著者
山本 雄貴 松井 尚子 平松 有 宮崎 由道 野寺 裕之 和泉 唯信 髙嶋 博 梶 龍兒
出版者
日本神経学会
雑誌
臨床神経学 (ISSN:0009918X)
巻号頁・発行日
pp.cn-000976, (Released:2017-01-28)
参考文献数
23
被引用文献数
2 6

症例は60歳男性.小児期より運動後の筋疲労感や褐色尿を自覚したが症状は軽微であった.45歳頃より両下肢遠位部優位の筋萎縮,感覚障害が進行した.神経伝導検査で軸索型末梢神経障害を呈し,シャルコー・マリー・トゥース病(Charcot-Marie-Tooth disease; CMT)が疑われた.55歳より横紋筋融解症を繰り返すようになり,血清アシルカルニチン分析と遺伝子検査から三頭酵素欠損症と診断した.三頭酵素欠損症は先天性脂質代謝異常症の稀な一型であるが,末梢神経障害を合併してCMTに類似した臨床所見を呈しうる.筋症状を伴う進行性の末梢神経障害をみた場合,積極的に本疾患を疑って精査すべきである.
著者
宮崎 珠子 宮崎 雅雄 安田 準 岡田 啓司
出版者
日本家畜臨床学会 ・ 大動物臨床研究会
雑誌
産業動物臨床医学雑誌 (ISSN:1884684X)
巻号頁・発行日
vol.1, no.2, pp.54-61, 2010-11-05 (Released:2012-12-07)
参考文献数
28
被引用文献数
1 1

哺乳子牛は,摂取した乳汁を第四胃で凝乳し,固体成分のカードと液体成分のホエーに分けて消化を行う特有の消化機構を有する.本報では,子牛の第四胃のカード形成を,超音波画像診断法を用いて,リアルタイムに評価する手技について報告する.プローブを正中線に沿って動かして第四胃の横断像を描出し,第四胃が最大に見えた部位でプローブを体側方向に動かし,左右両方の側面から第四胃の内容物について観察することで,カードは明瞭な輪郭を持つエコージェニックな画像として,ホエーはエコーフリーな画像として描出される.カードの有無を含めた形成状態を評価する最も適した時間は,明瞭な輪郭を持つ大きな一塊のカードが観察される哺乳後1〜2時間が推奨される.超音波検査は非侵襲的であり,無麻酔での検査が可能なため,野外でも臨床応用できる利点がある.同じ凝乳する代用乳を哺乳した29頭の子牛について,第四胃のカード形成状況を調べたところ,29頭中8頭の子牛でカードが形成されず,凝乳する代用乳を哺乳してもカードを形成しない子牛が存在することを明らかにできた.以上のように,第四胃の超音波検査は,リアルタイムに哺乳子牛のカード形成を評価でき,カード形成牛と非形成牛の迅速なスクリーニングが可能になった.
著者
池田 徹 上野 雄也 宮崎 則幸 伊東 伸孝
出版者
The Japan Institute of Electronics Packaging
雑誌
エレクトロニクス実装学会誌 (ISSN:13439677)
巻号頁・発行日
vol.4, no.1, pp.47-55, 2001-01-01 (Released:2010-03-18)
参考文献数
12
被引用文献数
1

プラスチックパッケージが, はんだリフロー時に割れを起こす現象は, 以前よりよく知られている。この主な原因は, 吸湿した水分がリフロー時に蒸気となり, その蒸気圧によってダイパッド等の角部から樹脂が割れることによる。鉛ブリーはんだの導入によるリフロー温度の上昇は, 割れの防止をより困難なものにすることが予想され, 効果的な設計手法の確立が望まれる。本論文では異種材接合角部の応力拡大係数を, パッケージ中の樹脂角部の強度評価に利用する。すなわち, パッケージの吸湿解析と応力解析より求められる, 樹脂角部の応力拡大係数を用いて, 割れの発生を評価し, さらに, リフロー割れを起こしにくいパッケージの形状設計について検討する。
著者
宮崎 忠恒
出版者
Business History Society of Japan
雑誌
経営史学 (ISSN:03869113)
巻号頁・発行日
vol.43, no.1, pp.1_56-1_86, 2008 (Released:2011-10-18)

This paper focuses on problem about management and collection of the loans by government financial institution. Specifically, this article examines how the Japan Development Bank (JDB, Nihon Kaihatsu Ginkou) managed and collected loans that taken over from the Reconstruction Finance Bank (RFB, Fukkou Kinyuu Kinko) in the first half of the 1950s.The RFB, which played an important role in reconstruction of Japanese economy after World War II by supplying industrial funds, was disbanded in January 1952. Its vast uncollected loans were taken over by the JDB. Since then, the JDB managed and collected those loans.Among those loans, loans to coal mining industry were the biggest one measured by outstanding loans and amount of collection. In addition, collection rate of loans to that industry was lowest at end of March 1956.In the first half of 1950s, for the JDB, collected money of those loans was important resource on its own activities. Therefore, the JDB selected to mitigate collection from coal mining industry on its own managerial point of view. Around the same time, the Government, whose priority was put on cutting price of coal, made several plans that included across-the-board mitigation of collection from that industry. However, those plans were not brought into effect. If political and unselective mitigation carried out along those plans, collection rate of loans to that industry was far lower.Previous studies about the JDB put importance on its independence at lending activities that is one aspect of the financial institution. However, the result of this paper shows that its subjectivity at managing and collecting activities that is another aspect also should be emphasized.
著者
宮崎 三世
出版者
日本文学協会
雑誌
日本文学 (ISSN:03869903)
巻号頁・発行日
vol.58, no.8, pp.33-43, 2009

「道化の華」は、小説の登場人物である葉蔵と、その書き手である「僕」が重ね合わされるようにして書かれている。「僕」は、葉蔵の小説を書くことによってそれを生き、自らの抱える問題の答えを求めようとしているのだと、作品そのものに示されているということではないだろうか。それは、葉蔵と同様に心中相手の女を死なせて一人生き残った男である「僕」が、これからどのように生きていけるのか分からないということである。「僕」は結局、そのことに解決や救いが与えられることはないと認め、葉蔵が女の死を忘れずに引き受けていく他ないと示す結末を書く。「僕」は小説を書く理由を「復讐」と答えるが、「僕」が怒りを向ける相手とは、自分自身をおいてはないだろう。本作品では、小説を書くことによって強烈な自意識に付きまとわれ続ける男、つまり書き手の「僕」自身の姿が、まるで地獄に閉じこめられるかのように描かれることとなったのである。
著者
宮崎 武 荒木 俊輔 上原 聡 野上 保之
出版者
一般社団法人電子情報通信学会
雑誌
電子情報通信学会技術研究報告 = IEICE technical report : 信学技報 (ISSN:09135685)
巻号頁・発行日
vol.114, no.470, pp.97-102, 2015-03-02

素体上のロジスティック写像は,一般的に実数上で定義されるロジスティック写像を素体上で定義し,入力値と写像値を素体の元として計算機上で演算しやすい繰り返し写像である.この写像より得られる擬似乱数系列は,低い演算精度でも十分な乱数性を有していることを示したが,その系列については,まだ十分な解析がなされていない.本稿では,素体上のロジスティック写像における自己相関値により,演算精度に近い周期を持つループの存在を示し,そのループの種類を分類する.また,素体を構成する素数がメルセンヌ素数である場合は,それらのループが同じ種類になることを実験的に示す.
著者
宮崎 俊明
出版者
教育哲学会
雑誌
教育哲学研究 (ISSN:03873153)
巻号頁・発行日
vol.1985, no.51, pp.21-25, 1985-05-10 (Released:2009-09-04)

ヘーゲルはその『歴史哲学』で思推をこととする哲学と所与の事実につく歴史を対比し、「哲学の仕事は歴史の研究には矛盾するように思える」としたが、今回与えられた課題の「研究」、「哲学的」、「歴史的」をどう把えるかの差で「接点」を求める方向も異なるだろう。哲学的、歴史的な全体性や理性、さらにはそこでの批判、反省、形成の理論-実践問題は、科学理論や教育学の基礎問題となろうし、ここ十余年、理論的批判性の欠落、実践的解放性の貧困、イデオロギーによる汚染、科学主義という実体化された物象化といった論議があり、教育学場面ではより積極的に、忘却された文化連関の回復、教育的日常の発掘などが課題とされている。以下では、これらに係わる事実をまずペスタロッチとその研究で確認し、そのあと現代西独にみられる教育学論議をふまえて基本線の試みを略述したい。
著者
宮崎 犀一
出版者
The Japanese Society for the History of Economic Thought
雑誌
経済学史学会年報 (ISSN:04534786)
巻号頁・発行日
vol.38, no.38, pp.91-97, 2000 (Released:2010-08-05)

The Japanese Society for the History of Economic Thought was formed in 1950. I joined the Society next year, my favorite subject has been Adam Smith or Karl Marx. Its main reason was the deep influence of works by two Japanese professors, Zenya Takashima and Eiichi Suguimoto (1945-50). Studying their methodological views on political economy and social science, I started the exploration of this discipline in these years.Prof. Yoshihiko Uchida's The Birth of Political Economy, published in 1953, had a formidable impact on Japanese Smithian studies. Its penetrating analysis of Smith's theory, policy and ideology was very exciting and fascinating but caused considerable debate among scholars. His great emphasis was on the necessity of ‘fighting against employing a Smithian solution to pre-Smithian matters’, which has important implications in Japan now.In 1946, Prof. Suguimoto declared the immaturity of Marx's Capital and the need for the consideration of ‘plan’. In response to this pioneering discourse, and afterwards stimulated by French Marxologist Prof. Maximillian Rubel, I worked and published several articles and books on Marx's economic doctrine and thought.