著者
川本 佳代 古谷 美夏 宮脇 綾子 内田 智之 平嶋 宗 林 雄介
出版者
一般社団法人 人工知能学会
雑誌
人工知能学会全国大会論文集 第32回全国大会(2018)
巻号頁・発行日
pp.1L301, 2018 (Released:2018-07-30)

現代社会において,論理的思考力は最も重要な能力の1つである.高等学校学習指導要領解説においても,論理的な思考力の育成は重視されており,特に高校の数学教育において数学証明を扱うことが論理的思考力の育成に役立つと述べられている.本稿では,数学の証明論法の中でも背理法と対偶法に絞り,数学的な表現力および構成力の習得を通して,表現力を含む論理的思考力の育成を目指した論理的思考力育成システムを提案する。さらに,Android Tablet上に実装したシステムを用いた評価実験により提案システムの有用性を示す.
著者
奥村 正雄 緒方 あゆみ 川本 哲郎 洲見 光男
出版者
同志社大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2017-04-01

本研究課題の比較法研究に欠かせないと判断したイギリス刑法の教科書(Andrew Ashworth and Jeremy Horder, Principles of Criminal Law 7thed., Oxford University Press 2013)を協力者を得て翻訳作業を行い、同志社法学に7号に分けて14本の原稿が掲載中である。この作業を通して、本研究課題のイギリスにおける背景事情と刑事法との関係等の理解が、本研究を実行している者だけではなく、読者にも一層深まるであろう。各人の研究成果として、奥村正雄「少年法の適用年齢の引下げを巡る議論ー犯罪被害者等への配慮の視点を中心にー」同志社法学396Ⅱ号(2018年)pp.833-867は、本研究課題との直接的関連はないが、保護処分の妥当性の問題、是非善悪の弁別能力の有無・程度の問題の検討は、未成年の精神障害ないし知的障害を有する加害者の非行と社会復帰支援、それらの傷害を有する少年加害者の被害者支援のあり方を考えるうえで、重要である。川本哲郎「犯罪被害者の人権と被害者支援」同志社法学396Ⅱ号(2018年) pp.813-832は、犯罪被害者支援のあり方について、2004年の犯罪被害者等基本法及び2005年の犯罪被害者等基本計画によって、精神障害や知的障害に起因する犯罪の被害者に対する支援も同等の支援を受けるべき権利があることを主張する。洲見光男「アメリカにおける取調べの規制―自白の証拠能力の制限―」同志社法学396Ⅱ号(2018年)pp.870-889は、知的障害を有する被疑者の取調べにおける捜査官の誘導等による自白の証拠能力の問題点を検討する。緒方あゆみ「摂食障害と万引きに関する一考察」同志社法学396Ⅱ号(2018年)pp.1148-1187は、万引き事犯における摂食障害との関係性を分析している。
著者
川本 皓嗣
出版者
岩波書店
雑誌
図書
巻号頁・発行日
no.787, pp.20-24, 2014-09
著者
中川 尚史 後藤 俊二 清野 紘典 森光 由樹 和 秀雄 大沢 秀行 川本 芳 室山 泰之 岡野 美佐夫 奥村 忠誠 吉田 敦久 横山 典子 鳥居 春己 前川 慎吾 他和歌山タイワンザルワーキンググループ メンバー
出版者
日本霊長類学会
雑誌
霊長類研究 Supplement
巻号頁・発行日
vol.21, pp.22, 2005

本発表では,和歌山市周辺タイワンザル交雑群の第5回個体数調査の際に試みた無人ビデオ撮影による群れの個体数カウントの成功例について報告する。<br> カウントの対象となった沖野々2群は,オトナ雄1頭,オトナ雌2頭に発信器が装着され群れの追跡が可能であった。またこれまでの調査からこの群れは,小池峠のやや東よりの車道を南北に横切ることが分かっていた。<br> 今回の調査3日目の2004年9月22日にも,一部の個体が道を横切るのを確認できた。しかし,カウントの体制を整えると道のすぐ脇まで来ていてもなかなか渡らない個体が大勢おり,フルカウントは叶わなかった。この警戒性の高まりは,2003年3月から始まった大量捕獲によるものと考えられる。翌23日も夕刻になって群れが同じ場所に接近しつつあったのでカウントの体制をとり,最後は道の北側から群れを追い落として強制的に道を渡らせようと試みたが,失敗に終わった。<br> そこで,24日には無人ビデオ撮影によるカウントを試みることにした。無人といってもテープの巻き戻しやバッテリー交換をせねばならない。また,群れが道を横切る場所はほぼ決まっているとはいえ,群れの動きに合わせてある程度のカメラ設置場所の移動は必要であった。そして,最終的に同日16時から35分間に渡って27頭の個体が道を横切る様子が撮影できた。映像からもサルの警戒性が非常に高いことがうかがわれた。<br> こうした成功例から,無人ビデオ撮影は,目視によるカウントが困難なほど警戒性の高い群れの個体数を数えるための有効な手段となりうることが分かる。ただし,比較的見通しのよい特定の場所を頻繁に群れが通過することがわかっており,かつテレメーター等を利用して群れ位置のモニタリングができる,という条件が備わっていることがその成功率を高める必要条件である。
著者
川本 勝 福島 恒男 久保 章 石黒 直樹 竹村 浩 土屋 周二
出版者
一般財団法人 日本消化器病学会
雑誌
日本消化器病学会雑誌 (ISSN:04466586)
巻号頁・発行日
vol.79, no.2, pp.193-198, 1982-02-05 (Released:2007-12-26)
参考文献数
18
被引用文献数
2

潰瘍性大腸炎症例31例の便中細菌および短鎖脂肪酸を検索した.本症例の便中総細菌数は健常人とくらべ減少していた.なかでも嫌気性菌数が減少し,好気性菌数の増加がみられた.短鎖脂肪酸濃度は健常人にくらべ減少し,便中細菌数と比例した.短鎖脂肪酸分画において揮発性短鎖脂肪酸濃度が低く非揮発性の乳酸濃度が高かつた.病変部位が拡がる程また緩解期より活動期で揮発性短鎖脂肪酸濃度は減少し,乳酸濃度は増加した.乳酸濃度に対する揮発性短鎖脂肪酸濃度比と排便回数との間に負の相関がみられた.便中細菌および短鎖脂肪酸が潰瘍性大腸炎の病態と深い関係があることが示唆された.
著者
福永 寛 櫻木 悟 藤原 敬士 藤田 慎平 山田 大介 鈴木 秀行 宮地 剛 川本 健治 山本 和彦 堀崎 孝松 田中屋 真智子 片山 祐介
出版者
公益財団法人 日本心臓財団
雑誌
心臓
巻号頁・発行日
vol.43, no.2, pp.S2_154-S2_158, 2011

Kounis症候群とはアレルギー反応に伴い急性冠症候群をきたす症候群であり, 冠攣縮に合併したタイプ1とプラーク破裂に伴う血栓形成に起因するタイプ2に分類される. 今回, われわれはKounis症候群により心肺停止をきたした2症例を経験したので報告する.<BR>症例1: 76歳, 男性. 腰部脊中柱管狭窄症の術中にセフォペラゾンを投与したところ, アナフィラキシーショックを発症した. 下壁誘導にてST上昇を認めたため急性冠症候群と診断, 緊急冠動脈造影にて右冠動脈#1に血栓および#4AVに完全閉塞を認めた. 血栓吸引療法のみで再疎通が得られた.<BR>症例2: 61歳, 男性. 起床時より四肢・体幹に蕁麻疹を認め, その後, 心肺停止となり, 当院へ搬送された. 心肺蘇生術にて心拍再開したが, その後, 心室頻拍が頻発, 急性冠症候群を疑い緊急冠動脈造影を施行した. 冠動脈に有意狭窄は認めなかったが, 心電図上胸部誘導で一時的にST上昇を認めたため, 左前下行枝の冠攣縮と診断した.
著者
清水 誠治 多田 正大 川本 一祚 趙 栄済 渡辺 能行 川井 啓市
出版者
一般社団法人 日本消化器内視鏡学会
雑誌
日本消化器内視鏡学会雑誌
巻号頁・発行日
vol.27, no.8, pp.1663-1669, 1985

オリンパス光学K.Kにおいて開発されたOES内視鏡写真撮影システムはOESファイバースコープ,光源装置CLV-10,データ写し込み装置DS,内視鏡カメラSC16-10よりなるが,これらを臨床の場で試用する機会を得た.CLV-10は光量の増加,露光精度の向上とともに非常灯も装備されている.DSは患者データを入力・記憶・表示しフィルムに写し込むことができ,またSC16-10のファインダー内に日時,経過時間,撮影部位等の英数字データを表示し内視鏡写真に写し込むこともできる.SC16-10は軽量化が計られ,拡大率の異なる3種類のマウントアダプターが用意され大画面で撮影することが可能である.OESシステムを用いることにより検査中の操作が容易になり,観察ならびに読影上見やすい画像が得られる上,内視鏡写真にデータ記録としての客観性を導入することが可能となり,特に部位同定の指標に乏しい食道や下部消化管検査における有用性を確認した.
著者
辻川 正人 橋本 哲 川本 信
出版者
公益社団法人 日本鋳造工学会
雑誌
鋳物 (ISSN:00214396)
巻号頁・発行日
vol.64, no.8, pp.526-530, 1992-08-25 (Released:2011-06-25)
参考文献数
7
被引用文献数
6

Thermit reaction was induced in molten aluminium silicon alloy by addition of coarse silica particles with stirring. Exothermic reaction commenced in the Al-Si eutectic melt at 1023 K. All silica particles were reduced into silicon in a brief period. Reduced silicon resolved into matrix melt. This thermit reaction produced α-alumina particles. These oxides were as large as added silica particles. After solidification, microstructures of specimens exhibited eutectic matrix, large primary silicon crystals and the oxide particles. A series of experiments were executed with magnesium addition before silica particles mixing. Magnesium quickened the dispersion of silica particles into matrix melt. So the thermit reaction occurred more rapidly and the highest temperature attained by the reaction was higher than those attained by the experiments without magnesium addition. The oxide particles resulted by experiments with magnesium showed a proof that the thermit reaction took place from outside to inside of silica particles gradually under high temperature.
著者
川崎 友美 村田 容常 冨永 典子 川本 伸一
出版者
日本食品微生物学会
雑誌
日本食品微生物学会雑誌 (ISSN:13408267)
巻号頁・発行日
vol.24, no.4, pp.171-177, 2007-12-15 (Released:2008-05-23)
参考文献数
14

接種鶏卵からのサルモネラの回収に関してふき取り法とクラッシュ法との比較検討を行った. 37℃のリン酸緩衝液を用いたクラッシュ法が最も菌の回収率が高く, ふき取り法と比べて10倍高い菌数値を得た. 107 CFU/eggのサルモネラ汚染卵を, 50℃, 200 ppmの次亜塩素酸ナトリウム水溶液で殺菌処理した場合, ふき取り法は2分間処理で菌数が検出限界以下となったが, クラッシュ法は10分間処理においても最大5オーダーの菌数の減少しか観察できなかった. 洗浄中における有機物の混入を想定して, 次亜塩素酸ナトリウム水溶液200 ppmへの液卵の添加実験 (0~1.0%) を行った. 液卵が0.5%以上混入したときでは有効塩素濃度が直ちに低下した. 液卵を0.5%添加して50℃, 10分間処理を行った場合, ふき取り法による検出では101~102 CFU/eggのサルモネラ菌数が検出された. 一方, クラッシュ法による計測では105~106 CFU/eggのサルモネラ菌数が検出され, ふき取り法での検出結果から期待されるような顕著な殺菌効果は観察されなかった. さらに4,000個の市販鶏卵を購入し, 両方法で微生物汚染レベルを調べたところ, 接種実験と同様にクラッシュ法はふき取り法と比べて10倍高い一般生菌数値を示した. クラッシュ法は卵殻からの菌回収法としてより優れており, 従来のふき取り法では殺菌効果の過大評価や汚染レベルを過小評価している可能性がある.
著者
中山 信行 川本 広行
出版者
The Japan Society of Mechanical Engineers
雑誌
日本機械学会論文集 C編 (ISSN:03875024)
巻号頁・発行日
vol.70, no.691, pp.804-811, 2004
被引用文献数
9

Formation of magnetic bead chains in a magnetic field was numerically simulated with the Distinct Element Method in order to apply for improvements of a magnetic brush development system in electrophotography. Simulated chain configurations, length and slant angle. and dynamic chain forming process were compared to the experimental results. The 2-D calculation could not simulate quantitatively well the chain configurations and the process, because the magnetic interaction between beads was under estimated due to the neglect of the interaction force between three-dimensionally distributed beads. On the other hand, 3-D calculation showed good agreement with experiments and it is concluded that 3-D calculation is indispensable for the quantitative evaluation. It was also confirmed that chain configurations were determined approximately to minimize its total potential energy given by the sum of magnetic energy and gravitational energy.
著者
宮内 正雄 笹原 邦宏 藤本 光一 川本 勲 井手 純也 中尾 英雄
出版者
The Pharmaceutical Society of Japan
雑誌
Chemical and Pharmaceutical Bulletin (ISSN:00092363)
巻号頁・発行日
vol.37, no.9, pp.2369-2374, 1989-09-25 (Released:2008-03-31)
参考文献数
21
被引用文献数
10 9

The degradation kinetics of pivaloyloxymethyl (POM) esters of cephalosporins in phosphate buffer solution (pH6-8) were investigated. The degradation of the starting Δ3 cephalosporin ester proceeded mainly via isomerization to the Δ2 ester and subsequent hydrolysis to the Δ2 acid. Hydrolysis to the Δ3 acid (the parent acid) was very slow. Analysis of the rate constants indicated that the isomerization rate k12 was approximately equal to the apparent degradation rate of the Δ3 ester kdeg, and slower than the hydrolysis rate of the Δ2 ester k24. The isomerization process to the Δ2 ester was found to be the rate-determining step in the degradation of cephalosporin esters. The substituent at the C-3 position of the cephalosporins affected the degradation kinetics. The degradation was accelerated by increase of pH, buffer concentartion and added protein.
著者
宮内 正雄 笹原 邦宏 藤本 光一 川本 勲 井手 純也 中尾 英雄
出版者
公益社団法人 日本薬学会
雑誌
CHEMICAL & PHARMACEUTICAL BULLETIN (ISSN:00092363)
巻号頁・発行日
vol.37, no.9, pp.2369-2374, 1989
被引用文献数
9

The degradation kinetics of pivaloyloxymethyl (POM) esters of cephalosporins in phosphate buffer solution (pH6-8) were investigated. The degradation of the starting &Delta;<SUP>3</SUP> cephalosporin ester proceeded mainly via isomerization to the &Delta;<SUP>2</SUP> ester and subsequent hydrolysis to the &Delta;<SUP>2</SUP> acid. Hydrolysis to the &Delta;<SUP>3</SUP> acid (the parent acid) was very slow. Analysis of the rate constants indicated that the isomerization rate k<SUB>12</SUB> was approximately equal to the apparent degradation rate of the &Delta;<SUP>3</SUP> ester k<SUB>deg</SUB>, and slower than the hydrolysis rate of the &Delta;<SUP>2</SUP> ester k<SUB>24</SUB>. The isomerization process to the &Delta;<SUP>2</SUP> ester was found to be the rate-determining step in the degradation of cephalosporin esters. The substituent at the C-3 position of the cephalosporins affected the degradation kinetics. The degradation was accelerated by increase of pH, buffer concentartion and added protein.
著者
宮内 正雄 栗原 英志 藤本 光一 川本 勲 井手 純也 中尾 英雄
出版者
The Pharmaceutical Society of Japan
雑誌
Chemical and Pharmaceutical Bulletin (ISSN:00092363)
巻号頁・発行日
vol.37, no.9, pp.2375-2378, 1989-09-25 (Released:2008-03-31)
参考文献数
17
被引用文献数
1 2

The effect of substituents at the C-3 position on the degradation kinetics of the pivaloyloxymethyl (POM) ester of Δ3 cephalosporin in phosphate buffer solution (pH6-8) was investigated. In the degradation, the isomerization process to the Δ2 ester was the rate-determining step. In this study, the logarithm of the isomerization rate to the Δ2 ester (log k12) correlated with the carbon-13 unclear magnetic resonance chemical shift difference value at C-3 and C-4 of the Δ3 ester (Δδ(4-3)). The energy level of the lowest unoccupied molecular orbital (LUMO) of the Δ3 esters also correlated with log k12. The electronic properties at the C-2 position had no effect on the isomerization reaction. On the other hand, the logarithm of the isomerization rate back to the Δ3 ester (log k21) correlated with the van der Waals volume (MV) of the 3-substituent. These results show that the substituent at the C-3 position influences mainly the electronic structure of the conjugated π-bond system (C3=C4-C4=O) and consequently affects the feasibility of isomerization to the Δ2 ester, i.e., the stability to degradation.
著者
宮内 正雄 栗原 英志 藤本 光一 川本 勲 井手 純也 中尾 英雄
出版者
公益社団法人 日本薬学会
雑誌
CHEMICAL & PHARMACEUTICAL BULLETIN (ISSN:00092363)
巻号頁・発行日
vol.37, no.9, pp.2375-2378, 1989
被引用文献数
2

The effect of substituents at the C-3 position on the degradation kinetics of the pivaloyloxymethyl (POM) ester of &Delta;<SUP>3</SUP> cephalosporin in phosphate buffer solution (pH6-8) was investigated. In the degradation, the isomerization process to the &Delta;<SUP>2</SUP> ester was the rate-determining step. In this study, the logarithm of the isomerization rate to the &Delta;<SUP>2</SUP> ester (log k<SUB>12</SUB>) correlated with the carbon-13 unclear magnetic resonance chemical shift difference value at C-3 and C-4 of the &Delta;<SUP>3</SUP> ester (&Delta;&delta;(4-3)). The energy level of the lowest unoccupied molecular orbital (LUMO) of the &Delta;<SUP>3</SUP> esters also correlated with log k<SUB>12</SUB>. The electronic properties at the C-2 position had no effect on the isomerization reaction. On the other hand, the logarithm of the isomerization rate back to the &Delta;<SUP>3</SUP> ester (log k<SUB>21</SUB>) correlated with the van der Waals volume (MV) of the 3-substituent. These results show that the substituent at the C-3 position influences mainly the electronic structure of the conjugated &pi;-bond system (C<SUB>3</SUB>=C<SUB>4</SUB>-C<SUB>4</SUB>=O) and consequently affects the feasibility of isomerization to the &Delta;<SUP>2</SUP> ester, i.e., the stability to degradation.
著者
川本 直美
出版者
京都大学大学院人間・環境学研究科 文化人類学分野
雑誌
コンタクト・ゾーン = Contact zone (ISSN:21885974)
巻号頁・発行日
vol.9, no.2017, pp.142-172, 2017-12-31

本稿の目的は、現代メキシコ西部村落におけるカトリック教会と村落共同体の関係について、カトリック聖像をめぐる人々の実践を事例に、今日的な共同体の姿を描き出すことで、その多面性を明らかにすることである。中米における共同体研究や祭礼研究で対象とされてきたものに、多くの先住民共同体でその基礎をなすといわれる行政的及び宗教的な社会組織がある。研究者は、従来それを「カルゴ・システム」と呼んで研究対象としてきた。そこでは主に「閉じられた」共同体を前提とし、カルゴ・システムがいかに共同体のなかで機能しているか、もしくはカルゴ・システムを通じて共同体と外部世界がどのような関係にあるかといった点から論じられてきた。そしてそこでの教会と共同体の関係については、それぞれを一つの存在として捉え、検討する傾向にあった。本稿で論じる事例では、人々は祭礼組織の役職を担う権利を、時には地縁的にも血縁的にもつながりのない村外の人にも開放することで、カルゴ・システムを通じて村外まで広がるネットワークを構築している。さらにこの村落共同体では、ある1体の聖像の安置場所と管理方法をめぐって一部住民がカトリック司祭と問題を抱え、教会とは対立する。その一方でそれ以外の聖像の祭礼などでは教会と協力関係にあるといった、教会に対する両義的な態度もみせる。村にある複数の聖像とその祭礼組織を中心として、人々は祭礼の都度立ち上がる共同性によってグループを組み替え、あらたに構築し、それぞれが教会との関係を多面的に結んでいる。同様に、本来同一の存在であるはずの聖人をあらわす聖像が、人々の状況や関係によってその聖像ごとに異なる接し方をされるということも明らかになった。この不安定な共同体のあり方こそが、逆説的に教会と住民が聖像をめぐって問題を抱えたとしても、安定的に共同体レベルの祭礼を維持することを可能にしているといえる。The aim of this study is to investigate the relationship between people and the Catholic Church in a current rural village of Mexico, focusing on local politics over the care and custody of the child Jesus image. It has been shown that Central America has a civil-religious system that forms the basis of indigenous communities; Researchers have explored this by calling it a "cargo system." In preexisting research about cargo systems, these communities have been assumed to be closed, and discussion has been based on the points of how the cargo system functions within the community, or rather what kind of relationship the community has with the outside world through the cargo system. Regarding the relationship between the community and the church through this system, the two have been described one-sidedly, as exclusive identities which relationship is either conflictive or coexisting. This paper points out villagers construct a network of worshippers of the child Jesus image that extends outside of the village by allowing outsiders to also take charge of festivals. Although villagers continue the worship of the child Jesus image without the parish priest, they cooperate with him in other saint's festivals at the same time. It is namely their ambiguous attitude toward the institution. This paper indicates that the people newly organize their group based on the community that comes together on each individual occasion of the festival centered on their faith of each saint. In doing so, it also demonstrates the multifaceted relationship between the people and the Church. Likewise, this papar clarifies the pluralism of the child Jesus image which presumably represent the same being for everyone involved. Although villagers have a problem with the Church over an image, the instability of these religious groups makes it possible for them to maintain the community's religious festivals stably.
著者
川本 重雄 福田 美穂 福田 美穂 CHO Jaemo PHAN Thanh Hai
出版者
京都女子大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2006

日本の宮殿建築の特徴を、そこで開かれた儀式の歴史的変化やアジアの宮殿儀式との比較により解明することを目的として研究を実施した。日本の宮殿儀式が儀式の性格に応じて、大極殿院、豊楽院、武徳殿、内裏、神泉苑を使い分けていたことにまず特徴があること、一方で内裏にそうした儀式が収斂していく傾向も早くからあり、それが内裏正殿である紫宸殿の空間や清凉殿の使い方に強い影響を与えていることなどが明らかにできた。また、古代の宮殿儀式を見ると、中国の影響はあるものの、韓国王朝やベトナムのグェン王朝とは異なり、日本的な要素が実はかなり強いことが確認できた。