著者
宮崎 総一郎 北村 拓朗
出版者
一般社団法人 日本耳鼻咽喉科頭頸部外科学会
雑誌
日本耳鼻咽喉科学会会報 (ISSN:00306622)
巻号頁・発行日
vol.115, no.9, pp.830-835, 2012 (Released:2012-11-23)
参考文献数
18

睡眠は, 大脳の進化とともに発達してきた. 睡眠は疲れたから眠るといった消極的な生理機能でなく, 「脳を創り, 育て, より良く活動させる」積極的な機能がある. さらに, 記憶や運動技能を向上させる能動的な生理活動がなされる時間でもある.睡眠呼吸障害では, 睡眠中の呼吸努力により覚醒反応が生じ, 睡眠の分断化が起こり, 睡眠が障害される. 小児睡眠呼吸障害では, 睡眠が障害されるために成長ホルモン分泌が障害され, 成長障害が生じる. さらに, 知能低下, 学業成績不良, 夜尿, 注意欠陥, 多動, 攻撃性, などの多くの問題を生じる. 知能低下の説明として, 最近では成長ホルモンに関連してIGF-1の関与が注目されている.小児睡眠呼吸障害の原因として多数を占めるのは, アデノイド・口蓋扁桃肥大であるが, 最近ステロイド点鼻を軽症から中等症の睡眠時無呼吸例で鼻閉の改善とアデノイド縮小効果を期待して, 適用する治療法の有効性が多く報告されている.
著者
宮崎 幸雄
出版者
The Society of Synthetic Organic Chemistry, Japan
雑誌
有機合成化学協会誌 (ISSN:00379980)
巻号頁・発行日
vol.42, no.10, pp.900-911, 1984 (Released:2009-11-13)
参考文献数
38
被引用文献数
1 2

The ionophorous antibiotics are a member of compounds possessing the ability to form complex with alkali ions and to carry ions across lipid barrier including artificial and biological membranes.These antibiotics have been employed as tools for studying properties of membrane-bound carriers as well as the molecular basis of biological ion discrimination. This report described the property of cation ionophores and some of biological applications of these substances.
著者
鈴木 誠 宮崎 崇
出版者
The Japan Society of Calorimetry and Thermal Analysis
雑誌
熱測定 (ISSN:03862615)
巻号頁・発行日
vol.34, no.5, pp.244-250, 2007-11-15 (Released:2009-09-07)
参考文献数
25

高分解マイクロ波誘電スペクトルを応用した水中の溶質の水和状態を解析する方法を開発した。φスキャン法は溶質周りの水の誘電特性の空間分布に関する情報を提供する。溶質として,アルカリハライド塩,荷電高分子,タンパク質分子等の水和状態を明らかにすることができる。水の構造を破壊する塩として知られるヨウ化アルカリ等はバルクの水より高い誘電緩和周波数の水(ハイパーモバイル水)を周りにもっている。荷電密度の高い高分子やアクチンフイラメントもハイパーモバイル水をもっている。この水は,アクトミオシンの運動機構に関わるなど,生理的な意味でも重要な役割を担っているかもしれない。
著者
木村 雄希 岩谷 一生 栁 洋成 宮崎 敏昌
出版者
一般社団法人 電気学会
雑誌
電気学会論文誌D(産業応用部門誌) (ISSN:09136339)
巻号頁・発行日
vol.140, no.5, pp.372-377, 2020

<p>The use of triple active bridge (TAB) converters in distributed electric grids has attracted considerable attention because of their multi-directional power connection, insulation performance, and small size. However, there remains a problem with respect to the interaction between two current loops with TABs, and there are few solutions to this problem when an AC supply is connected to the system. In this paper, we propose a method to suppress the interference by using iterative control as the main approach, taking into account the occurrence of periodic disturbance in the TAB converter when connected to an AC system. In order to estimate the characteristics of the proposed method, a prototype is built and tested experimentally. As a result, it is confirmed that the measured grid current THD is within 5% and that he battery current ripple decreased by 84% at a maximum.</p>
著者
KIM Won-Keun 池田 徹 宮崎 則幸
出版者
一般社団法人エレクトロニクス実装学会
雑誌
エレクトロニクス実装学会誌 (ISSN:13439677)
巻号頁・発行日
vol.6, no.2, pp.153-160, 2003
被引用文献数
4

異方性導電フィルムは, 液晶ディスプレイ実装分野などでの電気的接続に広く用いられている接着材料である。異方性導電フィルムによる接合部は, 樹脂の収縮によって, バンプ間に圧力を発生させ, これによって導通を確保する。一方で, 樹脂の収縮は, 半導体チップや基板との接合部をはく離させる推進力となるため, その両者のバランスのとれた設計が必要である。本研究では基板, 半導体チップと異方性導電フィルムの界面のはく離試験方法を開発し, 異種材界面き裂の応力拡大係数を用いて接合強度の評価を行う手法を提案する。
著者
宮崎 純弥 村田 伸 堀江 淳 鈴木 秀次
出版者
理学療法科学学会
雑誌
理学療法科学 (ISSN:13411667)
巻号頁・発行日
vol.25, no.3, pp.379-383, 2010 (Released:2010-07-28)
参考文献数
28
被引用文献数
4 3

〔目的〕男性高齢者における30秒間の開眼片足立ち保持の臨床的意義ついて,身体機能との関係から検討した。〔対象〕健康調査に参加した男性高齢者57名とした。〔方法〕30秒間の開眼片足立ち保持が可能な者(可能群)と保持ができない者(不可能群)における矢状面脊柱アライメント,大腿四頭筋筋力,足把持力,最大歩行速度,Timed Up and Go test,10 m障害物歩行,6分間歩行距離テストについて,年齢を共変量とした共分散分析で比較した。〔結果〕胸椎後彎角以外のすべての測定項目で,2群間に有意差を認め,可能群が高い能力を示した。〔結語〕開眼片足立ち保持時間が30秒保持可能群と不可能群では,明らかに身体機能に差を認めることから,臨床的意義があることが示唆された。
著者
松浦 記大 藤谷 和正 中塚 梨絵 宮崎 進 團野 克樹 小森 孝通 本告 正明 柏崎 正樹 岩瀬 和裕
出版者
一般社団法人 日本消化器外科学会
雑誌
日本消化器外科学会雑誌 (ISSN:03869768)
巻号頁・発行日
vol.51, no.6, pp.406-414, 2018-06-01 (Released:2018-06-29)
参考文献数
38
被引用文献数
2 3

2次性大動脈十二指腸瘻(secondary aortoduodenal fistula;以下,sADFと略記)はまれな疾患ではあるが,診断に難渋し致死的な転機をたどることも多い.今回,我々はsADFの3症例を経験し,診断・治療・術後成績の三つの観点から検討を行った.2症例は吐・下血の原因としてのsADFの診断に難渋し,全症例でsADFに対する治療介入を行い一旦は救命できたもののうち2症例は術後感染症により致死的な転帰をたどった.人工血管置換術後の消化管出血を見た場合,sADFを鑑別疾患として挙げ,感度・特異度とも高いとされているCTを早期に行うことが重要である.また,sADFが疑われた場合,感染のコントロール,すなわち人工血管除去を念頭に遅滞のない手術を考慮することが重要である.
著者
新井 郷子 宮崎 徹
出版者
金原一郎記念医学医療振興財団
巻号頁・発行日
pp.148-154, 2019-04-15

Apoptosis inhibitor of macrophage(AIM,遺伝子名CD5L)は,体内を循環する血中タンパク質であり,これまでに,肥満や脂肪肝の抑制機能や,近年では,急性腎障害や真菌性腹膜炎などの組織障害を伴う疾患の治癒を促進することが見いだされている。血中でAIMはそのほとんどが免疫グロブリンM(immunoglobulin M;IgM)に結合して安定化しており,AIMの体内量や活性の調節はIgMによるところが大きい。健常時はIgMに結合しているAIMは,特定の疾患時にIgMから解離することで可動性が増すと共に,活性状態が最大化される。すなわち,IgMは抗体としての役割だけでなく,AIMのキャリアとしての重要な任務を果たしているといえる。しかしながら,AIMがどのような結合様式でIgMと複合体を形成し,そして如何なるメカニズムで解離が誘導されるのか,その調節機構については未知であった。今回筆者らは,AIMとIgMの結合について,両者の複合体を電子顕微鏡で解析し,構造を視覚的に明らかにすることに成功した。この発見は,AIMとIgMの複合体形成の機序だけでなく,IgMの構造そのものに関しても免疫学の教科書を書き換えるほどの発見をもたらした。本稿では,AIMのIgMとの結合・解離に関する新しい知見をベースに,これまでに蓄積された,疾患におけるAIMの機能や,治療・診断応用における可能性を紹介する。
著者
宮崎 徹 新井 郷子 新井 郷子
出版者
東京大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2007

AIM に結合するタンパク質の候補が複数得られた。ヒト血中AIM 濃度測定系(ELISA 法)を確立した。これにより、動脈硬化あるいは大動脈瘤や脳心臓血管障害など動脈硬化を基盤とする疾患や、他のメタボリックシンドロームと血中AIM 濃度の関連性、もしくは疾患の進行度と血中AIM 濃度の関連性を解析することが可能となった。適時不活性化が可能なAIM コンディショナルノックアウトマウスのターゲティングベクターの構築を行った。
著者
新井 郷子 宮崎 徹
出版者
東京大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2012-04-01

マクロファージが産生する分泌タンパク質AIM (apoptosis inhibitor of macrophage) は肥満やそれに伴うインスリン抵抗性惹起等の生活習慣病に深く関る分子であり、体内AIMの機能や量の制御は、AIMが関る疾患の予防や病態進行の制御に有効である可能性がある。本研究では、AIMの機能および量的制御方法の探索を行い、また肥満由来の自己抗体産生および脂肪肝由来肝がんについてAIMと疾患の関連性を明らかにした。さらにヒトにおいて健常者および肝疾患患者における血中AIM値測定を大規模に行うことで、AIMによる疾患の制御の可能性および疾患マーカーとしての有用性を見出した。
著者
張 英裕 宮崎 清
出版者
一般社団法人 日本デザイン学会
雑誌
デザイン学研究 (ISSN:09108173)
巻号頁・発行日
vol.49, no.3, pp.1-10, 2002-09-30 (Released:2017-07-19)
参考文献数
15

本論文は、台湾における寺廟建築の装飾技術「剪粘」を支えた職人集団の出自と組織構成の解析を中心として、その実像を明らかにしたものである。歴史的資料の解析、ならびに、「剪粘」職人へのインタビューを通し、次の諸点を明らかとしてた。(1)台湾における「剪粘」職人の起源は、17世紀後半に中国大陸東南海岸一帯から渡台した漢人たちが、寺廟建設のために招請した中国大陸の建築職人である。(2)建築職人は、大別して「大木」「小木」「土水」「石作」「漆絵」「陶塑」から構成されていたが、「剪粘」は、「泥塑」「交趾陶」とともに、「陶塑」に帰属していた。(3)「剪粘」の職人集団は「師匠」「出師」「未出師」からなり、技術伝承は「異姓拝師」「家族伝授」による「師徒制」に依拠していた。(4)個々の「剪粘」職人集団には請負仕事における空間的テリトリーがあり、たいていの場合、テリトリーの遵守が規範とされていた。(5)1970年代からの台湾の工業化の伸展とともに、「専用陶片」や既製の装飾部材が出現し、伝統的な寺廟の装飾技術としての「剪粘」は衰退の一途を辿っている。
著者
小川 渉 宮崎 滋
出版者
一般社団法人 日本総合健診医学会
雑誌
総合健診 (ISSN:13470086)
巻号頁・発行日
vol.42, no.2, pp.301-306, 2015 (Released:2015-05-01)
参考文献数
20
被引用文献数
10 17

肥満は2型糖尿病や脂質代謝異常症、高血圧に代表されるような動脈硬化性疾患のリスク因子に加え、蛋白尿や非アルコール性脂肪肝(non-alcoholic fatty liver disease: NAFLD)、高尿酸血症など様々な疾患・病態の発症基盤となることから、肥満をどのように診断し、どのような対象に介入を行うかは重要である。わが国では欧米のような高度の肥満者は少ないにも関わらず、2型糖尿病や脂質異常症、高血圧などの肥満に関連する疾患の有病率は比較的高いことから、欧米より厳しい基準で肥満を診断することは妥当と考えられる。日本肥満学会では、肥満に関連する健康障害の有病率に関する疫学調査などから、BMI18.5以上25未満を普通体重とし、これを超えるものを肥満、下回る者を低体重と定義している。また、肥満の中でも、医学的に減量を必要とする病態を肥満症と呼び一つの疾患単位として捉えることを提唱してきた。肥満症の考え方として、現在健康障害を持つものだけではなく、将来健康障害を発症する可能性が高いものを含む点が重要である。内臓脂肪型肥満が健康障害を伴いやすいハイリスク肥満であることは知られている。内臓脂肪型肥満の診断手順は、ウェスト周囲長によるスクリーニングの後、腹部CT検査により内臓脂肪面積を測定する。一方、日本人間ドック学会・健康保険組合連合会により公表された「新たな検診の基本検査の基準範囲」は、特定の疾患を持たず、特定の疾患の薬物治療を受けていない集団の平均的なBMIの分布範囲を示したものにすぎない。この基準範囲にはハイリスク肥満である内臓脂肪型肥満が含まれており、これらは減量介入が必要な肥満症患者であることを強調したい。健診や人間ドックに従事される方は、これらの診断基準や基準範囲の設定の手法、目的の差異を十分に理解の上、業務にあたられたい。