曖昧なものである。従って、情報科学的なアプローチと心理学、認知科学的アプローチの両者の共同により、この微妙で曖昧な情報の客観的な記述と抽出、感性情報のモデリングの研究を行った。得られた成果は次のようである。多くの会合を持ち、討論を行なって、感性情報の概念を明らかにした。 (全研究分担者)変換構造説に基づいて感性的情報の認知機構を明らかにした。 (今井) 画像パターンの学習汎化能力に感性的情報がどのようにかかわるのかの学習モデルを作成した。 (小川) 官能検査法の感性の計測に利用する方法を明確化した。 (増山) 新しい人間の視覚現象を発見し、そのメカニズムの研究を行い、画像の認知における感性の働きを究明した。 (江島) 微妙な曲率をもった曲面の見え方の画像解析の研究を行い、三次元世界と二次元世界との対応について究明した。 (長尾、中村) 雑音の聞こえ方についての実験を行ない、人間の感性にかかわる概念との関係を明かにした。 (難波) 音声の微妙な特徴の抽出の研究を行ない、同様な概念との関係をを明かにした。 (河原) 人間の表情変化の計測をし、その位相情報を取り出し、人間の感情との関係を明かにした。 (国井) ロボットのセンサーフュージョンと自律性についての実験を行ない、感性的行動のできるロボットの基礎を与えた。 (安西) ソフトウェアの使い易さ、使いにくさを感性的立場から評価した。 (豊田) テキスト・リーディングにおける人間の眼球運動の観察を行ない、視覚の感性的側面が果たす役割、効果を明かにした。 (苧阪)
著者
立入 哉 今井 香奈
出版者
一般社団法人 日本聴覚医学会
雑誌
AUDIOLOGY JAPAN (ISSN:03038106)
巻号頁・発行日
vol.64, no.2, pp.178-185, 2021-04-28 (Released:2021-05-19)
参考文献数
19
被引用文献数
1

要旨: 一側性難聴者用に有線式 CROS 補聴器 (EHIME) を開発し, 実耳測定, 音場での語音明瞭度検査, 質問紙調査を行い, EHIME の有用性を検討した。この結果, 実耳測定では頭部陰影効果を補償するゲインを与える周波数特性決定法が好まれる傾向が見られた。語音明瞭度検査では, EHIME の装用による逆効果より効果が高くなることを観察できた。クロス補聴器のゲインと語音明瞭度に対する効果と逆効果には関連があることが予想され, ゲインの設定には実耳での評価と語音明瞭度の測定が有用と思われた。質問紙調査では, 雑音下聴取と明瞭度では向上が見られたものの方向感・遠近感は逆に低下した。しかし, 中には音の違いを元に方向感をつかめた者もおり, 追加の検討が望まれた。最終的に, わずらわしさより, 快適さ・生活の質の向上について向上したとの回答が得られた。
著者
今井 洋子
出版者
京都産業大学
雑誌
京都産業大学論集. 人文科学系列 (ISSN:02879727)
巻号頁・発行日
vol.34, pp.74-90, 2006-03

漱石とコルタサルの作品の比較を始めたきっかけとなった『草枕』『石蹴り遊び』の中に見られる“オフェリアコンプレックス”“女性読者蔑視”を出発点として,これら作品の女性像についてフェミニズムの視点から分析する。 本論では『草枕』の那美さん,『石蹴り遊び』のラ・マガに代表される宿命の女たちはなぜ殺されたかを考察した。二人はこれまで男を惹きつけてやまない宿命の女として解釈されてきたが,近年フェミニズム批評によって,オフェリアコンプレックスの分析とともに,男の側の女性嫌悪が暴かれてきた。那美さんもラ・マガもその魔性によって抹消されたのではない。自我を持とうとしたゆえに男の共同体からの排除されねばならなかった。これが,彼女たちが殺された理由の一つである。漱石とコルタサルが生きた時代と場所と文化のコンテクストを考慮すれば,性の描写の違いは当然のことである。しかし,アジアとラテンアメリカからヨーロッパにやってきた知識人の疎外という意味では時代を超えた相似形を示す。つまり,漱石が産業革命後のロンドンに行き,その機械文明に疑問を抱いたように,ポストコロニアルのラテンアメリカからパリに行ったコルタサルは,西欧の論理に疑問を抱くのである。那美さんも,ラ・マガも,西欧の文明に対する“自然”を象徴する。しかし,その自然は西欧文明に“あさはかに”かぶれてしまっていた。これが彼女たちが殺されなければならなったもうひとつの理由である。
著者
有川 一 田下 智栄子 中村 浩二 高橋 哲平 三川 浩太郎 寺田 知新 渡邉 孝士郎 今井 一 惠良 聖一
出版者
日本教育医学会
雑誌
教育医学 (ISSN:02850990)
巻号頁・発行日
vol.65, no.3, pp.192-201, 2020 (Released:2020-03-01)
参考文献数
11

In our previous study, we found that FetCO2 (PaCO2) increased during kendo with vocalization. Cerebral blood flow may increase during kendo exercises because PaCO2 has cerebral vasodilator effects. In this study, we measured the blood flow of the common carotid artery during intermittent bicycle ergometer exercise with vocalization as a basic study to elucidate the physiological characteristics of kendo. As a result, at the 80% V・O2peak with vocalization (same load as “kakari-keiko”), we observed a significant increase in FetCO2 (P = 0.022) and blood flow in the common carotid artery (P = 0.040). At the 60%V・O2peak with vocalization (same load as “kirikaeshi”), there was no significant increase in FetCO2; however, we observed a significant increase in blood flow in the common carotid artery (P = 0.035). In addition, in an ultrasonic image of the common jugular vein during exercise with vocalization, we observed the over-swelling of an internal jugular vein with partial blood regurgitation. This indicated that blood flow was temporarily stagnant. These results suggest that the increase in common carotid arteryblood flow was induced during exercise with vocalization. The increase in FetCO2 caused by vocalization, however, was not considered to be the main factor. One of the factors causing the increased common carotid artery blood flow was revealed to be related to an increasing-canceling of intrathoracic pressure due to vocalization-no-vocalization.
著者
横田 哲士 中村 浩 多田 弘幸 菖蒲 敬久 片山 聖二 川人 洋介 近藤 勝義 吉田 悟 今井 久志 川上 博士 富沢 雅美 中島 裕也
出版者
一般社団法人 溶接学会
雑誌
溶接学会全国大会講演概要
巻号頁・発行日
vol.2015, pp.158-159, 2015

溶接における重大欠陥のひとつである割れの発生機構の解明は重要な課題である.大型放射光施設Spring8を用いてX線位相差法による透過観察およびレーザ溶接時における割れの発生過程の撮影を行い,割れの発生速度や割れ発生時に周辺で起こる溶融池の変化について報告する.
著者
今井 敬子
出版者
日本・美術による学び学会
雑誌
美術による学び (ISSN:24356573)
巻号頁・発行日
vol.2, no.7, pp.202107, 2021 (Released:2021-05-11)

新型コロナウイルス感染症の拡大防止策のため、世界各国の地域において人々は自宅待機し、博物館・美術館は相次いで休館している。このような状況下で、閉館中の美術館はどのような役割を担えるのだろうか?国内外の美術館におけるHP 上での活動について紹介する。 (※原稿内容は、2020 年4 月初旬から19 日のまでの間に収集した情報を元にしている。)
著者
今井 明 鈴木 ひろみ 渡辺 晃紀 梅山 典子 塚田 三夫 中村 勤 松崎 圭一 加藤 開一郎 冨保 和宏
出版者
一般社団法人 日本脳卒中学会
雑誌
脳卒中 (ISSN:09120726)
巻号頁・発行日
vol.32, no.6, pp.572-578, 2010-11-26 (Released:2010-12-03)
参考文献数
10
被引用文献数
2 2

脳卒中の自然経過を検討する目的で,生命予後と死因について調査し,AHAによる報告と比較した.対象は1998年4月から1999年3月に脳卒中を発症し,栃木県内で登録された5,081人である.発症から5年9カ月までの死亡の有無と,死因簡単分類で死因を調査した.生存率はKaplan-Meier法で算出した.脳卒中全体の5年生存率は62.3%であり,病型別の5年生存率は,くも膜下出血54.9%,脳出血57.9%,脳梗塞62.8%であった.死因の観察では,すべての病型で1位を脳卒中,2位を循環器系の疾患が占め,3位はくも膜下出血と脳出血では悪性新生物,脳梗塞では呼吸器系の疾患が占めた.くも膜下出血と脳出血では原疾患による急性期死亡が多く,75歳以上の脳梗塞では肺炎による死亡が多かった.AHAの報告によると,脳卒中の5年以内の致死率は男性47%,女性51%であり,栃木県の致死率は男性38.5%,女性36.7%とアメリカの報告より低かった.脳卒中の生命予後の改善には,急性期治療の充実と慢性期脳梗塞の肺炎に対する対策が重要と考える.
著者
今井 登 下川 浩一
出版者
日本地質学会
雑誌
地質学論集
巻号頁・発行日
no.29, pp.59-72, 1988

In electron spin resonance (ESR) dating the total amount of radiation-induced centers which have been accumulated in the past by natural U, Th, K are measured, and ESR age is obtained by deviding the total dose by annual dose. A variety of materials, stalactite, fossil shell, bone, volcanic ash and fault have been dated. In this paper, the basic principle of ESR dating, apparatus, sample treatment, the determination of total dose and annual dose and errors of ESR age are described.
著者
今井 瞳良
出版者
日本映像学会
雑誌
映像学 (ISSN:02860279)
巻号頁・発行日
vol.104, pp.95-113, 2020

<p>本稿は、日活ロマンポルノの団地妻シリーズが性別役割分業を前提とした「団地妻」イメージの起源でありながら、固定化された「団地妻」言説を批評するシリーズでもあったことを明らかにする。ロマンポルノ裁判をきっかけに興隆した映画評論家や批評家によるロマンポルノ言説は、低俗な娯楽とみなされるロマンポルノを称揚するために、芸術的創造の主体としての監督を必要とした。そのため、複数の監督によって製作された団地妻シリーズが批評的な評価を得ることは、ほとんどなかった。ところが、団地妻シリーズの第1作『団地妻 昼下りの情事』(西村昭五郎監督、1971年)は、専業主婦として家にいる女性と仕事で通勤している男性を分割するジェンダー化された空間である団地を舞台に、性別役割分業を前提とした中流階級の安定性を支える高度経済成長期以後の戦後史の語りに組み込まれることで、「団地妻」イメージを室内で退屈する専業主婦として固定する「団地妻」言説を生み出していった。しかし、その後の団地妻シリーズは人気シリーズとしてマンネリの打破やメディア状況の変化、他社製作などに対応しながら1971年から1987年まで全29作も作り続けられたことによって、多様な「団地妻」を描き出し、固定化された「団地妻」言説に対する批評性を獲得していることを明らかにした。</p>
著者
今井 伸也 山本 麻衣 山本 尚美 山本 和明 重松 忠
出版者
公益社団法人 日本理学療法士協会
雑誌
理学療法学Supplement
巻号頁・発行日
vol.2014, 2015

【はじめに,目的】近年,がん患者に対するリハビリテーション(以下,リハ)の重要性が注目されている。当院は,急性期病院であるが,「がん診療連携拠点病院」の基準に準じた,滋賀県独自の「地域がん診療連携支援病院」の指定を受けている。平成25年より,がん患者リハビリテーション(以下,がんリハ)を実施している。終末期を迎えたがん患者が,残された人生を本人らしく,尊厳を保ちQOLの高い生活を送れるように身体的,精神的,社会的にも支援することは,緩和的リハの重要な目的である。今回,入院中の終末期がん患者の外出について調査し,理学療法士の役割について検討したので報告する。【方法】平成25年4月から平成26年3月に,入院中にリハを実施したがん患者294例の中で死亡退院した36例(男性21例,女性15例,平均年齢66.1±13.0歳)を対象とした。外出された患者をA群,外出されなかった患者をB群とした。それぞれ,性別,年齢,入院日数,入院からリハ開始までの日数,リハから死亡退院までの日数,リハ実施日数,外出から死亡退院までの日数,リハ介入時のFIM(運動項目),リハ介入時のFIM(認知項目),外出手段,外出理由と感想,未外出理由を,後方視的にカルテから抽出し調査した。数値は平均値±標準偏差で表記した。【結果】性別はA群が男性1例,女性5例,B群が男性20例,女性10例。平均年齢はA群が59.5±12.5歳,B群が67.4±12.9歳。入院日数はA群56.2±28.6日,B群が38.3±46.7日。入院からリハ開始までの日数はA群14.5±20.5日,B群9.2±15.7日。リハ開始から死亡退院までの日数はA群56.2±28.6日,B群29.3±44.3日。リハ実施日数はA群20.3±12.9日,B群12.0±21.2日。外出から死亡退院までの日数は10.5±6.8日。リハ介入時のFIM(運動項目)はA群53.0±31.8点,B群40.4±28.8点。リハ介入時のFIM(認知項目)はA群28.0±5.6点,B群21.4±13.6点。外出手段は歩行1例,車椅子3例,ストレッチャー2例。外出理由は,「墓参りやお世話になった開業医や近所の人に会いたい」,「家で過ごしたい」などの理由であった。外出した全症例は,本人と家族ともに外出を希望された。外出後の感想は,全症例が「外出してよかった」,「希望をかなえさせてあげられてよかった」と肯定的であった。未外出理由は,全身状態が不安定で主治医の許可が出ない,提案したが「家族に迷惑をかける」・「病院の方が安心できる」・「家でやりたいこともない」,家族が「メリットが分からない」,外出希望が無く提案する機会も無かった,などの理由であった。【考察】今回の調査の中でA群は6例と少数であったが,全例が肯定的な感想を述べていた。A群は入院日数およびリハ開始から死亡退院までの日数,リハ実施日数が長いことから,理学療法士と関わる期間は長く本人・家族との関係が構築されており,身体機能の評価やニーズの把握が容易であった。リハ介入時のFIM(運動項目)を比較してもA群の方が高く,理学療法士の介入により身体機能やADLが維持され,希望に応じた外出の提案につながったと考える。また,年齢をみるとA群の方がやや若年であり,リハ介入時のFIM(認知項目)も高い。外出に対する意欲の維持や思いの表出,家族との話し合いが可能であったため,外出に対する家族側の受け入れも良好であったのではないかと考える。外出方法については歩行,車椅子,ストレッチャーとばらつきはあったが,安楽な手段を提案することでADLの状態に関係なく外出することができた。適切な身体機能評価および指導を行い,疲労や不安を感じることなく外出できるよう援助することが重要と考える。一方,B群について,外出しなかった理由において,家族の負担を考え拒否したり,本人や家族からの希望がなく関わるスタッフからも積極的な提案を行えていないケースを認めた。リハ介入時のFIM(認知項目)が低く,本人の意志が明確でない患者に対しては,本人や家族の思いを確認するような働きかけも重要であると考える。がん終末期患者は状態が変化しやすく,理学療法士は適切な介入が要求される。その中で入院中の外出は患者の残された時間,限られた能力の中でニーズを叶え,多職種の関わりにより多くの患者が実現可能な活動であるといえる。理学療法士として,身体機能やADL評価と合わせ,本人の思いを引きだし家族の十分な理解のもと環境整備を行った上で,最良の時期を見極められるような関わりが重要である。【理学療法学研究としての意義】入院中のがん終末期患者の外出は多職種連携が重要であり,理学療法士もチームの一人として積極的な関わりが必要である。

1 0 0 0 IR 乱流に憧れて

著者
今井 功 Imai Isao
出版者
航空宇宙技術研究所
雑誌
航空宇宙技術研究所特別資料 = Special Publication of National Aerospace Laboratory (ISSN:0289260X)
巻号頁・発行日
no.36, pp.25-28, 1997-12

航空宇宙技術研究所 26-28 Mar. 1997 東京 日本本講演では乱流の研究に関して著者が現在まで関わってきた乱流の課題に対する研究活動の歴史を回顧し、今後の乱流研究に対する期待を述べた。従来から高速気流の研究に最大の関心を持っていることを述べた。乱流研究に関する夢として、非線形ナビエ・ストークス方程式の厳密解、すなわち一様流中に置かれた物体の周りの流れの厳密解への追及があることを述べ、計算前提条件の変遷の背景を説明した。コンピュータの進歩が乱流についての新しい物理モデルを生み出すことを期待した。資料番号: AA0001320007レポート番号: NAL SP-36
著者
中前 恵一郎 桝田 出 東 信之 岩崎 新 髭 秀樹 今井 優 戸田 勝代 藤井 嘉章 鮎川 宏之 黒瀬 聖司 武田 定子 葛谷 英嗣
出版者
公益財団法人 日本心臓財団
雑誌
心臓 (ISSN:05864488)
巻号頁・発行日
vol.48, no.12, pp.1357-1363, 2016-12-15 (Released:2017-12-15)
参考文献数
19

脳性(B型)ナトリウム利尿ペプチド(BNP)は,心血管保護作用のほかに脂肪分解促進,インスリン抵抗性改善など代謝作用を有している.SGLT2阻害薬ダパグリフロジン(DAPA)の心機能や代謝・体組成への効果に対する心臓・代謝ホルモンとしてのBNPの意義を検討した.高血圧合併2型糖尿病患者24例(血中BNP 4 pg/mL以上,平均BMI 28.0 kg/m2,平均HbA1c 7.4%)にDAPA 5 mg/日を24週間投与し,心エコー,血液検査,体組成を測定した.生理活性を有する血中BNPは増加傾向(p=0.08)を示したが,非活性の血中NT-proBNP(p<0.05),NT-proBNP/BNPモル比(p<0.01)は低下した.心エコー拡張機能指標のE/e’や左房容積係数は改善し,空腹時血糖,HbA1c,血中インスリン値,体重,内臓脂肪面積,拡張期血圧は有意に低下した.血中BNPの増加は,脂肪分解,糖代謝改善作用などのBNPの生理活性が発揮されていることを示す可能性が考えられた.DAPAは,BNPの生理活性増強と心負荷軽減作用を介して,心機能や代謝に好影響を及ぼすことが示唆された.