著者
篠原 久仁子 笠原 真奈美 飯嶋 秀郎 小沼 真由美 木内 祐二 亀井 美和子
出版者
一般社団法人 日本くすりと糖尿病学会
雑誌
くすりと糖尿病 (ISSN:21876967)
巻号頁・発行日
vol.2, no.1, pp.66-75, 2013-06-15 (Released:2014-08-06)
参考文献数
31

糖尿病治療の地域連携に薬局も参画し療養支援に取り組むために,医療機関と薬局の連携をはかり,積極的に糖尿病療養支援を実践することで得られる効果を評価した.研究デザインは,対照群を置いた前向き介入研究とし,対照群には通常どおりの服薬指導,介入群には通常の服薬指導に加え,患者の自己管理能力を高める療養指導を行った.連携と情報共有には,糖尿病連携手帳とお薬手帳を活用し,医療機関での診察・指導後に,薬局で療養に関する理解度を確認し,理解不十分な点について薬局で療養支援を行なった.研究期間は8 ヶ月間とし,評価項目は,薬および治療に対する理解度,QOL(SF-8),HbA1cとした.その結果,健康食品と薬との相互作用,糖尿病型,フットケアの理解度が介入群において有意に向上した.QOLの評価では「全体的健康感」が介入群において有意に改善した.介入群のHbA1cは,6 ヶ月後に0.6 %の低下となり,対照群に比べて有意な低下が認められ,8 ヶ月後も再上昇することなく維持された(p =0.016).医療機関と薬局とが,糖尿病連携手帳やお薬手帳を活用して情報共有・連携して行なう療養支援は,薬および治療に対する理解度の向上及びHbA1cの改善に有効であると考えられた.
著者
原 久仁子 小林 正敏 秋山 康博
出版者
公益社団法人 日本薬理学会
雑誌
日本薬理学雑誌 (ISSN:00155691)
巻号頁・発行日
vol.118, no.3, pp.231-240, 2001 (Released:2002-09-27)
参考文献数
28
被引用文献数
2 2

骨粗鬆症治療薬は一般に単剤での処方だけでなく, 数種類の薬剤が併用されることが多いが, その根拠となるデータは非常に少ない. ビタミンK2(メナテトレノン, K2)と1α(OH)ビタミンD3(D3)はいずれも臨床で骨粗鬆症治療薬として広く用いられている. そこで卵巣摘除ラットを用いて両薬剤の併用の意義を検討した. フィッシャー系20週齢雌性ラットを偽手術あるいは卵巣摘除し, 卵巣摘除ラットをさらに対照, K2, D3, K2+D3の4群(n=10)に分けた. 全てのラットを個別ケージで制限給餌により飼育し, K2はメナテトレノン(MK-4)約37mg/kgを混餌投与, D3は1α(OH)D3を0.3μg/kg週3回, 8週間経口投与した. 8週後の血漿中カルシウム(Ca), 無機リン, アルカリホスファターゼ活性, オステオカルシン, 1,25(OH)2D3, 副甲状腺ホルモン(PTH), MG-4濃度および大腿骨の骨密度と3点曲げ骨強度を測定した. 卵巣摘除による血漿中各パラメータへの影響は認められなかった. D3群は単独, 併用ともに血漿中Caは高値を, PTHは低値を示した. 全骨領域および海綿骨領域の骨密度は卵巣摘除により骨端部ではそれぞれ偽手術群の81%, 41%に, 骨幹部ではそれぞれ96%, 86%に減少した. K2, D3の各単独群は骨端部全骨領域の骨密度, 骨幹部海綿骨領域の骨密度, 骨塩量の低下を抑制した. K2+D3群では単独群で作用を示したパラメータの他に骨端部での全骨領域および海綿骨領域の骨塩量の低下を抑制した. またK2+D3群は骨端部海綿骨領域の骨密度, 骨塩量, 骨幹部の皮質骨厚でD3群に比して有意に高値を示した. 骨強度はK2+D3群でのみ対照群に比して最大荷重は有意に高値を, 剛性は高値傾向を示した. すなわちK2+D3群が骨端部, 骨幹部のいずれのパラメータにおいても一番高い値を示した. 以上, K2とD3との併用投与はそれぞれの単剤投与に比してより大きな薬効が期待できることが示唆された.
著者
矢澤 卓也 柳 富子 砂金 秀章 徳田 均 飯原 久仁子
出版者
特定非営利活動法人 日本肺癌学会
雑誌
肺癌 (ISSN:03869628)
巻号頁・発行日
vol.55, no.4, pp.233-240, 2015-08-20 (Released:2015-09-24)
参考文献数
12

背景.肺リンパ腫様肉芽腫症は悪性リンパ腫と鑑別困難なことがあり,その病態も複雑である.症例.66歳,女性.11年前に健診で左中肺野の結節影を指摘され,ALアミロイドーシス(肺限局型)と診断された.6年前には右中肺野に新出の結節影が出現し緩徐に増大していたものの,症状ないため経過観察されていたが,乾性咳嗽が出現するようになり多発結節影の新出も確認されたため,確定診断目的に20 mm大の結節性病変が切除された.病理組織学的には壊死,血管破壊像を伴うリンパ増殖性病変であり,高度に浸潤するCD4+主体の小型Tリンパ球および少数介在する大型異型Bリンパ球が見られ,EBV-encoded small RNA(EBER)は大型異型Bリンパ球のみならずCD4+ Tリンパ球にも陽性であった.またクロナリティー解析により,T細胞受容体β鎖に微弱なクローナルシグナルが検出された.悪性リンパ腫として化学療法が施行されたが,腫瘍の増大および繰り返す閉塞性肺炎により,治療開始から23ヶ月後に呼吸不全により死亡となった.結論.本例では背景に何らかの免疫異常の存在が示唆され,EBV感染Bリンパ球およびCD4+ Tリンパ球が肺内で異常増殖し多発結節性病変を形成したものと考えられ,T細胞リンパ腫への移行が示唆された点が特異であった.今後同様の症例が集積され,効果的な治療法が確立されていくことが望まれる.
著者
手島 一陽 貝瀬 満 高井 一成 石浜 智 鈴木 伸明 中尾 國明 松本 正廣 岩田 滉一郎 太田 裕彦 金井 弘一 飯原 久仁子
出版者
一般社団法人 日本消化器内視鏡学会 関東支部
雑誌
消化器内視鏡の進歩:Progress of Digestive Endoscopy (ISSN:03899403)
巻号頁・発行日
vol.51, pp.202-203, 1998-03-06 (Released:2015-01-22)
参考文献数
4

A 31-year-old man was referred to our hospital because of fever, oral and genital ulcers, mild abdominal pain and diarrhea which occured 6 months before admission. Colonoscopic examination disclosed diffuse, discrete round ulcers of the colon, and the intact terminal ileum. The administration of salazosulfapyridine followed by aminosalicylic acid improved pyrexia and colonic lesions. Relapsing oral, genital and colonic ulcers suggested the diagnosis of incomplete-type intestinal Behçet's disease. However, microscopic examination demonstrated non-caseous epithelioid cell granulomas, which are characteristic of Crohn's disease. Therefore, the present case was considered an indeterminate one of inflammatory bowel disease and a long-term follow-up might disclose a definite diagnosis.
著者
藤原 久仁子
出版者
「宗教と社会」学会
雑誌
宗教と社会 (ISSN:13424726)
巻号頁・発行日
vol.9, pp.67-90, 2003

個人の経験する「マリア出現」は、神が示す一つの「奇跡」として人々に解釈される。しかし、「奇跡」が時の経過とともに「癒し」の「奇跡」に読み替えられ、「マリア出現」を契機とする巡礼地の成立後、「癒し」に関する新たな信仰が広まる場合がある。本稿では、マルタにおけるギルゲンティのマリア巡礼地を対象に、「出現のマリア」に対する崇敬と特定の「場所」や「物」とが結びついた、新たな「癒し」の信仰が巡礼者間に形成される経緯の検討を行う。具体的には、巡礼地で配布される小冊子に掲載された「奇跡」の体験談を分析対象に、ギルゲンティの泉の水、聖像、聖写真、スカプラリオ、「マリア出現」の体験者、ギルゲンティのマリア崇敬集団に着目し検討を行う。そして、巡礼地というさまざまな人が参集する場において、新たな信仰と実践が相互流通する実態を明らかにし、「物」が「癒し」の「奇跡」を物象化した媒体として機能すると同時に、異なる巡礼対象の宣伝媒体としても機能する点を指摘する。
著者
杉原 久仁子
出版者
桃山学院大学
巻号頁・発行日
2016-03-17

2015年度
著者
渡邉 文之 篠原 久仁子 土橋 朗 天貝 賢二 原 和夫 倉田 香織 飯嶋 秀郎 島川 清 島田 匡彦 阿部 櫻子 武井 敬司 亀井 美和子
出版者
公益社団法人 日本薬学会
雑誌
YAKUGAKU ZASSHI
巻号頁・発行日
vol.136, no.9, pp.1243-1254, 2016
被引用文献数
3

&emsp;This study built a protocol for drug therapy management (hereinafter &ldquo;the protocol&rdquo;) that would enable continuous support from the decision making of smoking cessation therapy to the completion of therapy through the collaboration of physicians and community pharmacists, after which we evaluated whether the use of this protocol would be helpful to smoking cessation therapy. This study utilized the &ldquo;On the Promotion of Team-Based Medical Care&rdquo;, a Notification by the Health Policy Bureau as one of the resources for judgment, and referred to collaborative drug therapy management (CDTM) in the United States. After the implementation of this protocol, the success rate of smoking cessation at the participating medical institutions rose to approximately 70%, approximately 28-point improvement compared to the rate before the implementation. In addition to the benefits of the standard smoking cessation program, this result may have been affected by the intervention of pharmacists, who assisted in continuing cessation by advising to reduce drug dosage as necessary approximately one week after the smoking cessation, when side effects and the urge to smoke tend to occur. Additionally, the awareness survey for the intervention group revealed that all respondents, including patients who failed to quit smoking, answered that they were satisfied to the question on general satisfaction. The question about the reason for successful cessation revealed that the support by pharmacists was as important as, or more important than, that by physicians and nurses. This infers that the pharmacists' active engagement in drug therapy for individual patients was favorably acknowledged.<br>
著者
鄭 秀明 内山 真一郎 大原 久仁子 小林 道子 村上 博彦
出版者
一般社団法人 日本脳卒中学会
雑誌
脳卒中 (ISSN:09120726)
巻号頁・発行日
vol.20, no.5, pp.456-461, 1998-10-25 (Released:2009-12-07)
参考文献数
26
被引用文献数
1

発症24時間以内の脳梗塞250例において,進行性増悪例の検討をOxfordshire CommunityStroke Project (OCSP)の4病型分類別に検討した.全体では28%に進行が観察され,partial anterior circulation infarcts(PACI)群の進行は9%と他の3群(total anterior circulation infarcts: TACI, lacunar infarcts: LACI, posterior circulation infarcts :POCI)に比し低率であった.進行群と非進行群の比較では,TACIの進行群で頭部CTでの早期異常が高率で,コレステロールが低下しており,LACIの進行群ではエントリー時に機能的に重症であったが,その他の因子に差はなく,POCIでは両群間に差は見出せなかった.進行例は生命予後.機能予後とも不良であった.進行例の頻度は病型別に異なり,若干の予知因子が抽出されたが,その予測は依然として困難と考えられた.
著者
杉原 久仁子
出版者
桃山学院大学
雑誌
桃山学院大学社会学論集 (ISSN:02876647)
巻号頁・発行日
vol.44, no.2, pp.307-336, 2011-03-28

People with dementia in the prime time of life are faced with many problems, one of which is the working problem. This paper aims to quest for better methods of the working support for people with dementia in the prime time of life. First, I introduce some working problems by referring to findings of an opinion survey for families of persons with dementia, talking of a person with dementia, and an interview with a person who has experiences of supporting a person with dementia at a working place. Second, tasks in the working support are extracted from a case study of a person with dementia who works while being supported by working support centers. Third, I try to show new directions in methods of the working support for people with dementia through examining first and second discussions.
著者
今岡 洋二 杉原 久仁子 藤原 和美 小坂 淳子
出版者
大阪健康福祉短期大学
雑誌
創発 (ISSN:13481576)
巻号頁・発行日
no.7, pp.133-142, 2008-03

増加傾向にある介護職員の離職率の高さや心身に蓄積する疲労の原因の所在を明らかにする目的で、現在介護の仕事に従事している本学および大阪総合福祉専門学校の卒業生に対するアンケート調査をもとに、介護職場における夜間勤務、残業実態について考察を行った。夜勤に関しては、多すぎる回数、人員配置の不備・不足、長い労働時間に加え恒常的な残業があるなど、心身の健康を維持しながら、長年にわたって継続できる内容の労働ではないと考えられるような実態が浮き彫りになった。また単独での夜勤という勤務形態には、物理的にも心理的にも根本的で重大な欠陥があり、これは虐待事例などの要因ともなる問題である。データから浮かび上がった諸問題の大半は、社会的・構造的な問題がその核となっており、介護の職場は情報の開示を行うことで横につながり、共通の問題に取り組んでいく必要がある。
著者
小坂 淳子 今岡 洋二 杉原 久仁子 藤原 和美
出版者
大阪健康福祉短期大学
雑誌
創発 (ISSN:13481576)
巻号頁・発行日
no.7, pp.111-123, 2008-03

2007年は、介護の専門職としての介護福祉士が誕生してから20年を迎えている。介護福祉士は看護師や保育士と比較して浅い歴史しかない。本学は、すでに700名余りの卒業生(前身の専門学校を含む)を送り出し、15年経過している。そこで、介護福祉の創設期を担った卒業生がどのように考え、働いているか、仕事を継続できる条件は何かを明らかにする目的で調査を行った。調査では、施設での夜勤を伴う介護は、心身ともに緊張感が高いことや、6割近くの介護職が入浴介助を負担となっている実態等が明らかになった。しかし、介護福祉士は生活をする上で援助が必要な人へのかかわりを通して、自らの成長を実感できる仕事であると、回答も得ている。介護福祉士養成は基本的には国の義務である。介護福祉の仕事が若者に敬遠されることの無いよう、心身ともに健康で働き続けることができる労働条件の確保が不可欠である。現行の職員配置基準や夜勤体制の規制など、国や自治体、施設が行うべき課題は多い。養成校としての教育内容の検討も必要である。希望に燃えて介護福祉士職を選んだ若者の仕事を継続できる環境づくりが急務である。
著者
杉原 久仁子 Kuniko Sugihara
出版者
桃山学院大学総合研究所
雑誌
桃山学院大学社会学論集 (ISSN:02876647)
巻号頁・発行日
vol.43, no.2, pp.19-47, 2010-02

For the youth with dementia who has physical strength and physical functions, activities of daily living are almost possible in the early terms of dementia. Though it is difficult by the appearance for them to be recognized as the disabled, they need supports in outdoor actions. But their families cannot always respond to needs of supports. Therefore, the guide helper service as a public institution is necessary. In the present time, this service is not well known to families needing it, and they are not familiar with using guide helpers. Guide helpers also are faced with many problems. This paper, based on interviewing some guide helpers, aims to find problems with which they are faced in supports for outdoor actions, and examine skills which are necessary to accomplish tasks of the guide helper.