著者
木内 敦詞 七五三木 聡 天貝 均 大野 敦也 勝田 茂
出版者
一般社団法人日本体力医学会
雑誌
体力科学 (ISSN:0039906X)
巻号頁・発行日
vol.46, no.1, pp.77-85, 1997-02-01 (Released:2010-09-30)
参考文献数
27
被引用文献数
1 1

本研究は, 閉経後骨粗鬆症の実験モデルとしてOVXラットを用い, OVX後の骨の変化を皮質骨と海綿骨の量的変化および組織学的特徴から検討し, これらが運動負荷によりいかなる影響を受けるかを調べたものである.実験にはWistar系雌性ラットを用い, 偽手術・コントロール群 (Sham-C群) , 偽手術・トレーニング群 (Sham-T群) , 卵巣摘出・コントロール群 (OVX-C群) , 卵巣摘出・トレーニング群 (OVX-T群) の計4群を設けた.卵巣摘出および偽手術は14週齢時に行い, トレーニングは17週齢より10週間のトレッドミル走とした.トレーニング期間終了時に, 脛骨を摘出後, 脱脂乾燥骨重量, 骨塩量を測定し, さらに海綿骨の組織形態計測を行った.得られた結果は以下のとおりである.1.脱脂乾燥骨重量および骨幹部骨塩量において, OVX-C群とSham-C群の有意な差異は認められなかった.しかし体重あたりの骨塩量ではOVX-C群がSham-C群に対し有意な低値を示した.また, 海綿骨の単位骨量ではOVX-C群がSham-C群よりも有意な低値を, LS/BSをはじめとする骨形成パラメータでは逆に有意な高値を示した.2.海綿骨単位骨量および体重あたりの骨塩量は, OVX-T群がOVX-C群に対し有意な高値を示した.骨形成パラメータでは両群に有意な差は認められなかった.3.上記のすべての測定パラメータで, Sham-C群とSham-T群の間に有意な差異は観察されなかった.以上の結果から, 運動は卵巣摘出による骨量の減少に対し抑制的に作用することが示された.また, これは骨形成の促進よりはむしろ骨吸収の抑制に起因する可能性が示唆された.
著者
勝田 茂 高松 薫 田中 守 小泉 順子 久野 譜也 田渕 健一
出版者
社団法人日本体育学会
雑誌
体育学研究 (ISSN:04846710)
巻号頁・発行日
vol.34, no.2, pp.p141-149, 1989-09

Attempts were made to clarify whether or not fiber composition of the m. vastus lateralis could be predicted with running performance. Biopsy samples from 32 well-trained and 17 untrained adult males were examined for the percentage area of fast-twitch (FT) and slow-twitch (ST) fibers which might be related to the physical performance better than the fiber type distribution. In addition, each subject completed 50-m sprint and 12-min run tests. A multiple regression analysis revealed that in the trained males predictive accuracy (R^2) for the percentage area of FT fibers (% areaFT) from the ratio of a 50-m sprint speed to a 12-min run speed (50 m・S/12 min・S) was higher than that from most of other variables,e.g. 50 m・S, 12 min・S, or the combination of 50 m・S and 12 min・S; R^2 of 50 m・S/12 min・S was 80.3%(p&lt0.05). A positive correlation between 50 m・S/12 min・S and %areaFT also existed for the untrained subjects (R^2=63.7%, p&lt0.05). The linear regression equations of %areaFT (Y) on 50 m・S/12 min・S (X)were Y=-68.6 + 76.2X (r=0.896, p&lt0.05) and Y=-47.5 + 61.1X (r=0.798, p&lt0.05) for the trained and untrained males, respectively. There was no significant difference in the regression equations between the trained and untrained males. For all subjects, the equation was Y=-59.8 + 69.8X (r=0.876, p&lt0.05) and the standard error of estimate of %areaFT on 50 m・S/12 min . S was 8.86%. These results suggest that the performances of a 50-m sprint and a 12-min run are valuable indicators in, accurately, easily and noninvasively, predicting the percentage area of FT and ST fibers of the m. vastus lateralis from adult male.
著者
勝田 茂 奥本 正 鰺坂 隆一 久野 譜也 向井 直樹
出版者
東亜大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2011

本研究は世界のトップとして活躍しているシニアアスリートの体力とライフスタイルについて検討を行った。測定参加者の10年後の平均年齢は90.3歳。男性2名、女性7名、計9名が測定に参加した。結果;瞬発的な筋力発揮を求められる種目、すなわち垂直跳び・反復横跳び・立ち幅跳びなどで著しい低下を示した。年齢別でみると、体力の年間低下率は、70歳台から80歳台では-2%、80歳台から90歳台では-3%を示した。ライフスタイルについて、高齢者にとってスポーツも生きがいに足るものであることが示された。結論:高齢者こそ筋トレーニングが必要であることが判明した。
著者
七五三木 聡 勝田 茂 天貝 均 大野 敦也
出版者
日本体力医学会
雑誌
体力科學 (ISSN:0039906X)
巻号頁・発行日
vol.39, no.3, pp.181-188, 1990-06-01
被引用文献数
21 3

The effects of exercise training on bone development in growing rats were studied using the photon-absorption method and histomorophological analyses. Thirty-seven male Wistar strain rats at 4 wks of age were divided into five groups : sedentary control(C;N=7), 15 min/day training(T15;N=6), 30 min/day training(T30;N=8), 60min/day training(T60;N=8)and 120min/day training(T120;N=8). All rats in these training groups were subjected to a treadmill running at a speed of 30m/min, 5days/wk for 11wks. The results of our study were summarized as follows : 1) Fat-free dry weight of the tibia was significantly heavier in T30, T 60 and T 120 than C and T 15, respectively. 2) Bone mineral content (mg/cm) of tibial midshaft in all T groups was significantly higher than that in C group, respectively, while no differences were found between any of the training groups. 3) On histological parameters of cross-sectional samples from tibia, such as cortical area total area and appositional growth rate on periosteum, higher values were observed in T groups compared with C group. These results suggest that physical training induce markedly facilitative girth growth associated with elevated bone formation of periosteum in the tibia, and moreover, the daily exercise duration does not change the degree of bone hypertrophy.
著者
渡邉 信晃 榎本 靖士 大山 卞 圭悟 宮下 憲 尾懸 貢 勝田 茂
出版者
社団法人日本体育学会
雑誌
体育學研究 (ISSN:04846710)
巻号頁・発行日
vol.48, no.4, pp.405-419, 2003-07-10
被引用文献数
4

本研究は,スプリント走時の下肢の動作および関節トルク発揮と等速性最大筋力との関係を明らかにし,スプリント走のトレーニングを考える上での基礎資料を得ることを目的とした。本研究から得られた知見は以下の通りである。(1)疾走速度と疾走時の下肢の動作および関節トルクとの間で有意な相関関係が認められたのは,支持期の膝関節最大伸展速度(負の相関),回復期の股関節屈曲トルクおよび伸展トルク(正の相関),支持期の膝関節伸展トルクおよび足関節底屈トルク(正の相関)であった。(2)疾走時の下肢関節トルクと下肢の等速性最大筋力との間でいくつかの有意な相関関係が認められたが,,中でもパフォーマンスに影響すると考えられる関係は,回復期の股関節進展トルクと短縮性股関節屈曲筋力(30,180および300deg/s),回復期の膝関節屈曲トルクと膝関節屈曲筋力(短縮性:180deg/s,伸張性:30,180および300deg/s),支持期の足関節底屈トルクと短縮性底屈筋力(180および300deg/s)であった。特に,支持期の膝関節および足関節では,等速性最大筋力が大きいことで支持期の関節トルクを介して関節の角度変位を小さくし,効率的なキック動作を引き出している可能性が示唆された。(3)疾走速度と下肢の等速性最大筋力との間で有意な正の相関関係が認められたのは,股関節屈曲筋力(短縮性:30,180および300deg/s,伸張性:30deg/s),短縮性股関節伸展筋力(180deg/s),短縮性および伸張性膝関節屈曲筋力(180deg/s),短縮性膝関節伸展筋力(180deg/s)であった。以上の結果から,回復期の股関節や,支持期の膝関節および足関節における関節トルクの発揮と,それに引き続き生じる動作には,等速性最大筋力が大きく関わっていることが明らかとなった。従って,スプリント走のパフォーマンス向上において,回復期の股関節や,支持期の膝関節および足関節動作は,それぞれの間接での等速性最大筋力のトレーニングによって改善される可能性が示唆された。
著者
勝田 茂 七五三木 聡 池田 賢 天貝 均 大野 敦也
出版者
社団法人日本体育学会
雑誌
体育學研究 (ISSN:04846710)
巻号頁・発行日
vol.36, no.1, pp.39-51, 1991-06-01
被引用文献数
5

To investigate the inflences of training intensity on bone development in growing rats, young (4-wk-old) Wistar strain were subjected treadmill running 1 h/day, 5 days/wk for 8 wk with a variety speed: 30 m/min (T30 group),40 m/min (T40 group),50 m/min (T50 group). The results be summarized as follows: 1) In the distal femoral epiphysis, longitudinal growth rate of T30 and T40 groups were significantly higher than C (sedentary age-matched controls) and T50 groups, respectively, and the calculated rate of cartilage cell production of T50 group was the lowest among all 4 groups. 2) No difference in bone mineral content (BMC) of femoral mid-shaft was found between any of the groups, but the BMC/body weight was significantly higher in all T groups than C group. Moreover, BMC/body weight increased with the speed of runnning except for T50 group which was suspected to result in converse bending of femur while running, compared with T30 and T40 groups, in connection with the different contraction styles of muscle groups attached on femur. On the basis of these findings, we concluded that physical training may underlie the various effects, such as acceleration, non-influence and/or inhibition, respoding to exercise intensity, on the bone development.
著者
川中 健太郎 樋口 満 勝田 茂
出版者
久留米大学
雑誌
久留米大学保健体育センター研究紀要 (ISSN:09198679)
巻号頁・発行日
vol.3, pp.1-8, 1995-04-01

It is considered that exercise is benefical to prevention and cure for diabetes. As this reason, we will give three phenomena. First, acute exercise promotes glucose transport in skeletal muscle independent of insulin action. Second, insulin sensitivity for glucose transport is amplified in exercised muscle. Third, exercise training improves glucose transport capacity in skeletal muscle. In this article, we will give an outline of the mechanism in these phenomena.
著者
勝田 茂 鰺坂 隆一 大森 一伸 奥本 正 久野 譜也
出版者
東亜大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2001

本研究は、1999年に1回目の測定を行った超高齢エリートアスリートに対し、2001、2002及び2003年と測定を継続し、身体活動能力はどこまで維持できるかを検証することを目的として実施した。被験者は全国各種マスターズ大会や世界ベテランズ大会等で活躍している80歳以上(一部女性は70代を含む)の超高齢エリートアスリート33名(男性18名、女性15名)及びコントロール31名(男性9名、女性22名)、合計64名であった。測定項目は全身持久力、等速性下肢筋力、筋横断面積、骨密度、文部省新体力テストおよびライフスタイルに関する調査であった。その結果、この5年間で、文部省新体力テスト(高齢者用)においては、男性は筋力・柔軟性敏捷性は10%以内の低下率であったが、歩行能力は-20%以上、バランス能(開眼片足立ち)は-50%以上と最も高い低下率を示した。女性も同様の傾向であったが、低下率は男惟よりも小さく体力がよく保たれていた。等速性筋力では、男女とも高速(180deg/sec)における膝関節屈曲筋力の低下が著明で、これは筋横断面積において大腿四頭筋よりも屈筋であるハムストリングの低下率が大きいことと符合していた。VO2maxは20-25ml/kg/minで、5年間で約-20%を示し,男女とも同様の傾向を示した。骨密度の減少は数%に止まった。また、調査から多くのシニアエリートアスリートは、80歳代でも週2-3回、1回1-2時間の練習またはトレーニングを行い、年間数回の国内・国際大会に出場し、常に積極的に前向きに生きている様子が伺えた。これらの被験者の中には50歳代・60歳代になってからスポーツを始めた者も多く、高齢化社会にあって「スポーツも生きがいに足るものである」こと示す、よい参考例になるものであると考えらる。
著者
金坂 清則 山田 誠 新谷 英治 勝田 茂 坂本 勉 天野 太郎 小方 登 秋山 元秀
出版者
京都大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2002

本研究では、19世紀の世界をリードした西欧の中でもとりわけ重要だった大英帝国の人々が行った旅や探険とその記録としての旅行記について、アジアに関するものに絞り、歴史地理学的観点を主軸に据えつつ、歴史学者や言語学者の参画も得て多面的に研究し、そのことを通して、未開拓のこの分野の研究の新たな地平を切り開く一歩にした。また、その成果を地理学のみならず歴史学や文学の世界にも提示して学問分野の枠組みを越えることの有効性を具体的に提示し、かつそれを一般社会にも還元することを試みた。このため、I英国人旅行家の旅と旅行記に関する研究、II英国人の旅と旅行記に関するフィールドワーク的研究、III旅のルートの地図・衛星画像上での復原、IV19世紀のアジアを描く英国人の旅行記文献目録編纂という枠組みで研究を進めた。Iでは、このような研究の出発点となるテキストの翻訳に力点を置く研究と、それ以外の理論的研究に分け、前者については最も重要かつ代表的な作品と目されるJourneys in Persia and Kurdistanについてそれを行い、後者については、最重要人物であるイザベラ・バードやその他の人々の日本・ペルシャ・チベット・シベリアへの旅と旅行記を対象に研究した。IIについては、イザベラ・バードの第IV期の作品であるJourneys in Persia and Kurdistanと、第V期の作品であるKorea & Her NeighboursおよびThe Yangtze Valley and Beyondを対象とし、このような研究が不可欠であり、旅行記の新しい読み方になることを明示した。またツイン・タイム・トラベル(Twin Time Travel)という新しい旅の形の重要性を提示し、社会的関心を惹起した。IIIでは縮尺10万分の1という従来例のない精度でバードの揚子江流域の旅のルートを復原すると共に、この種の研究に衛星画像の分析を生かすことができる可能性を西アジアについて示した。また今後の研究に必須の財産となる目録を編纂した(IV)。