著者
小林 一郎
出版者
お茶の水女子大学
雑誌
挑戦的研究(萌芽)
巻号頁・発行日
2023-06-30

本研究では、このような生物における知能の発達を参考にし、現在の深層学習による学習方式とは異なる脳内情報処理機構を模倣した発達型人工神経回路網モデルを開発する.モデルの発達過程を具体的に示すため、低次の機能(ここでは特定の単一の課題を解くことができる機能とする)の組合せから高次の機能(単一の機能を組み合わせからなる機能とする)を獲得し成長する例を取り上げ、3つの重要な脳内情報処理特徴:(I)脳内領野の機能表現、(II) 低次から高次への抽象化による情報表現、(III) 領野の連関処理による高次機能の実現、を有する課題の処理を実現する発達型人工神経回路網モデルの開発に挑戦する.
著者
前野 隆司 小林 一三 山崎 信寿
出版者
一般社団法人 日本機械学会
雑誌
日本機械学会論文集 C編 (ISSN:03875024)
巻号頁・発行日
vol.63, no.607, pp.881-888, 1997-03-25 (Released:2008-02-26)
参考文献数
14
被引用文献数
29 27

There are several tactile receptors at specific locations in the tissue of human fingers. In this study we calculate in detail the deformation of finger tissue when a finger comes into contact with a rigid plate using a FE (finite element) model in order to clarify the reason for the precise location of the receptors. The FE model is constructed using the measured geometry and properties. As a result, we found that the strain energy is concentrated at tactile receptor locations. When a frictional force is applied, the stress/strain is concentrated near the edge of the contact area. By calculating using models with/without epidermal ridges/papillae, we found that the shape of the epidermal ridges/papillae influences the stress/strain distribution near the tactile receptors.
著者
大西 俊一郎 小林 一貴 横手 幸太郎
出版者
一般社団法人 日本老年医学会
雑誌
日本老年医学会雑誌 (ISSN:03009173)
巻号頁・発行日
vol.56, no.4, pp.417-426, 2019-10-25 (Released:2019-11-22)
参考文献数
41

高齢者においても,総コレステロール(TC),Non HDLコレステロール(Non-HDL-C),LDLコレステロール(LDL-C)値が高くなれば,冠動脈疾患の発症は増加する.一方で,高齢者における脂質異常症と脳卒中,認知症発症,ADLとの関係は明らかとは言えない.このように高齢者の脂質異常症の病態は成人(65歳未満)と類似点が多く,基本的には同様に扱う.続発性脂質異常症を鑑別したうえで,日本動脈硬化学会の定める基準を用いてリスクに応じた治療目標を設定し,食事療法と運動療法を基本として治療する.また,高齢者には身体機能や合併症など種々の多様性があり,治療においては高齢者特有の病態への配慮が必要である.食事療法では極度のカロリー制限は避け,重度の腎機能障害がなければ筋肉量維持の観点からたんぱく質の摂取を積極的に勧める.運動療法では有酸素運動と,可能であればレジスタンス運動を併用するが,高齢者は運動器・呼吸器・循環器などの障害を有していることも多く,個々人に合った運動メニューを考慮する.薬物療法としては二次予防および前期高齢者(65歳以上75歳未満)の一次予防においてスタチンの有用性が示されている.2019年にはエゼチミブ単剤投与による後期高齢者(75歳以上)の一次予防効果が本邦より報告され,今後のガイドラインへの反映が期待される.
著者
関口 和美 星崎 和彦 小林 一三
出版者
日本森林学会
雑誌
日本林学会大会発表データベース 第115回 日本林学会大会
巻号頁・発行日
pp.C02, 2004 (Released:2004-03-17)

1.はじめに 渓畔域では、植物は様々な形で河川撹乱に依存した生活史をもっている。日本の山岳河川では、土砂の移動を伴う河川撹乱を抑えるために砂防堰堤が数多く設置されてきたが、近年、堰堤建設に伴う植生への影響が懸念されている。 本研究では、砂防堰堤の下部、上部およびそれより上流部の植生を比較することにより、砂防堰堤が渓畔植生構造に与える影響について調べた。砂防堰堤の建設によって、_丸1_立地環境が変化し、_丸2_群落が単純化したり、_丸3_樹林化すると予測し、調査結果に基づいてこれらの予測を検証した。2.調査地 岩手県奥羽山系焼石岳南麓の胆沢川支流の上ノ倉沢で調査を行った。砂防堰堤を含む流路沿い約200m範囲の氾濫原に調査区を設置した。3.方法(1)立地環境調査 2002年8月に流路に沿って立地を流路沿い、旧河道、残丘、岩場、森林部分の5つに区分した。光環境の調査として、9月の曇天時に流路に沿って全天写真を撮影し、開空度を求めた。(2)植生調査 植物種の分布と種多様性を検討する目的で、植生の切れ目や立地の違いをもとに植生パッチを認識し、8月から9月にかけて植生調査を行った(n = 40)。高さ3m未満の維管束植物を対象に、植生パッチごとにパッチの大きさと出現種を記録した。また、環境要因の分析のために植生パッチごとに開空度、比高、基質の粒径、リターの出現頻度を調べた。(3)樹木調査 樹林の発達の程度を検討するために、樹木調査区を設置し、9月から10月にかけて毎木調査を行った。樹高3m以上の樹木を対象に種名、胸高直径を記録した。樹木調査区は、堰堤下部、堰堤上部、上流の森林部分と岩場の4つに区分した。 また、樹木調査区の堰堤下部、堰堤上部、上流部(森林部分)の各々から8本ずつ(胸高直径の太い順)を選び、年輪コアサンプルを採取して樹齢を調べた。4.結果(1)立地環境の変化 堰堤周辺には旧河道、残丘、岩場は存在せず、上流部より微地形が単純化していると思われた。また堰堤周辺では開空度が30%を超え、上流部よりも明るかった。これには堰堤建設時の伐採が深く関連していると思われた。(2)群落の単純化 堰堤周辺では上流部に比べ植生パッチ面積が大きくなっていた。 調査した植生パッチでは57科112属146種の維管束植物が確認され、植生パッチ面積が大きくなるほど種数も増加する傾向があった。面積に対する種数の割合は堰堤周辺と上流部で大きな差はみられなかった。 種の豊かさや均等度を表す多様度指数としてGleason指数、Shannon's H'、Simpson指数、Pielou's J'を用いて植生パッチ内の種の多様性について検討した。どの指数も堰堤周辺と上流部で大きな差はみられなかったが、出現種の生活形ごとに同様の解析をしたところ、堰堤周辺では上流部よりも若干高木種が高く、藤本種が低い傾向があった。 DCAを用いて各パッチの種組成の違いを表す軸を抽出した結果、上流部のパッチは軸上に幅広く分布していた(パッチ間のβ多様性が高い)。一方堰堤周辺のパッチの傾度幅は狭く、類似した種組成をもつことが示された。これらのパッチは明るく、比高が低く、リターが少ない傾向があった。同様に、上流部のパッチの基質は様々な粒径分布を示したのに対し、堰堤周辺では土と石に二極化していた。(3)樹林化 毎木調査の結果、堰堤上部での立木密度はその他を大きく上回っていた。堰堤上部では胸高断面積合計も森林部分の60%に達し、樹林化の進行が裏付けられた。堰堤周辺の出現種は上流部と異なり、ヤマハンノキやヤナギ類が優占していた。これら堰堤周辺の樹木の多くは樹齢27年未満であり、堰堤完成後に進入してきたことが明らかになった。5.考察 堰堤周辺では、河川の勾配が緩やかになることで微地形が単純化し、明るくなっていた。堰堤周辺における植生パッチ内の基質の単純化やパッチの大型化、樹林化の進行は、土砂が堆積し立地が安定化したためであると考えられた。そして、それらの環境の変化が堰堤周辺の単調な種組成に反映していると思われた。
著者
水吉 朋美 丸山 祐樹 矢野 真衣 木村 百合香 小林 一女
出版者
一般社団法人 日本聴覚医学会
雑誌
AUDIOLOGY JAPAN (ISSN:03038106)
巻号頁・発行日
vol.66, no.1, pp.49-55, 2023-02-28 (Released:2023-03-29)
参考文献数
13

要旨: 突発性難聴治療において高気圧酸素療法 (HBOT) は全身ステロイドによる治療への反応性不良である時に二次治療として選択されることが多く, 一次治療としての HBOT に関する報告は少ない。当院で一次治療としてステロイド全身投与と HBOT を同時に施行した42症例の成績, 効果に影響を及ぼした要因について検討した。 対象の重症度は Grade1 が8例, Grade2 が11例, Grade3 が15例, Grade4 が8例であった。 治療成績は, 治癒6例, 著明回復5例, 軽度回復10例, 不変16例であった。 治療成績について治療有効群 (軽度回復以上) と不変群を比較した。高齢, めまいの有無, 高血圧, 糖尿病は治療成績に影響を与えていなかった。治療開始まで14日以上の治療遷延群では有意に成績が悪かった。 以上より, 高齢者, 高血圧, 糖尿病, めまい合併症例に対する一次治療としての HBOT の有効性が示唆された。治療遷延群は HBOT を併用しても予後不良であった。
著者
菅波 美穂 小林 一夫 今村 健太郎 小松 三佐子
出版者
認知リハビリテーション研究会
雑誌
認知リハビリテーション (ISSN:24364223)
巻号頁・発行日
vol.24, no.1, pp.31-42, 2019 (Released:2022-03-30)
参考文献数
14

脳梗塞により前頭葉機能障害がみられた70歳代男性に高次脳機能訓練を行った。本症例は柔軟に新しい状況に対応していくことが難しく,セット転換の制御が低下していた。これらに起因する行動障害は自宅復帰への阻害要因となっていた。そこで,セット転換に必要とされる柔軟性と心的構えの切り替えの機能改善を目的として,前頭葉機能検査に一般的に用いられるStroop 課題とWisconsin Card Sorting Test を応用したColour Stroop訓練およびSet Shift 訓練を導入した。その結果,Set Shift 訓練が前頭葉機能障害の改善に短期的にも長期的にも効果があるということが示唆された。また,包括的なリハビリテーションに加え,本訓練の結果,前頭葉機能テストの成績に向上がみられ,自宅復帰が可能となった。
著者
花岡 俊仁 鈴木 宏光 中川 和彦 福原 哲治 小林 一泰 佐伯 英行 白川 敦子
出版者
日本臨床外科学会
雑誌
日本臨床外科学会雑誌 (ISSN:13452843)
巻号頁・発行日
vol.71, no.1, pp.62-66, 2010 (Released:2010-07-16)
参考文献数
16

症例は64歳,女性.糖尿病の既往がある.2002年6月血痰,喀血が出現し,当院を受診した.胸部CTにて左上葉中心に淡いスリガラス様陰影を認めた.気管支動脈造影にて2カ所血管の拡張部を認め,塞栓術を施行した.その後血痰は減少し,肺の陰影も消退したが,左上葉に8×5mm大の小結節影が残存した.経過観察となったが,2003年1月再び喀血が出現し,胸腔鏡補助下に左上葉切除術を施行した.病理組織検査にて肉芽形成を伴う気管支炎像があり,一部にムコールの菌塊が充満する像を認め,肺ムコール症と診断した.手術後6年2カ月を経過し,再発なく糖尿病外来に通院中である.肺ムコール症の頻度は稀で,免疫能低下状態で発症することの多い予後不良な疾患である.自験例は糖尿病があり二次性といえるが,左上葉の小結節影にムコールが付着・増殖した腐生性の要因も考えられた.
著者
松下 年子 河口 朝子 原田 美智 神坂 登世子 米山 和子 小林 一裕 大澤 優子 渡邊 裕見子
雑誌
アディクション看護 (ISSN:13497472)
巻号頁・発行日
vol.17, no.2, pp.54-75, 2020-10

本研究では,新人看護師の教育や研修システム,看護部の新人看護師および看護師全体の教育に関する方針と実際,課題等を明らかにすることを目的に,インタビュー調査を実施した.対象病院は総合病院10施設,精神科病院2施設,リハビリテーション病院1施設の計13施設で,研究対象者の職位は看護部長4名,副看護部長2名,その他看護部教育担当者等8名の計14名であった.インタビュー内容を質的帰納的に分析した結果,【新人看護師の背景と配属先等の対処および,成長と課題】【離職とその理由,離職防止とリクルート対策】【新人看護師の教育体制と支援】【新人看護師への研修体制および全体の研修体制】【看護管理者・教育担当者のやりがいと課題】【働きやすい環境整備】の6カテゴリが抽出された.新人看護師の背景とその多様性,離職率と離職理由とそれに対する対応,離職者の傾向と採用の取り組み,またプリセプターシップ,新人看護師の不安や職場不適応とメンタルヘルスサポート,新人看護師の残業ヘの配慮,新人看護師を教育する側へのサポート等が集約された.さらに新人看護師のオリエンテーションと研修の実際やローテーション研修,新人研修の評価,2年目以降の研修プログラム,クリニカルラダー,院外研修への参加と助成の有無等が抽出された.加えて看護管理者・教育担当者が重点的に取り組みたいこと,自分自身の成長,人材育成の姿勢と課題が,最後に働きやすい環境整備として異動に関すること,子育て中の看護師に対する支援と課題,地域や他機関とのつながり等の実際が明らかにされた.
著者
小栗 美香 伊藤 克美 五十嵐 尤二 小林 一夫 絹川 亨 園田 英徳
出版者
日本物理教育学会
雑誌
物理教育 (ISSN:03856992)
巻号頁・発行日
vol.67, no.1, pp.2-9, 2019-03-08 (Released:2019-05-08)
参考文献数
12

ボルタは,麦わら検電器(今日の箔検電器)を発案し,麦わらの開く角度に対応する物理量として,電位の概念を提唱した.本論文ではこうした箔検電器の動作原理を明らかにするために,導体系の理論に基づき,箔検電器に対する「遮蔽コンデンサーモデル」を提案する.また,等角写像を用いて箔検電器内部の電場分布を考察し,箔の開く角度と電位の関係を解析的に求め,ボルタの推論が成り立つことを定性的に示す.箔が開く要因について広く用いられている記述が十分なものではないことを我々の考察は示唆している.
著者
小林 一穂
出版者
東北社会学研究会
雑誌
社会学研究 (ISSN:05597099)
巻号頁・発行日
vol.100, pp.61-82, 2017-09-14 (Released:2021-12-12)
参考文献数
17

現代農村では担い手の問題が重要になっている。本稿では、農業者の主体的な起動力となる行動理念のあり方を模索することによって、現代農村の困難な状況を突破する糸口を見出そうとする。 これまでの農本主義論を再検討して、農業者の日常意識である農本意識の契機として、自然との融和、勤労の重視、家族中心、地域的協同を抽出した。農本意識を体系化させ固定化したイデオロギーである農本主義においては、この諸契機が、自然没入主義、勤労至上主義、家父長主義、「共同体」主義、へと変質させられる。この実例として現代の農本主義者をとりあげて検討した。 農業者の生産と生活に妥当しつつ体系化されて不断に再構成される農本思想は、自然、勤労、家族、協同、という諸契機から構成される。この農本思想が農業者の行動理念として機能することが、現代農村の家族経営と村落社会の立て直しにとって重要である。
著者
小林 一敏 大庭 昌昭 腹巻 宏一 湯川 治敏
出版者
日本スポーツ産業学会
雑誌
スポーツ産業学研究 (ISSN:13430688)
巻号頁・発行日
vol.4, no.1, pp.29-38, 1994-03-31 (Released:2011-07-05)
参考文献数
16

The brain injury during a sports activity are caused by the percussion which involves collision to the head. To construct a protective environment for such collisions are one of the most important factors for the biomechanical problems. In this investigation, we will experiment the collision of a human head of the testee by using Judo Tatami mats within the safety limits. We propose the mathematical model which can computer simulate the experiment model which will make the reappearance of the head collision phenomenon, and also the head collision phenomenon itself by using the measurements of the impact force and the acceleration from the experiment.

1 0 0 0 OA 皇国精神講座

著者
小林一郎 著
出版者
平凡社
巻号頁・発行日
vol.第3輯 宇内混同秘策・劍徴, 1943
著者
今泉 直美 小林 斉 井上 由樹子 中村 泰介 庄司 育央 小林 一女 磯山 恵一
出版者
日本小児耳鼻咽喉科学会
雑誌
小児耳鼻咽喉科 (ISSN:09195858)
巻号頁・発行日
vol.38, no.1, pp.32-36, 2017 (Released:2017-05-29)
参考文献数
9

Numb chin syndromeを初発症状として認めた急性リンパ性白血病の1例を報告する。症例は14歳男児。右口唇から下顎の痛みと痺れ,知覚麻痺を自覚し徐々に増悪した。近医小児科クリニック受診し精査加療が必要と考えられ当院耳鼻科受診した。初診時右口唇から下顎の三叉神経第3枝領域に疼痛と痺れ,知覚障害を認め,さらに右口蓋扁桃の腫大を認めた。血液検査では汎血球減少や芽球は認めず,LDH 700 U/l, sIL–2 2510 U/mlと高値を認め,造血器腫瘍が疑われた。頸部造影CT検査では右口蓋扁桃の腫大を認めた。右口蓋扁桃の生検を施行し,リンパ球様細胞のびまん性増殖を認め,免疫染色ではCD20(+), LCA(+), CD79a(+), CD10(+)でありBurkittリンパ腫が疑われた。その後骨髄検査にて成熟B細胞性白血病と診断した。化学療法開始後,右口唇から下顎の痛みと痺れ,知覚障害は徐々に改善を認め消失した。Numb chin syndromeとはオトガイ神経の単麻痺によって生じる下口唇からオトガイ部の痺れや感覚鈍麻・脱失をきたす症候群である。原因疾患は悪性腫瘍,全身性疾患,歯科疾患に大別されるが,悪性腫瘍による圧迫や浸潤が原因となることが多い。本症例のように貧血や出血傾向,易感染性,口腔内症状といった急性白血病の症状が認められなくても,口唇や下顎の痺れを初発症状として悪性腫瘍が存在することを注意し原因検索を行うべきである。