著者
佐藤 慎哉
出版者
名古屋市立大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2015-04-01

ホルモン治療に抵抗性の前立腺癌に対する治療法は限られており、新たな治療法が求められている。私達は、DNAの塩基配列を変えずに遺伝子の働きを変えるエピゲノム機構を利用したホルモン治療抵抗性前立腺癌の増殖抑制を目指した。エピゲノム機構を制御するHDAC阻害剤(OBP-801)をホルモン治療抵抗性前立腺癌細胞に投与したところ、増殖抑制が確認された。さらにOBP-801は同じくエピゲノム機構を制御するマイクロRNA(miR-320a)の発現上昇を介して、前立腺癌の増殖に重要なアンドロゲン受容体の発現を抑制した。以上より、HDAC阻害剤はホルモン治療抵抗性前立腺癌に対する有望な治療薬と考える。
著者
三島 剛 萩原 愛子 伊藤 均 小森 智康 堀川 大輔 川瀬 直也 佐藤 庄衛
出版者
一般社団法人 映像情報メディア学会
雑誌
映像情報メディア学会誌 (ISSN:13426907)
巻号頁・発行日
vol.74, no.4, pp.729-735, 2020 (Released:2020-06-26)
参考文献数
11

放送局では番組制作に必要な構成資料や放送原稿などを作成するため,取材した映像素材の発話を文字に変換する書き起こしを活用している.しかし書き起こしを制作する作業は多くの労力を要し,迅速な番組制作の妨げになっている.そのためわれわれは音声認識技術を用いた書き起こし支援技術の研究を進めている.この中では書き起こしの作業時間短縮に加え,記者会見などのライブ素材の書き起こしや複数人での協調作業など,番組制作のワークフローを考慮することで迅速に番組を制作して視聴者に情報を届けることを目指している.本システムの有効性を検証するため放送現場に試行用のシステムを導入し,改善項目の収集や利用状況の調査を継続して実施した.この試行運用を契機に書き起こしシステムの有用性が放送現場に認められ,現在はNHKの全放送局で本システムが活用されている.
著者
佐藤 勇一
出版者
日本ミシェル・アンリ哲学会
雑誌
ミシェル・アンリ研究 (ISSN:21857873)
巻号頁・発行日
vol.6, pp.111-132, 2016 (Released:2017-02-01)
参考文献数
33

Cet article traite de la lecture henryenne de Franz Kafka. Pour le philosophe et romancier Michel Henry, Kafka est un antécédent qui écrit un expression de la vérité philosophique et qui cherche un chemin de la vérité toujours égaré. Dans les aphorismes de Kafka, en effet, il y a deux vérités : celui de « l’indestructible », qui est exprimée par « l’arbre de la vie » , c’est-à-dire, une expérience d’Adam avant qu’ il n’ait été obligé de quitter le Paradis, et celui de la connaissance, c’est-à-dire une expérience de l’égarement exprimée par « l’arbre de la connaissance ». Henry considère ce que Kafka appele « l’indestructible » la vérité de la vie, en faisant état de l’Évangile de Jean et du texte de Fichte. Le refus du « monde », le refus de la mort de Jésus-Christ sont les points communs entre l’interprétaion henryenne de Jean et son interprétation fichtienne. Au centre de la lecture henryenne de Kafka se trouvent les mots du Christ en Jean : « Moi, je suis le Chemin et la Vérité et la Vie » et « C’est Moi qui suis la Porte : celui qui entretra par moi [...] il ira et il viendra et il trouvera pâture... ». Les aphorismes de Kafka et « l’affiche du Grand Théâtre d’Oklahoma » dans Amerique sont les expressions de la communauté (« Fond », « Fils dans le Fils » etc.). Dans la philosopie de Henry, Kafka est un « penseur religieux » qui pense à la vérité de la vie et à la communauté.
著者
青木 裕子 古田 徹也 大谷 弘 片山 文雄 石川 敬史 佐藤 空 野村 智清
出版者
武蔵野大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2016-04-01

本研究グループは科研費受給期間中コンスタントに研究成果を発表した。主な活動を四点挙げる。第一に「常識と啓蒙研究会」を年二回開催した。第二に、2018年3月に日本イギリス哲学会第42回研究大会においてセッション「コモン・センスとコンヴェンション―18世紀英米思想における人間生活の基盤」のコーディネイトと研究報告を行った。第三に、2019年10月に武蔵野大学政治経済研究所主催のオール英語の国際シンポジウムをコーディネイトし、本研究グループと米国の研究者が研究報告を行った。第四に、2020年2月には本研究プロジェクトの最終報告として『「常識」によって新たな世界は切り拓けるか』(晃洋書房)を出版した。
著者
佐藤 廣士
出版者
The Surface Finishing Society of Japan
雑誌
表面技術 (ISSN:09151869)
巻号頁・発行日
vol.43, no.11, pp.1014-1019, 1992-11-01 (Released:2009-10-30)
参考文献数
15
被引用文献数
3 4
著者
林 明宗 佐藤 秀光
出版者
一般社団法人 日本東洋医学会
雑誌
日本東洋医学雑誌 (ISSN:02874857)
巻号頁・発行日
vol.62, no.2, pp.142-146, 2011 (Released:2011-07-08)
参考文献数
14
被引用文献数
5 7

【目的】脳腫瘍治療の合併症である頭皮放射線性皮膚炎は火傷の一種であり,現状ではステロイド製剤がその治療の主役となっている。今回,火傷を保険適応とする紫雲膏の頭皮放射線皮膚炎に対する治療効果を検討した。【方法】悪性脳腫瘍症例22例(全脳照射9例,局所照射13例)を対象とした:男/女=12/10例。51~74歳(平均63.1歳)。疾患内訳:悪性神経膠腫13例,脳悪性リンパ腫6例,転移性脳腫瘍3例。症状内訳(重複あり):発赤18例,灼熱感をともなう疼痛13例,瘙痒感13例,皮膚びらん3例。治療効果は自覚症状の改善度により以下のように判定した:著効(改善度80%以上),有効(改善度50%以上),やや有効(改善度50%未満),無効(改善度30%未満)【成績】著効16例,有効6例で,全例に良好な治療効果を認めた。【結論】紫雲膏は組織修復作用にも優れ,ステロイド製剤にかわる放射線性皮膚炎に対する有用な薬剤として期待できる。
著者
犬塚 慎也 松崎 拓也 佐藤 理史
出版者
一般社団法人 人工知能学会
雑誌
人工知能学会全国大会論文集 第31回全国大会(2017)
巻号頁・発行日
pp.3O15, 2017 (Released:2018-07-30)

大学入試センター試験「数学」の整数問題に対して自動解答するシステムを開発した。数量を求める問題において限量子除去は強力なツールだが、整数領域の一階述語論理式は一般には限量子除去が不可能である。そのため、特殊な述語を用意して、テキストに表れている問題を解く上での手がかりが失われないような中間表現を設計し、発見的な手法を用いた限量子除去を効果的に行えるようにした。
著者
森岡 正臣 佐藤 織枝
出版者
一般社団法人 日本科学教育学会
雑誌
日本科学教育学会研究会研究報告 (ISSN:18824684)
巻号頁・発行日
vol.18, no.4, pp.29-32, 2003-12-06 (Released:2017-11-17)

数学離れという言葉が言われ続けている現状の中で、生徒の実態を出来るだけ的確に把握するために、我々はいくつかの高等学校の生徒達に高等学校数学に対する意識調査を実施した。本稿ではその分析結果をいくつか紹介し、それに対して若干の考察を行ってみる。
著者
佐藤 紀代子 杉内 智子 城本 修 辛島 史織 根岸 歩
出版者
一般社団法人 日本聴覚医学会
雑誌
AUDIOLOGY JAPAN (ISSN:03038106)
巻号頁・発行日
vol.62, no.4, pp.290-298, 2019
被引用文献数
1

<p>要旨 : 中等度難聴者4名を対象として, 聞こえにくさと聴覚障害の意識について半構造化面接を用いて検討し, 当事者の視点で分析した。面接の叙述から中等度難聴者の聞こえにくさと聴覚障害の意識に関する30種の概念がコード化され, 聞こえにくさと対処法, 聴覚障害の意識の変容について個別の経緯を検討した。語音聴取が良好でも他愛無い雑談などの聴取に困難を感じており, 会話方略の使用, 自らの情報収集などによって対処していることに共通点を認めた。また, 聴覚障害への意識は個々の成育歴や環境によって異なっていたが, 共通して聴覚障害の受容よりも否定的な意識の方が多く, どのようなライフステージにおいても常に聴覚障害の受容, および否定的な意識が混在していることが示された。当事者の発達段階に応じて医療や教育の場において情報提供することや, 当事者が障害を開示し社会に配慮を求める姿勢を形成するなど, 長期的な支援の必要性が示唆された。</p>
著者
佐藤 仁人 乾 正雄
出版者
一般社団法人 照明学会
雑誌
照明学会誌 (ISSN:00192341)
巻号頁・発行日
vol.77, no.6, pp.275-284, 1993-06-01 (Released:2011-07-19)
参考文献数
16
被引用文献数
1 1

In recent years, windowless office spaces have increased remarkably, while problems related to windowless roomsremain to be solved.This study was conducted to evaluate the effects of visual environment on human psychology and behavior in a windowless office space.This thesis consists of three Experiments which are stated below.In Experiment 1, using scale models, at first the psychological factor structure of the visual environment of a windowless control room, which is the typical windowless office room, are surveyed. Secondly the relationship between psychological factors and physical factors which constitute visual environment are examined.In Experiment 2, how the visual environment affect subjective appraisal and human behavior such as eye movement, task performance and behavior pattern, in windowless office spaces are disscussed, when subjects were at fundamental task in an actual sized experimental space.In Experiment 3, how visual environment and types of task affect human psychology and behavior such as subjective appraisal, task performance, behavior patterns in windowless office spaces are examined, when subjects took six types of task, which were chosen to take usual work at an office space into consideration, in the same experimental space.Summing up the results obtained above, we conclude that although the visual environment of the windowless office space have negative influence upon human psychology and behavior, they can be compensated by considering interior decoration and types of task.
著者
渡辺 彰 佐藤 博 常石 英作 松本 光人 滝本 勇治
出版者
公益社団法人 日本畜産学会
雑誌
日本畜産学会報 (ISSN:1346907X)
巻号頁・発行日
vol.63, no.9, pp.935-941, 1992-09-25 (Released:2008-03-10)
参考文献数
14

牛の屠殺方法が各種筋肉のpHおよびATP-関連化合物(ATP,アデノシン三りん酸;ADP,アデノシン二りん酸;AMP,アデノシン一りん酸;IMP,イノシン酸;Ado,アデノシン;Ino,イノシン;Hyp,ヒポキサンチン;Xan,キサンチン)の死後変化に与える影響を調べた.子牛9頭を供試し,麻酔処置により筋肉を採取したA区,屠殺時に延髄•脊髄破壊したP区および破壊処理なしに放血のみで屠殺したN区の3区に3頭ずつ分けた.採取した筋肉は胸最長筋(LD筋),大腰筋(PM筋)および大腿二頭筋(BF筋)で,採取後37°Cに保温して,pHおよびATP-関連化合物の経時変化を測定した.pH変化について,LDおよびBF筋では,処理による有意差は認められなかった.PM筋では,極限pHに到達するまで,pH値は,A区,N区,P区の順で高く推移し,屠殺1,3および4時間後では,A区がP区およびN区よりも有意(P<0.05)に高かった.また,ATP-関連化合物の分解程度をKa=(IMP+Ino+Hyp+Xan)/(ATP+ADP+AMP+IMP+Ino+Hyp+Xan)とすれば,PM筋のKaでは,屠殺1時間後でP区がN区よりも有意(P<0.01)に高かった,LD筋では2時間後にP区がN区よりも高い傾向があった.BF筋では,3時間以内で処理間に差異は認められなかった.これらのことよりPM筋は屠殺時の延髄•脊髄破壊の影響を強く受けてATPの分解が進んでいることが明らかとなった.
著者
谷本 守正 佐藤 薫
出版者
日本酪農科学会
雑誌
ミルクサイエンス (ISSN:13430289)
巻号頁・発行日
vol.68, no.2, pp.100-105, 2019

<p> 食用きのこであるヤマブシタケ凝乳粗酵素を用いたモッツァレラチーズのレオロジー特性をキモシンと比較した。pH 5.50からpH 5.10としたカードを混練し,モッツァレラチーズを調製した。ヤマブシタケ凝乳粗酵素で得られたモッツァレラチーズは,カードpHが5.50ですでにカルシウムおよびリン含量が減少しており,さらにSDS電気泳動分析からカゼインの部分分解が認められた。動的粘弾性の温度依存性から,カードpH 5.50で混練したヤマブシタケ凝乳粗酵素処理モッツァレラチーズは,キモシン処理よりも柔らかく,高い展延性を有していることが示された。これはヤマブシタケ凝乳粗酵素を使用したモッツァレラチーズの製品特性において優位性を示唆している。</p>
著者
渡辺 純子 福宮 智子 山田 真実子 小松﨑 記妃子 佐藤 陽子 山﨑 あや 福地 本晴美 大﨑 千恵子
出版者
一般社団法人 日本看護管理学会
雑誌
日本看護管理学会誌 (ISSN:13470140)
巻号頁・発行日
vol.23, no.1, pp.82-91, 2019 (Released:2019-12-19)
参考文献数
11

本研究は,臨床教員の教授活動および臨床教員制度導入の成果と課題を明かにすることを目的とした.臨床教員の指導により実習を行った学生56名,臨床教員とともに実習指導をした実習指導者25名,臨床教員が実習指導を行う部署の師長13名の3群に無記名質問紙調査を行った.調査項目は,日本語版Effective Clinical Teaching Behaviors評価スケールを適用した.また,臨床教員制度および臨床教員の教授活動に関する自由記述を求めた.その結果,臨床教員の教授活動については,3群いずれも肯定的に評価をしており,特に学生に対する教育環境の整備を高く評価していた.学生は,実践的な学びや看護の探求心に関連する内容を高く評価する一方で,緊張感を緩和するというニーズが高く,課題のひとつとして示された.実習指導者は,学生の学びの質向上を目的に学内と臨床の架け橋となる存在への期待をもっていた.師長は実習指導者の育成,部署の臨床レベルの向上,新人の適応支援に関する期待が認められた.また,臨床教員制度については,臨床教員の役割の明示や人員配置の問題が見出された.これらのことにより,今後,臨床教員はさらなる臨地実習の充実を図るとともに,卒後教育や臨床の質向上などに対し幅広い役割を果たしていくことや臨床教員活動の可視化が必要であると考えられた.