著者
今泉 明子 古山 登隆
出版者
公益社団法人 日本皮膚科学会
雑誌
日本皮膚科学会雑誌 (ISSN:0021499X)
巻号頁・発行日
vol.126, no.11, pp.2085-2093, 2016-10-20 (Released:2016-10-20)
参考文献数
17

最近,エイジングに対する治療は関心が高く,その中でも注目されている治療のひとつにシワ治療が挙げられる.シワ治療の中でも注入療法は,安全かつ短時間で効果を得られる満足度の高い治療といえる一方で,満足度を上げるためには適応が大切である.注入療法において適正な治療を行うためには,老化のメカニズム,薬剤の基礎的知識はもとより,実際の治療に関わる解剖学的構造,治療の特性などを理解する必要がある.ここでは,皮膚科医にとって必要な注入に関する知識と明日から診療に役立つ安全な手技を紹介する.
著者
佐藤 裕二 古屋 純一 畑中 幸子 内田 淑喜 大澤 淡紅子 七田 俊晴
出版者
一般社団法人 日本老年歯科医学会
雑誌
老年歯科医学 (ISSN:09143866)
巻号頁・発行日
vol.36, no.3, pp.263-268, 2021-12-31 (Released:2022-01-28)
参考文献数
11

口腔機能低下症の診断のためには,口腔機能に関する7項目の検査を行う必要があるが,検査の内容が多彩であるためミスが生じやすい。そこで,口腔機能低下症の検査において起こしやすいミスと対策の例について報告する。 口腔衛生状態不良は舌苔付着度を評価するが,評価エリアに舌側縁は含めないことに注意が必要である。口腔乾燥は口腔粘膜湿潤度を評価するが,口腔水分計の先端にゆとりをもたせた状態でカバーを装着すること,また舌の位置を工夫して安定させることが重要である。咬合力低下はデンタルプレスケールを用いるが,フィルムの種類による3種の基準値の理解とフィルムの乾燥に留意する。舌口唇機能低下はオーラルディアドコキネシスによって評価するが,高齢者が理解しにくいため,自動計測器に音節を記したラベルの貼付が有効である。また,感染防止にも配慮した計測方法を用いたい。低舌圧は舌圧測定器により評価するが,プローブの傾きとバルーンの向きに注意が必要である。咀嚼機能はグルコース溶出法によって評価するため,素早い測定操作と患者への説明が欠かせない。また,嚥下機能は主観的評価であり,回答方法に関する事前の説明が重要である。 このように,口腔機能低下症の検査については起こりがちなミスがあるため,臨床上の工夫を行うことで,少しでも検査の信頼性の向上につなげることが重要である。
著者
佐々木 理恵 川崎 純子 古川 勤 重藤 紀和 切替 照雄
出版者
一般社団法人 国立医療学会
雑誌
医療 (ISSN:00211699)
巻号頁・発行日
vol.56, no.6, pp.363-370, 2002-06-20 (Released:2011-10-07)
参考文献数
12

メチシリン耐性黄色ブドウ球菌(以下MRSA)を中心とする院内感染防止対策として当院では1999年12月より強酸性水を用いた院内環境整備に取り組んでいる. 当院の2000年4月の平均入院患者数(75名)に占めるMRSA保有率が約30%にも及んでしまったことを契機に院内で統一された環境整備マニュアルを作成し, 細菌学的環境調査を行ってその成果を確認した. 気道内吸引後のカテーテルの処理など看護手順についても実際に培養検査を行って検討し, 改善している. 院内で分離されたMRSA株の分子疫学的検討では, 2000年度はまさしく院内感染が示唆されたが, 引き続き院内感染対策に取り組んだ結果, 院内環境からMRSA菌は消失した. 2001年9月のMRSA株の検討ではアウトブレイク型のMRSAは9株のうち2株にまで減少し, MRSA院内感染がようやく終息に向かっていると考えられる結果が得られた. MRSA院内感染対策としては, ウエルパスによる手指消毒を含めた衛生学的手洗いの励行が最も重要と考える.
著者
古井戸 秀夫
巻号頁・発行日
pp.1-121, 2006-03

課題番号16602016 平成16年度~平成17年度科学研究費補助金(基盤研究(C))研究成果報告書 研究代表者古井戸秀夫(早稲田大学文学学術院)
著者
柴垣 広太郎 三代 剛 福山 知香 高橋 佑典 古谷 聡史 大嶋 直樹 川島 耕作 石村 典久 長瀬 真実子 荒木 亜寿香 門田 球一 石原 俊治
出版者
医学書院
巻号頁・発行日
pp.1287-1298, 2021-09-25

要旨●H. pylori未感染者に発生するラズベリー様腺窩上皮型胃腫瘍とH. pylori既感染者に発生する腺窩上皮型胃癌の臨床病理学的特徴を検討した.前者は萎縮のない胃底腺領域に発生する発赤小隆起で,いわゆるラズベリー様外観を呈し,NBI拡大観察で不整な乳頭状/脳回様構造を呈した.後者は萎縮粘膜に発生する粗大な発赤隆起で,前者より大きく形態も歪であった.NBI拡大観察で乳頭状/脳回様構造を呈したが,形態不整は高度であった.病理組織学的には,前者はよく分化した上皮内病変で,WHO分類では多くがlow-grade dysplasia相当であったが,Ki-67 labeling indexは異型度によらず高値を示した.後者は構造異型・細胞異型が高度で,脱分化や脈管侵襲も認められ,胃型胃癌としての高い悪性度を示した.
著者
大岡 由佳 辻丸 秀策 古里 百合子 鋤田 みすず 福山 裕夫 前田 正治
出版者
久留米大学
雑誌
久留米大学文学部紀要. 社会福祉学科編 (ISSN:13455842)
巻号頁・発行日
vol.4, pp.17-27, 2004-03

本論では,犯罪被害者に認められる心的外傷,なかんずく監禁被害者の心理的問題について,2000年に起こった西鉄バスジャック事件被害者の様子から考察した.マスコミ報道による資料のほか,実際の被害者の治療経過を提示し,Symonds Mによる4段階の心理反応期に基づいて,被害者の心理的変化を分析した.また,このような被害者に対する適切なケアや支援のあり方についても論じた.
著者
大澤 隆男 古谷 純 池田 稔 熊谷 健太
出版者
一般社団法人 日本デザイン学会
雑誌
デザイン学研究 (ISSN:09108173)
巻号頁・発行日
vol.65, no.3, pp.3_33-3_42, 2019-01-31 (Released:2019-03-25)
参考文献数
16

国内電機メーカは需要の変化に伴い事業戦略の見直しが進んでおり,企業内デザイン組織はその対応からより適切なデザイン価値の提供が求められている。日立製作所デザイン本部は製品価値を高めるプロダクトデザインから,ユーザの経験価値を高めるエクスペリエンスデザインへとデザイン価値を向上させる組織改革を進めてきた。 本稿は2005年から2010年に行った日立製作所のデザイン改革を「Will:組織の思い」「Must:組織の義務」「Can:組織の技量」からなる枠組みで整理した。「Will:組織の思い」では危機意識から将来ビジョンを描き実現の行程を共有し,「Must:組織の義務」で事業ニーズと成果評価を分析しデザイン満足度を上げ,「Can:組織の技量」で経験価値を創出するデザイン基盤を整備した。これ等の活動でデザイン本部は技術ポートフォリオを変え,B2B事業の貢献を高め顧客協創によるイノベーション創出を担う組織に変貌した。本事例から電機メーカのデザイン組織改革におけるWMCモデルのフレームワークの有効性を考察した。
著者
岩崎 恵 庄古 知久 安達 朋宏 内山 まり子 加藤 開 谷澤 秀 中本 礼良 吉川 和秀 小島 光暁
出版者
一般社団法人 日本臨床救急医学会
雑誌
日本臨床救急医学会雑誌 (ISSN:13450581)
巻号頁・発行日
vol.24, no.3, pp.403-408, 2021-06-30 (Released:2021-06-30)
参考文献数
6

背景:COVID-19蔓延期の災害対応において,病院クラスター発生は病院機能停止を伴う大きなリスクである。感染者が含まれる多数傷病者受入方法を平時から検討しておく必要がある。目的:大規模災害発生時の多数傷病者受入に伴うCOVID-19クラスター発生の防止。 方法:防災訓練ワーキンググループにてCOVID-19蔓延期の災害対応を検討し,大規模災害発生時の多数傷病者受入方法とPCR検査を施行不能な場合に行う入院時のCOVID-19感染リスク分類のためのトリアージ法を策定する。結果:従来の二次トリアージに加えCOVID-19のリスク評価を行い,以下の4段階に分類するCOVIDトリアージを開発した。カテゴリーⅠ(紺)は発災前PCR陽性または抗原陽性,Ⅱ(紫):はCOVID-19の可能性が高い,Ⅲ(ピンク)はCOVID-19の可能性が低い,Ⅳ(白)は発災前PCR陰性とした。結語:災害拠点病院は潜在的なCOVID-19患者を受け入れるために従来のトリアージに加え,感染リスク別の入室カテゴリーを策定し,後日陽性者が判明した場合でも被害を最小限にする対策を準備しておく必要がある。
著者
古山 周太郎 奈良 朋彦 木村 直紀
出版者
The City Planning Institute of Japan
雑誌
都市計画論文集 (ISSN:09160647)
巻号頁・発行日
vol.47, no.3, pp.361-366, 2012

本研究では、岩手県気仙郡住田町の3か所の応急仮設住宅団地を対象に、団地で実施されているコミュニティ支援活動の実態と、入居者のコミュニティ活動の状況や活動への評価を明らかにすることを目的とした。研究方法は、仮設支援協議会の各組織が実施している活動の日誌の分析と、入居者を対象としたアンケート調査分析である。研究の結論は次の通りである。まずコミュニティ支援活動は、多数の組織の連携により実施され、目的や支援組織のかかわりかたで9つに分類できた。その活動の傾向は時期によって変化している。活動に参加した程度は年齢によって差がみられた。仮設団地でのコミュニティ支援活動は住民から一定の評価を得ており、住民同士や支援者との交流機会の提供とともに、住民に気分転換等の精神的な効果を与えていた。
著者
北川 寛 古谷 元康 王 正貫 櫛渕 大策
出版者
一般社団法人 日本農村医学会
雑誌
日本農村医学会雑誌 (ISSN:04682513)
巻号頁・発行日
vol.36, no.4, pp.933-936, 1987-11-30 (Released:2011-08-11)
参考文献数
11

当院においては農協検診を推進しており, この際, しばしば子宮筋腫がみつかり, これに対して子宮全摘出術が行なわれているが, 女性にとって特有な臓器である子宮を摘出することは, 肉体的, 精神的苦痛が大きいと考えられる。そこで子宮摘出を受けた128名の婦人に対し, 手術前後に性生活において, どのような影響を受けているかを, アンケート調査するとともに考察を行なった。1) 子宮筋腫の診断を受けると, 46.1%の人が性生活に変化を来たすが, 手術後は23.5%が手術前の性生活に戻る。2) 術後の性生活開始時期は, 31~61日が最も多く44.5%, 次いで61日以後27.3%, 30日以内22.7%であった。3) 性交時の症状として, 疹痛9.4%, 出血5.5%, 分泌物減少19.5%があり, 30%に性欲低下がみられた。日常生活では月経が無くなり, 快適になった者が多いが (57.8%), 術後頭重感, 疲労感, 体力低下を訴える者もみられた。4) 術後の性障害を軽減するために, 心因的なものには術前術後に, 患者および夫への指導を十分行ない, 時には漢方療法やバリ治療も試みるべきである。5) 今後高令化社会を迎え, 子宮全摘女性も増加することから, 心身医学的カウンセリングや一般社会への啓蒙的なアプローチも必要である。
著者
古川 顕 Akira Furukawa
出版者
甲南大学経済学会
雑誌
甲南経済学論集 = Konan economic papers (ISSN:04524187)
巻号頁・発行日
vol.60, no.3・4, pp.45-91, 2020-03-20

古代中国, なかでも春秋戦国時代は, 中国の長い歴史の中でも注目すべき激動の時代であった。春秋戦国時代の大きな特色の一つは, 従来の青銅器製造技術が高度に発達して鉄製農具が出現し, 牛を使って畑を耕す牛耕農業が出現したことである。牛耕農業の出現・普及は華北の農業生産力を飛躍的に発展させ, その農業生産力の発展を土台にして商取引の発展を促した。商取引の発展は, 商取引を円滑にする度量衡, 貨幣, 文字の全国的な統一をもたらした。古代中国の貨幣の起源を考察・検討するときにしばしば 着するのは貝殻, とりわけ子安貝である。子安貝は古来より世界的に注目されてきた貝殻であるが, なかでも古代中国の殷・周時代や春秋戦国時代などに貨幣として使用されたとされている。子安貝は, いわゆる貝貨の典型的な事例である。そうした古代中国の貨幣の発展を対象として,「近代考古学の父」と称される浜田耕作の, 古代中国の貨幣の起源を子安貝に求める独創的な考え方がある。
著者
加藤 雅代 古村 光夫 橋本 新一郎
出版者
一般社団法人 日本音響学会
雑誌
日本音響学会誌 (ISSN:03694232)
巻号頁・発行日
vol.50, no.11, pp.888-896, 1994-11-01 (Released:2017-06-02)
参考文献数
15

日本語の発音リズムとされる、モーラ単位の等時性という言語習慣に基づく新しい日本語リズム規則を提案する。まず、母音部エネルギー重心点CEGVをリズムのタイミング点と仮定し、日本語リズムを母音部エネルギー重心点間の時間長D_Gで定義した。発声器官の物理的構造による制約が、等時性を乱す第一の要因であるという仮説を立て、実音声の分析を通じて検証した。分析実験の結果をモデル化することにより定めた本リズム規則は、一つのVCV形音韻連鎖内の音韻情報のみを用いた非常にシンプルな規則ではあるが、発話速度の変化にも対応でき、音声合成のための規則として十分実用に耐えるものである。