著者
加藤 敏幸
出版者
関西大学
雑誌
情報研究 : 関西大学総合情報学部紀要 (ISSN:1341156X)
巻号頁・発行日
vol.37, pp.1-22, 2012-09-20

サイバーポルノの取り締まりに関して,昨年(平成23 年6 月17 日),刑法175 条が改正された.改正法は従来の客体に加えて,「電磁的記録に係る記録媒体」をもわいせつ物として例示列挙に加え,さらに,「電気通信の送信によりわいせつな電磁的記録その他の記録を頒布」する行為をも新たに処罰の対象にした.そしてこれに伴い,有償頒布目的でのわいせつ物の所持およびわいせつ電磁的記録の保管も処罰に加えられた.しかし,この改正法の適用にあたっては様々な問題点が指摘されている.そこで,この改正法について,今回の改正に至った背景と改正法の新たな内容,そしてその問題点について検討したい.\nRecently, the law on criminal obscenity was revised in relation to cyberporn. This law extended definitions of the act of criminal obscenity to bring cyberporn under stringent control. However, there are issues that arise in terms of the application of this law in relation to cyberporn. This paper examines these issues in relation to the revision of the law.
著者
加藤 政洋
出版者
公益社団法人 日本地理学会
雑誌
日本地理学会発表要旨集
巻号頁・発行日
vol.2009, pp.122, 2009

1. 研究目的<br>本研究の目的は、米軍の占領下で進められた都市建設に固有の理念ないし空間的な論理の一端を、「場所の(文化)政治」を糸口に地理学的な観点から明らかにすることにある。対象とする場所は、都市建設(形成)期の沖縄各地に成立した歓楽街である。それらは、いずれも「自然に形成された」ように見える場所なのだが、なかにはさまざまな意図が絡み合い、政治的な力関係に左右されながら創出されたところも存在した。那覇近郊の「栄町」は、その代表例である。<br>本発表では、歓楽街のなかでも戦前那覇の大遊廓として知られた〈辻町〉に焦点を絞り、その再興過程の考察から上記の課題に取り組んでみたい。いくぶん結論を先取りして述べるならば、〈辻町〉はまさに、施政者が(後に出来する)都市空間の全体を俯瞰(構想)しつつ、施設・機能・用途地域を的確に配置しようとする都市計画的な志向性のなかで創り出された場所であった。<br>2. 首都計画から那覇市都市計画へ<br>一般に那覇市の都市計画の端緒は、1950年8月の都市計画条例によって開かれたとされている。とはいえ、この年まで都市計画に向けた動きが必ずしも皆無だったわけではない。実際、1950年以前に「那覇市都市計画案を前後三回に亙って提出したけれども、結局軍の意図に沿わぬとの理由で三回とも却下され」ていたという。<br>注意すべきは、却下された案が実際には「那覇市都市計画」ではなく、周辺の二市二村を含む「首都計画」であり、計画主体は民政府だったという点である。軍政府は「那覇市の都市計画は那覇市が主体となって計画し、実施すべきで、民政府は那覇市の都市計画に対して参考的な意見はいえるが那覇市を拘束することは出来ない」という立場から、三度にわたり計画案を却下していたのだ。<br>つまり、1950年3月を境に、那覇をめぐる都市計画は、広域にわたる首都計画から那覇市域を対象とする計画へと移行したのである。その後、周辺の市・村を区域とする都市(首都)計画の策定は、1956年まで待たねばならない。<br>3. 歓楽街成立の三つの背景<br>しかしながら、この廃案になった首都計画の空間的文脈のなかで誕生した歓楽街がある。すなわち、それが「栄町」であった。那覇市内で辻町の復興が望めないなか、行政域としては那覇の市外でありながら、隣接して市街地としては一体化している栄町の地の利を活かし、〈辻町〉に取って代わる歓楽街が形成されたのである。<br>そればかりか、後に那覇市に合併される小禄村でも、軍用地と接する土地に、その名も「新辻」と称する歓楽街が建設された。これは、島内北部や本土でも見られた基地近接型の歓楽街ということになる。いずれにしても、隣接する二つの村に歓楽街が成立するなかで、那覇市は独自の都市計画を立案したのだった。<br>この計画で旧〈辻町〉は「住居地域」として区画整理されることになっていたものの、前述のように、首都計画の文脈で成立した「栄町」は市外に立地しており、また旧に倍する成長を見せた料亭・飲食店に対処すべく、当初の方針は1年もたたないうちに転換される。<br>4. 〈辻町〉の再興と「場所の政治」<br>1951年春、那覇市は統制なきままに展開する料亭・飲食店(風俗営業)を規制すべく、旧遊廓の辻町一帯に「この種の料理店」を囲い込むことを企図し、「特殊商業地区」を設定する。市域に限定した都市計画を立てた以上、問題視された放縦な風俗営業にも自前で対処しなければならず、定めたばかりの地域制を変更せざるを得なかったのだ。これによって、「昔なつかし辻情緒……各通りをはさんで料理屋、飲食店、各種娯楽場、ダンスホール等々…〔の〕…様々の建物が建ち並ぶ」ことが期待され、実際、那覇を代表する歓楽街へとまたたくまに発展するのだった。<br>この政策は後々まで大きな影響を及ぼすことになる。というのも、本土復帰と同時に「トルコ風呂」ならびにモーテルの「規制外地域」、すなわち営業許可地域として指定されたことで、現在にまでいたる風俗営業地区となったからである。<br>5. 風俗営業取り締まりと「場所の文化政治」<br>興味が持たれるのは、「辻への返り咲き」ないし移転を待望する業者もいたことである。施政者側も〈辻町〉という場所の歴史性に配慮した面があるとはいえ、風俗営業取り締まり上の「囲い込み」に業者自らが応じることで、〈辻町〉は再興したのだった。栄町の業者の多くが、実際に移転したのである。<br>思惑は違いこそすれ、こうして〈辻町〉再興の端緒は開かれた。二つの歓楽街の成立過程に「政治」を透かし見るとき、首都計画から那覇市単独の都市計画への変更は、看過できないものとなる。
著者
加藤常員 小澤 一雅 高見 友幸
雑誌
情報処理学会研究報告人文科学とコンピュータ(CH)
巻号頁・発行日
vol.2002, no.73(2002-CH-055), pp.9-16, 2002-07-26

地理情報は考古学にとって基盤をなす重要な情報である。古代遺跡の地理的分布の解明は考古学の重要な課題である。本稿では弥生時代の2種類の遺跡群を採り上げ、地理情報を活用した遺跡分布の解析について報告する。対象とした遺跡は、拠点集落遺跡と高地性集落遺跡である。両遺跡は同じ時代に同じ空間に存在したものであり、密接な関係であったと考えられる。本報告は淀川水系の両遺跡について2種類のネットワークの構成し、得られた情報をもとに関連深い遺跡の対を抽出し、地図上の円を描くことにより遺跡間の分布関係を明示することを試みる。円による表現は極めて簡潔であり、位置関係を端的に表す。示される結果は考古学の知見に相応した遺跡間の分布関係を得た。
著者
Myovela Rajabu 今中 政輝 栗本 宗明 杉本 重幸 加藤 丈佳 藤田 美和子
出版者
Japan Society of Energy and Resources
雑誌
エネルギー・資源学会論文誌 (ISSN:24330531)
巻号頁・発行日
vol.42, no.4, pp.257-266, 2021 (Released:2021-07-10)
参考文献数
19

Fast Automated Demand Response (FastADR) is one of the expected measures to control electricity demand of consumers so that the balancing of electricity supply and demand in a short time horizon is improved. Due to their high power consumption in business buildings, Heating Ventilation and Air-conditioning (HVAC) loads are the promising resource for FastADR. However, because of their operational characteristics, HVAC loads do not perfectly follow external control signals. To mitigate this problem, Battery Energy Storage System (BESS) can be used complementarily. This paper proposes a method that coordinates the operation of building’s multi-units air conditioning system and BESS to reduce the required capacity of BESS for supporting HVAC operation in the FastADR. In the proposed method, the BESS discharges to supply the difference between the FastADR signal and HVAC load consumption and then recovers its energy by further adjusting the reference power consumption of the HVAC load, in which the thermal capacity of buildings is considered to reduce the required capacity of the BESS. Numerical simulations are performed to demonstrate the benefit of the proposed coordinated control.
著者
加藤 元宣
出版者
日本選挙学会
雑誌
選挙研究 (ISSN:09123512)
巻号頁・発行日
no.17, pp.154-170,207, 2002

本論文の目的は,2000年衆院選の選挙結果について都市部と農村部で明確な違いが存在したこと,小選挙区当選者の属性データと地域特性の間に少なからぬ関連性が認められたことの2つの仮説を検証することである。本論文は人口,産業などを代表する26の変数を用いて主成分分析を実施し,地域特性に基づく小選挙区の分類を行った。そして,析出された都市対農村の軸を尺度として2000年衆院選を分析した。その結果判明したことは,第1に都市部における民主党の局地的大勝&bull;自民党の局地的大敗という特徴が明確に浮かび上がったこと,第2に農村部に対する都市部の投票者比率が2000年には急激に増加しており,そのことが選挙結果に少なからぬ影響を与えたこと,第3に当選者の属性を比較したとき都市部と農村部で明確な差異が認められ,代議士の構成について微かではあるが変化の兆しが見られたことである。
著者
加藤 あい 宮田 明子 守屋 由香
出版者
一般社団法人 日本農村医学会
雑誌
日本農村医学会学術総会抄録集 第55回日本農村医学会学術総会 (ISSN:18801749)
巻号頁・発行日
pp.145, 2006 (Released:2006-11-06)

<はじめに> 産褥期における子宮の復古および悪露の変化は著しくかつ重要であるため、産褥期における注意深い観察と復古促進に向けたケアが必要となる。 経腟分娩後の子宮復古状態については基準化され、看護を行う上でのアセスメントの指針ともなっている。しかし、帝王切開後の子宮復古に関しては一般に経腟分娩より遅いと言われているが、明らかなデータとして発表されているものはない。そこで、経腟分娩と帝王切開の子宮復古状態を比較し、帝王切開術後のアセスメントの基準を明らかにすることを目的とし検討した。<研究方法> 経腟分娩者30名、帝王切開分娩者21名。正期産かつ単胎とし、帝王切開分娩者に関しては、緊急帝王切開や合併症がない者とした。産褥0日より退院日までの子宮底長と硬度および、悪露量を測定した。妊娠・分娩経過、分娩週数、妊娠・分娩歴、Hb値、胎盤の大きさ・重さ、児体重、使用薬剤名・投与量、排泄状況、離床時期などについてフェイスシートを用い情報収集した。<結果および考察> 子宮底長の経日的変化に関して、産褥1日を除いては、帝王切開の方が経膣分娩の子宮底長に比べて高い。これは子宮に手術操作が加わることや、安静の期間が長いこと、授乳開始の遅れが影響していると考えられる。悪露量の経日的変化において、産褥1・3・4日で帝王切開より経腟分娩のほうが有意に悪露量が多く、産褥5日は経腟分娩の悪露量が多い傾向にあり、産褥2・6日は、帝王切開の悪露量が多い傾向であった。産褥1日は経腟分娩では、授乳の開始や安静の制限がされていないことが関連していると考えられる。産褥2日に帝王切開の悪露量が多い傾向であったのは、歩行開始となることが関連していると考えられる。 帝王切開の場合、経腟分娩と比べて子宮底長は高く経過していくが悪露量は経腟分娩が多い量で推移することが多かった。一般的には、子宮底長が高いと悪露量が多く子宮収縮が悪いと判断するが、帝王切開の場合は子宮底長が高いことと、悪露量の多さには関連がなく、子宮底長と悪露量では子宮収縮状態を判断することはできない。【まとめ】 経腟分娩と帝王切開における産褥期の子宮底長の経日的変化をみた結果、帝王切開分娩の方が、経腟分娩よりも子宮底長が高く推移することが明らかとなった。しかし、帝王切開の子宮底長が高く推移しても、経腟分娩に比べ悪露量は少なく、子宮収縮が不良という指標にはならない。産褥期の子宮復古に影響を及ぼすといわれる因子についての今回の研究では有意差はでなかった。今後は、産褥期の吸啜回数や時間など、本研究項目に取り上げなかった因子の影響も含め、検討すべきである。
著者
仁木 滉 加藤 常員 鎌木 義昌 小沢 一雅 ニキ ヒロシ カトウ ツネカズ カマキ ヨシマ オザワ カズマサ Hiroshi Niki Tunekazu Kato Yoshimasa Kamaki Kazumasa Ozawa
雑誌
岡山理科大学紀要. A, 自然科学
巻号頁・発行日
vol.21, pp.1-15, 1985

This paper presents an associative restoration system that creates the restoed shape of a given distorted ancient pottery in terms of its plane figure (silhouette). The system has been implemented on the VAX11/780 computer system, based on a mathematical modeling of the associatve memory and additional processing techniques. One of the aims is to reduce archaeologists' labor spent in drawing a huge number of plane figures corresponding to finds given by excaticns. In our computer simulation, we use 14 types of silhouttes of the "Sueki", Japanese ancient potteries, as the test figures. The results of the simulation are presented and also are discussed in relation to the system performance and archaeology.
著者
加藤 由訓 苗村 健
出版者
特定非営利活動法人 日本バーチャルリアリティ学会
雑誌
日本バーチャルリアリティ学会論文誌 (ISSN:1344011X)
巻号頁・発行日
vol.18, no.3, pp.345-356, 2013-09-30 (Released:2017-02-01)

This paper proposes a method for sharing impression, sentiment, and opinion among people listening to an auditory program together by voice sound effects. We call the system "Radi-Hey." In contrast to the conventional Laugh Tracks played by program staff in TV and radio programs, Radi-Hey reflects the input from audiences themselves. The audiences input their opinion by pushing buttons of several short words (e.g. "oh!", "why?") and can listen to the other audiences' opinion by voice sound effects. Recently, text-based systems (e.g. Twitter) have been used for this purpose, but the audiences are required to concentrate on inputting their message and viewing the others' message. The aim of this paper is to realize high level of simplicity that provides much more prompt and easy sharing of the others' opinion by auditory feedback. We conducted two experimental demonstrations: radio broadcasting programs, and presentations at an academic conference. This paper describes the results showing potential applicability of the system, and the pros and cons for the future development.
著者
加藤 理 中田 八洲郎 住吉 正孝 久岡 英彦 小倉 俊介 桜井 秀彦 山口 洋 中里 祐二 南塚 只雄 羽里 信種
出版者
公益財団法人 日本心臓財団
雑誌
心臓 (ISSN:05864488)
巻号頁・発行日
vol.22, no.11, pp.1317-1320, 1990-11-15 (Released:2013-05-24)
参考文献数
18

ペースメーカー植え込み後にジェネレーターが回転しリードの捻れを生じる現象はPacemaker-twiddler'ssyndromeとしてよく知られているが,その発生は比較的まれである.我々は335例のペースメーカー症例のうち2例で本症候群を認めたので報告する.症例1は72歳,症例2は75歳の女性で各々身長(cm)153,146.5,体重(kg)75.5,64,で房室ブロックのため前胸部皮下にペースメーカーを植え込んだ.症例1では術後早期よりジェネレーターの回転が認められたが一過性に筋攣縮(twiching)が出現する程度でその後無症状であるため放置,4年後の現在も捻れは進行しているが右側臥位でジェネレーターが回転しそうになった時に患者自ら整復しペーシングも順調で経過観察中である.症例2では術後4カ月に筋攣縮出現リードの複雑な捻れを認め症状も持続するため再手術を行いジェネレーターを大胸筋に固定し,破損していたリードを修復した.2症例はいずれも高齢で高度の肥満があり皮下組織が粗であることが発生要因と考えられた.