- 著者
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布川 隆三
川本 達雄
- 出版者
- 大阪歯科学会
- 雑誌
- 歯科医学
- 巻号頁・発行日
- vol.53, no.3, pp.325-338, 1990
- 被引用文献数
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9
矯正歯科臨床分野において, 成長発育期の患者に対して, より効果的な顎の垂直的な成長コントロールを行うのに, ヘッドギアーと併用して嚥下時舌圧を利用したパラタルバーが使用されている. そのパラタルバーが上顎骨に及ぼす作用を調べるために, 成人および小児乾燥頭蓋骨各1体を試料とし, ストレインゲージ法を用いて力学的実験を行った. その結果, ストレートとカーブの2つのタイプのパラタルバーに荷重を加えた場合, 以下に示すような結論を得た.<br> 1) 上顎骨の歯槽骨頬側板における歪分布は, パラタルバーのタイプによって異なるが, 成人および小児頭蓋を問わず, ストレートタイプでは上顎第一大臼歯を中心とする側方歯の歯槽骨頬側板において, 咬合平面に対して垂直方向の圧縮歪が認められた. それに対して, カーブタイプでは同部位における圧縮歪は前者よりも小さい値を示した.<br> 2) 歯槽骨舌側板での歪分布は, 成人および小児頭蓋において, ストレートタイプでは上顎第一大臼歯を中心とする側方歯の歯槽骨舌側板で, 咬合平面に対して垂直方向の圧縮歪が認められた. それに対して, カーブタイプでは同部位における圧縮歪は前者よりも大きい値を示した.<br> 3) 小児頭蓋ではパラタルバーのタイプを問わず, ヘッドギアーの後上方牽引時のような反時計まわりの回転に近い上顎骨の変形が認められた.<br> 4) 成人および小児頭蓋ではパラタルバーのタイプを問わず, 上顎骨に隣接する周囲骨にも歪が及んでいた.<br> 以上の結果から, パラタルバーは成長発育期のII級I類不正咬合および下顎下縁平面角の大きい不正咬合の患者に対してヘッドギアーと併用することによって, 上顎第一大臼歯を中心とする側方歯群の歯槽骨の垂直的な成長コントロールが行える. また, 成人に使用した場合も, 顎間ゴムなどの矯正力による上顎第一大臼歯の提出および近心移動などに抵抗する固定源の加強として役立つことが示唆された.