著者
稲葉 洋平 大久保 忠利 杉田 和俊 内山 茂久 緒方 裕光 欅田 尚樹
出版者
一般社団法人日本衛生学会
雑誌
日本衛生学雑誌 (ISSN:00215082)
巻号頁・発行日
vol.69, no.1, pp.31-38, 2014 (Released:2014-01-29)
参考文献数
25
被引用文献数
1 1

Objective: To determine constituents of fillers and mainstream smoke from Neo Cedar. Methods: Neo Cedar is a second-class over-the-counter (OTC) drug and similar to cigarettes in a number of ways. In particular, the design and usage are very similar to those of cigarettes. For the fillers of the drug, the levels of nicotine, tobacco-specific nitrosamines (TSNA), and heavy metals, and mutagenicity were determined using the methods for cigarette products. For the mainstream smoke, the levels of tar, nicotine, carbon monoxide (CO), TSNA, polycyclic aromatic hydrocarbons (PAH), and carbonyl compounds were also determined using the methods for cigarettes. The mainstream smoke from the drug were collected with a smoking machine using two smoking protocols (ISO and Health Canada Intense methods). Results: The nicotine and total TSNA levels in the fillers of the drug averaged 2.86 mg/g and 185 ng/g, respectively. The nine species of heavy metals were also detected in the fillers of the drug. The levels of nicotine, tar, CO, TSNA, PAH, and carbonyl compounds of mainstream smoke from the drug were higher when determined using the HCI regime than when using the ISO regime. The mutagenicity of the mainstream smoke determined using the HCI regime was also higher than that determined using the ISO regime. Conclusion: In this study, all constituents of Neo Cedar were determined by methods for cigarette products. The drug had a ventilation hole on its filter. Thus, its constituents are different from those determined by the smoking protocols. Neo Cedar users should be careful of higher exposure to the hazardous gases owing to smoking patterns.
著者
戸次 加奈江 稲葉 洋平 内山 茂久 欅田 尚樹
出版者
The University of Occupational and Environmental Health, Japan
雑誌
Journal of UOEH (ISSN:0387821X)
巻号頁・発行日
vol.39, no.3, pp.201-207, 2017-09-01 (Released:2017-09-14)
参考文献数
17
被引用文献数
72 154

受動喫煙による健康影響が懸念される中,たばこ規制枠組条約(FCTC)締約国として我が国でもその対策が推進され,現在,2020年東京オリンピック・パラリンピックの開催に向けて,受動喫煙防止のための効果的な法の整備が国際オリンピック委員会(IOC)と世界保健機関(WHO)の要請のもと進められている.一方,Philip Morrisは新型タバコとして,加熱式タバコiQOSの販売を開始した.iQOSは,副流煙が低減化された新型タバコとして販売されているものの,受動喫煙や毒性に関しては限られた情報しかない.本研究では,科学的な観点からiQOSを評価するため,タバコ葉およびタバコ主流煙中の主成分であるタール,ニコチン,一酸化炭素およびタバコ特異的ニトロソアミン(TSNAs)の濃度レベルを従来の燃焼式タバコ(標準タバコ)と比較した.iQOS専用のタバコ葉および主流煙からは,標準タバコと同程度のニコチンが検出されたのに対して,TSNAsは,タバコ葉および主流煙のいずれも標準タバコの5分の1程度にまで濃度が低減され,燃焼マーカーとしても知られる一酸化炭素(CO)は,標準タバコの100分の1程度の濃度であった.しかしながら,この様な有害成分は完全に除去されているわけではなく,少なからず主流煙に含まれていた.今後,iQOSの使用規制には,有害成分の情報に加え,受動喫煙や毒性などの情報から,総合的に判断していく必要がある.
著者
内山 茂 田中 栄爾 田中 千尋 黒木 秀一 川畑 喜照 盛口 満 金城 典子
出版者
日本菌学会
雑誌
日本菌学会大会講演要旨集 日本菌学会50周年記念大会
巻号頁・発行日
pp.18, 2006 (Released:2007-06-05)

1999年から2005年にかけて,宮崎県内及び鹿児島県内の数箇所で,森林生のエサキクチキゴキブリSalganea esakiiに生じた冬虫夏草(仮称ヒュウガゴキブリタケ)を採集して形態学的観察及び分子系統学的検討を行った. 本種の子実体は宿主の腹部から1-2本生じ、根棒状から太針状、長さ11-70mm、太さ1.3-5mm、全体が淡褐色から褐色.先端はやや尖り,ビロード状の不捻部となる.子のう殻は卵形、325-370×100-140μm、子実体の中間部では埋生し,明褐色の捻果部を形成する.子のうは,長さ150-200×10-11μm.子のう胞子は,細長い紡錘状,72-100×2.8-3.6μm, 8細胞,二次胞子に分裂しない。不稔部表面にHirsutella様のアナモルフを疎らに形成する。分生子はレンズ状,淡褐色,7-7.2×5μm.分生子形成細胞はペン先状,先端は細長く尖り,4-6×1-1.5μm,基部で折れ曲がる. 本種の子実体及び子のう胞子を発芽させて得られた培養株を用いて,rDNAのITS領域と26Sサブユニット D1/D2領域の塩基配列に基づく分子系統学的解析の結果,本種は独自のクラスターを形成した. ゴキブリ目昆虫を宿主とするCordeceps属菌としてはセイロン島(スリランカ)で採集された標本に基づいてPetchがCordyceps blattaeを1924年に報告している.両者は子のう胞子の形態から,共にOphiocordyceps亜属に属するが,本種はC.blattaeと比べると子実体,子のう殻,子のう,子のう胞子などの大きさが明らかに異なるため,新種とするのが妥当と考えている。
著者
大久保 忠利 稲葉 洋平 原 泰子 内山 茂久 欅田 尚樹
出版者
日本衛生学会
雑誌
日本衛生学雑誌 (ISSN:00215082)
巻号頁・発行日
vol.71, no.1, pp.84-90, 2016 (Released:2016-01-30)
参考文献数
17
被引用文献数
2

Objective: Some Japanese smokers imported Japanese cigarette brands from other Asian countries for personal use because of the increase in tobacco tax in 2010, which meant that privately importing the cigarettes was cheaper than purchasing them in Japan. We assumed that the health hazards of locally made cigarettes were different from those of privately imported cigarettes, despite the brands being the same. In this study, we carried out a comparative toxicological analysis of domestic and privately imported cigarettes. Methods: Privately imported cigarettes of five brands and domestic cigarettes of the brand named “MILD SEVEN ORIGINAL” were selected for the study. The level of polycyclic aromatic hydrocarbons (PAHs) in mainstream smoke was determined by high-performance liquid chromatography using fluorescence detection. The mutagenicity of mainstream smoke was assessed using the Salmonella typhimurium strains TA100, TA98, and YG1024 with the metabolic activation system (S9mix) by preincubation assay. The levels of heavy metals in cigarette fillers were determined by inductively coupled plasma-mass spectrometry. Results: The level of PAH in the mainstream smoke from the privately imported cigarettes was higher than that in the smoke from the domestic cigarettes. However, the mutagenic activity of the mainstream smoke from the privately imported cigarettes was equivalent to that from the domestic cigarettes. The levels of nickel and cadmium in the fillers of the privately imported cigarettes were higher than those in the domestic cigarettes. Conclusion: The levels of constituents in the fillers and mainstream smoke from the privately imported cigarettes were higher than those in the fillers and mainstream smoke from the domestic cigarettes. The majority of Japanese smokers are unaware of these findings. The guidelines regulating tobacco products recommend that articles 9 and 10 of the World Health Organization (WHO) Framework Convention on Tobacco Control should be fully implemented in Japan.
著者
杉田 和俊 松本 真理子 稲葉 洋平 遠藤 治 内山 茂久 欅田 尚樹
出版者
公益社団法人 日本分析化学会
雑誌
分析化学 (ISSN:05251931)
巻号頁・発行日
vol.62, no.3, pp.253-257, 2013-03-05 (Released:2013-04-02)
参考文献数
11
被引用文献数
1

This research examined gas chromatograph/mass spectrometer (GC/MS) measurements for nicotine and 4-ethenylpyridine, which are passive smoking markers of environmental tobacco smoke. Since the object ingredient was a polar compound, a comparison examination was performed using both a non-polar column (DB-5) and a mid-polar column (DB-17) for analysis. Of the two columns, as a result of comparing the peak shape, sensitivity, and linearity, it was found that DB-17 is suitable for measuring nicotine and 4-ethenylpyridine, which is a substitute compound of 3-ethenylpyridine. When the nicotine concentration determined by the GC/MS method was compared with that of the GC/FID method, which was the regulating method, the concentration as determined by the GC/MS method was about 30% lower than that of the GC/FID method. It was suggested that measurements by GC/FID include other organic components. When tobacco smoke (the gaseous and particle components of mainstream smoke and sidestream smoke) was measured using this GC/MS condition, nicotine was detected in all samples, except for the gaseous component of the mainstream smoke, and 3-ethenylpyridine was only detected in the gaseous component of sidestream smoke.
著者
戸次 加奈江 稲葉 洋平 内山 茂久 欅田 尚樹
出版者
学校法人 産業医科大学
雑誌
Journal of UOEH = 産業医科大学雑誌 (ISSN:0387821X)
巻号頁・発行日
vol.39, no.3, pp.201-207, 2017
被引用文献数
154

受動喫煙による健康影響が懸念される中,たばこ規制枠組条約(FCTC)締約国として我が国でもその対策が推進され,現在,2020年東京オリンピック・パラリンピックの開催に向けて,受動喫煙防止のための効果的な法の整備が国際オリンピック委員会(IOC)と世界保健機関(WHO)の要請のもと進められている.一方,Philip Morrisは新型タバコとして,加熱式タバコiQOSの販売を開始した.iQOSは,副流煙が低減化された新型タバコとして販売されているものの,受動喫煙や毒性に関しては限られた情報しかない.本研究では,科学的な観点からiQOSを評価するため,タバコ葉およびタバコ主流煙中の主成分であるタール,ニコチン,一酸化炭素およびタバコ特異的ニトロソアミン(TSNAs)の濃度レベルを従来の燃焼式タバコ(標準タバコ)と比較した.iQOS専用のタバコ葉および主流煙からは,標準タバコと同程度のニコチンが検出されたのに対して,TSNAsは,タバコ葉および主流煙のいずれも標準タバコの5分の1程度にまで濃度が低減され,燃焼マーカーとしても知られる一酸化炭素(CO)は,標準タバコの100分の1程度の濃度であった.しかしながら,この様な有害成分は完全に除去されているわけではなく,少なからず主流煙に含まれていた.今後,iQOSの使用規制には,有害成分の情報に加え,受動喫煙や毒性などの情報から,総合的に判断していく必要がある.
著者
欅田 尚樹 内山 茂久 戸次 加奈江 稲葉 洋平
出版者
国立保健医療科学院
雑誌
保健医療科学 (ISSN:13476459)
巻号頁・発行日
vol.64, pp.501-510, 2015-10

国民健康栄養調査によると日本の喫煙率は徐々に低下傾向を示してきた.ここ数年は低下傾向が抑制され定常状態を示している.低下してきた要因として,受動喫煙対策を含むたばこ規制と,消費者の認識を高めることにつながるたばこの健康影響に関する知識の国民への普及があると考えられる.喫煙率の低下と連動して,禁煙意思を有する喫煙者の割合は徐々に増加していた.ところが直近の調査では,禁煙意思を有する喫煙者の割合が急激に低下した.この減少の要因の一つとして,各種新規たばこおよび関連商品の販売が関係していると思われる.この状況が継続すると,2022年に成人喫煙率を12%とする目標達成は困難なものになると思われる.スヌースは,たばこ葉が詰められたポーションと呼ばれる小袋を唇と歯肉の間にはさみ使用する無煙たばこである.EU諸国ではスヌースの販売が禁止されているが,スウェーデンでは早くから販売がされていた歴史的経緯から特例として販売されている.2013年には日本たばこ産業株式会社が国内でスヌースの販売を開始した.スヌースは,依存性を有するニコチンや,発がん性物質,その他の有害物質を含んでいる.スヌースは,紙巻きたばこのより安全な代替物ではない.無煙たばこは,国際がん研究機関IARCによる発がん性分類において,グループ 1 ;ヒトに対して発がん性があると分類されている.近年,電子タバコも広く普及しつつ有る.しかしながら,我々は電子タバコの蒸気に,ホルムアルデヒド,アセトアルデヒド,アセトン,アクロレイン,グリオキサール,メチルグリオキサールなど種々のカルボニル類が含まれていることを報告した.いくつかの銘柄の電子タバコからは,従来の紙巻きたばこの主流煙に含まれるより高濃度のカルボニル類の発生も観察された.また,市場での規制が無い広告は以前のたばこの広告に似ている状況にある.たばこ対策においてたばこ製品規制は必須の要件である.WHO世界保健機関のたばこの製品規制に関する科学諮問グループは,WHOたばこ規制枠組み条約FCTC第 9 条,10条にそった電子タバコや無煙たばこの規制について言及している.公衆を保護し公衆衛生を推進していくために,政府機関の監督の下で,これらのたばこ製品および関連製品のデザイン,内容物と排出物の規制の実行が求められる.電子タバコを含む新規たばこ関連製品は,決して無害あるいは害が少ない訳ではなく,公衆衛生上の潜在的な影響は明確ではないので,これらに対する規制は,たばこ規制政策の枠組みに則って実施されるべきである.新規たばこ関連製品の市場における細心の注意と監視が必要である.
著者
稲葉 洋平 内山 茂久 戸次 加奈江 牛山 明
雑誌
日本薬学会第141年会(広島)
巻号頁・発行日
2021-02-01

【目的】リトルシガーは葉巻であるが、その外観、使用法は紙巻たばことほぼ変わらないたばこ製品である。リトルシガーは、2019年から市場に多く投入されている。この一因として、シガー(葉巻)は、紙巻たばこよりもたばこ税が低く、20本入りの1箱の価格が400円程度となっている。紙巻たばこが1箱500円程度であることを考えると安価な紙巻たばこ製品と考えられる。現在、国内で販売されているリトルシガーの主流煙に含まれる化学物質量は、公表されていない。そこで、本研究では、リトルシガー主流煙のニコチン、一酸化炭素、タール、たばこ特異的ニトロソアミン(TSNAs)の分析を目的とした。【方法】測定対象のたばこ製品は、echoとわかばの紙巻たばこ、リトルシガーとした。さらに数銘柄のリトルシガーを対象とした。主流煙捕集の喫煙法は、紙巻たばこ外箱表示に採用されているISO法とヒトの喫煙行動に近いHCI法の2種類を採用した。リトルシガーと紙巻たばこの主流煙は、自動喫煙装置に設置したガラス繊維フィルターに捕集し、振とう抽出後、GC/FIDへ供しニコチンの分析を行った。一酸化炭素、TSNAsに関してもWHO TobLabNetが定めた標準作業手順書に基づいて分析を行った。【結果及び考察】ISO法で捕集した主流煙のニコチン量(mg/cigarette)は、紙巻たばこのechoとわかばが0.96と1.33となり、リトルシガーのechoとわかばが1.08と1.53となった。リトルシガーで上昇しているのが一酸化炭素(mg/cigarette)で、echoが13.2から18.3、わかばが16.4から24.5へ上昇していた。一方で、たばこ特異的ニトロソアミン(TSNAs)は低減されていた。リトルシガーの喫煙者は、紙巻たばこと同様の喫煙行動となると予想される。ヒトの喫煙行動に近いHCI法で捕集した主流煙の化学物質量は、ISO法より高くなることも確認された。リトルシガーが安価なたばこ製品としての定着によって、たばこ対策が後退することが懸念される。また、リトルシガーはタール量も高いことから、燃焼によって発生する多環芳香族炭化水素、カルボニル類、揮発性有機化合物の分析を継続的に進めていく計画である。
著者
内山 茂久
出版者
公益社団法人 日本薬学会
雑誌
ファルマシア (ISSN:00148601)
巻号頁・発行日
vol.56, no.8, pp.729-732, 2020 (Released:2020-08-01)
参考文献数
7

近年,紙巻タバコの有害性が問題となり,電子タバコや加熱式タバコなどの非燃焼式タバコが普及している,しかし,最近,米国で電子タバコの喫煙による肺障害,さらに関連する死者も報告されている.現在,肺疾患の原因となる化学物質は特定されていないが,非燃焼式タバコから多くのカルボニル化合物やオキシド類が検出されている.また,主流煙は2μm以下の微小粒子が大半を占め,直接肺胞に達することから健康影響が懸念される.
著者
戸次 加奈江 稲葉 洋平 内山 茂久 欅田 尚樹
出版者
国立保健医療科学院
雑誌
保健医療科学 = Journal of the National Institute of Public Health (ISSN:13476459)
巻号頁・発行日
vol.64, no.5, pp.460-468, 2015-10

2005年,世界保健機関(WHO)はたばこの規制に関する世界保健機関枠組条約(WHO Framework Convention on Tobacco Control; WHO FCTC)を発効し,本条約により締約国は,たばこ消費の削減に向けた広告・販売への規制や密輸対策をはじめ,たばこによる健康被害防止のためのヘルスコミュニケーションの実施が要求されている.「第11条:たばこ製品の包装及びラベル」では,締約国に対して,喫煙を主な要因とする疾病の警告表示の義務付けや,各国でのたばこ政策の実施へ向けた国内法制定のための実践的な支援対策としてMPOWER政策が提示されている.こうしたFCTCの発効により,各国でのたばこ対策は飛躍的に進められ,2010年には,画像警告ラベルの表示を実施する国が34ヶ国であったのに対し,2015年には77 ヶ国までにも増加し,その他,禁煙者の増加を目的に実施される,包装上に禁煙電話相談サービス(クイットライン)の連絡先を表示する対策や,たばこ製品特有の色使い・画像・マークなどの使用が禁じられた「プレーンパッケージ」の導入により,オーストラリアでは喫煙率が2010年から2013年の間に15.1%から12.8%に減少するなど,たばこ対策の実施による着実な効果が伺える.一方,日本国内の喫煙率は,今現在も他の先進国と比較して非常に高い水準にあり,喫煙による有害性が社会的にも広く認識されているアメリカやカナダ等の先進国と比較すると大きな差が生じている.また,日本国内では,FCTCに対応すべく「たばこ事業法施行規則」による警告表示,規制が定められているものの,それらはFCTCで求められる最低限の条件を満たすのみである.この様に,他国と比べてもFTCT第11条に関連した日本国内のたばこ対策は大きな遅れを取っている状況にある.これらのことから,今後,わが国のFCTCに基づいたたばこ対策による喫煙率低下へ向けた効果,また社会的影響等について国際的なたばこ対策の動向を踏まえた総合的な見直しを行い,将来的なたばこ対策全体の方向性を示す必要がある.
著者
稲葉 洋平 大久保 忠利 内山 茂久 欅田 尚樹
出版者
一般社団法人日本衛生学会
雑誌
日本衛生学雑誌 (ISSN:00215082)
巻号頁・発行日
vol.68, no.1, pp.46-52, 2013 (Released:2013-01-25)
参考文献数
21
被引用文献数
1 3

Objective: To measure the nicotine and tobacco-specific nitrosamine (TSNA) contents in whole tobacco from a variety of Japanese domestic cigarette brands and to determine mutagencity. Methods: The test cigarettes were the top ten best selling cigarette brands in Japan in 2006. The nicotine content in whole tobacco was measured by a modified version of the CORESTA Recommended method. The level of TSNA was measured by a modified version of the Health Canada method. Mutagenicity was assessed using the Salmonella typhimurium strains TA100, TA98 and YG1024 with the metabolic activation system (S9mix) by preincubation assays. Results: The nicotine content in the test cigarettes averaged 15.7±1.2 mg/g, and was in the range between 13.7 and 17.2 mg/g. The level of TSNA averaged 1,750 ng/g, and was in the range between 931 and 2,490 ng/g. Mutagenicity was pseudopositive in several samples of the YG1024 tester strain with and without S9mix. Conclusion: The cigarettes brands were categorized into four groups (Ultra-low, Low, Medium, and High) based on the nominal nicotine yield figures printed on the cigarette packets. The nicotine content in whole tobacco of the High group was the highest. However, the level of TSNA of the high group was the lowest. The analyses of hazardous chemical compounds in whole tobacco can contribute to the reduction and regulation of the toxicity of tobacco products.
著者
稲葉 洋平 内山 茂久 戸次 加奈江 欅田 尚樹
出版者
国立保健医療科学院
雑誌
保健医療科学 (ISSN:13476459)
巻号頁・発行日
vol.64, pp.448-459, 2015-10

我が国は「たばこ規制枠組み条約(FCTC)」を批准し,「受動喫煙」「禁煙支援」などのたばこ対策は推進しているものの,「たばこ製品の規制」に関するたばこ対策は実行されていない.さらにここ数年間でメンソールカプセルを封入した紙巻きたばこ,無煙たばこ,電子器具を使用する「Ploom」,「iQOS」などの新規たばこ製品さらには電子タバコが販売されるなど,喫煙者を取り巻く環境が大きく変化しており,最近の調査では,禁煙の意思の低下が報告されるようになった.FCTC第 9 ,10条「たばこ製品の規制・情報開示」の実行は,たばこ製品の「毒性」,「依存性」,「魅惑性」を低下させ,喫煙者がたばこ製品の有害性を知る機会を増加させ,最終的に禁煙を選択することへの行動変容が期待される.さらに,たばこ対策を推進するための科学的根拠の蓄積がされる.これまで我々は,これを目的としてWHOたばこ研究室ネットワークとたばこ製品評価の標準化を行い,国産たばこ銘柄の各種有害化学物質の分析,日本人喫煙者の喫煙行動調査を実施してきた.その結果,我が国のたばこ製品は,海外産たばこ銘柄と比較すると有害化学物質の低減の余地があり,依存性,魅惑性の低下が求められた.日本人喫煙者は低タール・低ニコチンたばこの喫煙に伴う代償性補償喫煙行動によりたばこ煙曝露量が上昇することが確認された.今後,FCTC第9,10条に基づいたたばこ製品の調査を継続しつつも,早急なたばこ製品規制が求められる.
著者
吉田 勤 内山 茂久 武口 裕 宮本 啓二 宮田 淳 戸次 加奈江 稲葉 洋平 中込 秀樹 欅田 尚樹
出版者
公益社団法人 日本分析化学会
雑誌
分析化学 (ISSN:05251931)
巻号頁・発行日
vol.64, no.1, pp.55-63, 2015-01-05 (Released:2015-01-31)
参考文献数
14

Gaseous chemical compounds such as carbonyls, volatile organic compounds (VOC), acid gases, basic gases, and ozone were measured in indoor and outdoor air of 40 houses throughout Sapporo city in the winter (January to March, 2012 and 2013) and summer (July to September, 2012) using four kinds of diffusive samplers. Almost all compounds in indoor air were present at higher levels in the summer than in the winter. The indoor concentrations of acetaldehyde and p-dichlorobenzene exceeded the Health, Labour and Welfare, Japan guideline in three and two houses, respectively. The mean concentrations of formaldehyde were 27 μg m−3 in the summer and 17 μg m−3 in the winter, and showed that the summer concentration was 1.6-fold higher than that in the winter. Nitrogen dioxide was present in extremely high concentrations in the winter, and it was suggested that the sources of nitrogen dioxide in indoor air are kerosene heaters, unvented gas stoves and heaters. Formic acid was generated by combustion because the nitrogen dioxide concentration in indoor air was well correlated with the formic acid concentration (correlation coefficient = 0.947). In outdoor air, the negative correlation between nitrogen dioxide and ozone was observed during the winter. It was suggested that the reaction of nitric oxide and ozone may influence the formation of nitrogen dioxide.
著者
稲葉 洋平 内山 茂久 欅田 尚樹
出版者
日本衛生学会
雑誌
日本衛生学雑誌 (ISSN:00215082)
巻号頁・発行日
vol.70, no.1, pp.15-23, 2015 (Released:2015-01-29)
参考文献数
39
被引用文献数
2

In Japan, ultralow-nicotine cigarette brands with ventilation holes on the cigarette filters have been widely marketed to smokers. The use of these cigarette brands leads to compensation smoking. Menthol cigarette brands that have a cooling and numbing effect are also sold. In 2013, smokeless tobacco products similar to the Swedish snus, which is banned for sale in the European Union except in Sweden, were released in Japanese markets. These tobacco products have “toxicity,” have a “ventilation filter,” are “attractive,” and promote “dependence.” Tobacco smoke and smokeless tobacco are classified into “Group 1: Carcinogenic to humans” by the International Agency for Research on Cancer (IARC). The purpose of Articles 9 and 10 of the World Health Organization Framework Convention on Tobacco Control (WHO FCTC) is to regulate the contents of tobacco products as well as to regulate tobacco product disclosures. The implementation of some other articles has gradually advanced in Japan. However, that of Articles 9 and 10 is late. Japanese governmental authorities are being urged to immediately implement Articles 9 and 10.
著者
太田 和司 内山 茂久 稲葉 洋平 中込 秀樹 欅田 尚樹
出版者
公益社団法人 日本分析化学会
雑誌
分析化学 (ISSN:05251931)
巻号頁・発行日
vol.60, no.10, pp.791-797, 2011 (Released:2011-11-28)
参考文献数
11
被引用文献数
24 49

電子タバコから発生する煙の成分をハイドロキノン(HQ)と2,4-ジニトロフェニルヒドラジン(DNPH)を用いた二連カートリッジ法(HQ-DNPH法)で分析し,発生する化学物質,生成メカニズム等の検討を行った.市販されている電子タバコの煙を分析した結果,ホルムアルデヒド,アセトアルデヒド,アクロレイン,グリオキサール,メチルグリオキサール等,多くの有害なカルボニル化合物が高濃度で検出された.電子タバコ専用カートリッジに含まれる液体を分析した結果,主成分はグリセロールやグリコール類であった.そこで,様々なグリコール類をコイル状のニクロム線に塗布した模擬電子タバコを作製し,一定の電圧を印加し,そこから発生する気体を分析した.その結果,3 V以上の電圧を印加すると,エチレングリコールからグリオキサールが,プロピレングリコールからメチルグリオキサールが,グリセロールからアクロレインが発生することが明らかになった.