著者
鷹﨑 和義 和田 敏裕 森下 大悟 佐藤 利幸 佐久間 徹 鈴木 俊二 川田 暁
出版者
日本水産増殖学会
雑誌
水産増殖 (ISSN:03714217)
巻号頁・発行日
vol.66, no.1, pp.41-51, 2018 (Released:2019-03-20)
参考文献数
30

2015年5月~2016年11月に,福島県内の阿武隈川水系の13定点においてさし網や延縄などを用いた調査を行い,716個体(体長9.9~65.0 cm)のチャネルキャットフィッシュが採集された。本種は阿武隈川の本流で採集され,特に発電用ダム(信夫ダム,蓬莱ダム)の貯水域やその下流域で多く採集された。信夫ダムでは,2008年に比べて CPUE が著しく増加していることや,GSI の高い成熟個体や未成熟の小型個体が多く採集されたことから,近年,ダム周辺の水域を中心に,再生産により本種の個体数が急激に増大している可能性が考えられた。雌の GSI の季節変化より,本水系における産卵期は5~6月ごろと推定された。信夫ダムにおいて,さし網および延縄により採集された魚類のうち,本種が占める割合は非常に高く(各64.2%および100%),本水系における適切な駆除手法の確立が急務であると考えられた。
著者
佐藤 伸一
出版者
公益社団法人 日本薬学会
雑誌
ファルマシア (ISSN:00148601)
巻号頁・発行日
vol.56, no.8, pp.779, 2020 (Released:2020-08-01)
参考文献数
4

ケミカルプロテオミクスは,共有結合修飾されたタンパク質に焦点を当てたタンパク質・アミノ酸残基の機能解析手法である.タンパク質存在量でなく活性,機能に着目した解析が可能である.例えば,セリン加水分解酵素の活性プロファイリング等では,酵素活性に基づく有益な情報が取得できる.今回Hsuらは,チロシン残基に対して選択的に共有結合を形成できるプローブを開発し,これを用いて3,700種以上のタンパク質,10,000か所以上の修飾サイトを検出,解析したので紹介する.なお,本稿は下記の文献に基づいて,その研究成果を紹介するものである.1) Liu Y. et al., Proc. Natl. Acad. Sci. U.S.A., 96, 14694-14699(1999).2) Hahm H. S. et al., Nat. Chem. Biol., 16, 150-159(2020).3) Dong J. et al., Angew. Chem. Int. Ed. 53, 9430-9448(2014).4) Adibekian A. et al., Nat. Chem. Biol., 7, 469-478(2011).
著者
佐藤 豪 池永 雅一 俊山 聖史 太田 勝也 上田 正射 板倉 弘明 津田 雄二郎 中島 慎介 遠藤 俊治 山田 晃正
出版者
日本外科系連合学会
雑誌
日本外科系連合学会誌 (ISSN:03857883)
巻号頁・発行日
vol.44, no.1, pp.38-42, 2019 (Released:2020-02-29)
参考文献数
20

症例は51歳,男性.開腹歴はなし.腹痛,嘔吐を主訴に当院救急外来を受診した.来院時,腹部は膨満し,臍下に間欠的自発痛と圧痛を認めた.前日の夕食にしゃぶしゃぶを食べていた.腹部単純X線検査では小腸ガスの貯留と鏡面像を認めた.腹部造影CTで絞扼所見を認めなかったため,胃管減圧チューブを留置して緊急入院した.翌朝,腸管拡張の改善がなかったためイレウス管を留置した.その後2日間経過観察したが,腹部症状の改善が乏しかったために緊急手術を施行した.拡張した腸管の先端で軟らかい腫瘤を触知し,腸を切開して摘出した.術後に再度問診を行い,入院前夜に大量に摂取した木耳(きくらげ)による食餌性イレウスと診断した.木耳による食餌性イレウスは本邦でこれまで報告がなく,若干の文献的考察を加えて報告する.
著者
小山 洋 鬼頭 英明 佐藤 雅彦 遠山 千春
出版者
The Japanese Society for Hygiene
雑誌
日本衛生学雑誌 (ISSN:00215082)
巻号頁・発行日
vol.57, no.3, pp.547-555, 2002-09-15 (Released:2009-02-17)
参考文献数
69
被引用文献数
10 12

We reviewed studies on genotoxicity and carcinogenicity of cadmium (Cd). Salmonella typhimurium and Escherichia coli exposed to Cd did not show mutagenicity, whereas cultured mammalian cells exposed to Cd showed mutation, DNA strand breaks, and chromosomal aberrations. Carcinogenicity tests showed that exposure to Cd increased the occurrence of tumors in testis, lung, prostate, hematopoietic tissues, and injection sites. On the other hand, recent epidemiologic studies are not supportive of earlier observations on the association between Cd and prostate cancer. The US NIOSH data on a possible association between Cd and lung cancer may need reevaluation. No studies which show a positive relationship between oral Cd exposure and carcinogenesis have been reported. All available data suggest that Cd should be reassigned to IARC Group 2A (probably carcinogenic to humans) from the current Group 1.
著者
佐藤 俊哉
出版者
一般社団法人 日本統計学会
雑誌
日本統計学会誌 (ISSN:03895602)
巻号頁・発行日
vol.22, no.3, pp.493-513, 1993 (Released:2009-01-22)
参考文献数
107
被引用文献数
1

リスク要因と疾病発生との因果関係を調べるための疫学研究で用いる生物統計手法に関するレビューを行う.疫学研究で興味のある,リスク要因への曝露の効果の指標を導入した後,曝露効果を推定するための古典的な研究デザインである,コホート研究,ケース・コントロール研究とそこで用いる生物統計手法を解説する.最近では,生物統計学の発展にともなって,コホート研究,ケース・コントロール研究に代わる新しい研究デザインがいくつか提案されているが,新しいデザインのうち代表的なネステッド・ケース・コントロール研究,ケース・コホート研究, 2段階ケース・コントロール研究の紹介を行う.また,疫学的観察研究から因果推論を行うための最近の研究成果についても報告する.その他の重要な話題である,誤分類の影響, Ecologica bias,経時観察研究,についても簡単ではあるが文献紹介を行う.
著者
小川 滋夫 佐藤 昇 藤原 満喜子
出版者
日本衛生動物学会
雑誌
衛生動物 (ISSN:04247086)
巻号頁・発行日
vol.10, no.1, pp.80-82, 1959-04-05 (Released:2016-09-04)
被引用文献数
5 7

蠅蛆症についての諸外国の報告例中には, 人体外部の皮膚, 鼻腔, 外聴道, 腟, 尿路などに寄生していろいろな局所の障害を起している例があるが, わが国では消化器系蠅蛆症, 特に腸蠅蛆症の報告例が多い(島田1898, 臼杵1907, 本田ら1909, 小林1915, 高木1915, 斎藤ら1918, 武田1921, 佐々木1928, 小宮1953など).しかし, これらはなんらかの自覚症状を訴えて医師を訪ねており, 自覚症状がなく, 何か他の機会に蠅蛆の寄生が発見された報告は少く, 小林(1916)が学童の集団検便で, 中西ら(1936)が鉤虫症患者に入院駆虫を行つて, また岡部ら(1956)が鉤虫の集団駆虫でそれぞれ蠅蛆寄生の1例を認めているのが主な症例のようである.昭和32年8月29日, 著者らは山間の農村部落である新潟県直江津市桑取地区土口部落で224名の鉤虫集団駆除を行つたところ, 自覚症状を訴えない蠅蛆寄生者の3例(1例は蛆20匹を確認, 他の2例は標本の入手に不成功)を発見したので, ここに報告する.桑取地区土口部落は, 日本海岸より約8km離れ, 標高約150m, 山間の零細農家が多く, 衞生状態も悪く, 寄生虫も蔓延しており, ハエなどの発生も他に比べて多い地域である.標本は東京医科歯科大学医動物学教室の金子清俊氏の同定によるもので, ノミバエ科(Phoridae)のMegaselia spiracularis Schmitz, 1938の3令幼虫であることが判つた.
著者
佐藤 洋美
出版者
公益社団法人 日本薬学会
雑誌
YAKUGAKU ZASSHI (ISSN:00316903)
巻号頁・発行日
vol.140, no.8, pp.963-968, 2020-08-01 (Released:2020-08-01)
参考文献数
30

Metabolome analysis is an approach to investigate cell characteristics from the metabolites that are constantly produced and changed by those cells. We conducted a metabolome analysis of the response of 786-O renal cell carcinoma (RCC) cells to histone deacetylase (HDAC) inhibitors, which are expected to increase anticancer drug sensitivity, and compared the response with that of drug-resistant cells. Trichostatin A (TSA), an HDAC inhibitor, increased the sensitivity of 786-O cells to sunitinib. Moreover, TCA cycle and nucleotide metabolism of the cells were promoted. The findings that acetylated p53 (active form) and early apoptotic cells were increased suggests that the mechanism involved enhancement of mitochondrial metabolism and function. In addition, established sunitinib-resistant RCC cells were exposed to a combination of sunitinib and TSA, resulting in significant growth inhibition. Principal component analysis revealed that the parent and resistant cells were obviously different, but approximately half their fluctuations were illustrated by the same pathways. In summary, it was suggested that TSA reduced sunitinib resistance by triggering intracellular metabolome shifts in energy metabolism. This was the first recognized mechanism of action of TSA as an HDAC inhibitor.
著者
廣瀬 真由 大沼 学 佐藤 恵美 斎藤 渉 河西 雅之 薄井 紀夫 内海 通
出版者
公益社団法人 日本視能訓練士協会
雑誌
日本視能訓練士協会誌 (ISSN:03875172)
巻号頁・発行日
vol.46, pp.77-82, 2017 (Released:2018-03-17)
参考文献数
11

【目的】片頭痛発症中に自覚した暗点を動的量的視野検査で検出できた症例を報告する。【症例】60歳男性、眼科医。突然、両眼左上部に暗点を自覚した後、後頭部から右側頭部にかけて鈍痛を認めたため、直ちに頭頸部MRIおよび眼科検査を施行した。暗点ならびに頭痛の原因となる器質的疾患は見い出せず、視力低下や眼圧上昇などもなかった。Goldmann視野計による動的検査では、両眼に自覚症状と一致した左上部の同名性暗点を検出した。暗点は自覚4時間後に、頭痛は翌日に消失した。後日再度施行したGoldmann視野計による動的検査では暗点は認めなかった。【結論】片頭痛発症中の閃輝暗点を動的量的視野検査で検出できた一例を経験した。
著者
佐藤 宏明
出版者
日本森林学会
雑誌
日本森林学会誌 (ISSN:13498509)
巻号頁・発行日
vol.90, no.5, pp.315-320, 2008 (Released:2009-01-20)
参考文献数
44
被引用文献数
1

奈良県大台ヶ原では,近年,増加したニホンジカ(Cervus nippon)による樹皮剥ぎや実生の採餌により原生林の衰退が顕著となっている。一方,シカの被食に対し高い耐性を有するミヤコザサ(Sasa nipponica)が林床をおおう林や,一面ミヤコザサからなる草地が拡大している。ミヤコザサは蛋白質が豊富であり,シカの主要な餌資源となっているため,森林が衰退しミヤコザサが優占する場所では糞供給量が増加していると考えられる。そこで,原生林の衰退が糞を餌資源とする糞虫群集にどのような影響を及ぼしているかを明らかにするため,原生林,ササ草地およびその間の移行林に仕掛けた誘因式ピットフォールトラップによって得られた糞虫に基づき多様度を植生間で比較した。種数,均衡度(Smith-Wilson index, Evar),種多様度(Shannon-Wiener index, H′)のいずれも,原生林で最も高い値を示した。移行林では糞虫個体数の増加がみられたものの,均衡度はもっとも低い値を示し,ササ草地では種数,均衡度ともに最も低い値であった。このことは,ニホンジカの増加による森林の衰退は,糞という餌資源の増加があったとしても,糞虫群集の多様性を減少させていることを示唆する。したがって,このような生態系の変化は生物多様性の保全という観点から糞虫群集にとっても好ましい現象ではないといえる。
著者
佐藤 美香子 五十嶺 伸二 境田 康二 金沢 剛 水嶋 知也 後藤 眞里亜 花上 和生 比留間 孝弘
出版者
一般社団法人 日本集中治療医学会
雑誌
日本集中治療医学会雑誌 (ISSN:13407988)
巻号頁・発行日
vol.17, no.1, pp.39-42, 2010-01-01 (Released:2010-07-30)
参考文献数
13
被引用文献数
1

劇症分娩型A群レンサ球菌感染症は,経過が特に急激であり,母子ともに不幸な転帰をたどることが多い。妊娠早期における本症の1救命例を経験したので報告する。患者は34歳女性。嘔気,下腹部痛を主訴に他院より紹介となった。来院後,排尿時に妊娠15週前後の胎児を娩出した。直ちに子宮内容除去術を施行したが,術後数時間で敗血症性ショック,多臓器不全となり集中治療を開始した。膣培養よりA群レンサ球菌が検出され,劇症分娩型A群レンサ球菌感染症と診断し,アンピシリン,クリンダマイシンの投与を開始した。第38病日には合併症なく退院となった。本症の報告例はほとんどが妊娠後期であり,救命例は少ない。今回救命できた要因としては,妊娠週数が早く,結果的に感染巣の除去となる子宮内容除去が迅速に施行されたことと,早期から集中治療が行われたことが考えられる。産科領域における敗血症では,経過が急激である本症も考慮する必要がある。
著者
小松田 辰郎 佐藤 克巳 成重 崇 熊谷 純 石橋 弘二
出版者
日本肩関節学会
雑誌
肩関節 (ISSN:09104461)
巻号頁・発行日
vol.25, no.2, pp.305-308, 2001-08-02 (Released:2012-11-20)
参考文献数
8
被引用文献数
2

[Purpose]The present study was undertaken to elucidate the pathological conditions of both the capsule and subacromial bursa of contracted shoulders associated with rotator cuff tears.[Materials and methods]Twenty-six shoulders of 26 patients,22 males and 4 females, aged from 37to 75 years old (mean 57) received brisement procedures prior to cuff surgeries. There were 8 large,12 small and 6 partial thickness tears. Arthroscopic observation was done to find out the site of the capsular injury after the brisement procedures. Macroscopic observation of torn cuffs and the adhesion of the bursa were also performed.[Results]Arthroscopic findings after brisement procedures revealed redness, proliferations, and bleeding of the synovium in the glenohumeral joint. There were two types of capsular injuries. TypeA: tear of the axillar region(17 shoulders), Type B: tear of the axillar and rotator interval regions(9 shoulders). The number of cases of (Type A: Type B) was (7: 1) with large tears, (6: 6) with small tears and (4: 2) with partial thickness tears. If cuff tears included the rupture of the anterior band of the supraspinatus tendon, the number of (Type A: Type B) was (12: 3), while it was (1: 4) without a rupture of the band. Although there were adhesions between the bursa and cuff in 85% shoulders, no disruptions were found in the subacromial bursae.[Conclusion]The main cause of a shoulder contracture assosiated with rotator cuff tears was located at the axillar and rotator interval capsules and was influenced by the size of the location and cuff tears.
著者
佐藤 禎紀 柏原 昭博 長谷川 忍 太田 光一 鷹岡 亮
出版者
一般社団法人 人工知能学会
雑誌
人工知能学会全国大会論文集 第33回全国大会(2019)
巻号頁・発行日
pp.1P3OS2103, 2019 (Released:2019-06-01)

Web調べ学習では,Web空間を探索して与えられた課題(初期課題)に対して網羅的,体系的な学習が求められる.一方Web空間では,学ぶべき項目や順序(学習シナリオ)は与えておらず,学習者は学習課題に対する知識構築と次に学ぶべき課題の展開を並行して行うため,認知的負荷が高い.筆者らはWeb調べ学習におけるプロセスをモデル化したWeb調べ学習モデルを提案し,そのモデルに沿った学習を促すシステムiLSBを開発した.一方で学習者はiLSBを用いても初期課題と関係ない課題を展開する場合があり,学習シナリオの診断が必要である.しかし一般的な,解となるシナリオと学習者のシナリオの比較による診断は学習者の主体性を阻害してしまう.そこで本研究では,Web上の関連データをリンク付けしたLOD(Linked Open Data)を用いて,学習者の主体性を阻害せず課題展開を診断することで,より妥当なシナリオ作成を促す手法を提案する.また,本稿では提案手法の評価実験を行った.その結果,提案手法は学習者の課題展開への見直しを促し,妥当なシナリオ作成に有効であることが示された.