著者
打出 喜義 杵淵 恵美子 水野 真希
出版者
金沢大学
雑誌
挑戦的萌芽研究
巻号頁・発行日
2010

日本では「掻爬」(D & C)法が主流とされながら、その実態は不明であった。我々は日本の中絶実態を明らかにするため、産婦人科医および看護者を対象に調査を実施した。その結果、D & Cが今でも最も使われている方法であること、WHOが標準的だとする2つの初期中絶法(吸引と薬物)のいずれも、日本ではあまり使われていないこと等が初めて明らかになった。より安全で信頼のおける医療を提供するため、知識を広め認識を改める必要がある。
著者
水野 真彦
出版者
経済地理学会
雑誌
経済地理学年報 (ISSN:00045683)
巻号頁・発行日
vol.59, no.4, pp.454-467, 2013-12-30 (Released:2017-05-19)
被引用文献数
1

本稿は,この20年ほどの経済地理学の動向をもとに,制度・文化的視点とネットワーク的視点を取りあげ検討し,経済地理学の本質について考える材料とすることを目的とする.まず制度・文化的視点について,特に国もしくは地域など領域の形態をとって現れる制度・文化に焦点をあて,その論点を整理した.次に,領域を越える企業や社会的つながりを強調するネットワーク的視点に注目し検討した.そのうえで,それらを包含する近年の経済地理学の傾向を,企業や個人などアクターの相互関係に焦点を当てる関係論的視点とし,それが今後の方向性として有力なものであることを論じた.
著者
水野 真彦
出版者
The Association of Japanese Geographers
雑誌
地理学評論 (ISSN:13479555)
巻号頁・発行日
vol.80, no.8, pp.481-498, 2007-07-01 (Released:2010-03-12)
参考文献数
81
被引用文献数
8 6

本稿は, 経済地理学において知識の問題を議論する際に, 社会ネットワーク論の視点が有効であることを指摘し, その展開方向について整理した. 社会ネットワーク論においては, 対象はアクターの関係のネットワークとしてとらえられ, 結合の内容やネットワークの構造が, アクターの行為に影響を与えると考える. 知識の移転・学習におけるアクターの多様性・流動性の意義の問題は, 社会ネットワーク論の視点からは, アクターの結合の質やネットワークの構造の問題ととらえることができる. 具体的には, 弱い紐帯, ブリッジの存在, ランダムで偶然な結合の形成が, 新しい有用な知識の流通を促すと考えられる. そのような社会ネットワーク論においては空間性は考慮されていないため, 経済地理学においてはアクター間の近接性に焦点を当てる必要がある. ただし, この場合の近接性とは, 地理的近接性だけではなく, 組織的近接性や制度的近接性も含まれ, それらは相互に関連している.
著者
水野 真彦
出版者
The Association of Japanese Geographers
雑誌
地理学評論 (ISSN:13479555)
巻号頁・発行日
vol.77, no.13, pp.940-953, 2004-11-01 (Released:2008-12-25)
参考文献数
31
被引用文献数
4 2

本研究は,大阪府における中小企業のネットワークと技術的イノベーションの地理的側面について特許のデータを用いて考察したものである.大阪府の中小企業が他の企業と共同で生み出した発明を特許の共同登録のデータから把握し,両者間の地理的距離と企業の属性との関係を検討した.その結果,共同発明を行った相手は,同じ大阪府内の企業あるいは組織である割合が高いことが示された.規模が小さく,若い企業は,近接した企業と共同で発明を生み出すという傾向が非常に弱いながらも見出せた.一方,産業部門により相手との距離は異なる.具体的には,金属・プラスチック製品などの中小企業間の域内ネットワーク,電気機械や家具などの大企業と中小サプライヤーの域内ネットワーク,大阪府の中小一般機械メーカーと域外の大企業とのネットワークなどを典型とする多様なネットワークから発明が生み出されていることが確認された.
著者
水野 真彦
出版者
一般社団法人 人文地理学会
雑誌
人文地理 (ISSN:00187216)
巻号頁・発行日
vol.62, no.5, pp.426-444, 2010 (Released:2018-01-19)
参考文献数
109
被引用文献数
2

This paper reviews studies focused on the economic and social restructuring of cities in developed countries in the 2000s (2000-2009) from the viewpoint of economic geography. Drawing on critical examinations of the global cities thesis and the creative class thesis by Saskia Sassen and Richard Florida, respectively, the author points out the following four features of urban restructuring during the decade.First, urban spaces that contain land and buildings have gradually been incorporated in global financial capitalism. In other words, they have become financial products that have been traded beyond local and national borders, which caused a growth in financial business and a rapid rise in housing prices and rent prior to the financial crisis. The surge of financial capitalism in the 2000s has had a tendency to destabilize urban spaces and the lives of the residents in these areas.Second, neo-liberal policy movements have emphasized intensifying intercity competition and the rise of urban entrepreneurialism. City governments increasingly tend to pay more attention to attracting mobile capital, and neglect social policy for city residents, who are relatively immobile.Third, according to Sassen, global cities are characterized by the economic and social polarization of urban residents. In the 2000s, many Japanese writers and researchers discussed the fact that Japan had been converted into a gap-widening society. The increasing job insecurity of younger workers is suggested as a cause of the widening of the income gap. In particular, some critics perceive the suburbs as a problem, partly because irregular and low-paid employment is often a feature of these regions. In addition, this decade has witnessed an increase in the regional disparity between Tokyo and the rest of Japan.Fourth, the intercity competition for attracting highly skilled talents has been accelerated in the 2000s. Richard Florida insists that attracting the creative class is fundamental to urban development. He suggests that diversity, openness, and tolerance are magnets that attract the creative class. Although his view has drawn the attention of local politicians and policymakers, a considerable number of scholars criticized it for several reasons. One of these criticisms is that urban development can be better explained in terms of locations that offer job opportunities rather than the residential preferences of people or urban amenities. Another criticism is that urban policies based on Florida’s view possibly deepen the social divide between the creative class and the rest of the population. We have to recognize the importance of job creation in production activities throughout the production chains in order to prevent the deepening of the social divide in urban societies.
著者
樋口 輝美 眞野 善裕 石川 由美子 山崎 俊男 水野 真理 大川 恵里奈 堀田 直 瀬戸口 晴美 早瀬 美幸 吉沢 美佳 堀之内 那美 榎本 伸一 安藤 英之
出版者
一般社団法人 日本透析医学会
雑誌
日本透析医学会雑誌 (ISSN:13403451)
巻号頁・発行日
vol.45, no.10, pp.937-945, 2012-10-28 (Released:2012-11-14)
参考文献数
29
被引用文献数
1

目的:透析患者は低栄養,炎症,動脈硬化を主体としたMIA症候群の危険にさらされている.今回維持透析施行中の患者のgeriatric nutritional risk index(GNRI)を測定し,栄養状態について検討し,血漿CRP,IL-6,Fetuin-A,8-OHdG等の各種パラメーターを測定し,それらとの相関等について検討した.対象:当院で安定した維持血液透析施行中の患者138名.内訳は男性95名,女性43名.平均年齢69±11歳(38から88歳)で平均透析歴58±60か月(3から390か月)である.方法:GNRIはBouillanneらが提唱し,Yamadaらが改変した計算式より求めた.血漿IL-6,Fetuin-A,8-OHdGはenzyme-linked immunosorbent assay(ELISA)法にて求めた.結果:GNRIは加齢により次第に低下し,年齢と有意な負の相関を示した.また男性に比べ女性で有意な低値を示し,原疾患では糖尿病性腎症の有無では有意な差は認められなかった.生化学パラメーターとしては,血清アルブミン(p<0.0001),Fetuin-A(p<0.01)と正の相関を示し,CRP(p<0.0005),IL-6(p<0.0001),8-OHdG(p<0.0001)と負の相関を示した.結論:透析患者の栄養状態を反映する上で,GNRIは簡易に計測できる指標となりえると考えられた.また栄養,炎症,動脈硬化,酸化ストレスとGNRIの間には密接な関連があることが示唆された.
著者
樋口 輝美 石川 由美子 山崎 俊男 水野 真理 大川 恵里奈 瀬戸口 晴美 柳沢 順子 中島 詩織 安藤 英之 及川 治 井下 篤司 阿部 雅紀 上野 高浩 相馬 正義
出版者
一般社団法人 日本透析医学会
雑誌
日本透析医学会雑誌 (ISSN:13403451)
巻号頁・発行日
vol.47, no.2, pp.119-127, 2014 (Released:2014-03-06)
参考文献数
30
被引用文献数
3

【目的】透析患者におけるレボカルニチンの腎性貧血に及ぼす効果を検討する.【対象】当院にて維持透析施行中の患者192名のうち,選択基準を満たした対象患者153名に対し内服希望のアンケートを実施し,内服希望患者群113名(内服群)と内服希望のない患者群40名(非内服群)とした.【方法】今回の臨床試験においては,内服希望患者による介入試験であり,非ランダム化比較試験である.内服群はレボカルニチンを20mg/kg/日(最大用量1,200mg/日)を投与した.Erythropoiesis stimulating agents(ESAs)はrecombinant human erythropoietin(rHuEPO)とDarbepoetinα(DA)を使用しているため,rHuEPOとDAの比を200:1としrHuEPOの換算量とし,週あたりのESAs使用量,ESAs治療反応性の指標としてerythropoiesis resistance index(ERI)をESA doses/kg/g/dL/週として算出した.【結果】対象患者の患者背景は,内服群で,非内服群に比し有意に男性患者が多く,原疾患は糖尿病性腎症が多く,有意にクレアチニン,尿酸,アルブミンとTIBCの高値を認めたが,その他両群間で有意な差は認めなかった.1)内服群,非内服群とも試験開始前から6か月まで目標Hbに達し,両群間で有意な差は認めなかった.2)内服群のESAs使用量は6か月目に有意な低値を認め,非内服群に比し,6か月目で有意な低値を認めた.3)内服群でESAs doses/kg/dL/週は6か月目で有意な低値を認め,非内服群に比し,開始3,6か月で有意な差を認めた.【結論】レボカルニチンは透析患者の腎性貧血におけるESAs使用量の低下と,ESAsへの反応性を改善させることが示唆された.
著者
津田 朗子 木村 留美子 水野 真希
出版者
金沢大学つるま保健学会 = Tsuruma Health Science Society, Kanazawa University
雑誌
金沢大学つるま保健学会誌 = Journal of the Tsuruma Health Science Society, Kanazawa University (ISSN:13468502)
巻号頁・発行日
vol.39, no.1, pp.81-86, 2015-07-28

本研究は、小中学生のインターネット使用状況から、その依存傾向と生活習慣を調査した。 対象は1 自治体の全小中学校に通う小学4 ~ 6 年生849 名、中学1 ~ 3 年生896 名で、自記 式質問紙調査を実施した。 その結果、インターネットに「依存傾向」の子どもは小学生7.5%、中学生22.0%、全体 で15.9%にみられ、その割合は中学2 年生、中学3 年生に高く、また女子に高かった。依存 傾向の者は、インターネットを使用する時間が長く、複数の機器を使用している者、持ち運 び可能な機器を使用している者、自分専用の機器を所持している者、使用目的が多岐にわた る者、使用の際のルールがない者に多かった。 依存傾向者は、依存のない者やインターネットを使用しない者に比べ、就寝時刻が遅かっ た。また、小学生では学習時間が短く、中学生では運動時間が短く、インターネットへの依 存傾向が生活習慣に影響を及ぼしていることが示唆された。
著者
水野 真理子
出版者
富山大学教養教育院
雑誌
富山大学教養教育院紀要
巻号頁・発行日
no.1, pp.31-49, 2020-03-12

本稿は日系アメリカ作家と彼(女)らを支えたアメリカの文学者たち(作家、文筆家、詩人、編集者)との間にどのような文学的交流が見られたのかを明らかにするという問題意識のもと、ヨネ・ノグチと女性作家たちに焦点を当てる。ノグチは『日本少女の米国日記』を執筆する過程で、英文の推敲や内容について、高い文学的素養を持ったアメリカの女性作家・文筆家たち、とくにレオニー・ギルモアから、かなりの助力を得た。彼女らとの文学的交流がノグチに与えた影響について、『日本少女の米国日記』を中心に検討する。作品に描かれる朝顔嬢という日本人女性像が、同時代の明治の日本人女性像とどのように異なっているのか、またノグチがアメリカの女性作家たちをどう評価していたのか、そして帰国後のノグチの女性像にどのような影響が与えられたのかについて考察する。
著者
水野 真希
出版者
一般社団法人 日本女性心身医学会
雑誌
女性心身医学
巻号頁・発行日
vol.20, no.3, pp.294-301, 2016

本研究の目的は,人工妊娠中絶ケアに携わる看護者を対象に,中絶ケア体験により生じたトラウマによる心理的反応とその関連要因について明らかにすることを目的とした.2011年10月〜2012年1月に,人工妊娠中絶を実施している医療機関に勤務する202名の看護者を対象に,個人属性,中絶ケアを負担と感じる要因,そして中絶ケア体験から生じたトラウマによる心理的反応を測定するため改訂版出来事インパクト尺度を用いて無記名自記式質問紙による調査を実施した.重回帰分析の結果,中絶ケアに携わる看護者の心理的反応(改訂版出来事インパクト尺度)と有意に関連が見られたのは,「生きる可能性のある胎児が中絶されること」,「ケア中の感情コントロールの困難さ」そして「中絶された胎児に触れなければならないこと」であり,分散の24%が説明された.また31名(15.3%)が心的外傷後ストレス障害(Post Traumatic Stress Disorder:PTSD)ハイリスク群に分類された.看護者の業務に対する意思を尊重し,業務を変更するなどの配慮をすると同時に看護者への支援体制を構築することが,ケアの質向上につながることが示唆された.
著者
塚田 稔 相原 威 水野 真
出版者
一般社団法人電子情報通信学会
雑誌
電子情報通信学会秋季大会講演論文集
巻号頁・発行日
vol.1994, pp.449-450, 1994-09-26

事柄は脳の概念として高次中枢(連合野)に、結合の強さによって似ている情報は互いに結び付けられて、広い範囲に分散して長期記憶として蓄えられていることが判ってきた。一方この記憶の構造は、永久に変わらないものでしょうか。ところが、この構造は人間の意志や動機によって色々と組み変えることができる。ヨーロッパのマイセン焼に「美女と野獣」という題の美しい焼きものがある。なぜ美女と野獣が結び付くのだろう。この背後に動機付けられる人間の感情や意識の世界があり、そこには人間本来的な生命活動を維持する欲望や情念、それをコントロールする理性や宗教的世界、価値判断をする意志決定機構が存在するからだ。この判断に基づいて長期記憶の世界はいかようにも変形できる。この動機付けに基づいて一時的に事柄を記憶し、関連付けたり、分離したりする場所、これが短期記憶と呼ばれている所であり、皮質下部に存在し、その形が竜の落とし子に似ていることから海馬と呼ばれている。この部分が損傷を受けると、昔のことは覚えているが、最近の出来事が忘れて思い出すことができなくなる。一般に、海馬は長期記憶になる際の学習時において、重要な働きをする短期記憶として動作する。ここでは学習によって皮質の別々の事象や刺激の特徴などを連合したり分散する。学習後はそれを長期記憶として連合野に保存し、海馬システムは連合野と独立に動作する。
著者
水野 真二 成川 昇 近藤 春美 上吉原 裕亮 立石 亮 窪田 聡 新町 文絵 渡辺 慶一
出版者
一般社団法人 園芸学会
雑誌
園芸学研究 (ISSN:13472658)
巻号頁・発行日
vol.20, no.1, pp.109-115, 2021 (Released:2021-03-31)
参考文献数
12

アントシアニン色素を多く含み,果実が濃赤色を呈する促成栽培用イチゴ品種 ‘真紅の美鈴’ を育成した.神奈川県における試験栽培において,本品種は ‘とちおとめ’ より花芽分化がやや遅く,定植適期は9月20日頃以降であると考えられた.果実の硬度は ‘とちおとめ’ 並みに高く,糖酸比は20を超え,還元糖のグルコースとフルクトースを比較的多く含んでいた.果実のアントシアニン色素の含量は新鮮重1 g当たり185 μgであり,母親の ‘ふさの香’ および父親の ‘麗紅’ の約2倍,‘とちおとめ’ の約3倍であった.一方,果汁の抗酸化活性には‘真紅の美鈴’と従来品種で大きな差はみられず,アントシアニンの抗酸化活性への寄与度は低いと推定された.アントシアニンの組成はペラルゴニジン配糖体が80%以上を占めており,検出された5成分の構成比は ‘とちおとめ’ や親品種と概ね同等であった.このことから,‘真紅の美鈴’ が濃赤色を呈するのはアントシアニン組成の影響ではなく,色素の含量が顕著に多いためと考えられた.
著者
水野 真理子
出版者
富山文学の会
雑誌
群峰
巻号頁・発行日
vol.7, pp.65-84, 2022-04-01