著者
小林 信一
出版者
研究・イノベーション学会
雑誌
研究 技術 計画 (ISSN:09147020)
巻号頁・発行日
vol.6, no.4, pp.247-260, 1992-10-15 (Released:2017-12-29)
被引用文献数
6

本論文は、若者の科学技術離れの問題の文化的、社会的背景を明らかにしようとするものである。オルテガは「科学技術文明が高度に発達すると、かえって科学技術を志向する若者が減る事態が発生する」と議論した。これが今日の我が国でも成立するか、成立するとすればそれはどのようなメカニズムによるのかを実証的に検討することが本論文の目的である。このために、まずオルテガの議論を、科学技術と文化・社会の連関モデルとして実証可能な形に定式化した。これを実証するために、世論調査や高校生を対象とする意識調査のデータをログリニア・モデルなどの統計的な連関分析手法で注意深く分析した。その結果、オルテガの仮説は今日の我が国でも概ね成立することが明らかになった。また、短期的な実証分析の結果を外挿的なシュミレーションによって超長期に展開する工夫を施し、その結果がオルテガの文明論的な議論と整合的であることを確認した。分析結果は、オルテガの指摘した逆説的事態は必然的に発生するものであることを示している。
著者
小山 玲音 出村 幹英 野間 誠司 林 信行 原口 智和 宮本 英揮 笹川 智史 龍田 典子 上野 大介
出版者
公益社団法人におい・かおり環境協会
雑誌
におい・かおり環境学会誌 (ISSN:13482904)
巻号頁・発行日
vol.52, no.4, pp.226-232, 2021-07-25 (Released:2021-11-14)
参考文献数
28
被引用文献数
4

気生藻類の一種であるスミレモTrentepohlia aurea (Linnaeus) Martiusは,スミレのような“におい”があることが知られている.スミレモのにおいの有無や強弱には生育地域や場所による多様性の存在が示唆されるが,これまでは定性的な観察が中心であった.本研究ではスミレモのにおい物質を同定することで,スミレモのにおいに関する基礎的な知見を提供することを目的とした.におい物質の同定には,におい嗅ぎガスクロマトグラフィー(GC-O)を含む“におい分析システム”を活用した.分析の結果,“良い香り”として特徴的なにおい物質であるα-テルピネンと2-ペンチルフランを同定した(2-メチル-6-ヘプテン-1-オールとβ-イオノンは仮同定).将来的にスミレモ類縁種のにおい物質をデータベース化することで,におい物質を利用した化学分類学の発展に貢献できると期待される.
著者
小林 信正
出版者
日本超心理学会
雑誌
超心理学研究 (ISSN:1343926X)
巻号頁・発行日
vol.8, no.1-2, pp.23-27, 2003-12-04 (Released:2017-08-09)

近年、デジタル・ビデオカメラの開発により撮影機器性能が著しく向上し、特に肉眼では見えない領域、即ち紫外線や赤外線領域まで簡便にビデオカメラで撮影することが可能になった。そこで紫外線カメラ、赤外線カメラやサーモグラフィー等の特殊カメラを用い超常現象が頻発する各所を撮影した結果、不可視の光体が浮遊、移動している状態を近赤外線ビデオカメラで捕捉することができた。この発光体はアメリカではオーブ(ORB=球体の意)と呼び、霊体の可能性が高いと話題になっている。各種の撮影実験では、光体は近赤外線領域(700nm〜800nm)で捉えられ、ノーマルカメラでも時々写ることがあり、発光状態によっては可視光(400nm700nm)の内680nm〜700nm付近でも撮影可能であり、超常現象との関連性が高いと思われる。この特質は、球状のガス体で室内外の空間を浮遊移動し、壁やガラス板までも貫通、磁場との共鳴性を持ち、ラップ現象の原因であると考えられる。今後の課題として、より精度の高い撮影機器や物理的測定機器を用い、かつ様々な条件下で観測実験を試み、その正体を究明して行きたい。諸兄のご意見、ご批判、ご指導を賜えれば幸いである。
著者
小林 信彦
出版者
京都大學文學部
雑誌
京都大學文學部研究紀要 (ISSN:04529774)
巻号頁・発行日
vol.27, pp.1-21, 1988-03-31

この論文は国立情報学研究所の学術雑誌公開支援事業により電子化されました。
著者
伊藤 英之 脇山 勘治 三宅 康幸 林 信太郎 古川 治郎 井上 昭二
出版者
特定非営利活動法人 日本火山学会
雑誌
火山 (ISSN:04534360)
巻号頁・発行日
vol.50, no.6, pp.427-440, 2005
参考文献数
27

The Yakedake volcano is located in the southern part of the northern Japan Alps, central Japan. Yakedake volcanic hazard map was published in March 2002, and in June 2002, it was distributed to the inhabitants of Kamitakara village, Gifu prefecture, where is located 4-20km west from the volcano. In January 2003, the questionnaire survey was carried out on the inhabitants in order to know their attitudes to the volcanic hazard map and the level of their understanding of the contents of the hazard map. The Kamitakara village office distributed the questionnaires to 1,102 families through the headman of each ward, the headman collected 802 answers. The results of analysis were as follows. 89% of the respondents knew the existence of the hazard map and 35% read it well, but about 11% have not read the map at all. The elders have a tendency to have deeper understanding of the hazard map than younger ones, especially in elders who have experiences to meet some kinds of natural hazards. And the people who once attended the explanatory meeting of the hazard map, which was held for the residents living inside the disaster-prone area four times after the publication of the hazard map, also tend to have more proper understandings. The people who are engaged to the tourism give more attention to the volcanic hazard than others. The respondents have strong tendency to require more knowledge about the volcanic activities and hazards. We can say that the further activities by scientists, engineers and administrative officers are expected in order to establish an informed consent, that is, there should be a decision-making by inhabitants themselves and support by officers in charge with detailed explanations.
著者
小林 信重
出版者
一般社団法人 日本デジタルゲーム学会
雑誌
日本デジタルゲーム学会 夏季研究発表大会 予稿集 2023夏季研究発表大会 (ISSN:27584801)
巻号頁・発行日
pp.90-94, 2023 (Released:2023-10-28)
参考文献数
20

本研究は「ドラゴンクエストシリーズ」「いただきストリートシリーズ」などのコンピュータゲームの制作者として知られる堀井雄二に注目し、彼が大学を卒業してから著名なゲームデザイナーになるまでのフリーライター時代(1978~1988 年)の社会的文脈(大学漫研出身者の互助関係、東京のマスメディア、消費社会化)が、彼の創作活動に果たした役割を、新聞・雑誌記事などの資料の収集と分析に基づいて明らかにする。
著者
小林 信彦 Nobuhiko KOBAYASHI
雑誌
桃山学院大学総合研究所紀要 = ST.ANDREW'S UNIVERSITY BULLETIN OF THE RESEARCH INSTITUTE (ISSN:1346048X)
巻号頁・発行日
vol.25, no.2, pp.35-50, 2000-01-24

In ancient India, the Buddhist samgha as a self-governing community maintained order by means of its own law called "vinaya." Violators were punished according to vinaya. On the other hand, all Buddhists, whether monks or laymen, were expected to follow particular customs called "sila." Unlike vinaya, this was not compulsory and did not carry penalties. In Japan far away from the original land of Buddhism, no one paid attention to the distinction between vinaya and sila, because temples were the apparatus of government and there was no samgha to be governed by vinaya. Under such circumstances, Saicho (766-822) openly repudiated vinaya and replaced it with sila. From that time down to this day, the Japanese have been convinced that the essence of true Buddhism consists in the repudiation of vinaya.
著者
林 信太郎
出版者
特定非営利活動法人 日本火山学会
雑誌
火山 (ISSN:04534360)
巻号頁・発行日
vol.43, no.4, pp.207-212, 1998-08-31 (Released:2017-03-20)
参考文献数
19

Kampu volcano is a small stratovolcano situated at the central part of Oga Peninsula, Akita Prefecture. In 1810, an earthquake as large as M 6.5 occurred near this volcano. Yoshimasa Satake, the lord of the Akita clan, wrote two official reports to the Tokugawa shogunate. They included eruption records of Kampu volcano: “Yamayake” and “Yamayakekuzure”. These words were usually used for the eruption during Edo period and mean that the mountain was firing. Several reliable documents, which was written at Oga Peninsula included no eruption record. In addition, there is no eruption record in the note of Yoshimasa Satake, which is thought to have used for making the two official reports. It is concluded that the eruption descriptions of 1810 Kampu is false and created by Yoshimasa Satake at Akita clan office at Edo (Tokyo). The false eruption might have been created to make the exaggerated damage report of earthquake.
著者
小林 信彦 Nobuhiko Kobayashi
雑誌
国際文化論集 = INTERCULTURAL STUDIES (ISSN:09170219)
巻号頁・発行日
no.30, pp.3-50, 2004-07-01

In the story of Jataka 316, a hare jumps into fire to offer his own body as broiled meat. This is a story of extreme self-sacrifice. The hare does this extreme act in order to satisfy a condition for becoming a buddha. This story was transmitted to Japan and adapted as konjakumonogatari-shu(今昔物語集) 5.13. However, its keystone has changed. The Japanese hare is not interested in becoming a buddha. Instead, the hare aims to acquire makoto-no-kokoro (誠ノ心 sincere heart): one who is possessed of it is said to defer his own profit to the interest of others.
著者
小林 信一 稲永 由紀 大来 雄二 玖野 峰也 齋藤 芳子
出版者
Japanese Society for Engineering Education
雑誌
工学教育 (ISSN:13412167)
巻号頁・発行日
vol.60, no.5, pp.5_18-5_23, 2012 (Released:2012-09-29)
参考文献数
12
被引用文献数
1

In 2002, the Franklin W. Olin College of Engineering was established as a small institution in a Boston suburb specified by undergraduate engineering education. The college set up its targets to motivate students to cultivate a lifelong learning, and illuminates them with engineering design, interdisciplinarity and teamworking. These were not brand-new concepts in reforming engineering education, but somewhat difficult to realize because of the interferences such as the traditions and customs. The notable features of its curriculum are summarized as follows ; the project-based learning (PBL) are introduced to a half of courses, the engineering design education is placed across the curriculum, and the Senior Capstone Program in Engineering (SCOPE, a year-long PBL program where students collaborate with industrial partners) was set as the culmination of learning.
著者
田島 靖久 林 信太郎 安田 敦 伊藤 英之
出版者
日本第四紀学会
雑誌
第四紀研究 (ISSN:04182642)
巻号頁・発行日
vol.52, no.4, pp.151-171, 2013-08-01 (Released:2013-09-28)
参考文献数
48
被引用文献数
7

霧島火山の新燃岳では2011年に軽石を伴う噴火を起こした.新燃岳は,最近1万年間内に3回の軽石噴火をしているが,2011年噴火はこれらより短い間隔をもって噴火した.また,新燃岳の火口壁には複数の溶岩の露出が知られていたが,その噴出年代は解明されていない.そこで,新燃岳の長期的活動史を理解するために野外調査・年代測定・全岩化学分析を行い,テフラと溶岩の関係を考察した.その結果,既知のテフラ以外に4.5,2.7,2.3 cal ka BPにテフラ噴出があったことが新たに判明した.また,溶岩はテフラとの関係より牛のすね火山灰以前,新燃岳-新湯テフラ以前,新燃岳-享保テフラ以前,およびそれ以降に分けられる.新燃岳は,少なくとも 5.6~4.5 ka, 2.7~2.3 ka, 18世紀以降の3回の活発にマグマを噴出する活動的な期間と静穏な期間を繰り返しており,現在は活動的な期間に位置づけられる.
著者
林 信明
出版者
花園大学
雑誌
花園大学社会福祉学部研究紀要 (ISSN:09192042)
巻号頁・発行日
vol.21, pp.1-13, 2013-03

慈善事務所は、フランス革命期の1796 年、貧しい人びとを救済するために設けられた公的機関である。しかし実際は、革命の混乱で実動するまでには至らなかった。慈善事務所の存在が知られるようになるのは、ナポレオン帝政下においてである。その後、この事務所はいくども名称をかえながら、今日の自治体社会福祉活動センター(CCAS: Centre communal d'action sociale )に至る。総じていえば、19 世紀前半は産業資本主義の形成過程の最中にあって、社会救済への国家の関与は希薄であった。本論では、とりわけ国家責任が曖昧な当時において、慈善事務所がどのような役割を果たしたかについて論及する。
著者
小林 信之
出版者
山口大学
雑誌
重点領域研究
巻号頁・発行日
1991

我々は従来よりAIDS発症のco‐factorとして、TNF(tumor necrosis factor;腫瘍壊死因子)を提唱してきている。本研究において我々は以下の2点を新たに明かにした。その第1点は、TNFによるHIV感染細胞の特異的致死機構が所謂Apoptosisの機構に拠っており、TNFによるHIV複製増強がHIV感染細胞の特異的致死を誘因しているのではないことを明かにしたことである。近年細胞のApoptosisを仲介すると考えられている細胞膜上の糖蛋白Fas坑原遺伝子が分子クロ-ン化され、細胞死の機構がようやく明かにされうる段階に来ており、今後HIV感染相棒の特異的致死機構がこの観点からさらに詳細に検討されていくものと期待される。我々が明かにした第2の点は、HIV転写制御に細胞特異的に関わる因子の存在と、その因子が作用するHIV‐LTRの中のcis‐elementの同定である。我々が新規に見いだしたこのcis‐elementはHIV‐LTRの‐121から‐158に存在し、この領域がヒトT細胞株MOLT‐4でHIVの転写を正に調節していることから我々はこの領域をURE(up‐regulation element)と命名した。この領域は単独にHIV転写を制御する因子ではなく、HIV‐LTR中のエンハンサ-(Enhancer)領域の機能を制御する領域である事が明かとなった。、HIVの転写には必須の領域ではないが、この領域の存在はHIVの転写を最大500倍活性化すること、さらに、この領域の活性が細胞特異的であることも見いだした。今後この領域に働く細胞性因子の検索を行なっていく予定である。
著者
中野 弘一 坪井 康次 村林 信行 山崎 公子
出版者
一般社団法人日本心身医学会
雑誌
心身医学 (ISSN:03850307)
巻号頁・発行日
vol.34, no.3, pp.219-224, 1994-03-01

ライフサイクルの観点から中年期の生活を考えてみると, 社会的には職場における適応が大きな問題となっている。本論文では職場での適応について, 1つは不適応の代表として出社困難症例を検討し, もう1つは適応過剰のため心身症を発症し適応が破綻していった症例を考案した。不適応事例については, 東邦大学心療内科を受診し, 継続勤務が不良であった105例につき調査した。受診経路については, 女子では他人に勧められて来院するよりも自ら進んで来院するものの方が多く認められた(p < 0.05)。また初診までの期間別にみた復職状況では, 男子は1年以上たって受診したものは復職できているものが少なかった(p < 0.01)。さらに初診時における勤務状況別の復職者の割合については, 男子は現在の勤務状況に関連していたが, 女子では勤務状況との関連を認めなかった(p〈0.05)。また職場不適応の年代のピークは男女とも20歳代に認められ, もう1つのピークは40歳代で男性にのみ認められた。この現象は, 女性には中年の危機が存在しないのではなく, 社会進出した女性群が40代のピークを未だ迎えていないためと考えられた。さらにVDT障害による不適応の場合は他の職種に比べて不適応が早期に出現するが, これはコンピューターを使っての作業は専門性が高く, 他の人の協力や交替が得にくいためと考えられた。過剰適応については, (1)ライフスタイルの乱れから消化性潰瘍とうつ状態を呈し, 症状軽快後は外来での生活指導を拒否してしまった症例と, (2)過敏性腸症候群とともに肥満, 高血圧, 高脂血症, 高尿酸血症などのいわゆる成人病を呈し, 入院中は節制した生活をし症候全体が軽快していったが, 退院後1ヵ月で治療前の状態に戻ってしまった症例を示した。2症例を通じて, 中年期心身症の生活指導や行動変容は寛解と増悪を繰り返し, 難航するものが少なくないことを示した
著者
藤本 幸雄 林 信太郎 渡部 晟 栗山 知士 西村 隆 渡部 均 阿部 雅彦 小田嶋 博
出版者
一般社団法人 日本地質学会
雑誌
地質学雑誌 (ISSN:00167630)
巻号頁・発行日
vol.114, no.Supplement, pp.S51-S74, 2008-09-18 (Released:2011-12-22)
参考文献数
130
被引用文献数
2 1

男鹿半島には白亜紀後期の基盤花崗岩類から古第三紀火山岩類,新第三紀火山岩類・海成層,第四紀層と海成段丘,火山岩及び火山地形,砂丘などが整然と分布している.そのため男鹿半島は,東北地方日本海側の9000 万年ないし6500 万年前からの地史を考える上で重要な地域になっている.風光明媚にして男性的な景観には,このような地質体の形成過程・多彩な地史が刻み込まれており,自然界の営みの中に歴史を作る人々の営為も垣間見ることができる.災害・産業・環境問題・自然認識などをはじめとして,地学は教育の重要な柱として一層の活用が求められている.ここでは近年得られた新知見を加え,地質体の形成過程・地史について解説し,合わせて地学教育上の要点を挙げてみる.