著者
加藤 秀卓 田中 尚喜 金 景美 高橋 剛治 室生 祥
出版者
公益社団法人 日本理学療法士協会
雑誌
理学療法学Supplement Vol.36 Suppl. No.2 (第44回日本理学療法学術大会 抄録集)
巻号頁・発行日
pp.C3P2385, 2009 (Released:2009-04-25)

【目的】骨粗鬆症における脊椎圧迫骨折(以下圧迫骨折)患者は高齢者に多い.臨床症状は、無症状のものから日常生活動作に障害をきたすものまで様々である.当院では保存療法,体幹装具着用下にて可及的早期に離床させることを目指しているが、起き上がり時に強い腰背部痛(以下疼痛)を訴え、プログラムが停滞することが多い.我々は疼痛が起き上がりを阻害し長期臥床を生じさせていると考え、今回、圧迫骨折患者の起き上がり方により疼痛及び起き上がり自立までの日数に差異があるか否かを検討した.【対象】2008年3月から10月の間に当院にて新鮮圧迫骨折と診断され入院し、本研究の趣旨を説明し、同意を得た患者18名(男性4名,女性14名、平均年齢73.7±11.7歳、体幹装具軟性12名,硬性6名、受傷椎体第8,11,12胸椎,第1から第4腰椎).神経症状を伴う者は対象から除外した.いずれの対象者も鎮痛消炎剤を服用しており、受傷前には起き上がりが自立していた.【方法】体幹装具着用下に患者にベッド上仰臥位から端坐位まで起き上がりを行わせた.口頭指示及び介助は行わなかった.測定項目は起き上がり方法,起き上がり時の疼痛,起き上がり自立までの日数とした.起き上がり方法は、仰臥位から側臥位を経て端坐位になる方法(以下側臥位法)と仰臥位から長坐位を経て端坐位になる方法(長坐位法)の2つに大別した.起き上がり時の疼痛はVASにて測定した.起き上がり方と疼痛,起き上がり自立までの日数をMann‐WhitneyのU検定を行い危険率5%未満を有意とした.【結果】起き上がり方法は側臥位法11名61%,長坐位法7名39%であった.起き上がり方法と疼痛,起き上がり自立までの日数において有意な差は認められなかった.【考察】今回の検討では、圧迫骨折患者における疼痛が少ない起き上がり方法,早期に起き上がりが自立できる方法は見出せなかった.圧迫骨折の疼痛に対し、直接的に除痛を図る運動療法についての報告は見当たらない.体幹装具は起き上がり時に対する制動低下が疼痛を誘発する一つの要因と考えられる.また起き上がり方法は、筋力,バランス能力,可動性が関与し、加齢による退行現象があると言われている.体幹装具着用での起き上がり動作は受傷以前の起き上がり方法を阻害するのではないかと考えられる.今後は各身体部位の使いかたが起き上がり動作に関連しているものと考え、圧迫骨折患者の安静期間および理学療法の介入方法についての調査を行い、早期離床を図れる方法を検討していきたい.
著者
阿曽 真弓 加藤 京一 安田 光慶 高橋 俊行 崔 昌五 藤村 一正 黒木 一典 中澤 靖夫
出版者
公益社団法人 日本放射線技術学会
雑誌
日本放射線技術学会雑誌 (ISSN:03694305)
巻号頁・発行日
vol.67, no.7, pp.793-799, 2011-07-21 (Released:2011-07-28)
参考文献数
9
被引用文献数
4 6

A hand hygiene behavior questionnaire and environmental survey were conducted regarding the mobile X-ray system used in the emergency room. As a result, among a total of 22 radiological technologists at this hospital who replied to the questionnaire, 18 wore disposable gloves when performing X-ray imaging using the mobile system. Among those 18, 11 were found to touch computed radiology (CR) consoles and HIS/RIS terminals while still wearing the gloves, thus creating the potential for spreading pathogens to other medical equipment and systems. According to the results of an environmental survey of the emergency imaging preparation room, the highest levels of bacteria were detected on CR consoles and HIS/RIS terminals. A possible reason for this is that these locations are not wiped down and cleaned as a part of routine cleaning and disinfection protocols, thus demonstrating the importance of cleaning and disinfection. Hand hygiene by medical personnel and appropriate cleaning and disinfecting of the working environment are important for preventing the spread of nosocomial infections. Radiological technologists are also required to take effective measures against infections in consideration of the high frequency of contact with both infected patients and patients susceptible to infections.
著者
長井 梨香 富田 駿 加藤 宗規 山﨑 裕司
出版者
学校法人高知学園 高知リハビリテーション学院
雑誌
高知リハビリテーション学院紀要 (ISSN:13455648)
巻号頁・発行日
vol.19, no.1, pp.31-35, 2017-09-30 (Released:2019-07-24)
参考文献数
13

重症片麻痺と失語症を合併した70歳代女性に対して改良した起居動作練習を適応し,その効果について検討した.寝返り練習は,20cmの台上にスライディングボードとクッションを置いた状態から開始する7段階の段階的な難易度調整を適応した.起き上がり練習には,6段階からなる逆方向連鎖化の技法を適応した.寝返り動作は,1日目に段階④まで可能となった.2日目には段階⑥まで,4日目には段階⑦まで到達した.合計4日間の介入でプラットフォーム上の寝返りは可能となった.起き上がり動作は,1日目に段階③まで可能になり,3日目には動作が可能となった.介入期間中に運動麻痺,高次脳機能障害の改善はみられなかったことから,今回の介入は起居動作を学習させるうえで有効なものと考えられた.
著者
田巻 義孝 加藤 美朗 堀田 千絵 宮地 弘一郎
出版者
中部人間学会
雑誌
人間学研究
巻号頁・発行日
vol.14, pp.43-62, 2015

本稿では, Kanner(1943, 1944)が自閉的な孤立を示す子どもの症例を(当時の精神医学の学説を踏まえて)早期幼児自閉症と命名し, DSM‐Ⅲ(APA, 1980)で自閉性障害が広汎性発達障害として認定された経緯などを概観した. また, 自閉性障害のサブタイプとして, ①高機能自閉症, 中機能自閉症, 低機能自閉症, ②孤立型, 受動型, 積極奇異型, ③折れ線型自閉症の概要を記述した. さらに, Asperger(1944)の報告した自閉性精神病質を, Wing(1981)がアスペルガー障害と名づけて英語圏に紹介したが, この紹介が自閉症研究に及ぼした影響を論述した.DSM‐Ⅳ(APA, 1994)でアスペルガー障害は新たな臨床単位として認められたが,主に疾病概念の理解や定義が研究者ごとに異なることから, アスペルガー障害の外的妥当性に関する研究領域における議論は決着していない. これらに併せて, 自開性障害の関連障害(サヴァン症候群, 意味・語用論障害, 症候性自閉症), 自閉性障害と注意欠陥/多動性障害の関係について考察した.
著者
加藤 拓也 谷口 圭吾 池田 祐真 本村 遼介 片寄 正樹
出版者
日本基礎理学療法学会
雑誌
日本基礎理学療法学雑誌 (ISSN:21860742)
巻号頁・発行日
vol.19, no.2, pp.65-71, 2016-08-03 (Released:2018-09-28)

The purpose of this study was to determine the relationship between the neuromuscular activation patterns of hip adductor longus (AL), adductor magnus (AM) and hip joint angle during isokinetic hip flexion and extension. For 9 healthy men, surface electromyography was recorded at adductor longus, adductor magnus, rectus femoris, biceps femoris, semitendinosus muscles during isokinetic hip flexion and extension by three different velocities: 60 deg/sec, 90 deg/sec and 120 deg/sec, respectively. The normalized root mean square (RMS) of AL during hip flexion was significantly higher than that of the AL during hip extension. The normalized RMS of AL during hip flexion in 10°to 40°was significantly higher than that in 60° to 70° . The normalized RMS of AM during hip extension was significantly higher than that of the AM during hip flexion. These results suggest that AL is specifically recruited at the hip shallow flexed position of hip flexion and AM is recruited during hip extension.
著者
加藤 正博 米倉 育男 小川 威彦
出版者
日本民族衛生学会
雑誌
民族衛生 (ISSN:03689395)
巻号頁・発行日
vol.14, no.1-2, pp.25-30, 1947-07-30 (Released:2010-11-19)
参考文献数
3
被引用文献数
1 1
著者
新海 航一 海老原 隆 鈴木 雅也 加藤 千景
出版者
日本歯科大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2010

Er,Cr:YSGGレーザーを用いた歯の切削は、微小水蒸気爆発により歯面が粉砕されて生じることを確認した。レーザー切削象牙質面には熱変性層が生成されるが、熱変性層はリン酸処理後に次亜塩素酸ナトリウム処理を行った場合に除去された。レーザー切削面にリン酸処理あるいはリン酸と次亜塩素酸ナトリウムの併用による前処理を行うと2ステップセルフエッチシステム(歯質接着システム)の単独処理より接着強さが向上した。
著者
杉本 岩雄 小川 茂樹 中村 雅之 瀬山 倫子 加藤 忠
出版者
一般社団法人 日本環境化学会
雑誌
環境化学 (ISSN:09172408)
巻号頁・発行日
vol.8, no.4, pp.831-840, 1998-12-15 (Released:2010-05-31)
参考文献数
17

ポリマー及びアミノ酸の高周波スパッタ膜を感応膜とした水晶振動子式センサ素子のppbレベルにおける石油留分ガスやガソリン, 重油の揮発ガスの検出機能を調べた。ポリエチレン (PE) 多孔質焼結体のスパッタ膜は成膜方法により大きくセンサ機能が影響を受けた。炭化が進んだPE膜センサや残留水分が多い状態で作成したPE膜センサは感度が不十分であった。これに対して, 排気を十分して作成したPE膜や紫外光励起を行って作成したPE膜センサはppbレベルの石油成分ガスに対し十分な感度を有する。この, 紫外光励起効果によりPE膜センサの検出感度は向上し, 炭素数12以上の直鎖状炭化水素ではppt領域の極低濃度なガス検知が十分可能であることが示唆された。しかし, 感応膜中への拡散による吸収・保持過程が検出機構を支配するため, 飽和するまでの時間の長い, 時定数の大きなセンサ応答を示す。アミノ酸のスパッタ膜を感応膜としたアミノ酸膜センサはppb領域の濃度域では極めて低い応答しか示さず, フロロポリマー膜センサでは検出能力が認められなかった。また, PE膜センサは水蒸気の影響を受けにくく選択的に有機ガスを高感度に検出できことも確認でき, 環境センシングに有力なセンサ素子と言える。
著者
加藤 重広
出版者
富山大学人文学部
雑誌
富山大学人文学部紀要 (ISSN:03865975)
巻号頁・発行日
vol.31, pp.71-156, 1999-08-27

本稿は、先行研究の概要とその問題点について論じた前回稿、加藤重広(1999)を承けて、日本語の関係節構造の成立要件は文法論的な要因のみでは説明できず、語用論的な観点からの分析が必要となるという立場をとり、2つの観点からの分析を行うものである。
著者
淡路 英夫 加藤 稔也
出版者
公益社団法人 日本金属学会
雑誌
日本金属学会誌 (ISSN:00214876)
巻号頁・発行日
vol.62, no.8, pp.735-741, 1998 (Released:2008-04-24)
参考文献数
21
被引用文献数
4 5

The Griffith energy criterion for brittle fracture is extended to mode II and combined mode I-II fracture by postulating that crack extension occurs when the maximum energy release rate in non-coplanar crack extension is equal to the fracture energy rate required for the mode II or the combined mode crack extension. The fracture energy rate is considered to be proportional to the critical magnitude of the area of a frontal process zone at a crack tip for brittle materials. The area of the frontal process zone is simply assessed here from the area enclosed in the iso-stress contours of both the maximum principal stress and the maximum shear stress around a crack tip. The anticipated ratio of mode II and mode I fracture toughness, KIIC⁄KIC, is 1.20. The value of the ratio, KIIC⁄KIC, is also estimated experimentally for float glass using a disk test. The result shows that the value of KIIC⁄KIC is 1.28 which agrees quite well with the anticipated one.
著者
雲 和雅 加藤 英二 金子 和恵 高木 常好 浅野 俊昭
雑誌
全国大会講演論文集
巻号頁・発行日
vol.第38回, no.人工知能及び認知科学, pp.229-230, 1989-03-15

一口にレンズ設計といっても、カメラ用、複写機用、あるいは眼底カメラ用など多様な分野が存在する。また、このような多岐に亘った分野で、それぞれコンサルテーション、レンズデータの知的検索、一部の類型設計の完全自動など、コンピュータによる知的設計支援に対する具体的なニーズが増加してきている。現在我々が開発しているOPTEX(参考文献)は、このような多様なレンズ設計の分野において知識処理システムを構築する際のドメイン・シェルとでもいうべきものである。ところで、このようなドメイン・シェル構築に際しての最大の課題は、ユーザが設計知識を記述する際、自身が持っている知識とシェルを用いてコンピュータ上に表現される知識との間のギャップをいかに少なくするか、ということであろう。周知のように、レンズ設計の領域では古くからCADの開発が行なわれ、今日これは設計の必須の道具となっているが、CADに対するメッセージであるコマンドが極めてプリミティブな機能に細分化されているものが多く、設計者がレンズ系を脳裡で操作しているレベルとは大きくかけ離れているのが普通である。したがって、先に述べたドメイン・シェルに対する要求に応えるためには、このような既存のCADの制約を受けず(理想的には、どのようなレンズ設計CADを使用していようとも、上記の知識の記述には影響を与えない)、しかも設計者が脳裡で考えるレベルに近い知識表現法を用意する必要がある。OPTEXの開発にあたっては、このような要求に応えるものとして、レンズオブジェクトを考案した。本稿はその概要について報告するものである。
著者
久保 公利 松田 宗一郎 間部 克裕 加藤 元嗣
出版者
道南医学会
雑誌
道南医学会ジャーナル (ISSN:2433667X)
巻号頁・発行日
vol.2, no.1, pp.39-43, 2019 (Released:2019-06-03)
参考文献数
10

【症例】80歳,男性【主訴】脱力感、歩行困難【現病歴】2017年9月末より大腿部の痛みを認め、近医整形外科に入院したが譫妄のため数日で退院となった。10月に近医精神科を受診し、アルツハイマー型認知症と診断された。その後脱力感が出現し歩行困難となったため、10月31日に当院入院となった。【既往歴】洞不全症候群(2007年)、腰部脊柱管狭窄症(2014年)、アルツハイマー型認知症(2017年)【経過】発熱と炎症反応の高値を認め、感染症を疑い抗生剤治療を行ったが解熱せず投与を中止した。抗核抗体、リウマチ因子、抗CCP抗体は陰性だった。Gaシンチグラフィで両側肩関節と右膝関節に集積が認められた。リウマチ性多発筋痛症を疑い,第24病日よりPSL20mgの投与を開始したところ翌日には解熱した。また入院時より幻覚、見当識障害、記銘力障害が認められたため、精神科を受診し内服加療が開始された。その後PSLを漸減し第94病日に退院となった。【結語】症状出現時から診断まで2ヶ月を要したリウマチ性多発筋痛症の1例を経験した。アルツハイマー型認知症を有する症例のため、自覚症状を正確に表現することが困難であり、診断に苦慮したが貴重な症例と考え報告する。
著者
加藤 彰彦
出版者
四天王寺大学
雑誌
四天王寺大学紀要 (ISSN:18833497)
巻号頁・発行日
no.64, pp.101-131, 2017

アンドレ・ブルトンは最後のシュルレアリスム宣言として捉えられる『吃水部におけるシュルレアリスム宣言』の結論部分において、シュルレアリスムとグノーシス主義の目指すところが一致していることを指摘している。確かにシュルレアリスムの神秘主義的なところもブルトンのテキストから明らかに指摘されるのであるが、シュルレアリスムとグノーシス主義が大きく分かれるところは、前者が現世において特に愛によって幸せを獲得しようとしているのに対して、後者は物質的世界=肉体的世界を悪の世界として否定していることにある。またブルトンは階層秩序的二項対立を否定するのに対して、グノーシス主義は肉体と精神のプラトン的二項対立をその根本に据えているのである。しかしながらブルトンの目指す超現実とは実体を欠いた記号空間にすぎないこと、またブルトンが求めるシュルレアリスム的精神の一点とは、まさにグノーシス主義における救済の如く、身体内で見出す真の知であることから、シュルレアリスムとグノーシス主義は同じ方向を目指していると理解されるのである。