著者
野原 英樹 平川 善之 石田 奈穂子 安田 和弘 北川 智子 蓮尾 幸太 元尾 篤 隈本 健 北條 琢也 山崎 登志也
出版者
九州理学療法士・作業療法士合同学会
雑誌
九州理学療法士・作業療法士合同学会誌 第26回九州理学療法士・作業療法士合同学会誌 (ISSN:09152032)
巻号頁・発行日
pp.46, 2004 (Released:2004-11-18)

【はじめに】 反張膝は、膝前十字靭帯損傷などスポーツ障害、外傷の危険因子の一つと言われている。反張膝の原因は、関節弛緩性、膝伸展屈曲筋力の低下、足関節の可動域制限などが考えられる。臨床上で反張膝の評価は、過伸展角度の測定のみが一般的であるが、過度の下腿外旋を示すケースが多く見られる。そのようなケースに膝屈曲伸展の徒手筋力検査を行うと過度の下腿外旋を伴う(screw home movementの増大)膝伸展や屈曲開始時のみに筋出力の低下を認めるケースを経験する。我々は、反張膝が膝関節初期屈曲筋力に影響を及ぼすのではないかと推測している。そこで今回、健常者を対象に下腿回旋肢位、足関節肢位を考慮し膝初期屈曲筋力を測定した。加えて反張膝を有する者の膝屈曲筋力の検討を行ったので報告する。【対象と方法】 対象は下肢に疾患を有しない健常者21名39肢(男性13名23肢24.8±3.4歳 女性8名16肢25.8±4.1歳)で、自然立位にて10°以上の膝過伸展を有する反張膝群(以下R群)11名20肢(24±2.8歳 平均伸展角度14.3±2.9°)と、非反張膝群(以下NR群)10名19肢(26.4±3.6歳 平均伸展角度4.5±3.4°)に分類した。 筋力測定にはCYBEX NORM 770を用いた。収縮様式は求心性収縮で角速度60°とした。腹臥位にて体幹部をベルトで固定し、各被験者の完全伸展位から30°までをA:足関節背屈-下腿中間位(以下D-N)B: 足関節背屈-下腿内旋位(以下D-IR)C:足関節背屈-下腿外旋位(以下D-ER)D:足関節底屈-下腿中間位(以下P-N)E:足関節底屈-下腿内旋位(以下P-IR)F:足関節底屈-下腿外旋位(以下P-ER)の計6肢位で3回ずつ測定した。測定肢位の順番はランダムに行い、最大ピークトルク値を測定値として採用し、各最大ピークトルクを体重で除したものを筋力値とした。(Nm/BW×100)また、6肢位で算出した筋力値を基に(1)R群及びNR群それぞれで肢位の違いによる筋力値の差(2)R群、NR群間の筋力値の差について検討した。統計処理は(1)には一元配置分散分析及び多重比較検定(2)には2元配置分散分析を行った。有意水準は1%未満とした。【結果】(1)R群、NR群ともに肢位の違いによる筋力値の差があった。R群ではD-NがD-IR、P-IR、P-ERに対して有意に筋力値が大きかった。D-ERがP-ERに対して有意に筋力値が大きかった。D-Nと比べ足関節底屈位では下腿回旋肢位で筋力値が有意に低下した。足関節背屈位間において下腿中間位に比べ下腿内旋位で筋力値が有意に低下した。下腿外旋位間において背屈位と比べ底屈位で筋力値が有意に低下した。NR群ではD-NがP-IR、P-ERに対して有意に筋力値が大きかった。足関節背屈位と比べ足関節底屈位では下腿回旋肢位で筋力値が有意に低下した。(2)R群、NR群間に筋力値の差及び交互作用は認められなかった。【考察】 両群に共通して見られた結果は、足関節底屈回旋肢位での筋力は背屈下腿中間肢位に比べ有意に低下を示すことであった。R群では上記に加え2つの肢位に有意差が見られた。1)足関節背屈位で下腿内旋位筋力は下腿中間位筋力に比べ有意に低下した。2)下腿外旋位で底屈位筋力が背屈位筋力に比べ有意に低下した。前者は下腿を内旋させることにより足部が内反背屈位となり足関節を固定させにくいため背屈筋の筋力に左右されたのではないかと考えた。後者は下腿が外旋位になることで膝関節靭帯などの受動組織の機能が不十分となり腓腹筋の活動に依存されやすくなったのではないかと考えた。 下腿回旋が膝屈曲筋力に与える影響について論じた報告は少ない。本杉らは前十字靭帯再建術後患者の健側の屈曲筋力を座位、等尺性収縮(膝屈曲30°、70°、90°位)、足関節底屈位で測定し、回旋による差はなかったと報告している。今回とは測定条件が違うが、本研究でもNR群では底背屈位それぞれで回旋の差はなかった。しかしR群においては、背屈位で回旋の違いによる差が認められ、外旋位で足関節肢位の違いによる筋力の差が見られた。【まとめ】 健常者をR群、NR群に分け、膝関節初期屈曲筋力を下腿回旋肢位、足関節肢位の違いにより測定した。健常者においては肢位の違いにより膝屈曲筋力に差が見られることを確認した。今回の研究では、R群、NR群間には差は認められなかったが、R群における傾向として足関節筋の作用が膝屈曲筋力を左右しやすく、特に下腿外旋位での影響は反張膝の関節機能を含め今後さらに検討していきたいと思う。
著者
平川 善之 野原 英樹 北條 琢也 蓮尾 幸太 山崎 登志也 原 道也 花田 弘文 渡辺 誠士
出版者
公益社団法人 日本理学療法士協会
雑誌
理学療法学Supplement Vol.32 Suppl. No.2 (第40回日本理学療法学術大会 抄録集)
巻号頁・発行日
pp.C0331, 2005 (Released:2005-04-27)

【目的】反張膝はスポーツ障害・外傷に結びつくマルアライメントの一つである。臨床上、反張膝が原因と思われる半月板・靭帯損傷や、膝を徒手的に強制過伸展させることで再現できる膝蓋下や膝窩の疼痛を経験する。しかしこの疼痛を説明できる反張膝の過伸展域での運動動態を現したものはみられない。そこで今回健常者を対象に、膝過伸展角度を測定後、X線透視下にて膝伸展0°位(以下0°位)及び最大努力伸展位(以下HE位)の2条件の膝関節肢位で形態的特長を分析し、興味ある知見が得られたので報告する。【対象】下肢に疾患を有しない健常者19名(男性10名女性9名)36肢、平均年齢25.4±4.2歳である。【方法】a、膝過伸展角度の測定:被検者全員を立位にて、膝を最大過伸展させ、大転子・膝関節中央・外果を結んだ線を計測した。伸展角度15°以上を重度過伸展群(以下A群)、5°以上15°未満を中度過伸展群(以下B群)、5°以下を非過伸展群(以下C群)に分類した。b、X線透視:X線透視は全被験者に本研究の十分な説明を行い、同意を得た上で行った。東芝製透視装置(KXO-15C)を使用し、被験者は座位で矢状面より透視下にて大腿骨が真側面となるよう調節し、0°位とHE位の2肢位を3秒間静止させ録画した。録画した映像を画面上でトレースし以下の項目を測定した。脛骨関節面傾斜角(以下TJA):中点法により求めた大腿骨長軸と脛骨関節面のなす角とし、膝の前方で大腿骨側を計測した。脛骨前方変位量(以下TAD):大腿骨長軸と平行に大腿骨外・内顆と脛骨外・内顆に接する線を作図しその距離を測定し、大腿顆部最大前後径で除して標準化した。これらの形態的数値を基に0°位、HE位で、各群間を比較することにより、過伸展域での運動学的特性を分析した。統計処理は分散分析(有意水準5%未満)および多重比較(有意水準1%未満)を用いた。【結果】1:被検者の内訳はA群5名、B群6名、C群8名であり、平均膝過伸展角度は7.5°(±4.5°)であった。2:TJAは被験者の群間および膝関節肢位の両方の主効果が有意であった。HE位においてA群はC群よりも有意に大きかった。3:TADは群間の主効果に有意差はなかった。【考察】結果2、3より、0°位では膝過伸展角度の程度に関らず、各群間で形態的な特徴はみられないが、HE位ではA群はC群と比べ、脛骨前方変位に差はなく脛骨関節面の傾斜が大きくなることがわかった。このことはC群に比べてA群では、0°位から過伸展する際に、いわゆる「滑りと転がり運動」のうち、「滑り」に差はないが「転がり」が強いと考察された。これにより膝前方では脛骨関節前面と大腿骨関節面が衝突し、ここが支点となって後方では大腿・脛骨間距離が開大し、関節構成体の緊張の増大が起こることが推測される。このため強制過伸展により膝蓋下や膝後面に疼痛を生じさせる機序が考えられた。
著者
平川 学
出版者
公益社団法人 高分子学会
雑誌
高分子 (ISSN:04541138)
巻号頁・発行日
vol.46, no.7, pp.476-479, 1997-07-01 (Released:2011-10-14)
参考文献数
26

ポリプロピレン(PP)の現状と将来展望について,固体触媒PPとメタロセン触媒PPの比較を中心に行った.ポリエチレンに比べメタロセン触媒PPの実用化は遅れているが,既存の固体触媒PPの市場と競合していくためには,(1)触媒自身の改良,(2)触媒担持技術の開発,(3)加工性の改良などが課題として残されている.
著者
荒木 菊次 平川 政元
出版者
医学書院
巻号頁・発行日
pp.79-81, 1966-11-01

最近,国内においては学校造園,鉄道造園,工場造園,病院造園,墓園などそれぞれ各分野においての造園計画が,積極的に推進されているが,造園管理費の問題については,造園を企画,維持管理するうえに,まことに重要な問題であると思われるが,遺憾ながら現在のところ,これという資料も見当たらないので,われわれは今回,官,公,法人立の100床以上の病院を対象に調査を行ない,その結果を考察することにした。まず,病院の造園管理に要した経費を調査するために,第1表のような内容の調査表を作成し,これを対象施設に送り,回答をいただいたところ,次のような結果を得た。 調査の内容は病院の敷地総面積,最近1か年間の経営費,同じく造園管理費支出額とその支出額が労務費造園費にどのように使途されているかを計数的に分析することにした。その他収容病床数,病院の種別などである。

1 0 0 0 戒壇の原意

著者
平川 彰
出版者
日本印度学仏教学会
雑誌
印度學佛教學研究 (ISSN:00194344)
巻号頁・発行日
vol.10, no.2, pp.680-700, 1962

1 0 0 0 八宗綱要

著者
平川彰著
出版者
大蔵出版
巻号頁・発行日
1980

1 0 0 0 大乗起信論

著者
平川彰著
出版者
大蔵出版
巻号頁・発行日
1973
著者
平川 晴久 林田 嘉朗
出版者
The University of Occupational and Environmental Health, Japan
雑誌
Journal of UOEH (ISSN:0387821X)
巻号頁・発行日
vol.24, no.2, pp.117-129, 2002-06-01 (Released:2017-04-11)
被引用文献数
3 2

低酸素によって引き起こされる自律神経系と循環系の反応、および暴露直後にみられる心拍の反跳現象について解析を行った. 血圧測定用カテーテル, 心電図そして腎交感神経活動記録用電極を慢性に植え込んだWistar ratを用い, hypocapnic (Hypo), isocapnic (Iso), hypercapnic (Hyper) hypoxiaの暴露を行った. Isoでは, 血圧及び心拍数は変化しなかったが, Hypoでは, 血圧は低下し心拍数は増加, Hyperでは, 血圧は上昇し心拍数は低下した. 腎交感神経活動はいずれにおいても増加した. IsoとHyperの終了直後, 心拍数は一過性に増加した. この心拍反応は, 腎交感神経活動の反応とは相関しなかった. このことより, この心拍の反跳現象は, 交感神経よりもむしろ副交感神経系のメカニズムによるものと考えられた. 低酸素時の循環反応は動物により異なると考えられているが, 類似した条件において行われた実験においては種差に関わらず, その結果は, ほぼ一致するものであった.
著者
平川 淳一 木村 和夫 山内 眞義 中山 一 中原 正雄 藤沢 洌 亀田 治男 大畑 充 佐藤 泰雄
出版者
一般社団法人 日本肝臓学会
雑誌
肝臓 (ISSN:04514203)
巻号頁・発行日
vol.30, no.12, pp.1726-1730, 1989-12-25 (Released:2009-07-09)
参考文献数
14

約1年の間に5人の覚醒剤乱用者グループの全員にみられた非A非B型急性肝炎例を経験した.これらの症例は注射器を共用し覚醒剤の静脈注射するといういわゆる“回し打ち”を行い,いずれも急性肝炎の発症を認めた.覚醒剤乱用と肝炎発症の関連について検討した結果,通常のB型,非B型急性肝炎に比べ潜伏期の長いことが推察された.回復期に行った肝生検像は,慢性活動性肝炎の所見であった,覚醒剤による弊害は現在大きな社会問題となっており,これによるB型肝炎の報告は散見されるが,非A非B型肝炎の報告は本邦では文献上みあたらず興味ある集団発症例と思われる.
著者
渋谷 圭祐 谷添 秀樹 平川 辰博 飯村 和之 増田 暁雄 野田 秀夫 奥田 博志 金子 英之 杉浦 博明
出版者
The Institute of Image Information and Television Engineers
雑誌
映像情報メディア学会大会講演予稿集
巻号頁・発行日
pp.69, 2003 (Released:2004-03-26)

This paper presents development of a wide color gamut CRT display monitor that has 93[%] color gamut compare to NTSC color gamut. It provides the color gamut nearly equal to the Adobe RGB color space. In this paper we would like to report about a prototype of wide color gamut CRT display monitor. We compared color gamut of our prototype vs. a major standard color patches. And more we checked about the gamut change accrording to the viewing angle. We believe that our monitor is useful for soft proofing of DTP as replacement of conventional CRT displays.
著者
小手川 良江 本田 多美枝 平川 オリエ 本田 由美 寺門 とも子 八尋 万智子
出版者
日本赤十字九州国際看護大学
雑誌
日本赤十字九州国際看護大学intramural research report = The Japanese Red Cross Kyushu International College of Nursing, intramural research report (ISSN:13478877)
巻号頁・発行日
vol.9, pp.15-25, 2010-12-25

本研究の目的は看護師の「職業キャリア成熟」に影響する要因を明らかにすることである。看護師の「職業キャリア成熟」(27点〜135点)に、属性・経験年数・家族の支援・キャリア計画をたてるうえで影響の大きいライフイベント・役割モデルの有無・メンターの有無が影響していると考え、概念枠組みに基づき調査項目を設定した。設置主体が同じである二つの総合病院(A病院509床、B病院301床)に勤務する看護師を対象とし、無作為抽出により374名に調査用紙を配布した。調査は無記名自記式質問紙調査とし、郵送にて回収を行った。分析は記述統計量、t検定、一元配置分散分析、相関分析を行った。結果、「職業キャリア成熟」と経験年数に有意な差はなかった。しかし、全ての経験年数で他の下位尺度と比較して<職業キャリア計画性>が低かった。現在起こっているライフイベントの中でキャリア計画をたてるうえで影響が大きいものとしては、結婚61名(30.7%)、育児49名(24.6%)が多かったが、配偶関係や子どもの有無による「職業キャリア成熟」に有意差は認められなかった。しかし、家族の支援が高い群は有意に「職業キャリア成熟」が高く、家族の支援による影響が示唆された。また、役割モデルやメンターの存在がある群は、「職業キャリア成熟」が有意に高く、キャリア成熟の影響要因であることが示唆された。
著者
佐々木 崇文 平川 篤 福島 隆治 町田 登
出版者
公益社団法人 日本獣医師会
雑誌
日本獣医師会雑誌 (ISSN:04466454)
巻号頁・発行日
vol.72, no.10, pp.617-621, 2019-10-20 (Released:2019-11-20)
参考文献数
14

第3度房室ブロック罹患犬36例のうち,死後の病理学的検索により房室伝導系に重度の器質的障害が見いだされた31例について,重度傷害部位と心電図上でのQRS幅及び心室レートとの関連性を検討した.QRS幅に関しては,正常なQRS群(narrow QRS)が4例,幅広いQRS群(wide QRS)が27例であり,重度傷害部位から想定される下位自動中枢(想定下位中枢)とQRS幅とが合致していたのは31例中26例(84%)であった.一方,心室レートは40/分未満が15例,40~60/分が7例,60/分以上が9例であり,想定下位中枢と心室レートが合致していたのは31例中13例(42%)であった.本検索結果から,QRS幅の方が心室レートよりも房室伝導系の重度傷害部位をより的確に映し出しているものとみなされた.
著者
平川 弘 石川 泰弘
出版者
一般社団法人 日本ゴム協会
雑誌
日本ゴム協会誌 (ISSN:0029022X)
巻号頁・発行日
vol.45, no.10, pp.920-931, 1972 (Released:2008-04-16)
参考文献数
15
被引用文献数
14 4
著者
井原 熙隆 石田 修平 松本 拓也 江草 典政 馬庭 壯吉 平川 正人
雑誌
情報処理学会論文誌 (ISSN:18827764)
巻号頁・発行日
vol.57, no.4, pp.1162-1171, 2016-04-15

高齢化あるいは疾患のために自らの足での歩行に不安がある場合,杖などの歩行補助具に頼ることになる.歩行動作を正確に獲得することは診療ならびにリハビリテーションプログラムの策定にあたり不可欠であるが,これまでは目視で行われることが多かった.身体あるいは歩行補助具にセンサを取り付けたり3次元運動解析システムを用いる方法もあるが,できるだけふだんどおりの状態の下で計測できることが望ましい.本研究では,フロア設置型圧力センサの上を歩行する患者の足ならびに杖の領域を抽出・追跡し,歩行能力を客観的に把握することを目指したシステムについて述べる.変形性関節症患者の歩行分析への試行を通して,獲得された分析データが臨床的特徴と合致することを確認した.
著者
平川 善之 隈本 健 釜谷 幸児 野原 英樹 安田 和弘 津本 要 山崎 登志也 元尾 篤 牛島 幸治 北川 智子 蓮尾 幸太
出版者
公益社団法人 日本理学療法士協会
雑誌
理学療法学Supplement
巻号頁・発行日
vol.2003, pp.C0845, 2004

【はじめに】腹筋群の緊張による腹圧の維持・増強は、体幹・腰部のみならず四肢の運動機能に重要である。実際臨床場面でも、腰部・四肢の障害側と一致した腹圧の左右差が問題となる症例は多い。Richardsonらは腹横筋の収縮による腹部引き込み動作が腹圧の向上に影響するとし、圧バイオフィードバック装置を用いた評価方法を紹介している。臨床的には血圧計マンシェットで代用した方法がある。これらは腹部全体の評価であり、左右差を反映したものではない。そこで今回、腹圧評価の一指標として左右を分別して測定した。この結果と我々が臨床で行う体幹安定性テストを比較し、その有効性を検討した。<BR>【方法】健常被検者18名に対して以下の2つのテストを行い、比較検討した。腹部引き込みテスト(以下テスト1):Richardsonらの方法に則って腹臥位での腹横筋収縮による腹部引き込み動作を十分習得させた後、正中線の左右腹部下に二つの血圧計マンシェットを配置し、水銀計の目盛を70mmHgに設定した。被検者に5秒間の腹部引き込み動作を行わせ、その際、水銀計の増減の安定値を記録した。測定は10回行い、各試行間に30秒間の休息を入れた。体幹安定性テスト(以下テスト2):被検者は足底接地しない端座位を保持し、検者が左右の肩の上に徒手的に体重の60~70%程度の負荷を加えた。肩甲帯挙上などの代償動作の出現や体幹中間位を保てなかったものを「不安定」と評価した。(背景に目盛を設定し3人のPTが評価)<BR>【結果】テスト1は左右差有り:11名、左右差無し:7名であった(t検定 危険率5%)。テスト2は左右差有り:9名、左右差無し:9名であった。テスト1・2共に左右差有り:8名、共に左右差無し:6名、どちらにも属さない:4名であった。これら2つのテスト間の関連性を検定するためフィッシャーの直接法を用いた。その結果、テスト1における左右差の有無が、テスト2における左右差の有無に一致する確率が高いことがいえた(p<.05)。<BR>【考察】今回、左右腹部下で腹部引き込みテストを実施した結果、半数以上の11名に左右差が認められた。このことから腹圧を反映する腹部引き込み動作に左右差があることが示唆された。さらに体幹安定性テストにて評価された左右差が、腹部引き込みテストでの左右差と一致する確率が高いことから、これら2つのテストは体幹機能の左右差を評価できる一つの指標となることが考えられた。身体の運動に先行しておこる腹横筋収縮による腹圧の上昇は、体幹の安定性に関与し、四肢の運動や動作を効率的に行うための重要な要素となる。この機能が片側的に損なわれると、体幹の安定性を必要とする動作等に支障を来たす可能性が考えられる。今後、より多くの健常者のデータを収集すると共に、諸動作との関連性を検討していきたい。