著者
岩村 誠 伊藤光恭 村岡 洋一
雑誌
情報処理学会論文誌 (ISSN:18827764)
巻号頁・発行日
vol.51, no.9, pp.1622-1632, 2010-09-15

本論文では,機械語命令列の類似度算出手法および自動マルウェア分類システムを提案する.機械語命令列の類似度算出に関する提案手法では,新たなマルウェアが出現した際に,過去に収集されたマルウェアとの近さを算出するとともに,過去のマルウェアと共通の命令列および実際に変更のあった箇所を推定可能にする.一方,昨今の多くのマルウェアはパッカによりそのプログラムコードが隠蔽されている.こうした課題に対しこれまで我々は,マルウェアのアンパッキング手法および逆アセンブル手法を開発してきた.本論文では,これらの手法に機械語命令列の類似度算出に関する提案手法を組み合わせ,マルウェア分類システムを構築した.実験では本システムを利用し,3グループのマルウェア検体を分類した.その結果,ハニーポットで収集した約3,000種類のマルウェアであっても,わずか数種類のマルウェアを解析することで,全体の75%程度のマルウェアの機能を把握できることが分かった.さらに,類似度の高いマルウェアに関しては,それらの差分を推定でき,変更箇所にのみ着目した解析が可能なことも分かった.また,本システムの分類結果とアンチウィルスソフトによる検出名の比較では,本システムが同一と判断したマルウェアに関して,アンチウィルスソフトでは異なる複数の検出名が確認される状況もあり,マルウェアに対する命名の難しさが明らかになった.We propose the method for calculating the similarity of machine code instructions and an automatic malware classification system based on the method. Our method enables malware analysts to calculate the distance of known malware to new one and estimate the part that are different. By the way, the machine code instructions of many recent malware are hidden by a packer. For solving the problem, we developed an unpacker and a disassembler. In this paper, we build the automatic malware classification system with a combination of the unpacker, the disassembler and the proposal method for the similarity of machine code instructions. In the experiment, we classified 3 groups of malware. The experiment results show that we can understand 75% of the whole malware functions by analyzing several different types of malware. For the similar pair of malware, the system could estimate the difference, i.e., we could analyze the malware focused on the different part. In the comparison with our system results and the names by anti-virus software, the problems of naming malware emerged, e.g., anti-virus software indicated different names about the malware that our system identified as the same malware.
著者
渡辺 俊一 下川 新二 上原 景光 場集田 寿 山内 励 古園 耕治 岩村 弘志 上村 亮三 平 明
出版者
特定非営利活動法人日本呼吸器外科学会
雑誌
呼吸器外科 : 日本呼吸器外科学会雑誌 (ISSN:09174141)
巻号頁・発行日
vol.4, no.6, pp.750-754, 1990-11-15
被引用文献数
1

より生理的な肺保存法として,摘出肺の胸膜外からの空冷保存を考案し,肺換気にはhigh frequency jet ventilationを用い,その後同所性に移植した.実験は2群で,4℃生理食塩水でflushしたdonor肺を,教室で開発した空冷保存装置で2時間及び5時間保存して同種左肺移植した群では,5〜79日の生存犬7頭を得た.他の群では,血液を含む細胞外液組成液でflushした6時間保存肺を同様に移植し,術直後及び術後3日目に100%酸素下で右肺動脈を閉塞,移植肺の機能を評価した.移植直後(n=5)の動脈血酸素分圧は,両肺で398.9±47,3mmHg(mean±SE),移植肺のみで357.6±48.0mmHgで,両老間に有意差はなかった.術後3日目(n=4)では,両肺で475.7±41.1mmHg,移植肺のみで330.5±53.6mmHgで,後者で低い傾向にあったが有意差はなかった.2つの実験群から,本法の有用性及びflush後6時間の肺保存が可能なことが示された.
著者
黄瀬 浩一 岩田 基 岩村 雅一 内海 ゆづ子 クンツェ カイ デンゲル アンドレアス 外山 託海
出版者
大阪府立大学
雑誌
基盤研究(A)
巻号頁・発行日
2013-04-01

Knowledge Logとは,人が日々獲得している知識の記録である.従来から存在するライフログとの違いは,Knowledge Logが知識という高次記号情報をログの対象とするのに対して,ライフログは,信号情報あるいは記号であっても単純なもの(例えば人の座る,歩く,食べるなどの行動)を記述する点にある.人の知識の大半は,人の読むという行為によって獲得されていることに着目し,本研究では,読むことに関連した知識のログを中心に,その量や質について推定するための各種手法を構築した.また,その基礎となる特徴照合,文書画像検索,文字,顔,物体などの認識技術,大規模文字画像データベースについても開発した.
著者
岩井 浩一 大谷 学 和田野 安良 岩村 幸雄
出版者
茨城県立医療大学
雑誌
茨城県立医療大学紀要 (ISSN:13420038)
巻号頁・発行日
vol.7, pp.33-44, 2002-03

我々は, 健康な成人を対象に, 持久的運動負荷を加えることによって, ミトコンドリアDNA(mtDNA)に4977-bpの欠失(common deletion)が発現し, 数日後にその欠失が消失することを見いだした。その一連の実験の際, 2名の被験者において, common deletionの欠失配列とは異なる長さの配列が検出された。そこで, 本研究では, この塩基配列の構造について詳細な分析を試みた。まず, シークエンス分析を行い. mtDNA様配列の塩基配列を決定したところ, 2名の被験者においてこの塩基配列は全く同一であった。さらに詳細に検討を行ったところ, この塩基配列はmtDNAの塩基配列とかなり一致していることが明らかになった(類似度:88%)。また, これらの塩基配列をもとにアミノ酸配列を予測し, 読み枠(ORF)解析によりその詳細な構造を探った。これらの結果から, このmtDNA様配列は, 生物の進化の過程でmtDNAの遺伝子が核DNAに挿入されたもので, その変異が現在まで引き続いて核DNA中に組み込まれている可能性が示唆された。
著者
近野 恵 岩田 和将 黄瀬 浩一 岩村 雅一 内田 誠一 大町 真一郎
出版者
一般社団法人電子情報通信学会
雑誌
電子情報通信学会技術研究報告. HIP, ヒューマン情報処理
巻号頁・発行日
vol.109, no.471, pp.507-512, 2010-03-08

本稿では,我々が開発中のカメラペンシステムで使用する,文書画像検索の精度向上法を提案する.カメラペンシステムとは,カメラを取り付けたペンで書いた印刷文書への筆跡を,デジタルデータとして復元するシステムである.文書画像検索はデータベースから撮影画像の対応範囲を検索することで,筆跡を求める役割を担っており,高精度での検索が必要不可欠である.しかし現状では,撮影画像に生じる射影歪みの影響で検索精度が低下している.そこで,この問題を解決するために,検索に用いる特徴量の改良,および射影歪みを発生させた画像を生成し,データベースを拡張する手法と,撮影画像を基にクエリを拡張して検索する手法の3つを提案する.有効性を検証するため,改良した特徴量と拡張手法をそれぞれ組み合わせ,改良前の従来手法と比較実験を行った.その結果,改良した特徴量を用い,クエリを拡張した手法を用いたときに,最も精度が向上した.
著者
大町 真一郎 岩村 雅一 内田 誠一 黄瀬 浩一
出版者
一般社団法人電子情報通信学会
雑誌
電子情報通信学会技術研究報告. TL, 思考と言語 (ISSN:09135685)
巻号頁・発行日
vol.105, no.613, pp.67-72, 2006-02-17

環境中の文字をディジタルカメラを入力デバイスとして高精度に認識するために,文字画像と同時に認識補助のための付加情報を提示する方法が検討されている.付加情報は,幾何学的変換に対してロバストに抽出できることが要求される.本報告では,面積比を利用した付加情報提示手法を提案する.面積比はアフィン変換に不変であり,アフィン変換を受けた環境においても誤りなく抽出されることが期待される.実際に付加情報を埋め込んだ文字パターンを作成し,提案手法の有効性と可能性について議論する.
著者
内田 誠一 Liwicki Marcus 岩村 雅一 大町 真一郎 黄瀬 浩一
出版者
一般社団法人電子情報通信学会
雑誌
電子情報通信学会技術研究報告. EMM, マルチメディア情報ハイディング・エンリッチメント (ISSN:09135685)
巻号頁・発行日
vol.111, no.74, pp.17-22, 2011-05-23

手書きは,人類のコミュニケーション手段として古来から広く利用されている.そして現代,タブレットやアノトペンといった技術進歩により,計算機への入力手段としても手書きは普遍的なものとなった.しかし,日常的な「紙の上の手書き」は,依然「紙の上の手書き」のままであり,それ以上の価値を持つに至っていない.これに対し,筆者らによるユニバーサルパターンプロジェクトでは,「情報埋め込みペン」を開発した.これは,情報埋め込み技術により,手書きに新たな価値を付与しようという試みである.このペンでは,ペン先のインクジェットにより,筆記時にリアルタイムに筆記者情報や筆記日時などの任意情報を埋め込むことができる.埋め込んだ情報は画像処理により復元できる.すなわち,紙の上の手書きに,計算機可読な様々な情報を埋め込むことができる.実験により,5cmの筆記に32ビット程度の情報を誤りなく埋め込めることを確認している.
著者
野口 和人 氏原 慎弥 黄瀬 浩一 岩村 雅一
出版者
一般社団法人情報処理学会
雑誌
研究報告コンピュータビジョンとイメージメディア(CVIM) (ISSN:09196072)
巻号頁・発行日
vol.2009, no.29, pp.205-210, 2009-03-06

カメラ付き携帯電話を入力デバイスとした画像認識では,撮影した画像のぶれやぼけが認識精度低下の原因となる.そのため,ぶれやぼけに対処する手法が重要となる.本稿では,局所特徴量の近似最近傍探索による認識手法に対して,原画像に様々がぶれやぼけを与えた画像を生成し学習する生成型学習を導入することによって対処する.生成型学習を導入するにあたって問題となるのは,学習データの増加にともなって最近傍探索に必要なメモリ量と処理時間が増大することである.これは,特に大規模なデータベースを用いた場合に問題となる.提案手法では,多段階化とスカラー量子化によってこれを解決する. 1 万枚の画像データベースを用いた実験の結果,生成型学習を用いない手法と比べて認識率が 12.3% 向上することがわかった.For image recognition with a camera phone, defocus and motion-blur cause a serious decrease of the image recognition rate. In this report, we employ generative learning, i.e., generating blurred images and learning based on them, for a recognition method using approximate nearest neighbor search of local features. Major prob- lems of generative learning are long processing time and a large amount of memory required for nearest neighbor search. The problems become serious when we use a large-scale database. In the proposed method, they are sloved by cascading recognizers and scalar quantization. From experimental results with 10,000 images, we have confirmed that the proposed method improves the recogniton rate by 12.3% as compared to a method without generative learning.
著者
黄瀬 浩一 岩村 雅一 岩田 基 内海 ゆづ子
出版者
大阪府立大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2010

実世界指向Web とは,我々の周囲にある物体が情報の出入り口になるWeb である.物体にカメラをかざすと関連情報を瞬時に取り出せる.また,物体の撮影を通してユーザ自らが情報を関連付けることもできる.扱う物体は,文字,文書から3次元物体,顔など様々である.本研究では,このような新しいWeb を実現する上で必須となる物体認識技術の大規模化(文書の場合,1 億ページの識別),高速化(文書の場合,27ms/query),高精度化(文書の場合,認識率99%),およびその理論的基盤の構築,さらには,実世界指向Web のプロトタイプの作成を行った.
著者
岩村 雅一 古谷 嘉男 黄瀬 浩一 大町 真一郎 内田 誠一
出版者
一般社団法人電子情報通信学会
雑誌
電子情報通信学会論文誌. D, 情報・システム (ISSN:18804535)
巻号頁・発行日
vol.93, no.5, pp.579-587, 2010-05-01
被引用文献数
1

特徴量のみでは本質的に避けることができない誤認識を回避するために,付加情報を用いるパターン認識という枠組みが提案されている.この方式では,パターン認識を行う際に,付加情報と呼ばれるクラスの決定を補助する少量の情報を特徴量と同時に用いて認議性能の改善を目指す.付加情報は自由に設定でき,通常は誤認識率が最小になるように設定する.ここで問題となるのは,誤認識率が最小になる付加情報の設定方法である.常に正しい付加情報が得られるいう理想的な条件においては既に問題が定式化され,付加情報の割当方法が導かれている.しかし,実環境での使用を考えると,付加情報に生じる観測誤差を考慮した割当方法が求められる.そこで本論文では付加情報の観測誤差を考慮に入れて,問題を新たに定式化する.これは付加情報が誤らない場合にも有効な一般的なものである.本論文で導いた割当方法が有効に機能することをマハラノビス距離を用いた実験で例示する.