著者
飯塚 真理 宇井 万津男 伊吹 令人 城下 尚 倉林 良幸 堀越 美枝子
出版者
公益社団法人 日本臨床細胞学会
雑誌
日本臨床細胞学会雑誌 (ISSN:03871193)
巻号頁・発行日
vol.35, no.5, pp.439-445, 1996-09-22 (Released:2011-11-08)
参考文献数
9

今回われわれは, 子宮内膜増殖症のホルモン療法後妊娠し, 分娩後に子宮内膜癌に進行した1症例を経験したので報告する.症例は23歳, 0妊0産.月経不順.1991年5月, 不正性器出血を主訴に来院した.子宮内膜の肥厚がみられたため内膜細胞診と組織診を施行し, 異型増殖症と診断された.未産婦であり, 挙児希望があったため, ダナゾール療法を開始した.3ヵ月後, 内膜組織診で桑実形成性腺腫性増殖症と診断され, 大量黄体ホルモン療法を施行した.その間, 内膜細胞診と組織診を再検したが悪性所見はみられず, 4ヵ月後, ホルモン療法を中止し, 排卵誘発を行った.3ヵ月後に妊娠が成立し, 1993年2月正常分娩となった.1年後, 内膜細胞診と組織診で異型増殖症と診断され, ホルモン療法を再開した.4ヵ月後, 内膜組織診で高分化型腺癌, 間質浸潤陽性と診断されたため, 1994年8月, 準広汎子宮全摘術+両側付属器摘出術+骨盤リンパ節郭清術を施行した.現在まで, 異常なく経過している.
著者
岡村 聡 坂本 泉 金 容義 石塚 治 湯浅 真人 冨士原 敏也 藤岡 換太郎 倉本 能行 前田 仁一郎
出版者
一般社団法人日本鉱物科学会
雑誌
日本鉱物科学会年会講演要旨集
巻号頁・発行日
vol.2007, pp.7, 2007

孀婦岩構造線は,伊豆・小笠原弧を北部と南部に二分する大構造線であり,北北東―南南西方向の走向を示し,その東側斜面に沿って比高最大1500mの急崖が発達し,地殻の深部断面を観察することができる.<Br> 孀婦岩構造線の南東に位置する沢海山は,鮮新世の活動年代を示す火山フロント帯火山であり,島弧玄武岩の化学組成を示す.<Br> 孀婦岩構造線沿いに観察される地殻断面(孀婦地塊)は,後期中新世を示す塊状の溶岩・貫入岩とハイアロクラスタイト及び,それらを供給するフィーダーダイク・溶岩が観察される.孀婦地塊を基盤とする背弧側には中新世~鮮新世に活動した小海丘群が存在する.孀婦地塊と小海丘群の火成岩類は,いずれも背弧海盆玄武岩の特徴を示す点で共通するが,後者はIndian Ocean MORBタイプアセノスフェアの寄与が大きかったことを示唆する.
著者
柏倉 淳一
出版者
公益社団法人 日本薬学会
雑誌
ファルマシア (ISSN:00148601)
巻号頁・発行日
vol.53, no.7, pp.722, 2017 (Released:2017-07-01)
参考文献数
4

炎症性腸疾患(inflammatory bowel diseases:IBD)は腸管に慢性的な炎症および潰瘍を引き起こす疾患の総称であり,クローン病と潰瘍性大腸炎が含まれる.我が国におけるIBDの患者数は約20万人であり,現在も増加傾向にある.IBDの病態は未だ不明な点が多いが,要因として免疫系や腸内細菌叢の構成の異常 (dysbiosis) が関わると考えられる.疫学的見地よりIBDと大腸がんとの関連が示唆されており,IBDの病態を解明することは大腸がんの予防治療を考える上でも重要である.Interleukin(IL)-33はIL-1ファミリーに属するサイトカインで,ネクローシスに伴い細胞外に放出され, 受容体であるST2を介して免疫機能を調節する.IL-33をマウスの腹腔内に投与すると,Th2サイトカイン依存的な杯細胞の過形成やIgE濃度の上昇などが観察されることから,IL-33は2型免疫応答を介してアレルギーや寄生虫感染に関与すると考えられている.IBDの患者では腸管粘膜中のIL-33,ST2および可溶性ST2の増加やこれらの遺伝子多型が疾患の進行に関与することが報告されている.一方,ST2の発現は大腸がんの進行と負の相関を示すことから, IL-33は大腸がんを抑制すると想定され, IL-33がIBDにどのように関わるかについての統一的見解は得られていない.本稿では,KannegantiらによるIL-33を基軸としたIBDの調節機構の解明に関する論文を紹介する.なお,本稿は下記の文献に基づいて,その研究成果を紹介するものである.1) Feagins L. A. et al., Nat. Rev. Gastroenterol. Hepatol., 6, 297–305(2009).2) Kondo Y. et al., Int. Immunol., 20, 791–800(2008).3) Schmitz J. et al., Immunity, 23, 479–490(2005).4) Malik A. et al., J. Clin. Invest., 126, 4469–4481(2016).
著者
伊藤 真琴 三重野 はるひ 藤沼 誉英 大倉 典子 渡辺 洋子
出版者
Japan Society of Kansei Engineering
雑誌
日本感性工学会論文誌 (ISSN:18840833)
巻号頁・発行日
vol.9, no.2, pp.161-170, 2010 (Released:2016-11-30)
参考文献数
16
被引用文献数
1

The main purpose of this paper is a proposal for restoration support system of historical buildings using virtual environments. Trend has developed to restore historical Japanese buildings such as theaters as symbols of town renovation. However, the restoration of such buildings commonly encounters many difficulties such as a lack of documents, and different construction materials and structures between the old era and the present. Virtual images of a restored building should be a great help in evaluating and discussing various restoration plans. We have constructed a restoration support system for historical buildings, using virtual environments to help the design plan for indoor restoration. CAD data based on actual measurements of an old theater, Tsurukawaza in Kawagoe, were employed to construct the 3D model for the system, which ensures reproduction of the interior details of the theater. The experimental results show the effectiveness of the support system.
著者
川上 純子 三上 憲子 飛田 美穂 倉田 康久 兵藤 透
出版者
相模女子大学
雑誌
相模女子大学紀要. B, 自然系 (ISSN:09167676)
巻号頁・発行日
vol.76, pp.1-6, 2012

Objective : To investigate the limit of validity of assessment of nutritional risk by using serum albumin values, which is handily used for assessing nutrition risk of patients, and explore feasible tools for high risk patients, by comparing index of serum albumin values and other assessment tools : Mini Nutritional Assessment-Short Form (MNA-SF) as a well validated nutrition screening and assessment tool, Barthel Index (BI) as an index of activities of daily living, Karnofsky Performance Scale (KPS) as a tool for assessing patients functional impairment, and Geriatric Nutritional risk Index (GNRI) as based on serum albumin values and the discrepancy between real and ideal weight for the elderly. Subjects : Seventy outpatients at a dialysis institution in Kanagawa prefecture (40 male, 30 female) ; mean age 68.0 ± 10.4 (male 67.9 ± 10.1, female 68.4 ± 11.0). Methods : 1. Examined correlation among outcomes of MNA-SF, BI, KPS, GNRI tools, and also between these outcomes and serum albumin values as an index of Objective Dietary Assessment. 2. Examined outcomes (scores) of MNA-SF methods and GNRI methods with regards to patients of serum albumin values under 3.4 g/dl. Results : (N=70) Correlation between assessment tools; (1) between MNA-SF scores and KPS scores, r=0.4952, p<0.001, (2) between serum albumin values and KPS scores, r=0.3693, p<0.01, (3) between serum albumin values and BI scores, r=0.0819, p=0.5. For patients with albumin values under 3.4 g/dl ; four male : mean albumin value, 3.1± 0.5 g/dl, mean GNRI score, 81.4 ± 6.9 (classified as major risk), five female : mean albumin value, 3.2 ± 0.2 g/dl, mean GNRI score, 89.7 ± 8.2 (classified as moderate risk). Discussion and Conclusion : Based on MNA-SF, which is a well validated nutrition screening and assessment tool, its scores had the higher correlation with KPS scores than the other tool's scores, while weak correlation was found between serum albumin values and KPS scores. It was also found that there was a possibility that BI was not related with serum albumin values. Serum albumin value may be a feasible screening tool of nutritional risk of dialysis outpatients, as it may reflect disease prognosis and severity. However, it alone may not reflect ADL of these patients. Therefore, among these methods, MNA-SF method may have possibility of adequately assessing patients' overall physical condition, while BI method was suggested that it may have possibility for assessing specifically patients' ADL.
著者
山本 景子 田中 厳貴 倉本 到 辻野 嘉宏
出版者
Japan Society of Kansei Engineering
雑誌
日本感性工学会論文誌 (ISSN:18840833)
巻号頁・発行日
vol.17, no.1, pp.119-126, 2017 (Released:2018-02-28)
参考文献数
14
被引用文献数
1

Choreography is one of the important parameters in dance performance. To make dance cool, it is necessary to design the cool choreography. However, beginners can hardly design choreography because they do not know how to judge the choreography good or bad. In this paper, we propose a system which automatically estimates the coolness of choreography for Lock dance and supports for the beginners to design choreography more sophisticated. To realize the proposed system, we focus on the suitability between the dynamics of dance move and music as a parameter of the coolness. We propose the estimation formula of the coolness based on the suitability, and evaluate it experimentally. As the result, it is revealed that the higher the suitability becomes, the higher the coolness becomes especially for the experienced participants feel on the experimented environment. Consequently, it is expected that the proposed system enables beginners to design cool choreography.
著者
高倉 耕一
出版者
日本生態学会
雑誌
日本生態学会大会講演要旨集
巻号頁・発行日
vol.52, pp.697, 2005

外来生物などにおいて、ある種では新規生息地への進入直後に爆発的に分布域を拡大し、他の種では分布域の拡大が比較的緩やかであるという現象はしばしば観察されている。しかし、その違いがどのような要因に差によるものなのか必ずしも明らかでなかった。本研究では近年日本に侵入し広範囲に分布するにいたったハブタエモノアラガイ <i>Lymnaea columella</i> と数種の近縁種を材料として、大阪とその近郊における分布の現状を明らかにし、その分布域拡大の要因について調べた。その結果、大阪および京都南部の平野では大部分の潜在的生息地に外来種ハブタエが生息していた。室内実験から、ハブタエは在来種のモノアラガイ <i>L. auricularia japonica</i>とともに飼育した場合に死亡率が高く、産卵数も少なかった。また、2種間には配偶攪乱は検出されなかった。一方で、ハブタエは同種個体間でも求愛および行動が観察されず、自己交配による近交弱勢もほとんどなかった。これらの結果をふまえ、大きな空間スケールでのメタ個体群の挙動を予測するシミュレーションモデルを構築し解析を行った結果、分断化された小パッチからなる生息域においては、ハブタエのように近交弱勢が存在しない場合には速やかに分布域を拡大したが、他種のように近交弱勢が存在する場合にはその速度はゆるやかであった。以上から、大阪・京都南部におけるハブタエの蔓延は、生息地の分断化と近交弱勢の低下が主要な要因となってもたらされた現象であると推測された。
著者
道津 光生 野村 浩貴 太田 雅隆 岩倉 祐二
出版者
日本水産學會
雑誌
日本水産学会誌 (ISSN:00215392)
巻号頁・発行日
vol.65, no.2, pp.216-222, 1999-03-15
参考文献数
24
被引用文献数
5 11

北海道南西部の盃沿岸は海底地形が複雑で, マウンド状に盛り上がった場所にホソメコンブ群落が形成されていた。盃沿岸の水温・塩分, 栄養塩, 光, 波浪の季節変化を近傍の磯焼け域である泊沿岸と比較した。その結果, 波浪のみに両沿岸に差が認められた。盃は泊に比べて波浪が強く, 特に冬季に強くなることが明らかになった。盃のマウンド上のキタムラサキウニの密度は秋&acd;冬にかけて波浪が強くなるとともに減少し, 冬&acd;春にはほとんど生息しない状態となった。一方, マウンド周辺のコンブ群落外のウニの密度は年間を通してほぼ一定の値で推移した。波浪の強さの変化に関連したウニの季節的移動により, 冬&acd;春にかけてマウンド上のウニの密度が減少し, コンブの新規加入群に対するウニの摂食圧が減少することによってコンブが繁殖するのではないかと推定した。
著者
荻原 貴之 岩倉 成志 野中 康弘 伊東 祐一郎
出版者
公益社団法人 土木学会
雑誌
土木学会論文集D3(土木計画学)
巻号頁・発行日
vol.70, no.5, pp.I_589-I_595, 2014

羽田空港リムジンバスは,復路(空港発)に対して往路(空港着)の利用割合が低い傾向にある.これは乗換えがなく着席して空港へ向かえる快適性を有する一方で,道路交通状況による所要時間変動が利用者へ不安を与えていることが一因と考える.<br>本研究では,この現状を踏まえ,羽田空港アクセスを対象に旅行時間信頼性が利用者の交通機関選択行動に与える影響を把握する.具体的には,リムジンバスの年間の実績所要時間データとアンケート調査から得た利用者行動データをもとに,平均分散アプローチによる交通機関選択モデルを構築し,旅行時間信頼性の評価を行うと共に各種提案されている旅行時間信頼性指標と利用者の選択結果との整合を考察する.結果として,標準偏差,BT,TT80-TT20,TT70-TT30等の指標が利用者評価と整合性が高いことが分かった.
著者
髙倉 直
出版者
養賢堂
雑誌
農業および園芸 (ISSN:03695247)
巻号頁・発行日
vol.89, no.5, pp.551-555, 2014-05

最近,世界的に都市農業が話題になり,連日のように奇抜な温室や栽培システムの紹介が園芸の電子新聞に登場している(Hortdaily 2014)。かつて,ヒートアイランド現象が顕在化し,その対策の一つとして屋上緑化が話題となり,地方都市単位での助成がかなり幅広く行われるようになり,さらに屋上緑化だけでなく,壁面緑化もとりあげられるようになったし,我が国では補助対象にはならないものの,屋上園芸がそれなりに普及しつつあるが,海外の様子は少し異なる。その大きな理由はすでに本誌でとりあげた垂直農場(Vertical Farming)という考え方の提案があったからであろう(高倉 2013)。都市農業の重要性は言うまでもない。このまま放置すると,都市の緑はますます減少し,もともと東京都など公園面積の少ない我が国の都市域では,ヒートアイランド現象も悪化することはまちがいない。さらに都市農業として食料を生産することは多くの利点をもつ。すなわち,生産地と消費地の近さからフードマイルの短縮があり,省エネルギーや汚染ガスの減少,都市から出る大量の食物残渣の堆肥化,雨水の灌水としての利用,さらに一般的な環境問題や心理的効果など,今更言うまでもないことが多い。しかし,すでに筆者が警鐘を鳴らしていたにもかかわらず,この垂直農場という概念だけで,土地生産性の高さだけを念頭に,まったく具体的な例証もないまま,安易にとびついて,1年でハイテク垂直農場の最初の倒産として大きく報じられる事例まで出てきた。天空農場(skyfarm)はカナダのウオータロー大学建築学科の大学院生が提唱したもので,トロントの約60階のビルの中で,太陽光を取り込み,バイオガスを発生させエネルギーを自給するという構想で植物だけでなく動物も飼育する内容である。このように,垂直農場だけでなく,天空(sky)や高層ビル(skycraper)農場という,驚くような構想が乱れ飛んでいる状況である。ここでは主として海外の事例を紹介しながら,都市農業での栽培環境とくに光環境の重要性についてまとめてみたい。