著者
石井 信之 伊藤 寿樹 武藤 徳子 室町 幸一郎
出版者
神奈川歯科大学
雑誌
挑戦的萌芽研究
巻号頁・発行日
2016-04-01

本研究目的は、MG使用によるSAR症状改善効果を分析し、SAR症状発症における唾液の役割を明らかにすることであった。MG装着前およびMG装着後の唾液流速を分析し、唾液中のIgAおよびIgG4の量を測定した。 MG装着によるアレルギー性鼻炎症状と唾液各因子の相関関係を評価した。唾液中IgA濃度はSAR患者で有意に減少。 SAR症状はMG装着により有意に改善された。唾液流量および単位時間当たりのIgA総量は、MGの使用と共に有意に増加したが、IgG4総量は変化しなかった。MG装着は、単位時間当たりのIgA総量を増加させることによってSARのアレルギー性鼻炎症状を改善することが明らかにされた。
著者
伊藤 寿茂 上杉 翔太 柿野 亘
出版者
日本貝類学会
雑誌
Venus (Journal of the Malacological Society of Japan) (ISSN:13482955)
巻号頁・発行日
vol.74, no.3-4, pp.79-88, 2016-11-17 (Released:2016-12-10)
参考文献数
36
被引用文献数
2

Host species for the glochidia of the freshwater unionid mussel Cristaria plicata (Leach, 1815) were identified by determining whether the glochidia infected 27 fish taxa. The fishes were kept in tanks for 11–17 days after glochidial infection, and the numbers of glochidia and metamorphosed juveniles detached from the hosts were counted. Living juveniles of C. plicata detached from Tribolodon hakonensis, Pseudorasbora parva, Oryzias sp., Anabas testudineus, Trichogaster trichopterus, Trichopodus microlepis, Macropodus opercularis, Odontobutis obscura, Acanthogobius flavimanus, Gymnogobius urotaenia, G. castaneus, Tridentiger brevispinis, Rhinogobius giurinus, R. nagoyae and Rhinogobius sp. Therefore, these fishes were identified as suitable host species for the glochidia of C. plicata. Some native fishes that inhabit Anenuma Lake (e.g., Gy. castaneus) are considered to be useful local hosts. Moreover, some labyrinth fishes such as Anabas testudineus, which can climb out of the water and crawl over wet land, may disperse glochidia and juveniles over land in southern areas.
著者
粕谷 昌宏 加藤 龍 高木 岳彦 伊藤 寿美夫 高山 真一郎 横井 浩史
出版者
国立研究開発法人 科学技術振興機構
雑誌
情報管理 (ISSN:00217298)
巻号頁・発行日
vol.58, no.12, pp.887-899, 2016-03-01 (Released:2016-03-01)
参考文献数
38
被引用文献数
2

本稿では,身体機能を補完する義手と,身体を拡張する義手について述べる。まず,身体機能を補完する義手として,これまでに用いられてきた義手の種類や構成要素,動作原理を解説する。特に,義手の中でも近年注目されている,筋電義手について詳しく記述する。筋電義手の歴史は半世紀以上前までさかのぼるが,その制御方法は長らく革新されてこなかった。そのため,近年登場してきた多自由度の筋電義手においては,制御が複雑で使用者の負担となっていた。これに対し,多自由度の筋電義手でも,直感的で簡便な制御を可能とする,新たな制御方法が実用化されつつある。その研究動向について解説し,そのうえで,この新たな制御方法が実用化されることにより,身体を拡張する義手として,今後社会がどのように変化していくかを述べる。本稿では,最新の筋電義手の動向を,研究段階のものから実用段階のものまで広く解説する。
著者
柿野 亘 竹内 基 伊藤 寿茂 成田 勝 中村 咲蓮 塩練 元輝 杉山 真言 岡田 あゆみ 筏井 宏実 眞家 永光 馬場 光久
出版者
日本動物分類学会
雑誌
タクサ:日本動物分類学会誌 (ISSN:13422367)
巻号頁・発行日
vol.54, pp.23-35, 2023-02-28 (Released:2023-03-07)
参考文献数
109

In recent years, the classification system of Unionoida (Margaritiferidae, Unionidae) has undergone major changes from conventional methods by shell morphology, due to breakthroughs in approaches based on molecular phylogenetic analysis. We compared the classification system trends of the Margaritiferidae and Unionidae distributed in Japan, and pointed out that there is a time lag to the classification determinations of the latter. Although the scientific names have been changed, the existence, distribution, and ecological information (ex. host fish for glochidia) of two Japanese margaritiferids have been established, and conservation measures and regulations based on the Red List and laws can be expected. On the other hand, the Unionidae consisted of 3 subfamilies, 11 genera and 15 species has increased to 2 subfamilies, 13 genera and 26 species (excluding alien species) by the new classification system reported in 2020. Therefore, information on the distribution and ecology of many new species must be elucidated. A new classification system will be assumed the further revision, especially for the genus Sinanodonta, and the risk of some local populations extinction increase before clarifying the actual situation of species. We are now proceeding to clarify the early life stage of some Unionoida mussels (ex. parasitic stage, salinity tolerance), but insufficient knowledge of the life cycle of Unionoida has prevented the establishment of complete ex-situ conservation methods. Conversion project of numerous reservoirs are that the most important habitats for Unionidae species pressing forward in Japan. In light of this situation, it is hoped that the new classification system that can serve as a basis for on-site conservation will spread throughout as soon as possible to realize comprehensive conservation.
著者
伊藤 寿茂 神応 義夫
出版者
公益財団法人 平岡環境科学研究所
雑誌
自然環境科学研究 (ISSN:09167595)
巻号頁・発行日
vol.33, pp.5-14, 2020 (Released:2020-12-28)
参考文献数
17

Labroides dimidiatus is a well-known species of cleaner fish, while there are not many observation records on cleaning behavior of Plotosus japonicus. In this study, cleaning behavior of P. japonicus and L. dimidiatus was observed in a large aquarium tank (approximately 1000 m3 in capacity) at the Enoshima Aquarium to examine the relationship between their cleaning behavior and client fishes’ requesting behavior. P. japonicus was observed to perform cleaning behavior on 32 client species, some of which (17 species) displayed requesting behavior to P. japonicus. A total of 53 client species were recorded for L. dimidiatus, many of which (26 species) displayed requesting behavior to L. dimidiatus. We confirmed that in addition to L. dimidiatus, P. japonicus and some client species also developed their relationship through symbiotic coactions.
著者
喜田 宏 河岡 義裕 WEBSTER R.G. 岡崎 克則 伊藤 寿啓 R.G.WEBSTER
出版者
北海道大学
雑誌
国際学術研究
巻号頁・発行日
1993

平成3-4年度の文部省科学研究費・国際学術研究(0304103)および平成5年度の本研究による調査の結果、アメリカ合衆国アラスカ州中央部の湖沼に営巣する渡り鴨が、夏季にインフルエンザウイルスを高率に保有していることが判明した。平成6年度には前年度にひき続き、アラスカ州中央部のユコン平原にあるマラ-ド湖、ハート湖およびビッグミント湖で鴨の糞便材料を採取し、ウイルス分離試験を実施すると共に、湖水からのウイルス分離を試みた。さらに、分離ウイルスの抗原亜型を決定した上で、これまでに得られたウイルス株を加えて、分離年、分離地および亜型が異なるウイルスのNPおよびHA遺伝子の塩基配列を決定し、系統進化解析を行った。平成5年度および6年度に鴨の糞便541検体から分離されたインフルエンザウイルスは33株、パラミクンウイルスは15株であった。イルフルエンザウイルスの抗原亜型は、H3N8が23株、H4N6が8株、そしてH7N3が1株であった。文部省科学研究費により実施した平成3年および4年度の調査成績をあわせると、4年間に分離されたインフルエンザウイルスは108株で、その内訳は、H2N3が1株、H3N8が37株、H4N6が55株,H10N9が1株であった。従って、アラスカ中央部に夏季に営巣する鴨が多くの異なる抗原亜型のウイルスを維持していることならびに同じ営巣湖沼に異なる抗原亜型のインフルエンザウイルスが共循環していることが明らかとなった。また、鴨が夏季に巣を営み、ヒナを育てる湖沼の水からもインフルエンザウイルスが分離された。平成6年8月8日に採取したビッグミント湖の水13サンプルのうち7検体からインフルエンザウイルスが分離され、湖水1ml中のウイルス感染価は10^<1.8>-10^<2.8>EID_<50>におよんだ。そこで、ほとんどすべての鴨が渡りに飛び発った後、同年9月18日に再びビッグミント湖の水を採集して、ウイルス分離を試みた。その結果、H3N8およびH7N3ウイルスが得られた。その成績は、インフルエンザAウイルスが水鳥集団の間で受け継がれており、自然界におれるインフルエンザウイルスの存続には、冬期間の湖水中の凍結保存が関与するとの我々の推定を強く支持するものである。すなわち、北方の鴨の営巣湖沼がインフルエンザウイルスの貯蔵庫であり、秋(8月中旬)に鴨が渡りに飛び発つ前にその糞便と共に排泄したウイルスが冬期間凍結した湖沼水中に保存され、春に帰巣する鴨がこれを経口摂取して感染し、増殖することを毎年繰り返して存続してきたものと考えられる。これまでにアラスカで鴨の糞便が分離されたインフルエンザウイルス108株のうち、異なる年に異なる地点で分離されたウイルス18株のNP遺伝子および6株のH3ウイルスのHA遺伝子の塩基配列を決定し、系統進化解析を行った。成績から、アラスカ中央部に営巣する鴨の糞便から分離されたウイルスのNP遺伝子およびHA遺伝子は何れも北米大陸で分離されたウイルスと同じ系統に属し、アジアおよびヨーロッパで分離されたウイルスとは異なることが判明した。これらの成績は、少なくともユコン平原に営巣する鴨はアリューシャン列島を通ってアジアに飛来することは稀であることを示している。一方、このようにウイルス遺伝子を解析することによって、その宿主島の飛翔路を推定することが可能であることが判明した。先に研究代表者らは新型インフルエンザウイルスの起源が渡り鴨のウイルスにあって、アジア、特に中国南部で家鴨および豚がその出現に関与することを証明した。従って新型インフルエンザウイルスの予測のためには、南中国に飛来する渡り鴨およびその営巣湖沼を調査することが必須である。今後シベリアの鴨の営巣湖沼におけるインフルエンザウイルスの分布を調査する計画である。
著者
角谷 侑香 山口 暢俊 伊藤 寿朗
出版者
公益社団法人 日本農芸化学会
雑誌
化学と生物 (ISSN:0453073X)
巻号頁・発行日
vol.55, no.9, pp.602-610, 2017-08-20 (Released:2018-08-20)
参考文献数
89

1991年に遺伝学的な解析によって,がく,花びら,おしべ,めしべという4つの花器官は3つのクラスの遺伝子の組み合わせ「ABCモデル」によってつくられることが報告された.その後の研究により,これらの3つのABC遺伝子がどの組み合わせではたらくのかを決める分子的なメカニズムが明らかになっている.さらにABC遺伝子がはたらき始めるための上流の仕組み,およびABC遺伝子が制御する多種多様なイベントと複雑な下流のネットワークの一端もわかってきた.この解説では,近年の研究から見えてきたABC遺伝子が花をつくるための仕組みと順序,およびそこから見えてきた今後の課題を述べる.
著者
伊藤 寿隆
出版者
東北学院大学
雑誌
奨励研究
巻号頁・発行日
2014-04-01

◇研究の目的大学経営人材として職員の役割に期待が集まっているが、大学の規模(職員数)によっては、単独で職能開発に取り組むことが難しい状況にある。そこで、大学経営を担う人材の職能開発には、複数の大学連携による取り組みが有効と考えた。本研究は、大学職員の職能開発(SD)に関する地域別の実態を明らかにしたうえで、仙台地区の私立大学において実行可能性のある職能開発プログラムの提起を目的として実施した。◇研究方法1. 大学職員の職能開発に関する将来構想と先行事例を概観するために文献による調査を行った。2. 職能開発の実態と課題を抽出するため、仙台地区の私立大学にアンケート調査を実施した。3. 京都地区の大学とコンソーシアム組織及び札幌地区の大学にヒアリング調査を行い、仙台地区における実態との比較による検証を行った。◇研究成果調査の結果、職能開発の実態は大学の職員数や事務組織の規模による差があることを把握できた。仙台地区においては、大学単独では職能開発が進んでいないといった課題が明確になった。職能開発の機会が限られていることは、大学間競争の際に脆弱性をもたらすこととなる。一方で京都地区においては多様な職能開発のプログラムが用意されていることから、大学職員の職能開発には大きな地域間格差があることが実証できた。また、大学職員の役割の高度化・複雑化への対応として政策立案力などの資質を備えるため、職能開発プログラムの内容もより進化したものが求められるようになり、ますます大学単独での実施が困難を極めるようになってきた。このような実態を踏まえ、仙台地区私立大学における共通の課題を解決するためには、大学協働型職能開発プログラムが不可欠と考えられる。導入するまでには、いくつかの環境整備が必要となるが、学都仙台コンソーシアムなどの機関で具体的な方策を検討できるよう基礎資料の提示を計画している。
著者
伊藤 寿茂
出版者
日本陸水学会
雑誌
陸水学雑誌 (ISSN:00215104)
巻号頁・発行日
vol.67, no.3, pp.219-222, 2006-12-01 (Released:2008-03-21)
参考文献数
11
被引用文献数
3 4

日本に帰化した淡水魚カダヤシGambusia affinis の塩分耐性を水槽内で調べた。飼育水の塩分を様々な上昇幅で24時間毎に上げていき, その生残率を調べた。1日で海水濃度まで上げた水槽では, 殆どの個体が死亡したが, 3日以上かけて徐々に塩分を上げた水槽では, その生残率は大幅に高まり, 海水に高い適応性のある魚種であることが確認できた。カダヤシは汽水域や海水域を一時的に生活場所と出来, 海水域を介して分布を拡大する可能性が示された。
著者
伊藤 寿宏 押木 守 小林 直央 加藤 毅 瀬川 高弘 幡本 将史 山口 隆司 原田 秀樹 北島 正章 岡部 聡 佐野 大輔
出版者
公益社団法人 土木学会
雑誌
土木学会論文集G(環境) (ISSN:21856648)
巻号頁・発行日
vol.72, no.7, pp.III_305-III_313, 2016 (Released:2017-04-03)
参考文献数
25

本研究では、流入下水中のヒト腸管系ウイルス濃度分布、及びWHOが推奨する許容年間疾病負荷(10-6 disability-adjusted life years per person per year)に基づいて、定量的微生物リスク評価(quantitative microbial risk assessment: QMRA)の手法を用いて下水再生水の利用用途ごとにウイルス除去効率の目標値を算出する手法を構築・提案する。代表的なヒト腸管系ウイルスとしてノロウイルスに着目し、流入下水中のノロウイルス濃度モニタリングデータを使用することで、6種類の下水再生水利用シナリオにおけるノロウイルスの下水再生水中許容濃度及び除去効率の目標値を試算した。本研究で提案した方法により算出したヒト腸管系ウイルス除去効率目標値を使用する際には、下水再生システム稼動後においても未処理下水中のヒト腸管系ウイルス濃度をモニタリングすることが求められる。また、用量反応モデル情報の更新と、下水再生利用が行われる地域の状況に基づいた曝露シナリオとパラメータの更新についても継続して取り組むことが重要である。
著者
山下 崇博 Khumpuang Sommawan 三宅 晃司 伊藤 寿浩
出版者
The Institute of Electrical Engineers of Japan
雑誌
電気学会論文誌. E, センサ・マイクロマシン準部門誌 = The transactions of the Institute of Electrical Engineers of Japan. A publication of Sensors and Micromachines Society (ISSN:13418939)
巻号頁・発行日
vol.132, no.4, pp.66-70, 2012-04-01
被引用文献数
2 1

Conductive polymer coated micro-cantilever array made by reel-to-reel continuous fiber process as the electrical contact components for woven electronic textile was investigated. We report the novel cantilever releasing method using air injection and the results of patternable CYTOP and organic conductive polymer using nanoimprinting method. The conductive organic material used in this study is PEDOT:PSS (poly(3,4-ethylenedioxythiophene) poly(4-styrenesulfonate)). Micro-cantilever contact array is realized to compose the electrical circuit through the large area woven textile. The contact resistance of 480 Ω is hold on for over 500 times. Contact resistance measurements revealed that an electric current begins to flow with smaller contact force for PEDOT:PSS coated cantilever array structure than for PEDOT:PSS film structure. There is no appreciable wear on cantilever surface due to its movability after 10<SUP>3</SUP> cycles contact test with 0.5 N contact force. Based on these results, PEDOT:PSS coated micro-cantilever array have excellent potential as electrical contact components between weft and warp for woven electronic textile.
著者
伊藤 寿茂
出版者
日本爬虫両棲類学会
雑誌
爬虫両棲類学会報 (ISSN:13455826)
巻号頁・発行日
vol.2007, no.2, pp.127-128, 2007-09-30 (Released:2010-09-27)
参考文献数
4
被引用文献数
2

Rana porosa porosa wintering in a U-shaped concrete ditch along a paddy field were observated at Oba, Fujisawa City, Kanagawa Pref., central Japan. There was a little mud and dry grass in the ditch. When a concrete block in the ditch was lifted, the frog dug into the substrate and crouched there.
著者
伊藤 寿茂 北野 忠 唐真 盛人 藤本 治彦 崎原 健 河野 裕美
出版者
日本貝類学会
雑誌
Venus (Journal of the Malacological Society of Japan) (ISSN:13482955)
巻号頁・発行日
vol.72, no.1, pp.77-87, 2014

2006年に国内で初めて記録された石垣島のドブガイモドキについて,幼生の採集を試み,幼生が寄生している魚種を調査するとともに,実験飼育下で宿主として機能する魚種を確認した。島内の生息地においてプランクトンネットをひき,幼生の採集を試みるとともに,採集した成貝を継続飼育し,放出した幼生を採集した。幼生の殻の形状は亜三角形で腹縁に鉤を持つAnodonta型であり,殻長,殻高,殻幅の平均はそれぞれ221.5 μm,228.0 μm,108.3 μmであった。次に,現場で採集した幼生の寄生を受けていると想定される6魚種(ギンブナ,グッピー,タイワンドジョウ,ティラピア類,オカメハゼ,タウナギ)と,飼育下で放出された幼生を人為的に寄生させた12魚種(コイ,キンギョ,タイリクバラタナゴ,ドジョウ,ヒレナマズ,メダカ,グッピー,タイワンキンギョ,オカメハゼ,タナゴモドキ,ゴクラクハゼ,ヨシノボリ類)を実験水槽内で継続飼育して,魚体から離脱してきた幼生を観察,計数した。その結果,ヒレナマズ,メダカ,グッピー,タイワンキンギョ,オカメハゼ,タナゴモドキ,ゴクラクハゼ,ヨシノボリ類の8魚種より,変態を完了させた稚貝が出現した。寄生期間中に幼生サイズの増大や外形の著しい変化は見られなかった。全離脱数に占める稚貝の出現率は魚種によって差があり,タイワンキンギョ,グッピー,ヨシノボリ類において,特に出現率が高かった。次に,同生息地において採集した6魚種(ギンブナ,カダヤシ,グッピー,ティラピア類,オカメハゼ,タナゴモドキ)を10%ホルマリン水溶液で固定して,魚体に寄生した幼生の状態を観察,計数したところ,グッピーとティラピア類の体に寄生が見られた。寄生は鰓や各鰭のほか,鰓蓋の内側,鰓耙にも見られた。幼生の相対寄生密度および被嚢率はグッピーの方が高かった。石垣島を含むドブガイモドキの生息地においては,その幼生の宿主として,在来種,外来種を含む複数の魚種が宿主として機能している可能性がある。特に,石垣島では,生息する魚の大部分を外来種が占めており,中でもグッピーが主な宿主として機能していることが判明した。このことから,石垣島内における宿主魚類の移入による分布拡大が,ドブガイモドキの分散に寄与した可能性がある。