著者
加藤 弘孝
出版者
佛教大学大学院
雑誌
佛教大学大学院紀要 文学研究科篇 (ISSN:18833985)
巻号頁・発行日
no.39, pp.1-16, 2011-03

唐代中期の飛錫が著した『念仏三昧宝王論』からは、浄土教、天台宗、禅宗、三階教などの諸思想が重層的に絡み合う特異な思考を見てとることができる。しかし飛錫が主題とした思想、教学は、必ずしも解明されておらず、先だって『宝王論』に見られる諸思想が互いにどのような意図をもって関連付けられたか考察する必要がある。その際、同時代の諸宗及び思想家達の動向を窺うことが最も重要になってくる訳であるが、飛錫の『宝王論』の撰述年代はおろか活動年代に関しても、未だに定説を見ないのが現状である。そこで本稿では『宝王論』の撰述年代及び飛錫の事跡に関する記述を整理し考察していく。飛錫不空『念仏三昧宝王論』安史の乱
著者
柊 幸伸 加藤 宗規
出版者
公益社団法人 日本理学療法士協会
雑誌
理学療法学Supplement Vol.43 Suppl. No.2 (第51回日本理学療法学術大会 抄録集)
巻号頁・発行日
pp.0572, 2016 (Released:2016-04-28)

【はじめに,目的】膝関節屈曲伸展に伴う膝関節の回旋運動は終末強制回旋運動(SHM)として知られている。SHMは水平面上の小さな動きであり,先行研究には,X線,MRI,CT等を用いた詳細な計測研究もあるが,その対象は屍体下肢標本や模型モデル,動作の一部を再現した生体の静止姿勢であることが多い。動作中の膝関節の回旋運動を計測した先行研究には,3次元動作解析装置や,X線による2方向イメージマッチング法を利用したもの等がある。しかし,これら先行研究でも,下肢に荷重のかからない開放性運動連鎖(OKC)の環境での計測がほとんどであり,下肢に荷重がかかり末端が固定された閉鎖性運動連鎖(CKC)の環境で膝関節の回旋を計測したものは少ない。動作時のSHMの存在の有無とその程度は,膝関節軟骨への負荷や前十字靱帯をはじめとする膝関節周囲の靱帯への負担を考慮する上で非常に重要な要素となる。そこで本研究の目的は,OKCとCKCの異なる環境下で,膝関節屈曲伸展に伴う回旋運動を計測し,SHMの存在を確認し,その特性を明らかにすることとした。【方法】被験者は,理学療法士養成大学学生43名(男性32名,女性11名)であった。計測にはモーションセンサを2セット使用し,左下肢の腓骨小頭下部,および大腿骨外側上顆上部のそれぞれ矢状面上に固定した。OKC環境下では,足底を浮かせた端座位姿勢で,膝関節伸展および屈曲運動を計測した。CKC環境下では,端座位姿勢から立位姿勢,および立位姿勢から着座し端座位姿勢となるまでの動作を計測した。計測した角速度データを積分し,動作中の角度変化を算出した。【結果】OKC環境下での膝関節伸展時,大腿に対する下腿の相対的な回旋運動は外旋運動であり,その最終肢位の外旋角度は15.16±7.85度であった。CKC環境下では,6名の被験者を除き内旋運動を伴い,その最終肢位の内旋角度は12.15±6.54度であった。外旋運動を伴った6名の外旋角度は5.74±4.20度であった。OKC環境下での膝関節屈曲時,大腿に対する下腿の相対的な回旋運動は内旋運動であり,その最終肢位の内旋角度は13.26±8.04度であった。CKC環境下では,5名の被験者を除き外旋運動を伴い,その最終肢位の外旋角度は12.54±7.34度であった。内旋運動を伴った5名の内旋角度は6.79±5.86度であった。OKCとCKCの異なる環境における膝関節屈曲・伸展に伴う外旋・内旋角度には有意な差を認めた。【結論】SHMはOKC環境のみで認められる現象であり,CKC環境下では逆の運動となることが分かった。このことは,膝の靱帯損傷後の理学療法においては,注意を要する基礎データとなると考えた。たとえば,CKC環境下での膝関節伸展は,相対的な内旋運動を伴い,前十字靱帯へのストレスが増加する可能性があることが理解できる。このように,本研究の結果は,従来のSHMの定義と異なる点や,付加すべき情報を含み,臨床への貴重なエビデンスになると考えた。
著者
長尾 慶子 喜多 記子 松田 麗子 加藤 和子 十河 桜子 三神 彩子
出版者
一般社団法人 日本家政学会
雑誌
日本家政学会誌 (ISSN:09135227)
巻号頁・発行日
vol.59, no.11, pp.903-910, 2008 (Released:2010-07-29)
参考文献数
8
被引用文献数
1

環境に配慮した調理法である「エコ・クッキング」を行うことで、CO2排出量の削減が期待できる。本研究では、日本の全家庭において「エコ・クッキング」を行った場合、地球温暖化防止の為に、どの程度CO2排出量を削減できるかを検討した。主婦19名を対象に一般的な朝食、昼食、夕食別に調理を行ってもらい、その際に使用したガス量、電力量、水量及び生ゴミ量を測定した。その後、「エコ・クッキング」についての講座を受講してもらい、再び同じ献立を講座を参考に調理してもらった。「エコ・クッキング」を行うことで、1回目と比較して、ガス、電気及び水使用量と生ゴミ量に大きな減少がみられた。その結果、日本の全家庭において「エコ・クッキング」を行った場合、CO2削減効果は24~32%削減されることが試算された。
著者
柴 隆大 佐々木 孝 牧野 育代 川上 幸治 加藤 幾雄 内田 和美 小林 稔秀 金子 公幸
出版者
日本毒性学会
雑誌
日本毒性学会学術年会 第39回日本毒性学会学術年会
巻号頁・発行日
pp.P-60, 2012 (Released:2012-11-24)

【目的】p-クレゾールはチロシンが腸内細菌によって代謝されることで生成する腸内腐敗産物の一種であり、免疫毒性を有することが示唆されている。本発表では、腸管で産生されるp-クレゾールが細胞性免疫応答に及ぼす影響に着目して検討した結果を報告する。【方法】BALB/cマウスの食餌中にチロシンを負荷することで、血中のp-クレゾール濃度が高値となるp-クレゾール高産生モデルを構築した。このモデルにアレルギー性接触性皮膚炎を誘導することで、細胞性免疫応答に対するp-クレゾールの影響を評価した。さらに、ex vivoおよびin vitroにおいて、マウス脾臓細胞のサイトカイン産生に対するp-クレゾールの影響を評価した。【結果】p-クレゾール高産生モデルマウスでは、接触性皮膚炎反応が有意に低下した。この接触性皮膚炎反応は血中p-クレゾール濃度との間に負の相関が認められた。Ex vivoでは、菌体刺激に対する脾臓細胞のIL-12産生能と、血中p-クレゾール濃度との間に負の相関が認められた。また、in vitroでは、p-クレゾールは菌体刺激により産生されるIL-12とIFN-γを抑制した。さらに、p-クレゾールは抗CD3抗体刺激によるIFN-γの産生を抑制し、IL-4の産生を促進した。【考察】経口摂取したチロシンによって腸内で産生されるp-クレゾールは、細胞性免疫応答を抑制した。また、p-クレゾールは細胞性免疫に対して促進的な作用をもつIL-12とIFN-γの産生を抑制し、抑制的な作用をもつIL-4の産生を促進した。これらの結果から、p-クレゾールはサイトカイン産生を変化させることで、細胞性免疫応答に対して抑制的に作用することが示唆された。
著者
菅村 真由美 今村 明秀 久保田 由紀子 宮城 司道 福崎 勉 加藤 寿彦 森園 哲夫 堤 正則 中川 尚志
出版者
耳鼻と臨床会
雑誌
耳鼻と臨床 (ISSN:04477227)
巻号頁・発行日
vol.53, no.3, pp.163-167, 2007-05-20 (Released:2013-05-10)
参考文献数
13

海綿状血管腫は比較的まれな疾患とされていたが、MRI導入以来発見されることが多くなった。初発症状としては、てんかん発作、けいれん、頭痛などが多い。今回、われわれは脳幹部の海綿状血管腫の出血が原因でめまいを発症したと思われる成人男性症例を経験したので報告する。症例は53歳、男性で主訴はめまい、嘔気であった。初診時は末梢性の頭位めまいと診断された。発症後6日目に左注視障害、瞳孔不整が出現したため、MRIを施行したところ、脳幹部海綿状血管腫と診断された。本症例のめまいは、延髄海綿状血管腫に起因する出血により生じたものと考えられた。
著者
加藤玄智著
出版者
大空社
巻号頁・発行日
1996
著者
加藤 豊範
出版者
一般社団法人 日本環境感染学会
雑誌
日本環境感染学会誌 (ISSN:1882532X)
巻号頁・発行日
vol.30, no.4, pp.274-280, 2015 (Released:2015-10-05)
参考文献数
15
被引用文献数
6 4

手洗いや手指衛生は院内感染防止対策の基本である.しかし,医療関係者の多くは手指衛生を遵守しているとは言い難く,手指衛生遵守率の向上は院内感染対策の永遠のテーマでもある.本研究では,感染委員会及びICTが中心となり,組織的に手指衛生遵守率向上に取り組んだ結果,取り組み当初(2011年)3.2%であった手指衛生遵守率は,2年後(2013年)には21.9%と飛躍的に上昇した.さらに,MRSAの検出率は31.5%から13.1%に減少し,MRSAの新規分離率も11.5%から2.6%まで減少した.手指衛生に対する組織的な取り組みは,その遵守率を向上させ,MRSA分離率への低下につながり,さらにはMRSAの新規検出菌数の減少へとつながったと考えられる.本研究の結果から,組織的に手指衛生遵守率向上の取り組みを行う事は,院内感染防止に有用であると考えられる.
著者
加藤 清隆 野崎 佳彦
出版者
公益社団法人 日本鋳造工学会
雑誌
鋳物 (ISSN:00214396)
巻号頁・発行日
vol.62, no.9, pp.726-731, 1990-09-25 (Released:2011-07-27)
参考文献数
9

The basic research of ceramic core was carried out on the core which could be used solidification controled castings of Ni-base superalloy such as single crystal casting.  Fused silica was selected as a main material of core because of high leachability to aqueous alkaki solution, and the test piece of core was producted by press molding process.  When the burning temperature is 1300∼1320°C, this ceramic core shows very low thermal expansion ratio (0.1%) and the highest deflective strength at room temperature (about 20°C : 400 kgf/cm2). With the addition of 10∼20wt% cristobalite to fused silica, it restrains softening of the core at high temperature and shrinkage of the core after reburning.   Furthermore the influence of the grain size change of fused silica on the properties of the core was also investigated.
著者
加藤 保司 宮崎 眞佐男
出版者
一般社団法人 日本めまい平衡医学会
雑誌
Equilibrium Research (ISSN:03855716)
巻号頁・発行日
vol.69, no.2, pp.87-90, 2010 (Released:2010-06-01)
参考文献数
12
被引用文献数
1

Seventy-two patients with dizziness or vertigo having C4-7 cervical disk disease had their systolic blood pressure (BP) measured before and after the head-up test with tonometry. We demonstrated that significant depression of the systolic BP was seen in the patient group compared with the normal group during the head-up test. There were 11 patients in whom vertigo or dizziness was induced by each head-up test, and all of them showed a BP depression of 19 mmHg or more. However, 26 patients had a BP depression of only 9 mmHg or less, which was within normal limits, and none showed vertigo or dizziness. It was considered whether the main cause of vertigo or dizziness induced by the head-up test among the patients with cervical lesion was BP depression. The other causes of vertigo or dizziness among the patients who showed BP depression of 18 mmHg or less could possibly be blood flow insufficiency in the brain stem, acoustic nerve ischemia, Powers syndrome, carotid artery stenosis, platelet hyper-aggregation or psychosomatic factors.
著者
加藤 あい 宮田 明子 守屋 由香
出版者
一般社団法人 日本農村医学会
雑誌
日本農村医学会学術総会抄録集 (ISSN:18801749)
巻号頁・発行日
vol.55, pp.145, 2006

<b><はじめに></b><BR> 産褥期における子宮の復古および悪露の変化は著しくかつ重要であるため、産褥期における注意深い観察と復古促進に向けたケアが必要となる。<BR> 経腟分娩後の子宮復古状態については基準化され、看護を行う上でのアセスメントの指針ともなっている。しかし、帝王切開後の子宮復古に関しては一般に経腟分娩より遅いと言われているが、明らかなデータとして発表されているものはない。そこで、経腟分娩と帝王切開の子宮復古状態を比較し、帝王切開術後のアセスメントの基準を明らかにすることを目的とし検討した。<BR><b><研究方法></b><BR> 経腟分娩者30名、帝王切開分娩者21名。正期産かつ単胎とし、帝王切開分娩者に関しては、緊急帝王切開や合併症がない者とした。産褥0日より退院日までの子宮底長と硬度および、悪露量を測定した。妊娠・分娩経過、分娩週数、妊娠・分娩歴、Hb値、胎盤の大きさ・重さ、児体重、使用薬剤名・投与量、排泄状況、離床時期などについてフェイスシートを用い情報収集した。<BR><b><結果および考察></b><br> 子宮底長の経日的変化に関して、産褥1日を除いては、帝王切開の方が経膣分娩の子宮底長に比べて高い。これは子宮に手術操作が加わることや、安静の期間が長いこと、授乳開始の遅れが影響していると考えられる。<BR>悪露量の経日的変化において、産褥1・3・4日で帝王切開より経腟分娩のほうが有意に悪露量が多く、産褥5日は経腟分娩の悪露量が多い傾向にあり、産褥2・6日は、帝王切開の悪露量が多い傾向であった。産褥1日は経腟分娩では、授乳の開始や安静の制限がされていないことが関連していると考えられる。産褥2日に帝王切開の悪露量が多い傾向であったのは、歩行開始となることが関連していると考えられる。<BR> 帝王切開の場合、経腟分娩と比べて子宮底長は高く経過していくが悪露量は経腟分娩が多い量で推移することが多かった。一般的には、子宮底長が高いと悪露量が多く子宮収縮が悪いと判断するが、帝王切開の場合は子宮底長が高いことと、悪露量の多さには関連がなく、子宮底長と悪露量では子宮収縮状態を判断することはできない。<BR>【まとめ】<BR> 経腟分娩と帝王切開における産褥期の子宮底長の経日的変化をみた結果、帝王切開分娩の方が、経腟分娩よりも子宮底長が高く推移することが明らかとなった。しかし、帝王切開の子宮底長が高く推移しても、経腟分娩に比べ悪露量は少なく、子宮収縮が不良という指標にはならない。<BR>産褥期の子宮復古に影響を及ぼすといわれる因子についての今回の研究では有意差はでなかった。今後は、産褥期の吸啜回数や時間など、本研究項目に取り上げなかった因子の影響も含め、検討すべきである。
著者
小林 正治 小田 陽平 長谷部 大地 加藤 健介 新美 奏恵 中里 隆之 泉 直也 高田 佳之 福田 純一 高木 律男 齊藤 力
出版者
特定非営利活動法人 日本顎変形症学会
雑誌
日本顎変形症学会雑誌 (ISSN:09167048)
巻号頁・発行日
vol.16, no.3, pp.153-160, 2006-08-15 (Released:2011-02-09)
参考文献数
16
被引用文献数
2 12

To assess whether patients were satisfied with the results of treatment, questionnaires were sent to 291 patients who had undergone orthognathic surgery for correction of jaw deformities and 133 questionnaires were returned with valid answers. The chief problem of 94 (71%) of these patients was appearance. Dysfunctions such as masticatory disturbance and speech difficulties were the primary reason for which 38 (29%) of the patients sought treatment. Seventy-five percent of the patients answered that they were satisfied with the results in regard to their chief problems. A favorable change in appearance was recognized by 125 patients, whereas five patients noticed no major changes and three patients were displeased with their postoperative faces. The patients'evaluations of their appearance seemed to be influenced by the responses of other peoPle to the surgical-results, and objective improvements did not always satisfy their expectations. Improvements in masticatory function and speech were recognized by 92 and 54 patients, respectively. Eighty patients had TMJ signs and symptoms such as click and/or pain before treatment, which disappeared in 53 (66%) of the symptomatic patients after the surgery. On the other hand, TMJ signs and symptoms appeared postoperatively in 7 (15%) of 47 patients without those before treatment. Psychologically, 42 patients noted favorable changes in personality after the surgery. Eight patients with mandibular set back noted the onset or worsening of snoring after the surgery.
著者
加藤 佐和
出版者
熊本大学
雑誌
先端倫理研究 (ISSN:18807879)
巻号頁・発行日
no.2, pp.106-118, 2007-03

R.M. Hare takes the position of total utilitarianism. Total utilitarianism that aims at maximizing of the total utility, would lead to a counter-intuitive conclusion. If we take the total utilitarianistic position, we have a duty of `beget and multiply.' This paper will discuss briefly a general view of Hare's theory and how he tries to solve this problem. His theory of total utilitarianism is able to take into account the utility of possible people. In doing so, Hare considers these possible people's potential to be a grown person as morally relevant. This paper considers the concept of this potential and how Hare considers the utility of possible people.
著者
蒔田 覚 加藤 済仁
出版者
日本腹部救急医学会
雑誌
日本腹部救急医学会雑誌 (ISSN:13402242)
巻号頁・発行日
vol.26, no.6, pp.713-718, 2006-09-30 (Released:2010-09-24)
参考文献数
7
被引用文献数
1

救急医療の特徴として, (1) 説明のための時間的余裕がないこと, (2) 患者が意識障害を伴っている場合も多いこと, (3) 患者との間に基礎となる信頼が構築されていないこと, などがあげられる。インフォームドコンセントの重要性は論を待たないが, 救急医療において最も重視されるべきは「患者の生命」である。紛争を恐れるあまり, 適切な治療の機会を失うことがあってはならない。医師として判断に迷う場合には, 医療水準に則った治療を心がけることが肝心である。
著者
森 修一 加藤 三郎 横山 秀夫 田中 梅吉 兼田 繁
出版者
日本ハンセン病学会
雑誌
日本ハンセン病学会雑誌 = Japanese journal of leprosy (ISSN:13423681)
巻号頁・発行日
vol.73, no.1, pp.47-63, 2004-02-28
参考文献数
24
被引用文献数
1

本研究は戦前、日本に唯一存在したハンセン病患者の自由療養地である群馬県吾妻郡草津町湯の沢部落の社会科学的分析の中から、何がハンセン病患者の隔離の二つの側面である「迫害されている患者の社会の圧力からの保護」と「感染源である患者からの社会の防衛」のダイナミズムを後者への優位に導いていったのかを明らかにすることを目的とするものである。その過程は湯の沢部落の実態の解明(「草津湯の沢ハンセン病自由療養地の研究I、II」)、自由療養地議論の展開と消滅の過程の検証と湯の沢部落の関わり(「草津湯の沢ハンセン病自由療養地の研究III」)、湯の沢部落消滅後にその精神が日本の隔離政策に与えた影響(「草津湯の沢ハンセン病自由療養地の研究IV」)などの研究の総体である。<BR>本稿では戦後、栗生楽泉園から始まる患者運動を通して、湯の沢で培われた精神は楽泉園内でも生き続け、患者運動の戦端を開き、「特別病室」を廃止、職員の不正を暴き、やがて多磨全生園と共闘し、「全国癩療養所患者協議会」を生み、絶対隔離政策と対峙する力を形成する様相を描いた。併せて、「特別病室」設置の背景、戦中を中心としての療養所内の混乱の様相とその要因を述べた。
著者
森 修一 加藤 三郎 横山 秀夫 田中 梅吉 兼田 繁
出版者
日本ハンセン病学会
雑誌
日本ハンセン病学会雑誌 = Japanese journal of leprosy (ISSN:13423681)
巻号頁・発行日
vol.72, no.3, pp.217-237, 2003-08-30
参考文献数
59
被引用文献数
1

本研究は戦前、日本に唯一存在したハンセン病患者の自由療養地である群馬県吾妻郡草津町湯の沢部落の社会科学的分析の中から、何がハンセン病患者の隔離の二つの側面である「迫害されている患者の社会の圧力からの保護」と「感染源である患者からの社会の防衛」のダイナミズムを後者への優位に導いていったのかを明らかにすることを目的とするものである。その過程は湯の沢部落の実態の解明(「草津湯の沢ハンセン病自由療養地の研究1、II」)、自由療養地議論の展開と消滅の過程の検証と湯の沢部落の関わり(「草津湯の沢ハンセン病自由療養地の研究III」)、湯の沢部落消滅後にその精神が日本の隔離政策に与えた影響(「草津湯の沢ハンセン病自由療養地の研究IV」)などの研究の総体である。<BR>本稿では自由療養地構想から絶対隔離政策への変遷過程を国会での議論、内務省の政策およびその意思決定過程、自由療養地議論の中の湯の沢の役割、などから描いた。加えて、自由療養地を望む患者たちの意見とその背景を示すと共に世界の隔離政策と日本の隔離政策をその歴史的過程を含みながら対比、考察した。
著者
東 浩紀 加藤 典洋
出版者
講談社
雑誌
群像
巻号頁・発行日
vol.72, no.11, pp.21-47, 2017-11