著者
平野 浩一
出版者
杏林医学会
雑誌
杏林医学会雑誌 (ISSN:03685829)
巻号頁・発行日
vol.48, no.1, pp.53-60, 2017 (Released:2017-03-31)
参考文献数
5

甲状腺・副甲状腺の画像診断では超音波検査は第一選択である。本検査は対象をリアルタイムに連続して観察出来る非常に優れた検査法である。ただし,検査には限界も当然存在する。それを理解した上で,種々の病変の超音波像を習得し,臨床に役立てることが,甲状腺・副甲状腺外科では非常に重要である。
著者
内藤 善 竹林 徹郎 真名瀬 博人 平野 聡
出版者
日本腹部救急医学会
雑誌
日本腹部救急医学会雑誌 (ISSN:13402242)
巻号頁・発行日
vol.43, no.4, pp.781-784, 2023-05-31 (Released:2023-11-30)
参考文献数
13

症例は20歳台,男性。ライフル銃を発砲し当院に救急搬送となった。前胸部に銃弾の射入口を,左側腹部に出血を伴う射出口を認めた。CTでは,左第10肋骨骨折,脾臓下極に境界不明瞭な領域を認めた。外傷性脾損傷の診断で緊急手術を施行した。術中所見では脾臓下極に裂傷を認めるも出血量は多くなかったため腹腔鏡下に脾臓を一部切除し,焼灼止血で手術を終了した。術後6日目には射出口部創より便汁漏出あり腸管穿孔と診断し,再手術で下行結腸に穿孔を認め,結腸左半切除術を施行した。術後は創感染を併発したが他に合併症なく経過し,術後4週目に近医へ転院となった。高速で放たれた弾丸はshock waveを生み出し周囲に損傷を与えつつ移動することが知られている。本症例では弾丸によるshock waveとtemporary cavitationにより結腸壁に損傷が生じ,遅発性の腸管穿孔を発症したと考えられた。
著者
平野 剛 木下 博
雑誌
研究報告音楽情報科学(MUS) (ISSN:21888752)
巻号頁・発行日
vol.2015-MUS-107, no.46, pp.1, 2015-05-16

12 名のプロ奏者を対象に,フレンチホルン演奏時のマウスピースを唇に押し付ける力を計測した.演奏する音が高いほど,マウスピースを唇に押し付ける力は強くなった.特に高い音を演奏した時のマウスピースを唇に押し付ける力は,個人間で 20N 以上の差が生じていた.これらの結果からマウスピースを唇に押し付ける力は,音の高さの制御に重要であることが示唆された.
著者
平野 滋
出版者
一般社団法人 日本耳鼻咽喉科頭頸部外科学会
雑誌
日本耳鼻咽喉科頭頸部外科学会会報 (ISSN:24365793)
巻号頁・発行日
vol.126, no.8, pp.979, 2023-08-20 (Released:2023-09-01)
参考文献数
9

音声リハビリテーションは, 声の誤用によって起こる嗄声や声帯の病変を回復させるものであり, 対象となる疾患は多岐に渡る. 筋緊張性発声障害や変声障害などの機能性発声障害は最も良い適応であるが, 声帯結節, 一部の声帯麻痺, 歌手の歌唱障害, あるいは声帯の手術後のリハビリテーションとしても重要である. 最近では一部の加齢声帯萎縮も良い適応となった. 音声リハビリテーションでは音声治療が主体となるが, その手法は適切な呼吸と共鳴の誘導にある. 声帯の効率的な振動を導くために, 安定した適度な呼気流と呼気圧が重要であり, また, うまく共鳴を誘導することでソース・フィルター理論に基づく声帯に負担のかかりにくい発声様式が可能となる. 呼吸誘導にはチューブ発声法に代表される flow phonation, 共鳴誘導には顔面前部で響きを誘導する forward focus が用いられるが, 両者を同時に取り入れた semi-occuluded vocal tract exercise (SOVTE) は世界的に普及している. これらの手法は最初は母音ベースで行われ, これを会話音声にキャリーオーバーしていく必要があるが, 米国では最初から会話ベースで行う conversation training therapy (CTT) や歌唱者に用いる singing voice therapy が普及しつつある. いずれにおいても音声リハビリテーションの向かう方向性は一緒であり, 中身の手法については各症例の問題点を抽出して適切に判断するとよい.
著者
平野 正広 秋山 純和 加藤 崇洋 岡庭 栄治 丸山 仁司 天野 裕之 鬼塚 史朗
出版者
理学療法科学学会
雑誌
理学療法科学 (ISSN:13411667)
巻号頁・発行日
vol.27, no.1, pp.41-46, 2012 (Released:2012-02-21)
参考文献数
29

〔目的〕前立腺がんに対する根治的前立腺全摘除術の術後合併症に腹圧性尿失禁があり,その治療法にはPFMT(Pelvic Floor Muscle Training:骨盤底筋群トレーニング)がある.MRI(Magnetic Resonance Imaging:核磁気共鳴画像)によってPFMT時の骨盤底部の運動変化を検討した.〔対象〕健常成人男性7名とした.〔方法〕PFMT方法は,「おしっこを止めるように」,「肛門を閉めるように」の2つの指示とし,MRIによる撮影を実施した.骨盤底筋群の収縮による運動変化を捉えるために,安静時と指示を与えた時で恥骨─尾骨先端(P-C)距離,床面-尾骨先端(F-C)距離,恥骨─膀胱頚部(P-B)距離を測定し比較した.〔結果〕P-C距離は減少し,F-C距離,P-B距離の増大する傾向を認めた.指示「おしっこを止めるように」でP-C距離は減少幅が大きく,指示「肛門を閉めるように」でF-C距離の増大幅が大きかった.〔結語〕MRIを用いてPFMT時の骨盤底部の運動変化を明らかにした.PFMT指導によるP-C距離の減少,F-C距離の増大は,男性における尿失禁治療のPFMT 指導方法に役立つことが示唆される.
著者
横山 美加 道脇 幸博 高橋 浩二 衣松 令恵 平野 薫 道 健一
出版者
特定非営利活動法人 日本口腔科学会
雑誌
日本口腔科学会雑誌 (ISSN:00290297)
巻号頁・発行日
vol.50, no.4, pp.223-226, 2001-07-10 (Released:2011-09-07)
参考文献数
12
被引用文献数
2

The purpose of this study was to clarify the relationship between shapes of the epiglottis and risk of aspiration. The subjects consisted of ten normal volunteers and sixty-eight stroke patients with dysphagia. Using videofluorographic images, shapes of the epiglottis were divided into three groups, straight, curved, and closed type. The appearance ratio of types of epiglottis shape in normal volunteers was not significantly different from those in dysphasic patients. The risk of aspiration was significantly different from the types of epiglottis shape, which was the highest in the patients of curved epiglottis and lowest in those of straight-type epiglottis.The results revealed that the shape of the epiglottis is useful to predict the risk of aspiration.
著者
平野 恵健 西尾 大祐 池田 誠 新田 收 宮崎 泰広 皆川 知也 高橋 秀寿 木川 浩志
出版者
日本義肢装具学会
雑誌
日本義肢装具学会誌 (ISSN:09104720)
巻号頁・発行日
vol.31, no.2, pp.115-119, 2015-04-01 (Released:2016-04-15)
参考文献数
23
被引用文献数
3

本研究の目的は,回復期リハビリテーション(リハ)病棟に入院した脳卒中重度片麻痺患者に対して,入院時の身体機能から退院時の歩行能力を予測することの可否を検討することである.対象は,回復期リハ病棟に入院した脳卒中患者のうち,入院時に重度片麻痺を有し,長下肢装具を処方された49名とした.方法は,対象者を退院時の歩行能力から歩行可能群と歩行不能群の2群に分類し,入院時の患者属性,神経症候,高次脳機能障害,運動機能を単変量解析した.さらに,有意差を認めた評価項目を用いて,退院時の歩行能力を従属変数とした判別分析を行った.その結果,単変量解析では,年齢,神経症候,高次脳機能障害,体幹機能,非麻痺側膝伸展筋力において有意差が認められた(p < 0.05).また,判別分析では,年齢,体幹機能,非麻痺側膝伸展筋力が選択された.以上より,回復期リハ病棟に入院した脳卒中重度片麻痺患者の退院時の歩行能力は,入院時の年齢,体幹機能,非麻痺側膝伸展筋力を用いることにより予測することができると考えられた.
著者
平野 勉
出版者
一般社団法人 日本内科学会
雑誌
日本内科学会雑誌 (ISSN:00215384)
巻号頁・発行日
vol.106, no.5, pp.1029-1036, 2017-05-10 (Released:2018-05-10)
参考文献数
22

糖尿病治療の目標は,合併症の発症・進展を阻止し,健康な人と変わらない日常生活の質の維持と寿命の確保である.しかし,糖尿病治療薬(血糖低下薬)の中には心血管疾患(cardiovascular disease:CVD)による死亡を増やしてしまうものもある.その中にあって,glucagon-like peptide(GLP)-1受容体作動薬とsodium glucose cotransporter 2(SGLT2)阻害薬には,CVDイベントや死亡を有意に低下させるものが報告され,大きな話題となっている.高血糖は血管内皮の傷害など,動脈硬化のプロセスを促進させるため,基本的に血糖低下薬は動脈硬化と,それに基づくCVDを抑制する.しかし,重症低血糖,体重の増加を伴うとむしろCVDを増加させてしまう.メトフォルミンや最近の糖尿病治療薬はこれらの懸念が少ない薬物である.高血圧や脂質異常症などに対する包括的なリスク管理がCVD予防には効果的であるが,糖尿病治療薬の特性を考慮して上手に使うこともさらなるCVD予防につながる.
著者
石川 和良 倉渕 隆 山本 学 嵐口 晃宏 遠藤 智行 平野 剛
出版者
公益社団法人 空気調和・衛生工学会
雑誌
空気調和・衛生工学会大会 学術講演論文集 平成16年 (ISSN:18803806)
巻号頁・発行日
pp.465-468, 2004-08-20 (Released:2017-08-31)

Because of amendment of the Construction Standard Law, almost all houses must equip with a full time mechanical ventilation system. However, people could feel cold draft in sanitary area when the ventilation system provides sufficient volume of air. So, an investigation using thermal manikin was carried out to find out proper exhaust flow rate from thermal sensational point of view. It was found that flow rate less than 20 CMH and 50 CMH would be appropriate for bathroom and toilet, respectively to avoid uncomfortable sensation in cold season based on the evaluated EHT and PMV.
著者
内田 翔太 篠部 将太朗 平野 尚浩
出版者
公益財団法人 自然保護助成基金
雑誌
自然保護助成基金助成成果報告書 (ISSN:24320943)
巻号頁・発行日
vol.28, pp.131-139, 2020-01-10 (Released:2020-01-10)
参考文献数
13

大東諸島は外来種によって固有陸貝相が壊滅的な状態に近づいていることが示唆されている.しかし先行研究では,外来捕食者のツヤオオズアリやオガサワラリクヒモムシの効果は無視されていた.そこで本研究はこれら 2 種に対する影響の解明を目的として,先行研究が実施された地点で 2 種の分布調査と,先行研究で不十分であった海岸線近くの陸貝調査を実施した.沖縄本島では外来捕食者に対して応答が大東諸島と異なるのかを明らかにすることを目的として陸貝調査を実施した.また,大東固有陸貝の繁殖技術の確立を目的として飼育を行った.その結果,ツヤオオズアリは小型陸貝の個体数を減少させていた.オガサワラリクヒモムシは陸貝への影響はなかった.沖縄本島では外来捕食者に対して大東諸島と似たような応答をしている可能性があった.飼育下ではダイトウノミギセルは繁殖に成功したが,アツマイマイ属は成功しなかった.大東諸島の陸貝相の保全には飼育技術の発達が望まれる.
著者
桒田 亜希 内藤 浩之 平野 利典 海氣 勇気
出版者
日本腹部救急医学会
雑誌
日本腹部救急医学会雑誌 (ISSN:13402242)
巻号頁・発行日
vol.37, no.3, pp.511-514, 2017-03-31 (Released:2017-07-22)
参考文献数
18
被引用文献数
1

患者は83歳,男性。朝,下痢あり。夕方になり激しい嘔吐が出現した。改善しないため救急要請し当院に搬送された。CTで胃壁内気腫,門脈内ガスを認めた。腹膜刺激症状なく,全身状態は安定していたため,同日入院とし保存的治療を施行した。翌日のCTでは胃壁内気腫および門脈ガスは消失した。上部消化管内視鏡で胃大弯に発赤,白苔の付着を認めた。胃粘膜培養は陰性であった。経過は良好で,第5病日より食事を開始し,第10病日に退院となった。今回われわれは保存的治療で軽快した門脈ガス血症を伴う胃壁内気腫の1例を経験したので,文献的考察を加え報告する。
著者
米道 宏子 伊藤 麻衣 阿部 啓子 高橋 有希 中里 弥生 上遠野 雅美 平野 加奈子 阪本 靖介 福田 晃也 笠原 群生
出版者
一般社団法人 日本移植学会
雑誌
移植 (ISSN:05787947)
巻号頁・発行日
vol.56, no.Supplement, pp.s75, 2021 (Released:2022-05-12)

チャイルド・ライフ・スペシャリスト(以下CLS)とは、医療現場において心理社会的サポートを提供する専門職である。アメリカ小児学会はChild Life Programの必要性を明確に提言している。今回、急性肝不全症例の患者サポートに関して必要性・重要性をCLSの視点から報告する。当院へ紹介される小児急性肝不全の患児は転院後にICU管理となる重症症例がほとんどである。通常の移植患者と異なり小児劇症肝炎症例は鎮静管理下・人工呼吸・血漿交換治療を継続し、治療によって自己肝が回復しない場合は緊急肝移植手術が必要となる。そのため移植術前に患児への十分な説明が行えず、患児の理解や受容が欠けた状況の中で患児は術後に覚醒するため、医療的トラウマのリスクが高まる。これらの要因が、長期管理における患児の病識の欠落、内服コンプライアンスの低下の原因となると考えられる。当院の急性肝不全患者に対し、CLSは主に①ティーチング、②プリパレーション/ディストラクション、③治癒的遊び、④復学支援を行う役割を担い、病状や手術への理解促進・医療環境への適応・治療に対する患児の協力・ご両親の治療への理解・積極的介入を引き出すことに成功している。小児急性肝不全以外にも緊急で移植を行わなければならない状況は多い。しかし日本ではCLSの数や認知度が不十分な為、今後、患児と家族へのサービスの影響や効果を識別する研究を行いCLSの重要性を啓発してゆく必要がある。
著者
江田 早苗 内藤 由香 平野 絵理香
出版者
公益社団法人 日本語教育学会
雑誌
日本語教育 (ISSN:03894037)
巻号頁・発行日
vol.143, pp.48-59, 2009 (Released:2017-04-07)
参考文献数
10
被引用文献数
1

韻律(プロソディー)情報は,円滑な日本語のコミュニケーションを図る上で重要な役割を持っており,日本語学習者の韻律情報知覚のストラテジーを明らかにすることは,今後の音声教育の発展に貢献すると考えられる。本稿では,イントネーションの統語機能の知覚に焦点を当て,日本語母語話者,中級,上級学習者を比較した聴覚実験の結果を報告する。実験調査の結果から,中級・上級学習者ともに,イントネーションの「区切り」による統語機能を,文音声の意味理解の手がかりとして,予想以上に利用しようとしていることがわかった。本研究で明らかになった日本語学習者の韻律情報に対する意識の高さを利用し,複雑な統語構造を持つ発話の理解を助けるストラテジーとして,日本語音声教育の場面に積極的に取り入れることを提言したい。
著者
平野 茂樹 松葉 満江 小柳 卓
出版者
公益社団法人 日本アイソトープ協会
雑誌
RADIOISOTOPES (ISSN:00338303)
巻号頁・発行日
vol.32, no.8, pp.353-358, 1983-08-15 (Released:2010-09-07)
参考文献数
8
被引用文献数
4 3

安定および放射性ヨウ素の化学形と, その濃度を調整した人工海水中で海産生物による, 放射性ヨウ素の取り込みと排出を検討した。これらの生物による放射性ヨウ素の濃縮係数は飼育水中のヨウ化物イオンの濃度により変化するが, ヨウ素酸イオンの濃度は放射性ヨウ素の取り込み排出に影響を与えなかった。飼育水中のヨウ化物イオンの濃度が高いほど放射性ヨウ素の生物学的半減期が短くなり, したがって, 濃縮係数が低くなるということが観察された。
著者
岡部 知太 平野 一 前之園 良一 中森 啓太 藤原 裕也 南 幸一郎 上原 博史 能見 勇人 稲元 輝生 東 治人
出版者
一般社団法人 日本移植学会
雑誌
移植 (ISSN:05787947)
巻号頁・発行日
vol.57, no.Supplement, pp.s356_2, 2022 (Released:2023-02-23)

2020年より現在に至るまで、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)が猛威をふるう中、コロナワクチン(以下ワクチン)の有効性が報告されている。一般人と比べて移植患者のワクチンに対する抗体反応は低いが、腎移植患者が一般人より発症リスクが高いとは断定できない。今回当院通院中の腎移植患者に対するワクチン接種によるCOVID-19発症予防の有効性に関して、文献的考察を踏まえて報告する。追跡できる範囲で2015年より現在までの当院腎移植患者に対して、ワクチン接種のアンケートを行い、回答のあった66名に対して解析を行なった。3名を除く全員が2回以上ワクチン接種を行っている。解析患者の内、5名がCOVID-19を発症した。重症1名、中等度1例、軽症3例である。重症例は、非ワクチン接種者であり、罹患後人工呼吸器下での呼吸管理を行ったが、死亡に至った。その他4名は、後遺症なく軽快した。本邦では、報告時点で約890万人の陽性報告があり、国民の約7%が罹患したことになる。当院におけるワクチン接種群において、COVID-19発症率は6.3%であり、腎移植患者が発症しやすいとは断定できない結果であった。また非ワクチン接種群3人のうち1名がCOVID-19を発症し、重症化したことを考えると、ある一定の重症化予防効果は示唆される。免疫応答が弱いことが報告されている腎移植患者にとって、ワクチンを複数回接種することは、COVID-19発症率、重症化を低減できると考える。