著者
木村 容子 佐藤 弘
出版者
社団法人日本東洋医学会
雑誌
日本東洋醫學雜誌 (ISSN:02874857)
巻号頁・発行日
vol.57, no.4, pp.453-458, 2006-07-20
被引用文献数
2 1

月経痛,月経周期異常に対し,気剤単独で,奏功した5例を報告した。症例1では,激しい心窩部痛及び月経痛が半夏厚朴湯で改善,症例2では,柴朴湯で月経不順及び月経痛が軽快,症例3では,半夏厚朴湯で月経痛が軽減した。〓血の所見を認めたが,気欝の症状に基づいて処方を選択した。症例4では,加味逍遥散から桂枝加竜骨牡蛎湯に変方して月経痛及び月経不順が改善,症例5では,主訴の蕁麻疹を桂枝加竜骨牡蛎湯加味方で治療中,月経周期が40日以上から30日に改善した。後者2例では,明らかな〓血症候を認めなかった。腹部動悸亢進や怖い夢,いやな夢がみられたため,桂枝加竜骨牡蛎湯を選択した。月経異常は,漢方医学的には,特に「血」に関連する病態が多いとされる。しかし,5症例の経験から,ストレス状況で発症した月経障害に対し,〓血の症候を認めても,気鬱や気逆など「気」の関与を考慮し,気剤が有効な症例もあることが示唆された。
著者
笹月 健彦 平山 兼二 木村 彰方
出版者
九州大学
雑誌
がん特別研究
巻号頁・発行日
1986

家族性大腸ポリポ-シス患者由来のポリ-プ30例,大腸癌20例および非遺伝性大腸癌20例を対象として、正常粘膜,ポリ-プ,癌におけるがん遺伝子の発現および種々のプロ-ブを用いたヘテロザイゴシティ消失(LOH)の検索を行なった。調査し得た全例において、cーmyc遺伝子の発現は正常粘膜,ポリ-プ,癌の順に増加しており、その逆にcーfos遺伝子の発現は減少していた。このことよりcーmycは細胞増殖に、cーfosは細胞分化に密接に関与すると推定された。以上の傾向は遺伝性,非遺伝性いずれの大腸癌においてもみられた。家族性大腸ポリポ-シス由来の大腸癌においては、第5,6,12,15,17,22染色体に、20〜50%の症例でLOHが検出された。非遺伝性大腸癌を対象とした場合にも第5,6,15,17,22染色体に10〜30%の症例でLOHがみられた。また本症ポリ-プにおいても、低頻度ながら第12,17,22染色体のLOHが検出されたことより、LOHは遺伝性ー非遺伝性いずれの大腸癌においても特異的な事象ではないが、家族性大腸ポリポ-シスではやや高頻度であり、種々のがん化機構への感受性がより高まっていると推定された。本症多発家系(16家系)構成員を対象として、種々のプロ-ブを用いたRFLP解析を行ない、Mortonの遂次検定法による連鎖検定を進行中であるが、密な連鎖の報告があったCllpllを含めて、有意の連鎖を証明できたものはない。しかし,最大ロッド値が正の値をとるマ-カ-は、第1,5,11,22染色体に各1個、第12染色体に4個見出しており、更に検索を進めている。また本症との連鎖が示唆されていたHLAについては、患者群,り罹同胞対,家系構成員を対象とした解析により、連鎖を否定した。種々の単クロ-ン抗体を用いた組織染色結果より、がん関連抗原(sidlyl Le^など)の発現が、本症患者の正常粘膜では、正常人組織に比して多く認められるため、生化学的にはがん化過程が既に進んでいると思われた。
著者
今村 均 西田 郁子 牧 憲司 森本 彰子 古谷 充朗 上田 秀朗 坂本 淑子 曽我 富美雄 内上 堀征人 木村 光孝
出版者
一般財団法人 日本小児歯科学会
雑誌
小児歯科学雑誌 (ISSN:05831199)
巻号頁・発行日
vol.31, no.4, pp.732-742, 1993-09-25 (Released:2013-01-18)
参考文献数
27
被引用文献数
2

著者らは小児における歯牙の測色にビデオディジタイザーとコンピュータを応用することを考えた.しかし,本機材はコンピュータグラフィック用に開発されたもので測色値は保証されない.今回の実験では機材の特性を調査し設定方法について検討した.1)機材の電源投入後30分以上経過して測定値が安定した.2)HPV2コマンドではカラーレベルが3,γ 補正値が4のとき10YR7/3の基準信号を良好に測定した.これは,HV-HP-S013012コマンドに相当した.3)ビデオカメラの設定を次のようにすると良好な結果が得られた.(1)シャッタースピード:1/60S(2)絞り:F3.4以上またはオート設定(3)ゲイン:+6dB(4)ホワイトバランスまずカメラを横壁に向ける.次にホワイトレンズキャップを付けピントを最大にぼかす.ワンプッシュホワイトバランスボタンを押す.4)無彩色を取り込んだ測色値の特性は非直線的で理論値と一致しなかった.5)計測値を理論値に近づける数学的補正の基本式にK×M1/3+A(K,Aは定数)を用いると良好な補正値が得られた.
著者
木村 寛子
出版者
山梨英和大学
雑誌
山梨英和大学紀要 (ISSN:1348575X)
巻号頁・発行日
vol.10, pp.A83-A94, 2011

本稿の目的は、予測を外す表現や非常識な発想をおかしみと共に受け入れる方法を明らかにすることである。そこで、予測とのずれ、常識とのずれを含むユーモアエッセイを分析資料とし、資料から読み取ることのできるずれを確認したうえで、理解主体がずれの他に読み取っているものや感じとっていることを、周囲の表現を見ながら明らかにするという手順で分析を行った。分析の結果、ずれを生み出す表現主体の着眼点や、本題とは無関係な理屈、常識的ではない発想の中にある日常性などを、理解主体はずれの他に読み取っていること、そこからさらに表現主体の心理や現状を想像できるようになることが明らかになった。表現主体の発想を理解し、心情を想像することは、理解主体が表現主体に共感したり期待を抱いたりすることにもつながるだろう。このような過程を通して理解主体の中に生まれる共感や期待が、ずれをおかしみと共に受け入れるために重要だと考えられる。
著者
井上 剛 木村 和美
出版者
川崎医科大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2012-04-01

岡山県内遠隔地域の脳卒中診療支援のため、遠隔地病院の脳卒中患者の頭部MRIやCT画像を、都市部岡山市の脳卒中専門医が携帯するiPhoneやiPadへ配信し、専門医が診断や治療を遠隔地病院の医師へ電話する、24時間365日対応のシステムを考案した。平成25年9月より遠隔地の岡山市内の榊原病院と新見地区3病院と、都市部の川崎病院脳卒中専門医師でシステムを導入した。岡山県内の脳神経系医師不在の133病院へのアンケート調査では、脳卒中患者は脳神経専門病院へ搬送され、5割弱の病院が遠隔医療は必要ないと回答した。現在は10病院が導入、準備中。本システムは地域の脳卒中患者へ最新医療を提供できる可能性がある。
著者
佐藤 隆春 岡本 朋子 上武 治己 木村 一成 諏訪 斎 田崎 正和 都築 宏 南場 敏郎 丸山 正 三上 映子
出版者
地学団体研究会
雑誌
地球科學 (ISSN:03666611)
巻号頁・発行日
vol.55, no.4, pp.201-216, 2001-07-25
被引用文献数
1

阪神地域では1596年の伏見地震,5世紀末〜6世紀中頃の古墳時代中期,および約6,300年前に地層の液状化を引き起こす強い地震動があった.これらの地震の直後に土石流・洪水堆積物が増加しているかどうか検討した.土石流・洪水堆積物の堆積相はおもに埋蔵文化財調査の露頭で観察し,考古学による年代とアカホヤ火山灰層準の対比でその堆積年代を求めた.その結果,土石流・洪水堆積物は古墳時代中期の地震直後に扇頂〜扇央で16地点,伏見地震直後に扇央〜扇端および低地で10地点確認された.土石流・洪水堆積物は地震以後に増加する傾向と,時代とともにその堆積場が扇状地から低地に移動させている傾向が明らかになった.六甲山地では1995年の兵庫県南部地震による斜面崩壊が多発し,崩壊土砂が増加している.これが豪雨で流出し土石流を発生させる自然条件は高くなっていると考えられる.
著者
木村 浩 田中 博 勝村 聡一郎 古田 一雄
出版者
一般社団法人 日本原子力学会
雑誌
日本原子力学会和文論文誌 (ISSN:13472879)
巻号頁・発行日
vol.8, no.3, pp.197-210, 2009 (Released:2012-02-22)
参考文献数
24
被引用文献数
2 2

Risk communication about high-level radioactive waste (HLW) disposal is necessary for public acceptance of the HLW disposal program in Japan. To support risk communication, we developed the Online Risk Communication Assistant Tool (ORCAT) system on the World Wide Wed (WWW). In this research, we analyzed the changes in participants' attitudes to HLW disposal through the test operation of the ORCAT system. We carried out the test operation of the ORCAT system from Oct. 29 to Dec. 12, 2005. One hundred fifty nonexpert participants, five experts, and two facilitators participated in this operation. To measure the changes in participants' attitudes to a HLW disposal program, we carried out web questionnaires before and after the test operation. Consequently, we found that most of the participants exhibited on increased level of concern about HLW as well as increased understanding regarding the necessity of HLW disposal. Nonetheless, they did not necessarily reduced their perceived risk of HLW disposal. In addition, we also found that the active participants drew conclusions based on thorough review of the information that experts posted on the ORCAT system, while the inactive participants made decisions primarily based on the context of the information presented on the ORCAT system.
著者
中田 翔治 高嶋 隆太 長野 浩司 木村 浩 班目 春樹
出版者
一般社団法人 日本原子力学会
雑誌
日本原子力学会和文論文誌 (ISSN:13472879)
巻号頁・発行日
vol.9, no.3, pp.252-270, 2010 (Released:2012-02-08)
参考文献数
16
被引用文献数
1 3

Replacement of nuclear power plants has the possibility of affecting the management of electric power suppliers. Therefore, in the nuclear policy, a depreciation method as an equalization method, which means that part of the investment cost is accumulated as an allowance, and after the start of operation, the depreciation cost in the replacement project is equalized, has been introduced in Japan. In this paper, we evaluate the replacement of nuclear power plants by taking into account the uncertainty of operating costs and the depreciation cost in order to examine the effect of the depreciation method on the decision criteria of the replacement. We found that the equalization method is effective for inducing the acceleration of the replacement. Furthermore, we show the relationship between the uncertainty and the depreciation method. It turns out that as uncertainty increases, the difference in investment threshold between the equalization method and the existing depreciation method decreases, and that in option value increases.
著者
中井 貴大 木村 圭佑 岩田 研二 山崎 年弘 坂本 己津恵 松本 隆史 櫻井 宏明 金田 嘉清
出版者
東海北陸理学療法学術大会
雑誌
東海北陸理学療法学術大会誌 第28回東海北陸理学療法学術大会
巻号頁・発行日
pp.79, 2012 (Released:2013-01-10)

【はじめに】 脊髄損傷、脳卒中片麻痺、パーキンソン病(以下:PD)患者に対するトレッドミル歩行訓練(以下:TT)効果についての報告は数多くあり、高いエビデンスを認めている。そこで、今回Th11破裂骨折にて下肢に不全麻痺を呈したPD患者に対して、自宅内での歩行再獲得にTTが有効であった症例について報告する。【症例紹介】 症例は70歳代女性で、腰背部痛の増悪により歩行困難となりTh11破裂骨折の診断を受けた。急性期病院にて硬性コルセットを作成し保存療法となり、発症42日後に当院回復期リハビリテーション病棟に入院し、自宅復帰に向けたリハビリテーションの介入を開始した(患者1日あたりの単位数7単位)。病前は夫と二人暮らしで、既往歴にPDがあったがADLは自立レベル、IADLも一部自立していた。なお、本研究は当院の倫理委員会が定める倫理規定に従い実施した。【初期評価】 Hoehn-Yahr重症度分類はStage3レベルであり、動作時に姿勢反射障害を認めた。また、入院時は座位保持で腰背部痛が増悪(NRS8/10)し、座位時間は約30分程度であった。さらに右下肢には軽度から中等度の表在感覚低下を認め、入院時下肢筋力は右下肢がMMT2~3レベル、左下肢が3~4レベルであった。病棟での移動手段は車椅子で、介助者による駆動の介助が必要であった。歩行は疼痛が強かったため行っていない。入院時機能的自立度評価法(以下、FIM)は64点であった。【経過・アプローチ】 腰背部痛の軽減、座位時間の延長に伴い、入院約2週間後平行棒内歩行訓練を開始した。当初は平行棒を両手で把持した状態でも膝折れが生じるため監視レベルに留まり、入院約1ヶ月で住宅評価を行ったところ短距離を独歩で移動しなければいけない区間が存在したため、歩行能力向上を目的にTTを開始した。TT開始初期は設定速度0.5㎞/hとし、前方両手支持での環境設定とした。歩行能力向上に伴い難易度調整を行った。TT開始から約1ヶ月で速度2.0㎞/h、支持物なしにて約3分間連続歩行が可能となった。TTの効果判定として、10m歩行を測定し、速度、歩行率、介助数の側面から訓練効果について検証した。TT開始当初は10m最大歩行速度0.59㎞/h、歩行率0.88step/sec、介助数3回であったが、約1ヶ月のTT訓練介入で速度2.02㎞/h、歩行率1.68step/sec、介助数0回と歩行速度、歩行率、介助数において改善を認めた。TT開始約2週間で病棟内シルバーカー歩行自立となり、退院時には約50mを介助なしで独歩にて移動可能となったが、自宅環境との違いより、病棟内歩行はシルバーカーに留まった。なお、退院時FIMは99点と向上した。【考察】 TT開始当初の歩容は、PD特有の体幹前傾位で小刻み歩行であった。さらに破裂骨折の影響のため下肢筋出力低下を認め、支持性が低く歩行速度も低下していた。また左右動揺が大きく、バランスを崩した際は姿勢制御が困難であった。TTの導入により、能力に合わせた高速度での歩行を繰り返し行うことと股関節伸展を意識した立脚後期を作ることでCentral Pattern Generatorが賦活し、歩行時の筋活動パターンが学習され、歩行能力向上につながったのではないかと推察された。また、動作特異性から一定量の歩行訓練を行うことで、実動作への転移が高く、短期間での訓練効果が得られたのではないかと考えられた。
著者
木村 哲
出版者
一般社団法人 日本薬剤疫学会
雑誌
薬剤疫学 (ISSN:13420445)
巻号頁・発行日
vol.3, no.1, pp.17-23, 1998-05-31 (Released:2011-02-28)
参考文献数
4
著者
板橋 久雄 撫 年浩 木村 信熙
出版者
日本獣医生命科学大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2011

牛用飼料のマイコトキシンがルーメン発酵に及ぼす影響とプロバイオテックスなどによるその制御について培養実験により検討した。添加したデオキシニバレノール(DON)またはゼアラレノン(ZEN)はルーメン内の揮発性脂肪酸(VFA)濃度などを低下させ、ルーメン発酵を抑制したが、その影響はZENの方がDONよりも大きかった。DONとZENの一部はルーメン微生物により代謝され、培養20時間では約50%が分解された。この分解には、ルーメン細菌よりもプロトゾアの方が大きく関わっていた。二糖類や酵母などの生菌剤はDONとZENの分解を促進することが明らかとなり、畜産現場で実用可能なことが示された。