- 著者
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山田 誠二
小松 孝徳
- 出版者
- 国立情報学研究所
- 雑誌
- 萌芽研究
- 巻号頁・発行日
- 2006
主に家庭内での利用を想定して設計されたロボットエージェントは,人間との協調作業において,自分の状態を人間に簡潔かつ明確に伝える必要がある.そのようなロボットの態度表出において,ロボットの「外見」と表出される「表現」の関係を実験的に解明することが,本研究の目的であった.この関係に対する我々の仮説は,最も有益で基本的な態度のプリミティブである,正・負・中立のような基本的な態度の表出では,動物や人間に類似した外見と行動による表出は不要で,動物や人間の外見とはかけはなれたエージェントによる,単純かつ直観的でささいな表出(subtleexpressions)の方が効果的であるというものである.この仮説が成り立てば,ある種の態度表出においては,エージェントの外見を動物や人間に近づけるために無駄に多大なコストをかけることなく態度をユーザに理解させることが可能となり,エージェントと人間との自然なインタラクションを効率的かつ容易に実現できる.この仮説を広く一般的に成り立つことを理論的,あるいは実験的に示すのは現実には難しいが,我々は,ロロボットらしい外見のMindStromsが単純なビープ音を表出した場合とより複雑な犬に近い外見のAIBOが体の動きやLEDの点滅を組み合わせた複雑な表出をした場合について,どちらが基本的態度を人間により正確に伝えるかを比較する実験を計画,実行し,その結果その仮説が成り立つことを示した.