著者
伊藤 大幸 浜田 恵 村山 恭朗 髙柳 伸哉 野村 和代 明翫 光宜 辻井 正次
出版者
一般社団法人 日本教育心理学会
雑誌
教育心理学研究 (ISSN:00215015)
巻号頁・発行日
vol.65, no.4, pp.451-465, 2017 (Released:2018-02-21)
参考文献数
37
被引用文献数
5 9

クラスサイズ(学級の人数)が学業成績および情緒的・行動的問題に及ぼす影響について,要因の交絡とデータの階層性という2つの方法論的問題に対処した上で検証した。第1に,学年ごとの人数によってのみクラスサイズが決定されている学校を調査対象とする自然実験デザインにより,学校の裁量に起因する要因の交絡や逆方向の影響の発生を防いだ。第2に,マルチレベルモデルの一種である交差分類(cross-classified)モデルを用いて,データの特殊な階層性を適切にモデル化した。第3に,学校内中心化によって学校間変動を除外することで,クラスサイズの純粋な学校内効果を検証するとともに,学校規模との交絡を回避した。9回の縦断調査で得られた小学4年生から中学3年生のデータ(11,702名,のべ45,694名,1,308クラス)に基づく分析の結果,クラスサイズの拡大は,(a)学業成績を低下させること,(b)教師からのサポートを減少させること,(c)友人からのサポートや向社会的行動の減少をもたらすこと,(d)抑うつを高めることが示された。こうした影響の広さから,クラスサイズは学級運営上,重大な意味を持つ変数であることが示された。
著者
川本 哲也 小塩 真司 阿部 晋吾 坪田 祐基 平島 太郎 伊藤 大幸 谷 伊織
出版者
一般社団法人 日本発達心理学会
雑誌
発達心理学研究 (ISSN:09159029)
巻号頁・発行日
vol.26, no.2, pp.107-122, 2015 (Released:2017-06-20)
参考文献数
73
被引用文献数
19

本研究の目的は,大規模社会調査のデータを横断的研究の観点から二次分析することによって,ビッグ・ファイブ・パーソナリティ特性に及ぼす年齢と性別の影響を検討することであった。分析対象者は4,588名(男性2,112名,女性2,476名)であり,平均年齢は53.5歳(SD=12.9,23–79歳)であった。分析の対象とされた尺度は,日本語版Ten Item Personality Inventory(TIPI-J;小塩・阿部・カトローニ,2012)であった。年齢と性別,それらの交互作用項を独立変数,ビッグ・ファイブの5つの側面を従属変数とした重回帰分析を行ったところ,次のような結果が得られた。協調性と勤勉性については年齢の線形的な効果が有意であり,年齢に伴って上昇する傾向が見られた。外向性と開放性については性別の効果のみ有意であり,男性よりも女性の外向性が高く,開放性は低かった。神経症傾向については年齢の線形的効果と性別との交互作用が有意であり,若い年齢では男性よりも女性の方が高い得点を示した。
著者
村山 恭朗 伊藤 大幸 浜田 恵 中島 俊思 野田 航 片桐 正敏 髙柳 伸哉 田中 善大 辻井 正次
出版者
一般社団法人 日本発達心理学会
雑誌
発達心理学研究 (ISSN:09159029)
巻号頁・発行日
vol.26, no.1, pp.13-22, 2015

これまでの研究において,我が国におけるいじめ加害・被害の経験率は報告されているものの,いじめに関わる生徒が示す内在化/外在化問題の重篤さはほとんど明らかにされていない。本研究は,内在化問題として抑うつ,自傷行為,欠席傾向を,外在化問題として攻撃性と非行性を取り上げ,いじめ加害および被害と内在化/外在化問題との関連性を調査することを目的とした。小学4年生から中学3年生の4,936名を対象とし,児童・生徒本人がいじめ加害・被害の経験,抑うつ,自傷行為,攻撃性,非行性を,担任教師が児童・生徒の多欠席を評定した。分析の結果,10%前後の生徒が週1回以上の頻度でいじめ加害もしくは被害を経験し,関係的いじめと言語的いじめが多い傾向にあった。さらに,いじめ加害・被害を経験していない生徒に比べて,いじめ被害を受けている児童・生徒では抑うつが強く,自傷を行うリスクが高かった。いじめ加害を行う児童・生徒では攻撃性が強く,いじめ加害および被害の両方を経験している児童・生徒は強い非行性を示した。
著者
伊藤 大幸 中島 俊思 望月 直人 高柳 伸哉 田中 善大 松本 かおり 大嶽 さと子 原田 新 野田 航 辻井 正次
出版者
一般社団法人 日本発達心理学会
雑誌
発達心理学研究 (ISSN:09159029)
巻号頁・発行日
vol.25, no.3, pp.221-231, 2014 (Released:2016-09-20)
参考文献数
26
被引用文献数
3

本研究では,既存の尺度の因子構造やメタ分析の知見に基づき,養育行動を構成する7因子(関与,肯定的応答性,見守り,意思の尊重,過干渉,非一貫性,厳しい叱責・体罰)を同定し,これらを包括的に評価しうる尺度の開発を試みた。小学1年生から中学3年生までの7,208名の大規模データに基づく確認的因子分析の結果,7因子のうち「関与」と「見守り」の2因子を統合した6因子構造が支持され,当初想定された養育行動の下位概念をおおむね独立に評価しうることが示唆された。また,これらの6因子が,子ども中心の養育行動である「肯定的養育」と親中心の養育行動である「否定的養育」の2つの二次因子によって規定されるという二次因子モデルは,専門家の分類に基づくモデルや二次因子を想定しない一次因子モデルに比べ,適合度と倹約性の観点で優れていることが示された。子どもの向社会的行動や内在化・外在化問題との関連を検討した結果,「肯定的養育」やその下位尺度は向社会的行動や外在化問題と,「否定的養育」やその下位尺度は内在化問題や外在化問題と相対的に強い相関を示すという,先行研究の知見と一致する結果が得られ,各上位尺度・下位尺度の構成概念妥当性が確認された。
著者
伊藤 大輔 安井 敬三 長谷川 康博 中道 一生 勝野 雅央 髙橋 昭
出版者
日本神経学会
雑誌
臨床神経学 (ISSN:0009918X)
巻号頁・発行日
vol.56, no.7, pp.481-485, 2016 (Released:2016-07-28)
参考文献数
24
被引用文献数
1 2

症例は65歳の女性である.再発性の小リンパ球性リンパ腫に対し,半年間rituximab等が投与され,めまいと小脳性運動失調が発症した.頭部MRIで両側中小脳脚病変を認め,進行性多巣性白質脳症(progressive multifocal leukoencephalopathy; PML)を疑い,髄液中JC virus(JCV)-DNA PCR検査を数回施行し,4回目に初めてJCV-DNAが検出され,診断が確定した.小脳萎縮を認め,granule cell neuronopathyの合併が示唆された.Mirtazapineとmefloquineの併用治療により長期生存が得られた.PMLでは両側中小脳脚の病変で発症する例がある.また,病初期には髄液検査でJCV-DNAが陰性のことがあり,繰り返し検査する必要がある.
著者
川西 幸貴 森畠 康策 加藤 順 村田 顕也 深津 和弘 玉置 秀彦 伊藤 大策 和田 有紀 一瀬 雅夫
出版者
一般財団法人 日本消化器病学会
雑誌
日本消化器病学会雑誌 (ISSN:04466586)
巻号頁・発行日
vol.112, no.1, pp.62-69, 2015-01-05 (Released:2015-01-05)
参考文献数
30

症例は37歳女性.腹痛を主訴に入院,前医で特発性の慢性偽性腸閉塞症と診断されたが,当院での精査の結果,抗gAChR抗体陽性の自己免疫性自律神経節障害が原因疾患であると疑われた.コリンエステラーゼ阻害薬やステロイド,免疫調節薬の使用,単純血漿交換や二重膜濾過血漿交換,胃・腸管の減圧目的で胃瘻および腸瘻を内視鏡的に造設,大量免疫グロブリン療法とさまざまな治療を行ったが,治療抵抗性であった.
著者
山内 星子 伊藤 大幸
出版者
一般社団法人 日本発達心理学会
雑誌
発達心理学研究 (ISSN:09159029)
巻号頁・発行日
vol.19, no.3, pp.294-304, 2008

両親の夫婦関係が青年の結婚観に影響を与える過程として,連合学習のようなシンプルなメカニズムによって直接的に影響する「直接ルート」と,青年自身の恋愛関係を媒介して間接的に影響する「モデリングルート」とを想定し,実証的に検討した。さらに,モデリングルートのうち,親の夫婦関係から青年の恋愛関係への影響については,親の夫婦関係に対する青年の主観的評価が調整変数として機能するという仮説を立て,検証を行った。大学生213名(男性95名,女性112名,不明6名)から得られたデータに対して共分散構造分析を行った結果,親の夫婦関係に対する青年の主観的評価が高い群においては,親の夫婦関係が直接に青年の結婚観に影響を与え,また,青年自身の恋愛関係を媒介して間接的にも影響を及ぼしていた。一方,親の夫婦関係への評価が低い群では,親の夫婦関係から青年の恋愛関係への影響は見られず,親の夫婦関係と青年の恋愛関係が独立に青年の結婚観に影響を与えていた。これらの結果は,直接ルートが親の夫婦関係への青年の評価にかかわらず成立するのに対し,モデリングルートは評価が高いときにのみ成立することを示している。
著者
泉 北斗 根岸 淳二郎 三浦 一輝 伊藤 大雪 PONGSIVAPAI Pongpet
出版者
応用生態工学会
雑誌
応用生態工学 (ISSN:13443755)
巻号頁・発行日
vol.23, no.1, pp.1-20, 2020-09-28 (Released:2020-11-30)
参考文献数
56
被引用文献数
1 2

本研究は,自然再生計画の具体化に向けて生態系保全のための情報蓄積が急務である石狩川の氾濫原水域を対象に,イシガイ目二枚貝の生息の現状と水域管理上の課題を明らかにすることを目的とした.複数種の現状について,生息水域タイプの選好性,繁殖時期の特定とともに採取個体数に対する妊卵の割合,近年の新規加入(再生産)の程度,そして再生産に重要である魚類への寄生状況の 4 項目を調べた.30 水域を人工短絡湖沼,自然短絡湖沼,後背湿地の 3 タイプに分類した.そのうち 27 水域においてベルトトランセクト法および方形区法を用いてヌマガイ,イシガイ,フネドブガイの生息数を推定した.また,12 水域を対象に,採取した個体の外鰓の観察により成熟・妊卵状況を確認した.さらに,自然短絡湖沼 4 水域で,採取した魚類から切除した鰭と鰓の観察により,グロキディウム幼生の寄生数を計数した.フネドブガイの採取個体数が最も多く,その他 2 種が少なかった後背湿地で CPUE の値が高かった.フネドブガイでは,未成熟個体の占める推定割合は低く,多くの水域で全体個体数の 3%程度以下であった.他 2 種も 1-2 水域以外では未成熟個体が確認されなかった.ヌマガイとイシガイは 7 月と 8 月に 15 .52%の個体で妊卵し,フネドブガイは 9 月から 11 月にかけて 3 .43%の個体が妊卵していた.魚類相は水域間でその構成に大きな差は見られなかったが,タイリクバラタナゴが各水域の魚類総個体数の 26 .0%から 70 .2%を占め共通して優占した.一方で,イシガイ類の幼生に寄生された個体は見つからなかった. 管理上の方策として成立要因・物理水文特性に基づく水域タイプを認識し,タイプの多様性を維持するように水域を管理していくことがイシガイ目の保全に重要であることが示唆された.また,イシガイ目の個体群の再生産が 2 年程度は停滞しており,その原因として水質の劣化と外来種が優占する魚類相が考えられた.したがって,管理上の課題として長期的な観点からイシガイ目の健全な個体群の維持に有効な対策を検討することが必要である.
著者
下村 五三夫 伊藤 大介
出版者
国立大学法人北見工業大学
雑誌
人間科学研究
巻号頁・発行日
no.4, pp.13-62, 2008-03

From the viewpoints of cultural anthropology and experimental phonetics, this paper dealt with a mysterious and little known game called rekukkara or rekuhkara performed by Sakhalin Ainus. This game is conducted by a pair of women, facing each other in a mouth-to-mouth distance, in the following way. One partner sends her guttural voice sounds into the mouth cavity of the other through a tube made of their hands. The guttural voice being applied into the receiver’s mouth can be modulated by the volume alteration of the mouth cavity. Similar games are recognized only among Chukchas and Canadian Inuits. In the framework of ‘speech synthesis by vocal tract simulation’, we proved that rekukkara is a kind of speech synthesis game. The key secret is for the voice receiver to hold her glottis shut and conduct some pantomimed articulation while the sender is sending her guttural voice into her mouth cavity. We argued that the game might be originated in the speaking jews-harp cultures and black-smith shamanism, one or both of which we can recognize among Ket, Sayan-Altaic, Tuvan, Buryat, Yakut, and Tungusic players of orally resonating instruments. We also pointed out that there is a correlation found between the bellows blowing air into the furnace at a black-smith’s work place and the guttural voice flowing into the mouth cavity of the game player. In the period of Mongolic domination, ancestors of the Sakhalin Ainu, who happened to move from the island to the Coast districts of now Russia, might have acquired from Tungusic players how to make orally applied noises transform into speech sounds. We also discussed the etymological question of a metallic jews-harp called kobuz, whose etymology is still unknown. Based on Tang dynasty 唐代 phonological reading of the eight names 渾不似,胡不兒,火不思,虎拍子, 琥珀 思,虎撥思,胡撥四,呉撥四cited in an Edo.period archive Geiennisshou .苑日 渉, we attested that the word 胡不兒belongs to Bulghar Turkic while the other seven variants to General Turkic. The phonological notation for 胡 不兒 is γοpur, whose ending 兒 /r/ seems to be a plural marker {-r} in Bulghar Turkic. The ending 兒/r/ contrasts with all the other endings 似, 思,子,四, whose phonetic value of the period of Tang dynasty is /s/, whose voiced variation /z/ is also a plural marker in General Turkic. Therefore, kobuz and its phonetic variations may be Turkic words, which can be decomposed into the two components, *kob- (noun) + -uz or -ur (plural marker). We conducted spectrographic analysis on the sound archives of rekukkara recorded by Bronislaw Pilsudski, a Polish exile to Sakhalin island from 1887 to 1903. We compared their sonograms with those of the sound recordings of the same game collected by NHK in 1950s and the sound recordings of its Chukcha and Inuit versions collected by K. Tanimoto in 1979 and 1992, respectively. We recognized that there appear speech synthesizing processes in the sonograms of the speech samples from Ainu sound archives compiled by NHK, which reinforces our hypothesis that the throat-exchange game rekukkara might have originated in speaking jews-harp cultures combined with black-smith shamanism in southern Siberia. As to the question of whether the Ainu rekukkara can be related with the Chukcha and Inuit versions, the answer solely depends on whether their sound recordings reveal the speech synthesizing processes in their sonograms.
著者
田中 善大 伊藤 大幸 村山 恭朗 野田 航 中島 俊思 浜田 恵 片桐 正敏 髙柳 伸哉 辻井 正次
出版者
一般社団法人 日本発達心理学会
雑誌
発達心理学研究 (ISSN:09159029)
巻号頁・発行日
vol.26, no.4, pp.332-343, 2015 (Released:2017-12-20)
参考文献数
26
被引用文献数
2

本研究では,単一市内の全保育所・公立小中学校の児童生徒の保護者を対象に調査を実施し,ASD傾向及びADHD傾向といじめ被害及び加害との関連を検討した。ASSQによってASD傾向を,ADHD-RSによってADHD傾向を測定した。いじめ被害及び加害は,関係的いじめ,言語的いじめ,身体的いじめのそれぞれのいじめについて測定した。保育所年少から中学3年生までの計8396名の幼児児童生徒のデータに対する順序ロジスティック回帰分析の結果,他の独立変数の効果を調整しない場合には,いじめ被害及び加害ともに,いずれのいじめに対してもASD傾向とADHD傾向の効果が示された。これに対して,他の独立変数の効果を調整した場合には,2つの発達障害傾向のいじめに対する影響は異なるものであった。いじめ被害では,全てのいじめでASD傾向の主効果が確認されたが,ADHD傾向の主効果が確認されたのは関係的いじめと言語的いじめのみであり,オッズ比もASD傾向より小さかった。いじめ加害では,全てのいじめでADHD傾向の主効果が確認されたが,ASD傾向ではいずれのいじめにおいても主効果は確認されなかった。これに加えて,学年段階や性別との交互作用についてもASD傾向とADHD傾向で違いが見られた。
著者
伊藤 大雄 藤井 愼二 上原 秀幸 横山 光雄
出版者
一般社団法人電子情報通信学会
雑誌
電子情報通信学会技術研究報告. COMP, コンピュテーション (ISSN:09135685)
巻号頁・発行日
vol.99, no.194, pp.17-24, 1999-07-21
参考文献数
17
被引用文献数
4

詰め将棋の盤面をn×nにし、王将以外の駒を0(n)個の用意した、一般化詰め将棋問題の計算複雑さについて論じる。詰め将棋には見た目や詰め方などに面白みを出すため、駒の初期配置に工夫をしたり、正解の詰め手順に美しい趣向が隠されている様な、趣向詰めというものがある。本稿では、飛車と角を使用しない「小駒図式」、初期配置に成り駒が無い「成り駒無し」、王将が初期配置で居た場所に戻って詰む「還元玉」、王将が中央のマスで詰む「都詰め」の4つの趣向を同時に満たすものに限定しても一般化詰め将棋問題がNP困難であることを証明する。
著者
田上 明日香 伊藤 大輔 清水 馨 大野 真由子 白井 麻理 嶋田 洋徳 鈴木 伸一
出版者
一般社団法人 日本認知・行動療法学会
雑誌
行動療法研究 (ISSN:09106529)
巻号頁・発行日
vol.38, no.1, pp.11-22, 2012-01-31 (Released:2019-04-06)
被引用文献数
6

本研究の目的は、うつ病休職者の職場復帰の困難感を測定する尺度を作成し、さらにその尺度をもとに職場復帰の困難感の特徴を明らかにすることであった。単極性のうつ病と診断された34名を対象に職場復帰の困難感について自由記述による回答を求め、項目案を作成した。次に、単極性のうつ病と診断された休職者60名を対象にその項目について探索的因子分析を行い、「職場で必要な体力面の困難」「職場復帰後の対人面の困難」「職務に必要な認知機能面での困難」の3因子10項目から構成されることが示され、十分な信頼性と内容的妥当性、併存的妥当性が確認された。そこで、職場復帰の困難感尺度を使用してタイプ分類を実施したところ、四つの類型を得た(全般困難型、復職後の対人関係困難型、体力・認知機能困難型、困難少型)。最後に、それぞれの類型にあわせた支援について議論がなされた。
著者
田上 明日香 伊藤 大輔 大野 真由子 白井 麻理 嶋田 洋徳 鈴木 伸一
出版者
一般社団法人 日本認知・行動療法学会
雑誌
行動療法研究 (ISSN:09106529)
巻号頁・発行日
vol.36, no.2, pp.95-106, 2010-06-30 (Released:2019-04-06)
被引用文献数
2

本研究の目的は、うつ病の治療において、うつ症状とともに評価が必要とされている社会的機能に着目し、うつ症状と社会的機能に関連する心理的要因を明らかにすることである。単極性のうつ病と診断された66名を対象に、自動思考尺度(ATQ-R)、対処方略尺度(TAC)、ソーシャルスキル尺度(KISS)、うつ症状尺度(BDHI)、社会適応状態尺度(SASS)を実施した。その結果、うつ症状に対しては、"自己に対する非難"が関連していたが、社会適応状態には"肯定的思考"と"肯定的解釈と気そらし""社会的スキル"が関連しており、うつ症状と社会適応状態では関連する要因が異なることが示唆された。これらのことから、うつ病患者への支援においては、うつ症状だけでなく社会適応状態に関連する要因を検討する必要性が議論され最後に本研究の限界について述べられた。
著者
渡邊 明寿香 仲座 舞姫 石原 綾子 山本 和儀 伊藤 大輔
出版者
一般社団法人 日本認知・行動療法学会
雑誌
認知行動療法研究 (ISSN:24339075)
巻号頁・発行日
vol.45, no.3, pp.137-147, 2019-09-30 (Released:2020-06-25)
参考文献数
36

本研究の目的は、職場復帰後に生じると想定される問題に焦点を当てた介入コンポーネントを付加した集団認知行動療法の効果を検証することであった。うつ症状を主訴とした休職者21名(男性11名、女性10名、平均年齢40.52±8.45歳)に対して、週1回150分、計8回のプログラムが実施された。プロセス変数として、自動思考、認知的統制、行動活性化、環境中の報酬知覚、被受容感・被拒絶感に関する各尺度と、効果変数として、抑うつ・不安、社会機能、職場復帰の困難感に関する各尺度を介入前後で実施した。分析の結果、プロセス変数の改善がみられ、本プログラムの妥当性が示唆された。また、本研究のプログラムによって、抑うつや不安症状、社会機能の改善とともに、部分的には職場復帰の困難感が改善されたことが示された。さらに本プログラムの参加者の復職率は高く、脱落率は低かったことからも、職場の問題に焦点化した集団認知行動療法の有効性が示唆された。
著者
伊藤 大輔 野場 悠佑 水野 幸治
出版者
公益社団法人 自動車技術会
雑誌
自動車技術会論文集 (ISSN:02878321)
巻号頁・発行日
vol.50, no.3, pp.838-843, 2019 (Released:2019-05-24)
参考文献数
14

Aピラー衝突時の自転車用ヘルメットによる脳傷害軽減メカニズムについて有限要素解析により検討した.ヘルメットを着用した人体モデルを自転車に着座させ,車両と衝突させたところ,多くの場合でヘルメットにより脳ひずみが軽減したが,脳傷害発生リスクが軽減されない場合もあった.その原因を力学的観点から分析した.
著者
伊藤 大輔 鈴木 伸一
出版者
一般社団法人 日本認知・行動療法学会
雑誌
行動療法研究 (ISSN:09106529)
巻号頁・発行日
vol.35, no.1, pp.13-22, 2009-01-31 (Released:2019-04-06)

本研究の目的は、致死性のないトラウマが外傷後ストレス反応、トラウマ体験後の認知に及ぼす影響を検討するとともに、致死性のないトラウマ経験者の認知と外傷後ストレス反応の関連を、致死性のあるトラウマ経験者との比較から検証することであった。大学生302名を対象に、外傷体験調査票、改訂版出来事インパクト尺度、トラウマ体験後の認知尺度が施行された。その結果、重篤な外傷後ストレス反応を発症・維持していた人数に、致死性のあるトラウマ経験群と致死性のないトラウマ経験群で有意差はみられなかった。また、自責の念は、致死性のないトラウマ経験群のほうが有意に高かった。さらに、トラウマ体験後の認知と外傷後ストレス反応の関連は、致死性のあるトラウマ経験群のほうが致死性のないトラウマ経験群と比較して強いことが示された。以上の結果から、今後、致死性のないトラウマ経験者の特異的な認知内容を検証する必要性が示唆された。
著者
伊藤 大幸
出版者
日本認知科学会
雑誌
認知科学 (ISSN:13417924)
巻号頁・発行日
vol.17, no.2, pp.297-312, 2010 (Released:2010-12-17)
参考文献数
52
被引用文献数
4

Incongruity theory holds a dominant position in explaining the mechanisms behind humor as a transient emotional reaction accompanied by laughing or smiling. However, there are two opposing models of this theory: the incongruity model and the incongruity-resolution model. This study looks at the differences in the role of the incongruity concept in each model and proposes an integrative model that clearly differentiates between structural incongruity as peculiarity and logical incongruity as the lack of causal relation between information. To test this integrative model, I manipulated these two different incongruities separately by changing the descriptions in the stimulus episodes. The results showed that each type of incongruity independently influenced the elicitation of humor. The possibility of confounding between the two factors was clearly negated by the results of the manipulation check and the general linear model analysis. These indicated the validity of the conceptualization of my integrative model, which can provide a unified theoretical framework for future humor studies.
著者
伊藤 大幸
出版者
日本認知科学会
雑誌
認知科学 (ISSN:13417924)
巻号頁・発行日
vol.14, no.1, pp.118-132, 2007 (Released:2008-12-15)
参考文献数
26
被引用文献数
6 4

The purpose of this study is to propose and test a model that integrates the incongruity model and the incongruity-resolution model, both of which explain cognitive aspects of the humor process. In the former, the direct cause of humor is incongruity, that is, discrepancy between expectations and actual states, whereas in the latter, it is a resolution of incongruity. In other words, it is a problem solving activity to find a cognitive rule that removes incongruity. The author hypothesized that the direct cause of humor is not resolution but incongruity, and the process of resolution interrupts conscious experience of humor by occupying one's attention. In Experiment 1, subjects read four-frame comic strips while remembering six-digit, three-digit or no numbers. The results showed that the humor rating was lower in the six-figure condition, although no difference was detected in humor comprehension. This suggested that (a) immersion in cognitive activity interrupts the humor experience. In Experiment 2, four-frame comic strips were presented while parts were hidden that either had no relation to humor or included essential cue for resolution. Then the parts were presented after a 5 or 15 second delay. Participants were asked to predict what was hidden during the delay. The results showed that delay decreased humor rating not only in the former condition but also in the latter condition. The effect of delay in the former condition implied (b) temporariness of humor, which was evoked when the stimuli were presented, while in the latter condition it implied that (c) humor as an emotional state could be evoked without resolution. Though the results of the two experiments supported the hypotheses of the author's model, these hypotheses were not sufficiently verified due to methodological problems.