著者
石山 禎一 宮崎 克則
出版者
西南学院大学博物館
雑誌
西南学院大学博物館研究紀要 = Research bulletin of Seinan Gakuin University Museum (ISSN:21876266)
巻号頁・発行日
no.8, pp.3-27, 2020-03

国外追放となったシーボルトが其扇へ送った最初の手紙は、これまで未発表だった。シーボルトの手紙は、1941年刊の『シーボルト関係書翰集』に多く載っているが、この手紙は掲載されていない。『シーボルト関係書翰集』は、ベルリンにあった日本研究所(日本学会)が収集したシーボルト関係資料をもとにしており、それは、1927年にシーボルトの孫娘エアハルト男爵夫人エーリカからベルリン日本研究所が一括購入したものである(ベルリン日本研究所の収集資料は、1935年、上野の東京国立博物館で開かれた「シーボルト資料展覧会」(4月20日~ 29日)のために日本へ貸し出された。その時、2年間をかけて資料撮影が行われ、白黒反転のフォトシュタット版複製品は東洋文庫に現存する)。ここで紹介する手紙は、シーボルトの次女マチルデ・フォン・ブランデンシュタインの子孫家に伝わる手紙である。ブランデンシュタイン(Brandenstein)城に残るシーボルト手紙の一部は、宮坂正英氏らによって紹介され、日本語訳も付されているが、この手紙は未発表である。1829年、国外追放となったシーボルトは長崎を出港し、オランダによるアジア貿易の基地があったインドネシアのバタヴィア(現ジャカルタ)に着く。彼はバタヴィアからオランダへ向けて出港するとき、其扇へ3 通の手紙を送った。オランダ語で書かれたシーボルト自筆の手紙の他に、内容を和訳し「女房詞」調の「くずし字」で書かれた和訳文の手紙も残る。シーボルトが送った3 通の手紙は、その年の其扇の返事に「三月四日、同七日、同十四日、三度御手紙相とゝき」とあるから、確かに届いている。本稿ではオランダ語原文、「女房詞」調の和文を全文掲載し、併せて現代語訳も掲載する。手紙には、どのようなシーボルトの想いが込められているのだろうか。また彼は、日本に残した妻子の「面倒」をどのように見たのだろうか。
著者
宮崎 市定
出版者
史学研究会 (京都大学文学部内)
雑誌
史林 = THE SHIRIN or the JOURNAL OF HISTORY (ISSN:03869369)
巻号頁・発行日
vol.40, no.6, pp.441-454, 1957-11-01

産業革命以前の世界史において、中国の鉄産は世界的に重要な意義を有した。戦国時代の頃から中国では鉄器の使用が盛んとなり、漢代に入って一つの頂点を形造る。支那の鉄はローマの市場にまで販売された。漢が匈奴に打撃を与えて之を西方に遁走せしめたのは、鉄製武器のおかげであった。然るに三国以後に入って中国国内は鉄の不足を感じた。クビカセ、アシカセのような刑具をも、従来鉄製であったものを木製品で代用した。この時代に成立したと思われる北方民族の言語の中に、中国語の鉄という言葉が直接受容された形迹がない。ところが唐末から宋初にかけて中国に燃料革命とも称すべきものが起り、石炭を燃して高熱を得、製鉄にも石炭を利用して大量生産が可能となった。ここに世界史上、極東の優位が出現し、支那鉄を利用した蒙古の大征服、これに圧されてトルコ族の西遷という事件も起った。南海方面では中国の鉄が重要な貿易品となり、アラビア半島にまで輸出された。In the world history before the industrial revolution, the iron manufacturing in China was of world-wide importance. The ironwares were extensively used since the age of Chan-kuo (戦国時代 or Warring Kingdoms) and culminated in the Han dynasty. Chinese iron was sold as far as Rome. It was accomplished by iron weapons that the Han dynasty could attack and expel the enemy Huns to the west. After the age of the Three Kingdoms (三国時代), there was lack of iron in China; even the implements of pubishment, however, such as cangues and fettets, formerly ironmade, were replaced with wooden ones. In that language of the northern tribes which appeared to be established in this period, there was no evidence that the Chinese word t'ieh (鉄 iron) was directly introduced. The revolution which deserved the name of the feul revolution, however, broke out from the end of T'ang (唐) to the beginning of Sung dynasty; by mass production in the iron manufacturing realized by using coal, the Far East civilization had the advantage over the world, such as the Mongolian conquest by using Chinese iron and the consequent westward movement of Turks. In the South Seas, Chinese iron became one of the most important merchandise and was exported as far as the Arabian Peninsula.
著者
野田 航 石塚 祐香 石川 菜津美 宮崎 優 山本 淳一
出版者
一般社団法人 日本認知・行動療法学会
雑誌
認知行動療法研究 (ISSN:24339075)
巻号頁・発行日
pp.20-019, (Released:2021-06-21)
参考文献数
17

本研究の目的は、発達障害のある児童2名の漢字の読みに対して刺激ペアリング手続きによる遠隔地学習支援を実施し、その効果と社会的妥当性について検討することであった。事例Iにおいてはタブレット端末による刺激ペアリング手続きの教材を用いた自律的な学習をビデオ通話およびメールで遠隔地学習支援を行い、事例IIにおいてはビデオ通話を用いて教材提示から評価までをすべて遠隔で実施した。両事例とも、課題間多層プローブデザインを用いて介入効果を検証した結果、漢字単語の読みの正答率が向上した。また、対象児と保護者を対象に実施した社会的妥当性のインタビューから、本研究の遠隔地学習支援は高く評価されていた。一方で、事例Iにおいては介入効果の維持に一部課題が残った。介入効果を維持させるための介入手続きの改善、介入効果の般化の検討、介入実行度の検討など、今後の課題について考察した。
著者
埒 倫太郎 宮崎 ひろ志
出版者
公益社団法人 空気調和・衛生工学会
雑誌
空気調和・衛生工学会大会 学術講演論文集 (ISSN:18803806)
巻号頁・発行日
vol.2015, pp.177-180, 2015

<p>実際の建物における通気層の遮熱効果について実測的に評価した例は少ない。そこで本研究は、屋根面のダブルスキン化、通気層の夏季における遮熱効果を定量的に評価することを目的としている。住宅の場合、屋根のダブルスキン化で設けられる通気層断面は一般的に小さく、その効果測定は難しい。本研究ではダブルスキンの隙間、通気層内に超小型風速計を設置し、風速、風温の測定を行った。これらの結果より、住宅屋根空気層の通風量を推定し、ダブルスキンの評価を試みた。</p>
著者
井之口 昭 中島 俊之 宮崎 純二
出版者
一般社団法人 日本耳鼻咽喉科学会
雑誌
日本耳鼻咽喉科学会会報 (ISSN:00306622)
巻号頁・発行日
vol.111, no.3, pp.87-90, 2008 (Released:2009-06-03)
参考文献数
4

嗅覚障害の診断には従来より静脈性嗅覚検査が用いられてきた. 検査は肘静脈から一定の手技で行うため, 再現性のある一定の匂い刺激になっていると考えられてきた. しかし, 実際に匂い強度を連続的に測定してみると必ずしも一定の匂い刺激ではなかった. 現在の実施方法では, 70%の例では匂い強度が1回だけピークを形成するパターンをとり, 残りの30%の例では複数回の強度ピークを形成することがわかった. そこで一定かつ再現性のある匂い刺激を模索するために注射液の量や注入時間を変化させて最適の注入方法を検討した. すると, アリナミン原液2mlを生理食塩水10mlに希釈し, 全体で12mlの液を40秒かけて注射する方法が全例で1回ピークパターンをとり, 最適の方法であることが判明した. 自覚的な匂い強度もガスセンサで測定した他覚的な匂い強度も原法とほぼ同じであった. 新注射法のもう1つのメリットとして血管痛の副作用が全くないことが挙げられる. アリナミン原液の強酸性が生理食塩水で薄められたためと思われる.嗅覚障害の治療にはステロイド点鼻療法が推奨されてきたが, その投薬コンプライアンスについてはほとんど関心をもたれてこなかった. 特に老人や頸椎疾患患者では懸垂頭位をとることは不可能である. そこで安楽かつ簡便に行える点鼻頭位を検討するため, 屍体頭部をさまざまな角度に倒立させて点鼻液が鼻内のどの部位に到達するか実験を行った. すると懸垂頭位では後屈角を90度ないし100度にしないと嗅裂に点鼻液が到達しないことがわかった. 懸垂頭位で点鼻を行う場合は鼻橋に沿って点鼻すれば後屈角80度でも嗅部に液が到達することもわかった. より患者に負担が少なく, 確実に嗅裂に点鼻液が到達する姿勢として枕なし側臥位を考案した. この頭位・姿勢で点鼻することにより簡便・安楽に投薬コンプライアンスを良好に保つことができた. 嗅覚障害治療にあたっては詳細に点鼻姿勢を指導することが重要である.
著者
宮崎 純二 松下 英友 山田 昇一郎 井之口 昭
出版者
耳鼻咽喉科臨床学会
雑誌
耳鼻咽喉科臨床 (ISSN:00326313)
巻号頁・発行日
vol.97, no.8, pp.697-705, 2004-08-01 (Released:2011-10-07)
参考文献数
17
被引用文献数
2 3

In order to obtain a sufficient effect when instilling steroid nasal drops in patients with olfactory dysfunction, the medication must reach and be deposited into the olfactory cleft. Some head positions, such as head-down-and-backwards position, are recommended to instill drops. These positions are, however, known to be uncomfortable and can lead to poor patient compliance. Moreover, there is no clear evidence showing that nasal drops can be delivered into the olfactory cleft in these positions.In this study, we reviewed these positions by utilizing a cadaver head and performing a gravitational flow study using colored nasal drops. The results showed that when using these positions, instilled nasal drops did not reach the olfactory cleft except in limited trials. With the above-mentioned negative points in mind, we devised a new head position, on the side, head down, and found it to be both effective and comfortable for delivering nasal drops into the olfactory cleft.
著者
宮崎 修二
出版者
一般社団法人 日本オリエント学会
雑誌
オリエント (ISSN:00305219)
巻号頁・発行日
vol.46, no.1, pp.57-82, 2003

In the research of ancient Palestine, Tel Zeror, located in the northern Sharon plain, is generally considered to be a site once occupied by the Sikil Sea People (formerly known in the scholarship as Tjekker) in the early Iron Age. The examination of artifacts brought from mid 1960s excavations of Tel Zeror, some of which are examined here for the first time, reveals that the site's ethnic association with the Sikils is not sufficiently supported, despite the fact that some &ldquo;Philistine&rdquo; indicators, such as the lion-headed cup, or &ldquo;rhyton&rdquo;, and bottle pyxis were found at the site. The material culture revealed by the early Iron Age layers, including collared-rim pithoi, fails to demonstrate that a certain ethnic group was dominant among the population of Tel Zeror in this period. Furthermore, the common assumption that a fortress that once stood at Tel Zeror that dates back to the late 11th century BC was built by the Sikils is belied by the fact that recent excavations at nearby Dor indicate that the Sikil's settlement there had been destroyed before the fortress was constructed at Tel Zeror.<br>The history of the northern Sharon plain in the late 11th century BC should not be characterized chiefly in terms of Philistine material culture. The local Canaanite tradition still existed, and &ldquo;Phoenician&rdquo; influences had started to emerge. The Philistine, or Sea Peoples, culture only played a limited role outside the southern coastal plain, with the probable exceptions of coastal cities in the north, like Dor and Akko. It is more likely that the basic cultural character of early Iron Age Tel Zeror belonged to the continuity of the local tradition. New elements, which can possibly interpreted as belonging to the Sea Peoples, do not have any significance in the material culture of early Iron Age Tel Zeror, particularly in the late 11th century BC. Archaeologically, the Sikil's dominance over the northern Sharon plain cannot be demonstrated in the way most scholars have come to accept.
著者
宮崎 雄生 新野 正明 深澤 俊行 高橋 恵理 野中 隆行 越智 龍太郎 南 尚哉 藤木 直人 土井 静樹 菊地 誠志
出版者
日本臨床免疫学会
雑誌
日本臨床免疫学会会誌 (ISSN:09114300)
巻号頁・発行日
vol.37, no.4, pp.357a, 2014 (Released:2014-10-07)

【目的】Sirtuin-1(SIRT1)はヒストン脱アセチル酵素であり,神経保護や脂質代謝などへの関与が報告されている.本研究ではヒト単球のIL-10制御におけるSIRT1の役割を検討した.【方法】健常者末梢血から精製した単球を用いLPSまたはIFNβで刺激後にSIRT1遺伝子発現を定量した.健常者,無治療multiple sclerosis(MS)患者,IFNβ治療MS患者の単球におけるSIRT1発現を定量した.単球のIL-10産生に対するresveratrol(SIRT1活性化剤),EX527(同抑制剤)の作用を検討した.【結果】単球におけるSIRT1発現はLPSで低下した一方,IFNβで上昇した.単球におけるSIRT1発現に健常者と無治療MS患者間で差は確認できなかったが,IFNβ治療患者で無治療患者より高い傾向が見られた.ResveratrolはLPS刺激に対する単球のIL-10産生を増強した.IFNβは単球からのIL-10産生を増強したが,この作用はEX527によりキャンセルされた.【結論】SIRT1は単球のIL-10制御に関与しており,IFNβによるIL-10産生増強にも関与することが示唆された.SIRT1は神経変性疾患動物モデルにおいて神経保護作用が報告されており,神経と免疫双方が関与する疾患であるMSにとって有用な治療標的であると予想される.
著者
田中 健太郎 宮崎 浩一
雑誌
情報処理学会論文誌数理モデル化と応用(TOM) (ISSN:18827780)
巻号頁・発行日
vol.4, no.3, pp.1-13, 2011-07-20

本研究では,オプションのデルタヘッジ戦略への利用をふまえて,将来の実現ボラティリティを予測するモデルを提案し,既存モデルに基づく場合とデルタヘッジ戦略の収益性を比較検討する.提案モデルは,実現ボラティリティとインプライドボラティリティの比に関する時系列データを利用したものであり,デルタヘッジ戦略の収益性は,既存モデルによるものよりも高い.実証分析では,この結果がどのようなメカニズムから生じるかについても詳細に検討する.
著者
村元 隆行 宮崎 真緒 手塚 咲
出版者
公益社団法人 日本畜産学会
雑誌
日本畜産学会報 (ISSN:1346907X)
巻号頁・発行日
vol.87, no.4, pp.389-392, 2016-11-25 (Released:2016-12-15)
参考文献数
16

パイナップル果汁の注入が日本短角種牛肉のテクスチャーおよび保水性に及ぼす影響について検討を行った.6頭の日本短角種去勢牛の半膜様筋から各4個の筋肉サンプル(2cm厚かつ60g)を切り出し,対照区,針刺区(注入なし),塩水区(生理食塩水注入),および果汁区(パイナップル果汁注入)の4つの試験区に分けた.すべての筋肉サンプルは真空包装し,4°Cで24時間の貯蔵を行った後,ドリップロス,クッキングロス,およびテクスチャーを分析した.最大荷重,ガム性荷重,および凝集性は,果汁区が他の試験区に比較して有意に低かった.付着性,破断変形,および破断歪率に試験区間での有意な差は認められなかった.ドリップロスおよびクッキングロスには試験区間での有意な差は認められなかった.これらの結果から,日本短角種牛肉へのパイナップル果汁の注入は保水性を低下させることなく軟化させられる可能性が示された.
著者
宮崎 星夫 大久保 一彦
出版者
日経BP社
雑誌
日経レストラン (ISSN:09147845)
巻号頁・発行日
no.324, pp.70-73, 2003-02

三重県津市の郊外で13坪(42.9)、22席のラーメン店を経営しています。このエリアには無かった、とんこつしょう油がベースの太麺を使ったラーメンに着眼したところ、開店して5年たった現在も、売り上げが月400万円前後と好調です。そろそろ2号店、3号店を考え始め、昨年末には、車で4、5分の場所に、鉄板焼き店だった居抜き物件も購入しました。