- 著者
-
與倉 豊
- 出版者
- 経済地理学会
- 雑誌
- 経済地理学年報 (ISSN:00045683)
- 巻号頁・発行日
- vol.60, no.3, pp.187-203, 2014-09-30 (Released:2017-05-19)
九州半導体産業は,経済産業省の産業クラスター計画や文部科学省の知的クラスター創生事業など科学技術振興施策の元で,システムLSIや三次元実装など競争優位を有する技術を順次導入し,大手半導体メーカーの再編や東アジア諸国の技術的キャッチアップなど時代ごとの環境変化に適応してきた.本稿では,九州における半導体産業の高度化を振興する事例として,九州経済調査協会が事業実施の中核主体となる国際会議の開催事業と,ビジネスマッチング事業を取り上げ,半導体関連企業間の多様なネットワークの形成過程について検討した.分析の結果,2001年の初開催以降,国際会議が多様な国から参加者を集め,国際取引を可能とさせる商業の場として機能していること,また既存の人的ネットワークの強化に寄与していることを明らかにした.そして国際会議で構築された人的ネットワークの活用を目的として,2008年より開始されたビジネスマッチング事業では,継続的な情報交換によって相互に他企業を認知するなかで信頼関係が醸成され,九州内外の企業間で新規取引関係が構築されていることを示した.そのような多様な企業間のネットワーク形成において,半導体技術に関して卓越した知識を有するコーディネーターが重要な役割を果たしていることが示唆された.