著者
髙柳 伸哉 伊藤 大幸 浜田 恵 明翫 光宜 中島 卓裕 村山 恭朗 辻井 正次
出版者
一般社団法人 日本教育心理学会
雑誌
教育心理学研究 (ISSN:00215015)
巻号頁・発行日
vol.71, no.1, pp.62-73, 2023-03-30 (Released:2023-03-25)
参考文献数
36

本研究では,青年における自傷行為の発生に関連する要因と,自傷行為の発生に至る軌跡の検証を目的とした。調査対象市内のすべての中学生とその保護者に実施している大規模調査から,自傷行為の頻度やメンタルヘルス,対人関係不適応,発達障害傾向等について質問紙による3年間の追跡調査を行った5つのコホートの中学生4,050名(男子2,051名,女子1,999名)のデータを用いた。中3自傷発生群と非自傷群について,各尺度得点のt検定の結果と,非自傷群の中学1年時の得点を基準とした各尺度z得点による3年間の軌跡を比較した結果から,中3自傷発生群は3年時に非自傷群よりもメンタルヘルスや家族・友人関係で問題を抱えていることに加え,1・2年時でも抑うつなどが有意に高いことが示された。中学1―3年時におけるz得点の軌跡からは,中3自傷発生群は非自傷群と比べて1年時からすでにメンタルヘルスや友人関係・家族関係等での不適応が高いこと,3年時にかけて両群の差が開いていくことが示された。本研究の結果,中学3年時に自傷行為の発生に至る生徒の傾向と3年間の軌跡が明らかとなり,自傷行為のリスクの高い生徒の早期発見と予防的対応につながることが期待される。
著者
佐々木 久郎 菅井 裕一 河野 洋之 高橋 孝志 伊藤 大輔 岡部 孝
出版者
石油技術協会
雑誌
石油技術協会誌 (ISSN:03709868)
巻号頁・発行日
vol.76, no.6, pp.522-529, 2011 (Released:2014-01-18)
参考文献数
8
被引用文献数
2 2

In this lecture, a cold drainage mechanism of heavy oil from sandstone cores has been presented by using immiscible CO2 gas dissolution into the oil. Dissolution curves of CO2 and CH4 gases for Japanese heavy oil were measured using with a PVT apparatus to decide the pressures of bubble point for the gases. CO2 swelling factors of the heavy oil and Oman intermediate oil were measured from surface movements of oil columns placed in a high-pressure cell which was controlled less than 10 MPa for the oil reservoir temperature 50°C. Two oil swelling factors increased with increasing gas pressure, and swelling coefficients were evaluated for CO2 and CH4 gases. The swelling-time curves for an oil column were fitted with the analytical solution of one dimensional gas diffusion derivative equation, and CO2 gas diffusion coefficients in the oils, D(m2/s), were evaluated. The values of D in the heavy oil were presented as 1.1 to 1.6 % of that of the intermediate oil, and the empirical equation for values of D has been presented with function of exponential to API gravity. Based on the observation tests on oil drainage from the sandstone cores saturated with the heavy oil, gas dissolution in the heavy oil does not make any oil drainage, however foamy heavy oil including huge number of micron CO2 gas bubbles, that were generated in depressurization process, effectively contributed to oil drainage out from the cores.
著者
針谷 爽 坂田 理彦 岩原 明弘 伊藤 大聡 中西 美和
出版者
一般社団法人 日本デザイン学会
雑誌
デザイン学研究 (ISSN:09108173)
巻号頁・発行日
vol.66, no.4, pp.4_59-4_66, 2020-03-31 (Released:2020-03-31)
参考文献数
10

従来,製品デザインにおいては,ユーザが製品を通してどのような価値を体験したいのかをユーザ調査等によって掴み,それに忠実に応えるよう情報伝達形態をデザインすることが重視されてきた。一方,最近では,開発者側が積極的に発信したいと意図する価値を製品デザインに反映させる試みも見られ,ユーザのニーズを超えた製品デザインに繋がる可能性が期待されている。そこで,本研究では,開発者の意図する製品価値をより的確にユーザに伝えるための情報伝達形態について,家電製品を対象として評価・検討する。まず,開発者及びユーザの両者に対して調査を行い,家電製品に備わる直接的または間接的な情報伝達形態についてパタン化した上で,各パタンに作りこまれた開発者が意図する製品価値がユーザにどの程度伝わっているのかを疎通度として定量化した。次に,この疎通度を用いて,開発者がユーザに与えたいと意図した製品価値をユーザに的確に伝えるためには,どの情報伝達形態のデザインに注力すべきかを導出した。
著者
小関 俊祐 伊藤 大輔 杉山 智風 小川 祐子 木下 奈緒子 小野 はるか 栁井 優子 鈴木 伸一
出版者
一般社団法人 日本認知・行動療法学会
雑誌
認知行動療法研究 (ISSN:24339075)
巻号頁・発行日
vol.48, no.1, pp.61-72, 2022-01-31 (Released:2022-04-01)
参考文献数
11

本研究の目的は、栁井他(2018)のコンピテンス評価尺度を用いて、臨床心理士養成大学院の大学院生の自己評価と教員による他者評価を行うことでCBTコンピテンスの実態把握と、2時点調査による教育に伴うコンピテンスの変化について基礎的な知見を得ることであった。臨床心理士養成大学院の臨床心理学コースに在籍中の修士課程2年の大学院生、および同大学院においてCBTに関連する講義・実習などを担当している大学専任教員を対象に、X年7月とX年10月の2回にわたって縦断調査を実施した。1回目の調査では教員29名と大学院生87名、また2回目の調査では教員27名と大学院生67名が分析対象となった。本研究の結果から、日本の大学院生におけるCBTコンピテンスの実態に関する基礎的データが得られた。そして、日本のCBTの質保証に向けた今後の取り組みとその課題について論じられた。
著者
杉山 智風 髙田 久美子 伊藤 大輔 大谷 哲弘 高橋 史 石川 利江 小関 俊祐
出版者
一般社団法人 日本認知・行動療法学会
雑誌
認知行動療法研究 (ISSN:24339075)
巻号頁・発行日
pp.20-047, (Released:2022-09-06)
参考文献数
22

本研究の目的は、高校生を対象に問題解決訓練を実施し、抑うつ、活性化、回避に及ぼす介入効果を明らかにすることであった。あわせて、問題解決訓練の実施前後にかけての活性化/回避の変化によって、抑うつに対する介入効果に差異がみられるか、検討を行った。本研究では、高校生1年生253名を対象として、1回50分の問題解決訓練を実施した。その結果、対象者全体において抑うつ得点、活性化得点、回避得点の有意な変化は示されなかったが、活性化/回避の機能的変容が生じた可能性のある群において、抑うつ得点の有意な低下が示された。このことから、抑うつ低減において、問題解決訓練による問題解決スキルの習得だけではなく、対処行動の促進と強化子の随伴の重要性が示唆された。
著者
伊藤 理紗 巣山 晴菜 島田 真衣 兼子 唯 伊藤 大輔 横山 仁史 貝谷 久宣 鈴木 伸一
出版者
日本不安症学会
雑誌
不安症研究 (ISSN:21887578)
巻号頁・発行日
vol.6, no.2, pp.63-71, 2015-03-31 (Released:2015-05-29)
参考文献数
17

本研究は,SAD患者の曖昧な場面の中性的・否定的解釈の関連の検討,および曖昧な場面の肯定的・中性的・否定的解釈がSAD症状の重症度に及ぼす影響について検討を行った。SAD患者50名を対象に,(1)Liebowitz Social Anxiety Scale(朝倉ら,2002),(2)曖昧な場面の解釈の質問紙について回答を求めた。相関分析の結果,曖昧な社会的場面の中性的解釈と否定的解釈の間に相関は認められず,曖昧な社会的場面の肯定的解釈と否定的解釈の間のみに負の相関が認められた(r=-.48, p<.001)。重回帰分析の結果,曖昧な社会的場面の否定的解釈(β=.34, p<.05)のSAD症状の重症度への影響が有意であった。本研究の結果から,曖昧な場面の否定的解釈の低減にあたり,肯定的解釈の活性化の有効性が示唆された。
著者
隅田 智之 伊藤 大毅 川勝 椋介 平井 重行
出版者
ヒューマンインタフェース学会
雑誌
ヒューマンインタフェース学会論文誌 (ISSN:13447262)
巻号頁・発行日
vol.24, no.2, pp.107-120, 2022-05-25 (Released:2022-05-25)
参考文献数
35

We present a user interface system “RapTapBath” that converts an existing bathtub into various controllers by tapping locations, tones and patterns with their tap sounds on a bathtub edge. This system utilizes embedded piezoelectric sensors in a bathtub edge to analyze acoustic signals of tap sounds, and also a projector installed above the tub to project menus on the edge. Tap locations are detected by differences in signal arrival times of plural sensors. Tap tones are identified by spectrum patterns with neural-network technique. Tap patterns are detected by tapping timings with their probability calculations in a fixed time. This paper describes the system overview of RapTapBath, and each of the tapping user interface events, their specific detection methods by signal processing techniques, and also their performance evaluations. We also give effective applications for spending bathing time using this system. Finally, discussions of the limitations of current tap UI events and the point of view of interaction design with RapTapBath are described.
著者
兼子 唯 中澤 佳奈子 大月 友 伊藤 大輔 巣山 晴菜 伊藤 理紗 山田 和夫 吉田 栄司 貝谷 久宣 鈴木 伸一
出版者
一般社団法人 日本認知・行動療法学会
雑誌
行動療法研究 (ISSN:09106529)
巻号頁・発行日
vol.41, no.1, pp.43-54, 2015-01-31 (Released:2019-04-06)
被引用文献数
1

本研究の目的は、社交不安障害(SAD)を、全般型(GSAD)と非全般型(NGSAD)のみでなく、自覚された生理的覚醒の高低で分類し、社交不安症状、注意バイアスの違いを検討することであった。SAD者16名と健常者6名を対象に質問紙調査と修正ドット・プローブ課題を実施した。課題では、自動的/統制的処理段階における否定的評価、肯定的評価、生理的覚醒に対する注意バイアスを測定した。分散分析の結果、GSAD・NGSAD・健常者の比較、自覚している生理的覚醒の高・低・健常者の比較では有意な差は示されなかった。しかし注意バイアス得点を0と比較した結果、NGSAD群は自動的処理段階で肯定的評価に対して、自覚された生理的覚醒の高いSAD群は統制的処理段階で生理的覚醒に対して、注意バイアスが大きいことが示された。この結果から、SADの状態像を検討する必要性とそれぞれに有効な介入方法について考察された。
著者
小野寺 毅 渡邊 一仁 芳賀 圭悟 伊藤 大介 伊藤 博 及川 浩人
出版者
宮城県水産研究開発センター
巻号頁・発行日
no.13, pp.7-14, 2013 (Released:2015-06-24)

宮城県北部に位置する志津川湾において,平均全長65mmのホシガレイ種苗を6月下旬から7月上旬に放流し,平均全長100mmで9月上旬から中旬に放流し,両者の回収状況を比較した。1) 6月下旬から7月上旬に放流した小型種苗の回収状況は,9月上旬から中旬に放流した大型種苗のそれと同等あるいは上回った。2) 従来の放流方法で実施した大型種苗の経済回収率は0.66であったのに対し,小型種苗のそれは1以上であった。3) 志津川湾では6月中旬から7月上旬に湾奥の河口付近の波打ち際から平均65mmで放流するのが経済的である可能性が示唆された。
著者
田中 健路 伊藤 大樹 昌子 舜
出版者
公益社団法人 土木学会
雑誌
土木学会論文集B2(海岸工学) (ISSN:18842399)
巻号頁・発行日
vol.72, no.2, pp.I_187-I_192, 2016 (Released:2016-11-15)
参考文献数
9
被引用文献数
2

東シナ海上で発生する気象津波の伝播・増幅過程について,Princeton Ocean Model (POM)を基本モデルとした多重ネスト型数値モデルを構築して解析を行った.気圧波が東シナ海上を東進する際に,沖縄トラフ通過時の海洋長波の位相速度の急増に伴い,正の気圧偏差前面に形成された第1波の押し波が気圧波よりも30~60分早く九州西岸に到達することが示された.気圧波が長崎湾に到達する際に,25分から30分 の周期帯の成分が増幅し,第3波で全振幅2m以上の副振動が発生することが示された.連続した小規模な気圧波群が九州西岸を通過する場合,個々の気圧波のスケールが小規模であっても,数10波連続すると九州西岸の広範囲において気象津波の到達による副振動が生じ,湾の固有振動周期の振動が長時間残存することが示された.
著者
伊藤大毅 平井重行
雑誌
研究報告エンタテインメントコンピューティング(EC)
巻号頁・発行日
vol.2013-EC-29, no.1, pp.1-6, 2013-08-03

我々は,既存の浴室環境を活用しつつ埋め込まれたセンサを用いたユーザインタフェースとそのエンタテインメント応用の研究を行ってきた.そして,これまでは浴槽に対して 「触れる」 「こする」 の 2 つの操作手法とその応用システムの研究を行ってきた.今回,我々は浴槽を手指で 「叩く」 操作インタフェースを元にしたお風呂ドラムシステム BathDrum を提案する. BathDrum は浴槽縁の内側に複数設置したピエゾセンサで浴槽の叩打音を検出し,その 「叩打位置 (叩く場所)」 や 「叩打音色 (叩き方)」 に対応したサウンドを鳴らすシステムである.本稿では,主に叩打位置検出処理に関する内容について報告する.ここでの叩打位置検出処理は,複数センサへの叩打音の振動到達時間差から叩打位置を算出するものだが,本研究システムが 「楽器」 であることとシステムの汎用性に主眼を置き,センサ数と応答速度を重視している.そして,実際の浴槽での叩打実験に基づき,具体的な位置検出処理を検討した.これにより,キャリブレーションを基に様々な形状・材質の浴槽に対して適切な叩打位置検出可能範囲を設定することを確認した.またリアルタイムに叩打位置を出力するシステムの実装も行った.
著者
中村 浩明 岡本 高志 山本 友紀 加藤 太郎 五十嵐 進 伊藤 大起 古野 薫 横井 秋夫
出版者
公益社団法人 日本理学療法士協会
雑誌
理学療法学Supplement Vol.34 Suppl. No.2 (第42回日本理学療法学術大会 抄録集)
巻号頁・発行日
pp.C0998, 2007 (Released:2007-05-09)

【はじめに】顎関節症患者の顎関節だけを一時的にアプローチしても、また症状が元に戻ってしまうことを多く経験する。今回、顎関節に疼痛、違和感を訴えている患者を、疼痛増強主訴である歩行から関連を捉え、足部からのアプローチを行い、良い結果が得られたので報告する。【症例紹介】26歳、男性。理学療法士。診断名:左顎関節症、変形性頚椎症。18歳頃より左顎関節に違和感出現。25歳に総合格闘技で、右足部にアンクルホールドを極められ左顎関節症状が悪化。その後、全身体調不良となった。主訴は、口を開けるとクリック音がして痛い。左顎が常に重だるく違和感がある。よく顎を鳴らしたくなる。両足首に不安定感があり歩行中、歩行後に全身に違和感、疲れやすさがあるとの事であった。【理学療法評価および治療】Passenger Unitへアプローチを座位から行い、顎関節へのメカニカルストレス軽減を狙ったが、歩行するとLocomotor Unitの不安定性から身体が崩れてしまう傾向があり、良い治療結果が残せなかった。特に本症例の場合、疼痛、違和感が増強するという訴えは、歩行時のLoading Response~Mid Stance、Mid Stance~Terminal Stanceにかけて著名であった。Loading Response~Mid Stanceでは距骨下関節が過回内し、Ankle Rocker機構機能不全、また、Mid Stance~Terminal Stanceでは横足根関節が過外反しForefoot Rocker機構機能不全の状態がみられた。その機能不全状態を、足部からのテーピングにより各Rocker機構が機能的に作用する環境に整えた。【結果】テーピング後は、下顎が真っ直ぐ下制するようになり、顎関節の疼痛、違和感の消失。開閉の最終時の左顎関節のクリック音が消失した。歩行時も前方への推進力が発揮できるようになり、全身状態も楽であるとのことであった。【考察】歩行時に違和感を訴えたLoading Response~Mid Stance、Mid Stance~Terminal Stanceは、荷重期の特に下肢の支持性、推進力の維持、下肢と体幹の支持性が必要な相である。これらの相に必要な骨での支持は、足部ではRocker機構の事を指し、身体のアライメント、軸の形成には不可欠であると考えられた。各相でLocomotor Unit、または、Locomotor UnitとPassenger Unitのアライメント、軸形成を足部から同時に図ったことにより、顎関節へのメカニカルストレスは開放され疼痛、違和感が消失したと考えられた。【まとめ】顎関節症患者を足部からコントロールし、姿勢アプローチをした。特に主訴であった歩行時の足部Rocker機構に注目してアプローチを行なった。軸の形成は、各々の組織が、分化的に働けるような環境を作る意味で重要であると考えられた。