著者
鈴木 祐輔 太田 伸男 倉上 和也 古川 孝俊 千田 邦明 八鍬 修一 新川 智佳子 高橋 裕一 岡本 美孝 欠畑 誠治
出版者
日本耳鼻咽喉科免疫アレルギー学会
雑誌
耳鼻咽喉科免疫アレルギー (ISSN:09130691)
巻号頁・発行日
vol.33, no.3, pp.193-200, 2015 (Released:2015-09-25)
参考文献数
21

鼻噴霧用ステロイド薬は,鼻アレルギー診療ガイドラインにおいて花粉症治療の中心的な薬剤として推奨されている。しかし初期療法としての鼻噴霧用ステロイド薬と,抗ヒスタミン薬を中心とした併用療法の効果について比較した報告は少ない。今回我々は,スギ花粉症患者20 例を鼻噴霧用ステロイド薬(デキサメタゾンシペシル酸エステル)群(DX-CP 群)6 例と,第二世代抗ヒスタミン薬(オロパタジン塩酸塩)にモンテルカストを追加併用した抗ヒ+抗LT 薬群14 例に分け,治療効果につき検討を行った。検討項目は鼻症状,JRQLQ No.1 によるアンケートおよび鼻腔洗浄液のeosinophil cationic protein (ECP) と血管内皮細胞増殖因子(VEGF) の濃度とした。DX-CP 群では飛散ピーク期と飛散終期の鼻症状スコアの上昇を抑え,鼻閉症状では有意にスコアを減少させた。抗ヒ+抗LT 薬群では飛散ピーク期に症状スコアが上昇したが抗LT 薬を併用した飛散終期にはスコアが低下した。QOL スコアではDX-CP 群の飛散ピーク期において抗ヒ+抗LT 薬群に比べ有意にスコアを抑えた。鼻腔洗浄液中のECP 値, VEGF 値はDX-CP 群ではシーズンを通じて値の上昇を抑えた。よってDX-CP は抗ヒスタミン薬や抗LT 薬と同様に季節性アレルギー性鼻炎に対する初期療法薬として非常に有用であると考えられた。
著者
古田 幹雄
出版者
一般社団法人 日本数学会
雑誌
数学 (ISSN:0039470X)
巻号頁・発行日
vol.50, no.2, pp.181-198, 1998-04-28 (Released:2008-12-25)
参考文献数
41
著者
古川 典代
出版者
神戸松蔭女子学院大学学術研究会
雑誌
Journal of the Faculty of Letters, Kobe Shoin Women's University = 文学部篇 : JOL (ISSN:21863830)
巻号頁・発行日
no.3, pp.1-16, 2014-03

「文化は経済力の強いほうから弱いほうへと流れていく」という。日中間の音楽のカバー情況からしても、過去には日本の流行曲が数年後に中国語(北京語、広東語、台湾語)にカバーされることが多かった。ところが昨今は、カバーソングに時差が無くなった。日本で流行っている曲がネットの活用により同時期に中華圏でも中国語で流れるようになった。さらに近年では、中国語曲の日本語カバーも散見されるようになり、一方通行だった文化の流動が、時差なく双方向となった。これは両国にとってより豊かな音楽シーンを味わえるという意味で福音である。2007 年から始まった「全日本青少年中国語カラオケ大会」および、2010 年から始まった「西日本地区中国語歌唱コンクール」においては、出場者の選曲がこれまでに多かったカバーソングから、現地の若者に人気の楽曲へと変遷し、同時代同時並行で日本人の若者にも歌われるようになった。かくも情報がワールドワイドに流れ、中国語の歌が溢れるようになった現況においては「中国語で一曲!」はもはや日常のワンシーンと言える。本稿では日中カバーソングの歴史と変遷、歌による語学教育の効用および歌をテーマとした語学学習テキストの日中比較を論じる。
著者
古田 尚輝
出版者
成城大学
雑誌
成城文芸 (ISSN:02865718)
巻号頁・発行日
no.204, pp.117-94[含 英語文要旨], 2008-09

本論は、1980年代後半から90年代前半にかけてフランスで大量に放送された日本のテレビ・アニメーションが与えた衝撃と反響を考察する試みである。本論では、これを研究が未開拓であった日本のアニメーションの輸出を手掛かりに探る。 東映動画が製作した『UFOロボ・グレンダイザー』が『ゴールドラック』(Goldorak)と改題してフランスで放送され始めたのは、30年前の1978年7月のことであった。この作品は、従来フランスで放送されていた幼児を対象としたアニメーションとは全く異質で、ロボットを主人公としたキャラクター設定やストリー展開の早さなどで異常な反響を呼んだ。これがきっかけとなって、日本のテレビ・アニメーションの地上波での放送は折からの商業テレビ局の開局を背景に80年代後半から急増し、90年にはアニメーション放送全体の35%を占めるに至った。これを東映動画の記録で見ると、フランスへ輸出されたテレビ・アニメーションは70年代から90年代に東映動画が製作した作品の約60%にも上っている。 しかし、こうした異質な文化の集中豪雨的な輸出は、異文化への免疫性に乏しく批判的視聴を経験していない子どもたちの人気を沸騰させる一方で、アニメーションは幼児向けという既成概念に捕われた親たちの激しい拒絶反応を招いた。日本のアニメーションは暴力的、性的で教育上好ましくないと批判され、90年代後半に入ると批判を恐れる放送局の編成方針も影響してその比率はアニメーションの放送全体の7%にまで激減した。現在では視聴者が限定された衛星放送やケーブル・テレビで細々と放送されているだけである。そして、これによって生じた地上波放送の空白を埋めるかのように、フランスのアニメーション産業は手厚い保護育成策に守られて再起し、アニメーション放送全体に占める割合は80年代後半の約17%が2000年代には約35%に倍増するまでに至っている。 日本のテレビ・アニメーションのかつての"氾濫"と現在の衛星波などでの微々たる放送との激しい落差、その間接的な効果としてのフランスのアニメーション産業の再起。これらは表面的には"異文化の囲い込み"の成功とも解釈出来よう。しかし、その一方で、幼児期に日本のテレビ・アニメーションの大量放送によって触発された好みや感性が今やフランスの青年層に内在化し、"第2のジャポニスム"の底流を形成しているとも考えられる。著者には、一見矛盾するような"異文化の囲い込み"と"第2のジャポニスム"のいずれもが『ゴールドラック』の残影のように思われる。This paper is an attempt to study the impact and repercussions of Japanese television animation widely broadcast in France from the late 1980s to early 1990s by observing the exportation of Japanese animation, which has not received much attention from researchers. In July of 1978, the French TV public channel Antenne2 began broadcasting Toei Animation's UFO Robot Grendizer, changing the title to Goldorak. With its robot hero and fast-paced storyline, contrasting sharply with traditional works of animation broadcast for small children, the program was an extraordinary success. This led to a rapid increase in the broadcasting of Japanese animation on French television in the latter half of the 1980s at a time when new commercial TV stations were being launched, and by 1990, over 35 percent of animation programs in France were Japanese. According to Toei Animation records, about 60 percent of their productions were exported to France from the 1970s into the 1990s. This cultural-import deluge, while tremendously popular with children, who were unprejudiced about foreign culture and uncritical in their viewing habits, aroused much concern among parents, who were accustomed to animation as a gentle, innocent medium for small children. Japanese animation was severely criticized as being too violent, sexually explicit, and unsuited for children, and by the late 1990s, as French TV stations sought to ward off further public criticism, only 7 percent of the animation broadcast in France were Japanese. Today, Japanese animation is only shown on satellite and cable networks to a limited audience. The animation vacuum was filled, thanks to generous protective government subsidies, through a fortuitous comeback by France's own animation industry, which doubled its share of all animations broadcast in France from 17 percent in the late 1980s to 35 percent by the early years of the 2000s. The flood of Japanese animations of the past, and their current limited broadcasting on satellite and cable stations, along with the revival of the French animation industry as the indirect result, might be superficially interpreted as a success in the "encirclement" of alien culture. On the other hand, the tastes and sensibilities cultivated in the period when Japanese animation was broadcast in large volume during the childhood of a generation of young people in France may have been internalized, setting in motion a "second wave Japonisme." These two contradicting factors of "alien culture encirclement" and "second Japonisme" both seem to be reverberations of the "Goldorak" era.
著者
古畑 徹
出版者
金沢大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2011-04-28

本研究では、中韓両国の高句麗・渤海をめぐる論争の経緯を明らかにしたうえで、次の3点の成果が得られた。①唐代の国際システムは、中国の「内」「外」と、指標によってどちらにもなりうる中間ゾーンという三層構造で、それは時代によって変動するものであること。②高句麗はその三層構造の「外」の存在であり、渤海は中間ゾーンの存在で、時間経過とともに「外」に移行したこと、③渤海史の叙述方法には、いくつかの歴史的な広域地域にまたがる存在として叙述する方法があること。
著者
橋爪 圭司 渡邉 恵介 藤原 亜紀 佐々岡 紀之 古家 仁
出版者
日本臨床麻酔学会
雑誌
日本臨床麻酔学会誌 = The Journal of Japan Society for Clinical Anesthesia (ISSN:02854945)
巻号頁・発行日
vol.31, no.1, pp.141-149, 2011-01-14
参考文献数
12

  髄膜が破れて髄液が漏れると低髄液圧性頭痛が発症する.代表的なものに硬膜穿刺後頭痛がある.特発性低髄液圧性頭痛(特発性脳脊髄液減少症)は頚・胸椎からの特発性漏出が原因で,造影脳MRI,RI脳槽造影,CT脊髄造影などで診断される.自験ではCT脊髄造影での硬膜外貯留が最も確実であった.むちうち症が髄液漏出であるとの意見があり(外傷性脳脊髄液減少症),RI脳槽造影における腰椎集積が漏出と診断される.われわれはRI脳槽造影とCT脊髄造影を43症例で比較したが,腰椎集積はCT脊髄造影では正常神経根鞘であった.CT脊髄造影を診断根拠とした291症例では,1症例の外傷性脳脊髄液減少症も発見できなかった.
著者
古満 啓介 山口 敦子
出版者
一般社団法人 日本魚類学会
雑誌
魚類学雑誌 (ISSN:00215090)
巻号頁・発行日
pp.20-042, (Released:2021-06-12)
参考文献数
27

Six specimens collected from Kochi, Nagasaki, Kagoshima, and Okinawa Prefectures, on the Pacific Coast and the East China Sea, and seven museum specimens, were identified as the purple ray Myliobatis hamlyni Ogilby, 1911, based on a combination of specific morphological characteristics. Initially considered an Australian endemic, subsequent studies have shown M. hamlyni to have a patchy distribution from the Australian coast to Japan, the latter record being based on a single specimen collected from Okinawa Prefecture. However, the current study has revealed the widespread distribution of M. hamlyni in waters from the surface to 500 m depth off southwestern and western Japan, a specimen from Kanagawa Prefecture representing the northernmost record of the species. Because the distribution of M. hamlyni may broadly overlaps that of the Japanese species M. tobijei, and morphometric characters and depth preference separating them suggested in the previous study were unclear, detailed comparisons were made so as to establish a basis for distinguishing between the two species in the present study. Myliobatis hamlyni differs most clearly from M. tobijei as follows: greatest span of pelvic fins 20.9–24.7% (mean 23.5%) of disc width [vs. 27.1–36.3% (30.7%) in M. tobijei], greatest span of pelvic fins 44.5–53.6% (50.4%) of pectoral-fin posterior margins [vs. 58.8–78.5% (67.4%)], and distance from edge of disc to first gill slit 51.0–68.3% (57.6%) of distance from pectoral-fin insertion to dorsal-fin origin (horizontal) [vs. 32.4–44.7% (41.3%)]. The new standard Japanese name “Sumire-tobiei” is proposed for M. hamlyni.
著者
古賀 正義
出版者
日本社会学会
雑誌
社会学評論 (ISSN:00215414)
巻号頁・発行日
vol.60, no.1, pp.90-108, 2009-06-30 (Released:2010-08-01)
参考文献数
41

従来インタビュー調査は,構造化された質問によって「本音」を引き出す作業と理解されやすかった.しかし,近年の構築主義的調査観では,インタビューは聞き手と語り手の共同行為であり,「語りうるもの」をめぐるネゴシエーションの政治力学的な産物であるとされる.ICレコーダーなどの利用による音声データの再現可能性の向上は,「出来事」としてのインタビュー実践をきめ細やかに理解することを可能にしている.これに伴って,筋書きを用意した物語型の聞取りから,「声」と「音」(ここでは,互いの発話行為と収集される状況内の音声要素)を,インタビュー状況に沿って収集するデータベース型の分析が必要とされる.「インタビューのエスノグラフィー」が求められるのは,そのためである.データの内在的分析は,「ストーリー」が制作される聞き手と語り手の多元的な関係性に注目させ,他方,1つの立場から回答者の「声」を読み込む問題性を指摘する.調査者に解釈される「物語世界」を重層的に構築するには,インタビューにおける「声」の濃密さと「音」の収集との相互連関を理解し,回答者の多声性を読み解くスパイラルな実践を試みる必要がある.進路多様校卒業生の聞取り調査から,「声」と「音」を丁寧に読み込むことで,ステレオタイプな卒業生イメージが溶解し彼らの生活世界と接合していく局面を提示して,インタビューデータの飽和的で重層的な理解の必要性を強調する.
著者
福留 広大 藤田 尚文 戸谷 彰宏 小林 渚 古川 善也 森永 康子
出版者
一般社団法人 日本教育心理学会
雑誌
教育心理学研究 (ISSN:00215015)
巻号頁・発行日
vol.65, no.2, pp.183-196, 2017 (Released:2017-09-29)
参考文献数
34
被引用文献数
3 6

本研究の目的は, 自尊感情尺度(Rosenberg Self-Esteem Scale; RSES)において, 逆転項目に対する否定的反応(Negative Self-Esteem; NSE)と順項目に対する肯定的反応(Positive Self-Esteem; PSE)がそれぞれ異なる心理的側面を持つことを提案することである。研究Iでは, 様々なサンプルの計5つのデータセットを分析した。確認的因子分析の結果, RSESにPSEとNSEの存在が示唆された。研究IIでは, 中学生に調査を行い, 因子構造の検証とそれらの弁別性について検討した。中学生においてもPSEとNSEの構造が支持され, NSEはPSEよりもストレス反応と強い負の相関関係にあった。つまり, RSESの否定的な項目に対して否定的な回答をするほどストレス反応が低い傾向にあった。研究IIIでは, 中学生を対象にして, RSES2因子の弁別性の基準として攻撃性尺度を検討した。その結果, NSEがPSEよりも敵意と強い負の相関関係にあった。これらの結果は, RSESに「肯定的自己像の受容」と「否定的自己像の拒否」の存在を認めるものであり, この解釈と可能性について議論した。
著者
福田 智子 駒木 敏 田坂 憲二 黒木 香 矢野 環 川崎 廣吉 竹田 正幸 波多野 賢治 岩坪 健 古瀬 雅義 藏中 さやか 三宅 真紀 西原 一江 日比野 浩信 南里 一郎 長谷川 薫
出版者
同志社大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2007

平安中期成立かといわれる類題和歌集『古今和歌六帖』約4500首を対象に、独自に開発した文字列解析システムを用いて、すべての和歌の出典考証を行った。また、複雑な書き入れに対応したテキストデータ作成のため、タグ付け規則を案出した。そして、六つの伝本のテキストファイルを作成した。それらを対象に、諸本の同一歌を横並びで比較対照でき、しかも、底本を自由に選択できる校本システムを開発した。さらに、伝本の原態、特殊な漢字表記、朱筆書き入れに関する基礎資料を作成した.